PMS(プライバシーマーク)とISMS(ISO27001)の違いを徹底解説!導入メリット・取得手順を比較
- 【監修者】金光壮太(ISOトラストのコンサルタント)
- 3月6日
- 読了時間: 14分

▼ 目次
1. はじめに
1.1. 記事の目的と想定読者
本記事では、PMS(プライバシーマーク)とISMS(ISO/IEC 27001)の違いや、導入メリット・取得手順を分かりやすく比較します。
こんな方におすすめ
個人情報保護や情報セキュリティの認証を検討している企業担当者
「PMSとISMS、どっちが自社に合う?」「両方必要?」と疑問に思う初心者
今後のリスク対策や取引先要件への対応で迷っている経営者・管理責任者
読んでいただくと、両規格の特徴や導入メリット、取得難易度の違いが分かり、自社に最適な認証を選ぶヒントが得られます。
1.2. なぜPMSとISMSの違いを理解することが重要なのか
日本国内では、個人情報保護の仕組みとしてPMSが広く普及し、情報資産全体を守る国際基準としてISMSが注目されています。
コンサル経験談: 「PMSだけで十分かと思ったが、顧客からISMSも求められて困った」などの声もよく聞きます。
両方の特長を理解しないと、**取得後に“こんなはずじゃなかった…”**となるリスクがあります。そこで本記事で両者を比較しながら詳しく解説します。
2. PMS(プライバシーマーク)とISMS(ISO27001)の概要
2.1. PMSとは?対象範囲と基本思想(個人情報保護)
プライバシーマーク(Pマーク): 日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)が運営する制度。
主な目的: “個人情報”の取り扱いをきちんと管理し、漏えい事故を防ぐ
対象: 顧客や従業員などの個人情報。BtoC企業や個人情報を大量に扱う事業者が多く取得。
2.2. ISMS(ISO/IEC 27001)とは?対象範囲と基本思想(情報資産の保護)
ISMS: 情報セキュリティマネジメントシステム。国際規格のISO/IEC 27001がベース
主な目的: 企業が持つあらゆる情報資産(顧客データ、設計図、システムなど)を、機密性・完全性・可用性を保ち続ける仕組み
特徴: リスクアセスメントやPDCAサイクルを通じて、継続的にセキュリティ強化
2.3. コンサルタント視点:両者に共通する考え方と大きな違いのポイント
共通点: 個人情報保護や情報漏えい防止に向けた運用ルールと監査がある、管理体制を文書化して継続的に改善する
相違点:
PMSは“個人情報保護”が中心。
ISMSは“情報資産全体”が対象で、ITシステムや業務フローまで幅広く管理。
実務例: 「個人情報がメインならPMS優先」「機密情報全般を守りたいならISMSが最適」というケースも多いです。
3. PMSとISMSの導入メリットを比較
3.1. 対外的信用度アップ:取引先・顧客からの評価
PMS: 「個人情報保護をしっかりしている会社」とアピールでき、BtoC事業や通販、コールセンターなどで効果大
ISMS: 大企業・官公庁などから「セキュリティ認証必須」と言われるケースが増え、競合優位性を得やすい
3.2. リスク管理の強化:個人情報 vs. 情報資産全体
PMS: まさに個人情報漏えいリスクを重点管理
ISMS: 社内ネットワークや営業資料、サプライヤーデータなど、多角的な情報保護が可能
コンサル経験: “個人情報だけでなく、社内機密全般を守りたい” → ISMSで網羅的に対応する方が安心
3.3. 社員意識向上と業務効率化(教育・監査など)
共通: 定期的な研修と内部監査を通じて、社員がセキュリティを“自分ごと”として捉えるようになる
差: PMSは個人情報に特化したトラブル対応意識が高まる。ISMSはIT全般やリスクマネジメント意識が向上
3.4. コスト削減と事故防止:事故発生時の損失回避
事例: 顧客情報漏えいで賠償数千万円…という事故を防ぐだけで投資メリットは大きい
PMS/ISMS: いずれも事故未然防止で大きなリスクを回避できるが、対象範囲が異なる
4. 対象範囲の違い:個人情報中心か、情報資産全体か
4.1. PMSがカバーする個人情報(顧客・従業員など)
対象: 名前、住所、電話番号、メールアドレス、顔写真など、個人を特定できる情報
狙い: これらのデータが漏えいしないようにルールと監査を整備
実務: 個人情報保護法との連携が強い
4.2. ISMSがカバーする情報資産(機密性・完全性・可用性)
