ISMSの情報セキュリティ目的を具体例で解説!リスク対策と運用のコツを初心者向けに紹介!
- 【監修者】金光壮太(ISOトラストのコンサルタント)
- 3月26日
- 読了時間: 9分

▼ 目次
1. はじめに
1.1. 本記事の目的と想定読者
ISMS(Information Security Management System)を運用するうえで、“情報セキュリティ目的”をどう決めればいいのか悩む人は多いです。目的をしっかり立てることで、企業がどのリスクを優先して対処すべきかが明確になり、セキュリティ対策と審査の両面で大きな利点があります。
この記事の目的:
ISMSの情報セキュリティ目的とは何かを基本から理解する
具体的な目的設定の例やリスク対策のポイントを把握し、実務に活かす
審査対応にも役立つ、運用上のコツを紹介
想定読者:
初めてISO27001認証取得を狙う企業の担当者
ISMSを運用しているが“目的”が抽象的で効果がわからない管理者
自社リスクの特定や管理策の選び方に不安を感じる初心者
1.2. ISMS導入で必要となる“情報セキュリティ目的”とは?
ISMSにおける情報セキュリティ目的は、組織が「どのリスクをどのレベルまで下げるか」「どんな成果を1年かけて達成するか」を明確にしたゴールです。ISO27001の審査では、この目的がリスクアセスメントや管理策と結びついているかどうかを強くチェックされます。
明確な目的があると、社員が何を重視すればよいか理解しやすくなる
目的と対策が合致していないと、審査で指摘される確率が高い
1.3. 本記事で得られるメリット
目的をどう設定すればいいか、初心者でもわかりやすく把握できる
他社での成功・失敗事例から、リスク対策と運用のコツを学べる
審査でも評価される具体的な数値目標やPDCAサイクルの回し方を理解できる
2. ISMSと情報セキュリティ目的の基本概念
2.1. ISMS(ISO27001)の概要
ISMSは、情報資産を守るためのマネジメントシステムです。ISO27001規格は、組織が情報セキュリティを体系的に管理する方法を示しています。
PDCAサイクル: 計画(Plan)→ 実行(Do)→ 確認(Check)→ 改善(Act)の流れで継続的な品質向上を図る
ここで言う“情報セキュリティ目的”は、PDCAのPlanフェーズで明確化し、Checkフェーズで達成度合いを測るために重要な基準になります。
2.2. 情報セキュリティ目的とは何を指すのか?
脅威(ハッキング、ランサムウェア、内部不正など)を想定し、組織が防ぎたいリスクを具体的な目標として定義
例:「インシデント件数を年度内に20%減らす」「サービス停止時間を1時間以内に抑える」 など
ISOコンサル視点: この目的が曖昧だと「社員は何のために対策しているの?」と混乱し、審査員も運用の実効性を疑います。逆に、目的が数値や期限と紐づいていれば評価されやすいです。
3. 情報セキュリティ目的の具体例:どんなゴールを設定すれば良いか
3.1. インシデント件数削減(例:○%減)
状況: 過去に漏えい・ウイルス被害などが続いている
目的例: 「年度末までに情報セキュリティインシデント件数を前年比で20%減らす」
測定方法: インシデント報告書の数を集計し、重大度も記録→ 目標値と比較
コンサル経験: ある製造業は「インシデント削減20%」を掲げ、早期通報フロー整備→ 実際に報告が増えて早期対応ができ、重大事故に至る件数が減った
3.2. バックアップ・可用性強化(例:ダウンタイム短縮)
状況: システム障害が頻繁で業務停止に大きな損失
目的例: 「停電やシステム障害時の復旧目標(RTO)を4時間以内にする」
具体策: DR(Disaster Recovery)サイト構築、UPS(無停電電源装置)導入など
他社事例: 金融機関C社はRTO短縮を最優先→ DRサイト訓練を定期化し、審査でも“可用性対策が充実”と高評価
