ISMSの審査員とは?審査で聞かれる内容や対策の具体例・参考例をわかりやすく解説!
- 【監修者】金光壮太(ISOトラストのコンサルタント)
- 3月26日
- 読了時間: 10分

▼ 目次
1. はじめに
1.1. 本記事の目的と想定読者
ISMS(Information Security Management System)の認証を取得したいと考えている企業にとって、審査員が実際にどのような点を確認するのかは大きな関心事です。審査対応が初めてだと「どんな質問がされるの?」「どんな書類や運用がチェックされるの?」と疑問や不安が尽きないはずです。
この記事の目的
ISMS審査員の役割や視点を理解し、審査時に困らないよう備える
審査でよく聞かれる質問や実務上の対策例を知り、現場で即活用できるようにする
他社での成功事例やコンサル経験から学び、スムーズに審査合格を目指す
想定読者
これからISMS認証(ISO27001)を取得しようとする担当者やチームリーダー
すでにISMSを導入中で、外部審査が近い初心者~中堅レベルの管理者
審査に対する疑問や不安を抱える現場のスタッフ
1.2. ISMS審査員の位置づけ
認証機関の代表者: ISMSを運用する企業をチェックし、基準を満たしているかを判断する専門家です。
組織の運用実態を見抜くために、書類だけでなくスタッフへのインタビューや現場視察、ログの確認などを行います。
コンサル経験談: 「形だけ整えたつもりでも、審査員は現場の人に質問して本当に運用しているかを見ます。書類と実態が合わなければ不適合を指摘されるケースが多いですね。」
1.3. 本記事で得られるメリット
審査員が実際にどんなことを質問するか、具体的イメージが持てる
審査のポイントやよくある質問への対策を把握でき、準備不足を回避できる
ISMS審査対応で評価される方法がわかり、認証取得・更新をスムーズに進められる
2. ISMSの審査員とは?基礎知識を押さえる
2.1. 審査員の役割
ISO27001の要求事項(ISMSの枠組みや運用ルール)がきちんと守られているかを外部からチェック
企業のセキュリティ体制が実際に機能しているかを見極めるため、文書、記録、運用状況を総合的に判断
独立した立場: 認証機関に所属しているため、企業側と利害関係を持たず、公正な目線で審査を実施します。
2.2. 認証機関と審査員の関係
認証機関: ISO27001の認証を発行する組織。国内・国外にいくつか存在し、企業は自社に適した認証機関を選ぶ
審査員: 認証機関の社員や契約者で、専門知識や資格を持つ人。企業の書類・現場・担当者へのヒアリングを通じて“合格か不合格か”を判断
2.3. 初心者が知っておくべき用語
初回審査: ISMSの導入初期に受ける審査で、書類・運用の両面を細かくチェックされる
更新審査: 認証取得後、定期的(通常1年や数年ごと)に受ける審査。運用継続と改善度合いを見る
サーベイランス審査: 毎年1回程度行う中間審査。問題があれば是正報告を求められる
3. 審査で聞かれる内容:主な質問と対策
3.1. ISMS方針・リスクアセスメント関連
方針の理解度
質問例:「経営層はISMS方針をどう説明しますか?」「社員は方針を周知されてる?」
実務TIP: 社長や管理者が自信を持って答えられるように、社内掲示やイントラで方針を共有する
リスクアセスメントの結果
質問例:「脅威と脆弱性をどう洗い出し、どれが高リスクと判断したか?」「管理策はリスクと整合性がある?」
コンサル経験談: リスク評価を曖昧にしている企業は「このリスクに対する対策が見当たらない」と不適合を指摘されがち
3.2. 運用ルール・管理策の実装状況
附属書A管理策
例:「アクセス制御やバックアップは具体的にどう実施?」「モバイルデバイスの管理策は?」
他社事例: IT企業B社はVPN+多要素認証を導入し、審査員から「モバイルワーク対策が優れている」と評価
社内運用チェック