例: 設計図、ソースコード、顧客データベース、業務マニュアル、クラウド環境、紙資料など
視点: データの機密性(見られない)、完全性(改ざんされない)、可用性(ダウンしない)を保護する
4.3. 事例比較:顧客データ取り扱いの厳密さ vs. 全社ITインフラや書類管理
PMS: “個人情報保護”のルール整備がメイン。外部委託先との契約、NDAなども厳しく管理
ISMS: ネットワークのファイアウォールから物理セキュリティまで幅広くカバー
5. 主な審査・監査プロセスの違い
5.1. PMS:プライバシーマーク審査の流れ、JIPDECや指定機関の審査
審査機関: JIPDECが指定した民間機関(日本情報処理開発協会など)
フロー: 申請書提出→書類審査→現地審査→判定会→認証
更新: 2年ごとに更新審査。個人情報保護法改正などに応じた対応が必要
5.2. ISMS:ステージ1・ステージ2審査、サーベイランス審査について
ステージ1: 文書中心の審査(ISMS文書が規格要件を満たしているか)
ステージ2: 実地審査(現場との整合性)
サーベイランス: 毎年1回程度、3年目で更新審査
5.3. コンサル経験談:両方同時に進める場合のコツと注意点
ポイント: 共通する文書(ポリシー、内部監査など)はなるべく一本化し、無駄な重複をなくす
注意: 個人情報に特化した項目(PMS)と、総合的リスク管理(ISMS)の違いを把握しておく
6. 取得の難易度と期間:どちらが大変?
6.1. PMSとISMSの導入難易度を左右する要因(企業規模、既存ルールなど)
企業規模: 拠点数や従業員数が増えるほど文書整備や監査対象が多くなる
既存ルール: すでにISO9001など他のISOを運用していれば転用しやすい
コンサル視点: 個人情報保護体制がしっかりしていればPMSは比較的取得しやすいが、ISMSはIT含め広範囲対応が必要
6.2. 期間の目安:小規模企業の場合、中規模以上の場合
PMS: 小規模なら6か月~1年で取得可能。中堅企業だと1年半以上かかる場合も
ISMS: 小規模は半年~1年、中堅以上は1~2年かけて導入するケースが多い
6.3. 短期集中 vs. 段階的アプローチ:成功と失敗の実例
短期集中: 取引先から要求があれば短期プロジェクトで集中的に書類整備→認証
段階的: 最初は重要拠点だけスコープに入れ、徐々に拡大する
失敗例: すべて拠点・部署を一気に対象化→文書管理が追いつかず、再審査費用発生
7. 費用比較:審査費・コンサル費・内部リソースの違い
7.1. 認証機関への費用(PMSの申請料・ISMS審査料の目安)
PMS: 申請料や審査料で数十万~
ISMS: ステージ1・2合計で30万~100万円以上(規模による)
実例: 拠点が多いと審査日数が増え費用UP
7.2. 社内人件費やコンサル費用のボリューム感
自社リソース: 担当者が他業務と兼務なら、書類作成や監査対応に時間を取られ本業が圧迫
コンサル費: 数十万~数百万円。短期導入パッケージなどもあり
コンサル経験: コンサルを使うと一時費用は増えるが、失敗・再審査コストを防げ、トータルで安く済むことが多い
7.3. 補助金・助成制度の活用例(自治体や商工会議所など)
チェック: 地域によっては「情報セキュリティ対策補助金」「IT導入補助金」が対象となる場合も
メリット: コンサル費や審査費の一部補助が期待できる→取得のハードルが下がる
8. 取得手順を比較:導入ステップ・文書整備・監査対応
8.1. PMSの導入フロー:個人情報保護方針、管理体制づくり、台帳管理など
ステップ:
個人情報保護方針策定
個人情報台帳の作成、保護ルール策定
内部監査&修正 → 審査機関へ申請
コンサル補足: 個人情報に集中するため、業務フローの把握や顧客データ管理が重要
8.2. ISMS導入フロー:リスクアセスメント、セキュリティポリシー策定、内部監査など
ステップ:
情報資産棚卸し・リスク評価
セキュリティポリシー・運用規程作成
内部監査・修正 → ステージ1・2審査
ポイント: PMSより範囲が広いため、IT運用やシステム管理のドキュメントが充実しているかが鍵
8.3. 併行取得する場合の文書運用・監査対応の工夫
メリット: 個人情報保護に関する文書はPMS要件+ISMS要件を統合し、重複を減らす
注意: 審査スケジュールの調整が必要。内部監査もどこまで共通化できるか事前に計画
9. どちらを優先すべき?企業規模・ビジネスモデル別の選択ガイド
9.1. 個人情報メイン(BtoC事業)の場合:PMS優先か?