3.3. 従業員セキュリティ意識向上(例:教育受講率目標)
背景: ヒューマンエラー(誤送信、SNS漏えい)やパスワード管理不備が多発
目的例: 「セキュリティ研修受講率を90%以上にする」「研修後テスト合格率80%以上」
実務TIP: eラーニングやフィッシング演習をセットで導入→ 受講記録を残して審査員に提示できる
3.4. 国際規格や顧客要求への準拠
状況: 海外取引でGDPR等のデータ保護要件を満たす必要
目的例: 「GDPR対応項目を年度内に全社に適用し、監査で指摘ゼロを目指す」
メリット: 海外市場での競争力向上、顧客からの信頼UP
4. リスク対策と運用のコツ:初心者が押さえるべきポイント
4.1. 目的設定とリスクアセスメントの連動
高リスク領域をまず優先
“発生可能性が高く、影響が大きい”リスクを中心に目的を設定
形だけの目標は審査で指摘されがち
コンサル経験: 社内ニーズ無視で「インシデントゼロ」と掲げても、現場が協力しにくい
4.2. 社員への周知・教育
目的を全員が把握: どんな目標を目指すのか、具体的な数値や期限を社内イントラ・朝礼などで共有
経験談: サービス業D社は、各部署のリーダーが毎週進捗を報告する仕組み→ インシデント発生時に素早く連携し、目標達成率が向上
4.3. 達成度合いを測る仕組み(KPI設定)
KPI例: インシデント件数、教育受講率、パッチ適用率、DR訓練頻度など
PDCAのCheckフェーズ: 定期的に数値を取って、達成度を可視化。問題があれば目標や対策を修正
5. サービス導入(ISMS コンサルティング)や社内体制整備の費用目安
5.1. 社内対応の場合
コスト負担: 担当者の人件費、ツール費用
メリット: ノウハウが社内に蓄積しやすい
デメリット: 専門知識や時間が足りないと認証取得まで長期化。目的設定も曖昧になりやすい
5.2. コンサル導入の場合
フルサポート費用: 数十万円〜数百万円以上
部分サポート: 例えばリスクアセスメントだけ、審査直前の模擬質問だけなど、費用を抑えつつ外部ノウハウを利用
経験談: 製造業A社はフルサポで200万ほどかかったが、半年以内に認証取得し、取引先要求をクリア
6. メリット・デメリット総まとめ
6.1. メリット
組織全体の意識統一: 具体的“目的”があると、社員が意識を高めやすい
対外的な信頼度UP: 目的がしっかりして運用が成果を出していれば、顧客や取引先にも良印象
審査対応でも強み: “この目的に向けてこう動いている”と説明でき、不適合指摘を減らせる
6.2. デメリット
設定に時間と労力がかかる: リスクと関連性を考慮して目標を決める必要がある
形骸化のリスク: 目標が大きすぎたり抽象的だと、現場が動きにくく本来の意味を失う
レビュー不足: 達成状況を定期チェックしないと、目的が効果を生み出さない
7. 他社事例:ISMSの情報セキュリティ目的設定で成功したケース
7.1. 製造業A社:在庫システム保護でインシデント件数大幅減
課題: システム障害や誤操作で生産スケジュールが狂うトラブルが相次いでいた
目的: 「ISMSインシデントを年間20件→10件以下に」+「緊急時のダウンタイムを1日以内」
成果: 社員研修&早期通報体制を整え、報告が増えてからの対策が迅速化→ 重大事故が減り審査でも評価向上
7.2. IT企業B社:顧客データ保護で研修受講率を向上
背景: SaaS提供中に顧客情報の誤送信が起き、クレーム発生
目標: 「セキュリティ研修参加率を95%以上に」「教育後テスト平均点80%以上」
結果: 定期的なフィッシング演習+合格義務化で社員意識が大幅UP→ 実際のインシデントが激減
7.3. 金融機関C社:可用性確保でDR連動
目標: 「災害時の復旧時間(RTO)を8時間→ 4時間に短縮」+「年2回DRサイト切替訓練」
