top of page

ISMSにおけるデータマスキングとは?機密情報を安全に保護する手順と成功事例を解説

  • 執筆者の写真: 【監修者】金光壮太(ISOトラストのコンサルタント)
    【監修者】金光壮太(ISOトラストのコンサルタント)
  • 3月18日
  • 読了時間: 14分

ISMSのデータマスキングとは?機密情報を安全に保護する導入手順や成功事例、リスク低減の実務ポイントをわかりやすく詳しく解説し、外部審査対策にも役立ちます。

▼ 目次


ISMSのデータマスキングとは?機密情報を安全に保護する導入手順や成功事例、リスク低減の実務ポイントをわかりやすく詳しく解説し、外部審査対策にも役立ちます。

1. はじめに

1.1. 記事の目的と想定読者

本記事では、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)を導入・運用する上で、機密情報を守るための方法として注目されるデータマスキングについて解説します。

  • 想定読者

    1. ISMS導入を検討・運用中で、データ保護策を強化したい企業担当者

    2. 個人情報や機密データをテスト・開発環境で扱う際のセキュリティに悩む管理者

    3. ISMS外部審査で“機密情報の管理策”を強化したいと考える方

1.2. なぜISMSにおいてデータマスキングが重要なのか?

  • ISMSの目的は情報資産の機密性・完全性・可用性を確保すること。

  • 機密情報(個人情報や重要データ)を扱う際、マスキングを行うと、テスト・開発環境などでも実データをそのまま使わずに済むため、漏えいや不正アクセスリスクを大きく減らせます。

  • コンサル視点: 過去の事例を見ると、本番データをそのままテスト環境で流用→ 開発メンバーや外部委託先がデータを閲覧できる→ 情報漏えい事故、という流れは珍しくありません。データマスキングはこうした事故を防ぐ重要策です。

1.3. 本記事で得られるメリット(保護手順・成功事例・リスク対策 など)

  1. データマスキングの基礎とISMSとの関連がわかる

  2. 導入手順具体的ツール選定実装時の注意点を把握できる

  3. 他社の成功事例から導入後の運用イメージがつかめる

  4. 外部審査や内部監査で有効な管理策として活用し、セキュリティ評価を高められる



2. データマスキングとは?ISMS視点での基本概念

2.1. データマスキングの定義:本来のデータを見えなくする仕組み

  • データマスキング: 実際のデータの一部または全体を、仮の値やマスク文字(例:XXXX)に置き換え、本来の情報が見えないようにする技術。

  • : 氏名「山田太郎」→ 「山田○○」やカード番号「1234-5678-xxxx-xxxx」のようにマスキングしておく。

2.2. ISO27001での関連項目(附属書Aとの関係)

  • 附属書Aには、機密データ管理に関する多くの管理策が含まれる。

  • 例えば、**A.8(資産管理)A.10(暗号化)**などと連動し、機密情報を保護する一つの手段としてマスキングが挙げられることが多い。

2.3. コンサル視点:なぜ機密情報にデータマスキングが有効か

  • メリット: 開発やテスト環境などで、本番データを利用しなくてもシステムが動作検証できる→ 個人情報を実際に扱うよりも安全

  • 事例: 個人情報やクレジットカード情報をマスキングした例では、外部委託の開発者が本番相当のデータでテスト可能となり、利便性とセキュリティを両立



3. データマスキングが有効な機密情報の例

3.1. 個人情報(氏名、住所、電話番号、クレジットカード番号)

  • 最も多い用途: 氏名や口座番号など、漏えいすると被害が大きいデータを保護

  • 金融業界: マスキングを実施しないと、クレジットカード番号が開発スタッフに見られるリスクが高い

3.2. 機密設計図・製品情報・顧客リスト

  • 製造業: 新製品の設計情報が外部に漏れると、模倣や競合優位につながる

  • 顧客リスト: 取引先情報や営業ノウハウが社外流出すれば、企業の信用が大きく損なわれる

3.3. 人事・給与情報など内部管理データ

  • 内部情報: 社員の給与や査定情報など、外部だけでなく内部での閲覧権限を制限すべきデータにもマスキングが有効

  • コンサル経験: 人事システムの開発で実データをテスト環境に入れてしまい、派遣スタッフが閲覧→ 情報漏えい事故になった例がある

3.4. 他社事例:中小企業でも導入が進む背景

  • 背景: 顧客から「個人情報を安全に管理してほしい」と強く要望されるため、コストは小さくないが導入を検討する企業が増加

  • 効果: 「しっかりデータ保護している会社」という印象が営業面でもプラスに働き、取引先の信用度アップにつながる



4. データマスキングの主な手法と特徴

4.1. トークナイゼーション(トークン化)