「ルール通り社員が運用しているか?」ヒアリングで確認
実際に社員へ「この手順を知っていますか?」と質問されることも多い
3.3. 事故報告・インシデント対応
インシデント報告フロー
質問例:「異常が起きたときに誰に報告?報告書フォーマットは?」
独自情報: コンサルで携わった製造業A社は小さなトラブルも気軽に報告できるシステムを導入→ 後で大きな事故防止に繋がった
対策と再発防止
「過去に事故はあったか?どう対応し、どう改善したか」
エビデンス: インシデント報告書、是正報告書を提示すると審査員が納得しやすい
3.4. 教育・監査・マネジメントレビュー
社員教育
「セキュリティ研修はどのくらいの頻度で?参加率は?」
他社事例:サービス業D社は月1回のショート研修動画を流し、社員の知識定着を高め、審査でも好評
内部監査・レビュー
「監査はどんな項目を見ていますか?」「経営層が結果をどう評価し、どう改善しているか?」
プロの経験談: 監査結果を報告しても、改善策が放置だと“PDCAが回っていない”と見なされやすい
4. 審査員が注目する3つの視点:具体対策と事例
4.1. 経営層のコミットメント
審査員は“トップが関心を持っているか”を最初に確認
例:社長や役員がISMS会議に参加し、方針やリスクを把握し説明できると高評価
経験談: 金融機関C社では頭取自ら審査員面談に出席し、セキュリティ投資やBCPの方針を堂々と説明→ ポジティブ評価
4.2. リスク管理の一貫性
リスク評価→ 管理策導入→ 運用証拠が繋がっているか
プロの視点: 「リスク評価で高リスクなのに、なぜ対策していないか?」と聞かれたら、受容or 低コスト対策の理由を論理的に示す
4.3. 実際の運用証拠
ルールと現場が合致: 「ドキュメント上は完璧でも、社員が知らない/使っていない」と不適合の可能性
ヒアリング: 審査員はよく現場スタッフに「この手順知ってる?」「どこに文書がある?」と質問→ 実際に理解しているかをチェック
5. 審査対策:どう準備すればいい?具体的ステップ
5.1. 資産整理とリスク評価
資産一覧を更新: 新システムや新部署追加なら適用範囲に入れておく
脅威・脆弱性の棚卸し: 過去のインシデント報告や運用トラブルを参考に洗い出し
管理策との整合: リスク表に対する対策を記載し、リスク受容も明確化
5.2. 文書化と運用実績の証拠化
ISMS文書整備: セキュリティ方針、リスクアセスメント結果、教育計画などを最新化
ログや報告書: インシデント報告、バックアップ実行ログ、監査記録など→ 審査員に提示可能な形にまとめる
他社事例: 製造業A社は専用フォルダで年度ごとのエビデンスを整理→ 審査時に素早く提示でき時間短縮
5.3. 社員教育・模擬審査
社員教育: 審査員が誰に聞いても答えられる最低限の知識(方針、担当業務のルール)を提供
模擬審査: 内部監査員やコンサルが“審査員役”になり、本番のような質疑応答を練習→ 弱点を事前に補強
6. 他社事例:スムーズに審査を乗り越えた企業の工夫
6.1. 製造業A社:部署ごとに審査練習
背景: 大規模工場&オフィスでルールが複雑。社員も「何が聞かれるか分からない」と不安
対策: 部署単位の模擬面談実施→ 想定質問リストを共有し、どの資料を提示すればいいか準備
成果: 本番審査で社員が落ち着いて答えられ、不適合指摘が激減
6.2. IT企業B社:ログ管理徹底で“成果”を示しやすい
特徴: システムアクセスやパッチ適用、インシデント対応をクラウドツールで一元記録
効果: 審査員から「運用状況の見える化がしっかりしており、対策と成果が把握しやすい」と高評価
コンサル視点: ログがまとまっている企業は監査・審査でも短時間で終了することが多い
6.3. サービス業D社:経営トップが積極参加
事例: 社長自らISMS方針を説明し、会社全体でどんなリスクを抱え、どう管理策を導入したかを把握