例: 通販、コールセンター、クレジット決済など個人情報が中心
利点: 顧客からの信頼を得やすく、「個人情報保護を徹底している」印象が強い
コンサル視点: 取引先や顧客(消費者)がPMSを重視する業界なら、まずPMS取得が効果的
9.2. 全社的情報保護(IT資産・業務機密)に注力したい場合:ISMS優先か?
例: BtoBビジネス、多くの取引先がISMS取得を条件にしているケース
利点: 顧客データ以外にも製品設計や営業資料など含め幅広いリスク管理ができる
補足: 金融機関や官公庁との取引ではISMSが必須要件になることが多い
9.3. 両方必要になるケース:顧客要件、業界要件、海外取引など
事例: 大手企業からPMS&ISMSの両方を求められるITベンダー
対策: 共通部分をうまく融合し、監査対応も1つの仕組みで回す“統合マネジメントシステム”を構築
10. 【成功事例】PMS・ISMSを導入して効果を高めた企業のストーリー
10.1. IT企業A社:PMS取得で顧客個人情報保護を強化→ 信頼度向上
背景: BtoC向けWebサービスで顧客の個人情報を大量に扱う
結果: PMS取得後「情報保護がしっかりしている」と評判が上がり、競合と差別化に成功
ポイント: 社員教育で個人情報扱いルールを徹底し、ミスが激減
10.2. 製造業B社:ISMS取得で全社的なリスク管理徹底→ 情報漏えいリスク激減
状況: 設計図や製品情報など、海外顧客とのデータやり取りが多い
導入: ISMSのリスクアセスメントを行い、ネットワークや物理セキュリティを強化
成果: 外部監査でも「セキュリティ強化が万全」と評価→新規大型契約獲得
10.3. 両方導入で海外取引を拡大:ITサービスC社の活用実例
事例: 欧米クライアントからISMS必須、国内顧客からPMS必須→両方取得
メリット: 国内外の取引要件を一度にクリア、社内体制がさらに強固に
コンサル実見: 文書や教育を効率化し、内部監査を一本化してコストを抑えた
11. 【失敗事例】形だけの取得で終わってしまった企業の教訓
11.1. 文書整備はしたが運用が追いつかず、監査で不適合続出
現象: 手順書が机上の空論、社員が「そんな規程聞いたことない」と言う
対策: 小まめな社内周知&現場とのすり合わせが不可欠
11.2. 経営者の意識不足で社員が“負担”と感じ、実質的効果なし
原因: 社長が「取ればいいんでしょ?」と形だけ興味 → 予算もサポートも出さない
コンサル提案: 経営トップにリスク金額を提示し、“本気”を示してもらう重要性
11.3. 認証後の維持管理を怠り、更新審査で苦戦したケース
失敗: 「1回取ればOK」と思い、1年後のサーベイランス対策せず→不適合続出
教訓: 認証取得後もPDCAを回し続ける仕組みが必要
12. 社内運用を定着させるコツ:PMS・ISMSいずれも形骸化を防ぐために
12.1. PDCAサイクル:内部監査・レビューの徹底で常に改善
実務: 年間計画を立て、教育、監査、改善報告をこまめに実施
事例: 「四半期ごとのミニ監査」で細かい問題を早期是正
12.2. 社員教育プログラムを計画的に実施、意識向上
推奨: 入社時研修 + 定期研修(年1~2回) + フィッシング演習など
メリット: ルールだけではなく、社員が「なぜ守るか」を理解する
12.3. 外部コンサルやツールの活用で担当者の負担を減らす
解説: 書類整備や内部監査補助など、プロのコンサルを導入 → 担当者の手間が大幅に減り、スムーズな認証取得が可能
例: ISOトラスト等を使い短期間で一気に文書化や教育を進める企業が増えている
13. 専門用語解説:個人情報保護法・リスクアセスメント・サーベイランス審査など
13.1. 個人情報保護法:PMSで特に重要な国内法との連動
解説: 日本国内で個人情報保護を規定する法律。PMSはこの法的要件を満たす形で構築
ポイント: 法改正が頻繁なので、PMS運用企業はアップデート必須
13.2. リスクアセスメント:ISMSでの核となるプロセス
意味: 情報資産の洗い出し、脅威と脆弱性の評価、対策優先度の決定
コンサル経験: ここが曖昧だとISMSが形骸化し、監査で大量の指摘を受ける