導入効果: DRサイト構築に予算を重点配分し、審査でも“可用性対策が充実”と高評価。利用者からの信頼向上
8. 失敗例と回避策
8.1. 目標が漠然として進捗不明
原因: 「セキュリティを強化しよう」程度のスローガンで、具体的な数値や期限がない
回避策: SMART原則(具体的・測定可能・達成可能・関連性・期限)を用い、社員が誰でも理解できる形に
8.2. 運用現場と経営層の温度差
原因: 経営層が理想論を掲げ、現場が実行不可能な目標になる
回避策: 部門長やスタッフの意見を聞き、現場視点と経営視点のバランスを取る
8.3. 達成後の見直しをしない
原因: 年度末に“達成したかどうか”だけで終わり、次年度に繋げない
回避策: PDCAを回し、「今回の結果を踏まえ来年はどうするか」を話し合い、リスクが変化したら目的も修正
9. Q&A:ISMS 情報セキュリティ目的に関する疑問
9.1. 「目的と目標はどう違う?」
回答:
目的= 組織が中長期的に実現したいゴール(例:機密情報を厳重に守る)
目標= その目的を達成するための年次・数値目標(例:インシデント件数を○件以下)
9.2. 「小規模企業でも情報セキュリティ目的は必要?」
回答: はい。規模に関係なく、ISMS導入で求められるポイント。少なくとも1〜2個の主要ゴールがあると運用指針が明確になる
9.3. 「目標未達だと審査で不合格?」
回答: 目標未達イコール不合格ではない。理由や改善策がはっきりしていれば、PDCAサイクルが正しく回っていると評価される可能性あり
9.4. 「リスクが変わったら途中で目標も変えるべき?」
回答: はい、年の途中でも組織変更や新システム導入でリスク状況が変わったら柔軟に見直すのが理想
10. まとめ:ISMSの情報セキュリティ目的を具体例で解説!リスク対策と運用のコツを初心者向けに紹介
10.1. 記事の総括:ポイントの再確認
情報セキュリティ目的の意義: 組織がどんなリスクをどう抑えたいのかを具体的に示し、社員の行動目標になる
具体例: インシデント件数削減、システム可用性強化、従業員教育率UPなど、数値と期限を設定するとわかりやすい
リスク対策&運用: リスクアセスメントと目標がリンクし、社員周知とPDCAサイクルが回っているかが鍵
メリット・デメリット: 目標があるとセキュリティ運用が集中しやすくなるが、形骸化に注意。定期レビューが必要
10.2. 次のアクション:初心者がすぐ始められる導入フロー
社内リスク洗い出し→ 主要リスクを把握
経営層・担当部門と協議: どの目標が組織にとって重要か?コスト・実行可能性を検討
目的/目標を数値化(インシデント件数、受講率、復旧時間など)
運用&モニタリング: 定期的に達成度をチェック、問題あれば対応策を修正
あとがき
ISMSの情報セキュリティ目的をしっかり設定することで、企業全体のセキュリティ対策がどのリスクを、どの程度減らし、いつまでに達成するかがはっきりします。これにより社員の行動が揃いやすく、PDCAサイクルもスムーズに回せます。本記事の具体例や運用のコツを参考に、自社独自の目標を定めてみてください。目標がきちんと運用されていれば、**ISO27001審査でも『実際に機能しているISMS』**として評価され、顧客や取引先からの信頼もより高まるはずです。
この記事の監修者情報
金光壮太 (ISOコンサルタント)
大手商社にて営業を経験した後、ISOコンサルティングに従事。ISO9001、14001、27001を中心に、各業界の課題や特性に応じたシステム構築や運用支援を行い、企業の業務効率化や信頼性向上に貢献。製造業や建設業など、多岐にわたる業界での豊富な経験を活かし、お客様のニーズに応じた柔軟なソリューションの提案を得意としている
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