成果: 審査員が「経営層が深く関与している→ 組織全体に根付いている」と評価し、円滑に認証取得
7. よくある失敗例と回避策
7.1. 「担当が誰か不明」で答えられない
原因: 部署横断の仕組みが多く、責任所在が曖昧
回避策: ISMS文書に担当部署・担当者を明記(RACI表など)。内部監査や会議で“誰が何を管理するか”再確認
7.2. 運用ルールだけ完璧で実際は使われない
原因: 現場が負担を感じ、「形だけ」になっている
回避策: なるべく簡易で具体的な手順書を作成、社員教育&フィードバック体制を設ける
7.3. 審査直前に書類を整える
原因: 日常で記録を残していない→ 慌てて書類を作り直し、矛盾や不備が出やすい
回避策: インシデントやログ、研修記録を日頃からデジタル保存。定期的に更新して、審査前は最終チェックのみ
8. Q&A:ISMS審査員に関する疑問
8.1. 「審査員に直接問い合わせ可能?」
回答: 基本的に難しい。認証機関の窓口やコンサルを通すのが通常。審査員との個別やり取りは公正性の観点から制限される
8.2. 「審査員ごとに判断に差はないの?」
回答: 同じISO基準でも、人によって着目点が微妙に異なる場合はある。ただし大枠は共通。曖昧さを防ぐには文書・エビデンスをしっかり準備
8.3. 「初回審査と更新審査で質問内容は違う?」
回答: 初回は主に体制整備・文書整合を重点確認。更新では“実際の運用成果”“改善の継続性”を詳しく見る傾向
8.4. 「審査員が海外出身だと英語で答えなきゃいけない?」
回答: 認証機関により異なる。日本語対応が可能な審査員も多いが、事前にどの言語で審査されるか確認し、必要なら通訳を手配する
9. まとめ:ISMSの審査員とは?審査で聞かれる内容や対策の具体例・参考例をわかりやすく解説!
9.1. 記事の総括:ポイントの再確認
ISMS審査員は認証機関から企業をチェックする専門家で、文書・運用実態・社員インタビューを通じて“ISMSが本当に機能しているか”を判断
審査で聞かれる内容: ISMS方針やリスクアセスメント結果、各種管理策、インシデント対応、教育・監査・レビューなど
対策の具体例: ログ管理の徹底、担当者や責任分担の明確化、社員教育&模擬審査で回答練習 など
他社事例: 経営トップが積極関与、運用証拠を一元管理などが審査で高評価を獲得
9.2. 次のアクション:効果的な審査対策フロー
リスクアセスメントと管理策の整合: どのリスクが高いか→ 具体的対策と証拠づくり
文書&エビデンス整備: ISMS文書、インシデント報告書、教育ログなどを最新化
社員教育・模擬面談: 実際に“審査員”役が質問してみる→ 現場の弱点を把握し補強
定期見直し: 組織やシステムの変更時も柔軟にルール更新し、継続的に改善
あとがき
ISMS審査員は、組織の情報セキュリティマネジメントを「規格どおりかどうか」だけでなく、実際に役立つ仕組みとして運用されているかを厳しくチェックします。本記事の内容を踏まえて、日頃から小さなログや報告を残し、社員がルールを理解している状態にしておけば、いざ審査員に質問されても慌てずに応じられるはずです。**審査員を“敵”ではなく、“自社ISMSのレベルを客観的に確認してくれる存在”**と捉え、前向きに対応すれば、スムーズな認証取得・更新を実現でき、企業のセキュリティ水準もさらに高まっていくでしょう。
この記事の監修者情報
金光壮太 (ISOコンサルタント)
大手商社にて営業を経験した後、ISOコンサルティングに従事。ISO9001、14001、27001を中心に、各業界の課題や特性に応じたシステム構築や運用支援を行い、企業の業務効率化や信頼性向上に貢献。製造業や建設業など、多岐にわたる業界での豊富な経験を活かし、お客様のニーズに応じた柔軟なソリューションの提案を得意としている
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