ISMSにおけるソフトウェア管理とは?具体例と参考例で始めるリスク対策をわかりやすく解説!
- 【監修者】金光壮太(ISOトラストのコンサルタント)
- 3月27日
- 読了時間: 10分

▼ 目次
1. はじめに
1.1. 本記事の目的と想定読者
ISMS(Information Security Management System)の運用では、「ソフトウェアが古いまま放置されていないか?」「ライセンスは正しく管理されているか?」といった日常のチェックがとても大切です。古いバージョンを使っていたり、無許可のソフトウェアを使っていると、サイバー攻撃リスクやライセンス違反が起こりやすくなり、審査でも不適合を受けかねません。
この記事の目的:
ソフトウェア管理の基本的な考え方を初心者にもわかりやすく紹介
パッチ適用、ライセンス統制、インベントリ作成などの具体例・参考例を提示
ISMS審査で「きちんと管理されている」と評価されるための運用コツを提供
想定読者:
ISMS(ISO27001)認証を取得・更新したい企業のIT担当や初心者
ソフトウェア管理のリスク対策を強化し、審査や内部監査を乗り切りたい管理者
実際の他社事例を参考に、効率的にシステムとライセンスを把握したい人
1.2. ISMSにおけるソフトウェア管理の重要性
ソフトウェア=情報資産: OS、アプリケーション、ライブラリなど、あらゆるソフトウェアは企業活動を支える資産
パッチ未適用や古いバージョン放置による攻撃リスク:ランサムウェア、情報漏えい、サービス停止など
ライセンス違反のリスク:法的リスクや賠償問題、審査での不適合指摘に繋がる
附属書Aとの関連: ISO27001附属書A(管理策)で示される“資産管理”や“運用管理”において、ソフトウェア管理は必須項目
1.3. 本記事で得られるメリット
ソフトウェア管理を実際に行う流れ(インベントリづくり、パッチ適用、ライセンス管理など)が明確にわかる
他社の成功・失敗事例から学べるので、短期間で効率よく改善可能
審査でも評価されやすい運用術が身につき、ISMS運用レベルを大きくアップできる
2. ISMSにおける「ソフトウェア管理」とは?
2.1. 基本概念:なぜソフトウェア管理が必要?
企業内のPCやサーバーで使われるソフトウェア(OS・アプリ・ライブラリなど)は必ず更新やライセンス管理が必要です。未更新のまま放置すると脆弱性が生まれてサイバー攻撃を受けやすく、無許可のフリーソフトウェアが入り込めば法的リスクも高まります。
脆弱性(未パッチ): 攻撃者が狙い撃ちする最優先のポイント
ライセンス違反: 賠償問題や信頼低下に繋がる
コンサル経験: ある製造業では古いWindows OSが狙われてランサムウェア感染→ 大きな損害を出した例も
2.2. 初心者が理解すべき用語
パッチ管理: OSやソフトウェアの更新(アップデート)を定期的に行い、脆弱性を解消する仕組み
インベントリ(Inventory): 全社のソフトウェアを「どの端末に、どのバージョンが入っているか」一覧にした台帳
ライセンス管理: ソフトウェアが正規ライセンスで導入され、数や期間を守っているかをチェックするルール
3. リスク対策の全体像:ソフトウェア管理が果たす役割
3.1. リスクアセスメントとソフトウェア管理
脅威・脆弱性の洗い出し: “OSサポート切れ”“無許可インストール”“未テストのパッチ”など
リスク評価: 発生可能性と影響度を考慮し、重要度の高いソフトウェアを優先的に管理
コンサル視点: 形だけのリスク表ではなく“具体的にどのPCがどのバージョンで問題か”まで踏み込むと審査でも説明しやすい
3.2. 具体的なリスク例
ランサムウェア侵入: 未更新のWindowsやJavaが攻撃経路
無許可ソフトウェア: 従業員が勝手にフリーソフトを入れ、違法コピーやマルウェアの温床に
バージョン不整合: 開発環境と本番環境でライブラリが違い、動作不具合や脆弱性を生む
3.3. 審査での評価