13.3. サーベイランス審査:取得後の継続審査の概要
PMS: 2年ごとの更新審査
ISMS: 毎年サーベイランス&3年目に更新審査
注意: 認証取得がゴールではなく、継続維持が本番
14. Q&A:PMSとISMSの違いに関する疑問に答える
14.1. 「両方取るとコストが倍になる?どこで共通化できる?」
答: 完全に倍になるとは限らない。共通の文書管理・内部監査を一本化すればコスト削減可能。
実例: 1回の監査でPMS&ISMSを同時審査する“統合審査”を受ける方法も
14.2. 「個人情報以外も保護したいならやっぱりISMS?」
解説: クレジット情報だけでなく、営業秘密、ソースコードなど幅広く守るならISMSが妥当
事例: BtoB取引や大規模システム開発企業ではISMSの要求が増加
14.3. 「海外取引にはPMSよりISMSのほうが有利?」
答: 海外ではISO27001の認知度が高く、国際的信用を得やすい。PMSは日本国内の認知が中心
注意: GDPR対応など、国際法規制を考えるならISMSが有力
14.4. 「更新や運用維持はどちらが楽?担当者の負担は?」
回答: どちらも定期監査があり、PDCAを回す必要がある。範囲が広いISMSの方が通常は負担大。ただし、仕組みづくり次第で大変さは軽減可能
15. まとめ:PMS(プライバシーマーク)とISMS(ISO27001)の違いを正しく理解し、最適な選択を
15.1. 記事の要点:違い・メリット・導入手順の比較のまとめ
PMS: 個人情報保護に特化、BtoCやコールセンターなどに向いている
ISMS: 情報資産全体を対象、国際規格。BtoB取引や機密情報保護が必要な企業におすすめ
共通: 監査や内部ルール整備が大事で、形骸化を防ぐ運用が必須
15.2. どちらか、あるいは両方導入する判断基準
ポイント: 自社のビジネスモデル、顧客からの要求、海外取引有無などを考慮
検討: すべてカバーしたいなら両方取得もあり。文書や監査をうまく統合することで負担は軽減可能
15.3. 認証取得だけでなく、継続運用でこそ本当の効果が生まれる
注意: 取得後こそ、PDCAを回し続けることが重要。毎年の監査や教育でセキュリティを強化
メッセージ: 自社のリスクを的確に管理しながら、取引先・顧客からの信頼度を大幅に高めるチャンスとなる
16. 参考リンク・関連情報
日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)のPMS情報
ISO/IEC 27001の公式リソース / 認証機関サイト
BSI, LRQA, JQAなどでISMS導入事例紹介あり
コンサル企業事例、自治体・商工会の補助金情報など
各種補助金・助成金でコンサル費用や審査費用が助成される可能性も
おわりに
PMS(プライバシーマーク)とISMS(ISO27001)は、いずれも“情報保護”を目的とした制度ですが、対象範囲や監査方法、得られるメリットが異なります。
PMS: 主に“個人情報保護”が焦点。BtoC業務や個人情報を大量扱う企業に向いている
ISMS: 企業が持つあらゆる“情報資産”を総合的に守る。大規模な取引や海外展開にも有効
自社の業態・顧客ニーズ・リスクレベルを踏まえて、どちらを優先するか、もしくは両方導入するか検討しながら、書類整備や内部監査、継続的な運用を行うことで、信用度アップと事故防止の両面で大きな効果を得られるはずです。
ぜひ本記事の情報を参考に、認証取得のステップや運用のコツを押さえ、企業価値をさらに高めるための取り組みを進めてみてくださいね。
この記事の監修者情報
金光壮太 (ISOコンサルタント)
大手商社にて営業を経験した後、ISOコンサルティングに従事。ISO9001、14001、27001を中心に、各業界の課題や特性に応じたシステム構築や運用支援を行い、企業の業務効率化や信頼性向上に貢献。製造業や建設業など、多岐にわたる業界での豊富な経験を活かし、お客様のニーズに応じた柔軟なソリューションの提案を得意としている。
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