審査員: “どのようにソフトウェアの管理策を設定し、実行しているか?”を必ずチェック
具体的チェック例: インベントリと現場の実態が合っているか、パッチ適用ログがあるか、ライセンス遵守ルールがあるか
4. ソフトウェア管理の具体例:ステップごとの運用法
4.1. ソフトウェアインベントリ作成と更新
活動内容: 全社で使われているOS・アプリの名前、バージョン、使用部署などを一覧化
方法: Excel管理 or 専用ツール(SCCM、WSUS、MDMなど)で自動収集
他社事例: サービス業D社は週1回IT担当がインベントリを更新→ 未承認ソフトが入っていないかもチェック→ 違反あれば即アンインストール指示
4.2. パッチ適用・更新手順の確立
やり方: 月次or 四半期ごとに定期パッチ実施、緊急脆弱性が出たら特別フローで対応
注意点: いきなり本番環境へ適用すると業務停止リスク→ テスト環境で動作確認してから段階導入
成功事例: IT企業B社はWindows UpdateをWSUSで集中的に管理。未適用端末があればリマインドメールが自動送信→ 95%以上のPCが1週間以内に更新
4.3. ライセンス管理と承認フロー
業務内容: ソフトウェア導入時に申請書を提出→ 担当者承認→ 在庫ライセンスがあれば配布、なければ購入
TIP: 台帳に記録し、ライセンス期限や利用状況を随時更新。使わなくなったライセンスは再割り当て
メリット: 違反を防ぐだけでなく、不要ライセンスを減らしてコスト節約にも
4.4. 変更管理(Change Management)
活動内容: ソフトウェアバージョンアップや新ライブラリ導入時に、影響度を評価→ 計画書を作り社内合意
実務例: 製造業A社は開発部門でテスト後に本番リリース。部署内に“変更管理委員”を置き、トラブル抑制
コンサル視点: 変更管理プロセスがないと“勝手にアップグレードして動作不良→ 業務停止”となり、審査でも指摘を受けがち
5. 効果的な運用術:ISMS初心者が押さえるコツ
5.1. 明確なルールと周知(ガイドライン作成)
文書化: 「いつ、誰が、どの範囲でパッチ適用するか」「新ソフト導入のフローは?」など具体的に記載
現場との対話: 強制力があっても、説明不足だと社員が対策を切るケースも→ 朝礼や勉強会でメリット説明
他社事例: サービス業D社は“パッチDay”を設定し、PCを再起動するようリマインド→ 実際の適用率がぐっと上がった
5.2. ログ管理や定期監査
ログ管理: インストール・アンインストール履歴、パッチ適用ログを自動取得→ 月次・四半期で担当がレビュー
内部監査: インベントリと端末実態が合ってるか、ライセンス数超過してないかなどを点検→ 問題あれば是正
審査成功のコツ: “ログがある→ 分析→ 改善”のPDCAを示すと、外部審査員にも高評価を得やすい
5.3. インシデント発生時の対応・改善
やり方: もし古いOSが原因で攻撃を受けたら、即座にパッチ・バージョンアップなどの再発防止策を導入
報告書: インシデント報告で“なぜ更新されてなかったか?”を分析→ 今後の運用ルール見直し
メリット: 事故対応をきっかけにルール強化→ ISMSの完成度が上がり、審査でも“継続改善”として評価
6. 審査でのポイント:ISMSソフトウェア管理に関するチェック内容
6.1. 文書と実態の整合
審査員: 「このルールに書いてあるパッチ適用スケジュール、実際に守られてますか?」と現場に聞く
失敗例: 台帳上はWin10と記載、実際にはWin8が10台稼働→ “運用と文書の不一致”で不適合
6.2. 運用ログや監視手法
質問例: 「パッチ適用率はどのように測る?」「適用漏れがあったらどう通知される?」
コンサル経験: ある企業は監視ツールのレポートを月1でPDF化→ 審査時に“一目で分かるログ”を提示し高評価
6.3. リスクアセスメントとの関連
ポイント: “どのソフトが古く、どれだけリスクが高いか”をリスク評価で示し、対策優先度を決めているか?
TIP: 経営層にも“脆弱OS放置で被害予測○百万円”と示せば予算取りがスムーズ
7. 他社事例:ソフトウェア管理で成功した企業
7.1. 製造業A社:パッチ管理強化でウイルス被害激減
背景: Windows 7サポート切れ放置でランサムウェア感染→ 工場の一部操業停止
対策: パッチ管理ツール導入、月1回アップデート+緊急時対応フローを設定。週1回にエラーログをチェック
成果: 感染報告が0件に。審査でも“定期適用ログ”を提示し、“管理運用が行き届いている”と評価
7.2. IT企業B社:ライセンス管理ツールでコスト削減
方法: ソフトウェアライセンス在庫をオンライン管理し、不要ライセンスを自動検知して回収
審査: “資産管理がしっかりしており、危険なフリーソフトの混在も防げている”と高評価
効果: ライセンス重複購入が減り、年間数百万円のコストカットに成功
8. 失敗事例と回避策
8.1. 問題ソフトを放置
原因: 定期チェックせず、社員が勝手にインストールしたまま放置→ 脆弱性やライセンス違反が放置
回避策: 月次や四半期で棚卸し・監査を行い、未承認ソフトは迅速に削除や正規ライセンス取得
8.2. 緊急パッチ未適用で大規模被害
原因: 定期サイクルにこだわり、重大脆弱性が公表されても対応を先延ばし
回避策: “緊急時対応フロー”を整備し、影響範囲テスト後即アップデート→ 被害が拡大する前に対処
8.3. 担当者不在でライセンス数が大混乱
原因: 主任が辞めたら誰も管理ツールのパスを知らず、ライセンス更新もできない
回避策: チーム体制とマニュアル共有。引き継ぎ文書の作成と保管を徹底
9. Q&A:ISMSソフトウェア管理に関する疑問
9.1. 「中小企業でも管理ツールは必須?」
回答: 端末数が少なければExcelで十分だが、増えると手作業が限界に。リスクとコストを見合いで判断
9.2. 「古いPCやソフトが多くて更新しきれない…」
回答: リスク優先度が高いものから計画的に更新。経営層へ“被害金額試算”で予算を引き出しやすい
9.3. 「フリーソフト利用はどう管理?」
回答: フリーでもライセンス規定は必ず確認。インベントリに登録し、業務上問題ないか担当者が判断するルールを作る
9.4. 「審査前に急いで棚卸しすればいい?」
回答: 短期間での対応はズレや漏れが起きやすい。日常的に継続管理していないと審査員に見抜かれる
10. まとめ:ISMSにおけるソフトウェア管理とは?具体例と参考例で始めるリスク対策をわかりやすく解説
10.1. 記事の総括:ポイントの再確認
ソフトウェア管理= OSやアプリ、ライセンスを適切に把握・更新することで、脆弱性や違反リスクを下げる
具体的運用ステップ: インベントリ→ パッチ適用(定期&緊急)→ ライセンス管理→ 変更管理→ 監査
運用のコツ: 明確なルール、ログ&棚卸し、緊急時対応、教育・周知が重要
審査との関連: 文書・実態が合致し、リスク評価ともリンクしていれば“しっかり管理されている”と認められやすい
10.2. 次のアクション:初心者がすぐ導入できるステップ
インベントリ開始: 全端末・サーバーのOS・アプリをリスト化
パッチポリシー策定: 月次定期+緊急時特別フローを明文化
ライセンス管理ルール: 導入申請書&台帳作成、不要時のアンインストールプロセス
棚卸し&監査: 定期的に更新し、内部監査で問題を洗い出し改善
あとがき
ISMSにおけるソフトウェア管理は、“OSやアプリケーションを常に安全な状態で保つ”“ライセンスを守る”といった日常の地道な作業がとても大切です。そうした基本的な部分の整備がセキュリティインシデントを予防し、審査時にも「リスクに応じた管理策がしっかり運用されている」と評価されるポイントになります。今回紹介した具体例や運用コツをもとに、インベントリ管理、パッチ適用、ライセンスコントロール、変更管理といったプロセスを自社に合う形で取り入れてみてください。そうすることで、情報漏えいリスクの低下、コスト削減、そしてISMS審査でのスムーズな合格が一挙に実現可能となるでしょう。
この記事の監修者情報
金光壮太 (ISOコンサルタント)
大手商社にて営業を経験した後、ISOコンサルティングに従事。ISO9001、14001、27001を中心に、各業界の課題や特性に応じたシステム構築や運用支援を行い、企業の業務効率化や信頼性向上に貢献。製造業や建設業など、多岐にわたる業界での豊富な経験を活かし、お客様のニーズに応じた柔軟なソリューションの提案を得意としている
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