  • 仕組み: 本来のデータを“トークン”と呼ばれる置き換え文字列に変換し、キーを持っている限りでしか元データを復元できない

  • : クレジットカード番号をトークンに置き換え、実際の番号を直接保管しない

  • メリット: 復号時には専用のトークンサーバーが必要、漏えいリスク大幅減

4.2. 置換方式(一部をマスク文字に変換)

  • 方式: 氏名や番号の一部を「」や「X」で置き換える→ 「山田○○」「1234-xxxx-xxxx-***」など

  • メリット: 実装が簡単。運用コストも低め

  • デメリット: 復元できる形かどうか、要検討(完全置換なら復元不可)

4.3. 暗号化方式との違い・併用メリット

  • 暗号化: 元データを暗号鍵で保護→ 鍵を持っていれば復号可能

  • マスキング: 一定のルールでデータを不可視化→ 簡易的・運用しやすいが、暗号化ほど高い保護レベルでない場合も

  • 併用: 特にクリティカルな情報は暗号化+テスト環境用はマスキング、と使い分ける企業多し

4.4. コンサル経験:業種・システム規模に合わせた手法選定のポイント

  • : 大手金融機関はトークナイゼーションが多い。中小の開発プロジェクトなら部分置換で実装しやすい

  • 考慮: 運用担当者のスキル、システム影響、コストバランスを総合的に判断


ISMSのデータマスキングとは?機密情報を安全に保護する導入手順や成功事例、リスク低減の実務ポイントをわかりやすく詳しく解説し、外部審査対策にも役立ちます。


5. データマスキングの導入手順:ISMS運用にどう組み込むか

5.1. 現状分析(扱う機密データの特定とリスク評価)

  • 手順: どのデータが“重要”か、どこに保管・流通しているかを洗い出し、リスク評価表にまとめる

  • コンサル視点: 「どの情報をどの環境で誰が利用するか?」の棚卸しで8割の企業が漏れを発見

5.2. マスキング方針の策定(どのデータをどんな方法でマスクするか)

  • : 「顧客名・電話番号は置換方式、クレジットカード番号はトークナイゼーションで管理」など

  • ポイント: 実運用を想定し、データをどこまでマスクするか設定。テストで実データがどれほど必要か要検討

5.3. ツール選定・環境構築(自社開発or市販ソリューション)

  • 自社開発: フレキシブルにカスタマイズできるが、エンジニアコストが高い

  • 市販ソリューション: サポート充実・導入が早いが、ライセンス費用の検討と要件合致に注意

5.4. テスト導入・検証プロセス(パフォーマンス、運用負荷の評価)

  • 具体例: テスト環境でマスキングを実装→ 大量データ処理時の速度を計測→ 問題あれば手法再検討

  • コンサル経験: 大規模DBだとマスキング処理が重くなる→ 最適化が必須

5.5. 本番運用と定期的な見直し(内部監査・外部審査連動)

  • 本番移行: テストで問題なければ切り替え。周知徹底も重要

  • 見直し: 定期的に内部監査でマスキングルールが守られているか確認→ 不備や改善点を継続的に更新



6. 実際の運用で気をつけたい注意点

6.1. 残存リスク:マスク後でも復元可能な形になっていないか?

  • : 文字の一部だけ置き換え→ パターン推測で復元される可能性

  • 対策: 復元困難なように十分な置換を行う or 安全に管理されたトークンサーバーで管理

6.2. ログ保管・バックアップの整合性(マスク前データはどこに残る?)

  • 問題: 本番DBをマスクしても、バックアップやログに実データが残っているケース

  • 解決: ログ・バックアップにも適用するか、暗号化など別管理策を導入

6.3. 変更管理:データ項目やフォーマットが変わった場合の対応

  • 事例: 住所欄に番地や建物名が追加→ 既存のマスクルールでは対応できずエラー発生

  • 対策: 開発や改修時にマスク設定を同時更新し、テストを行うプロセスを確立

6.4. 他社事例:マスク実装後に生じたエラーを短期間で解決した企業

  • 製造業A社: マスク処理が厳しすぎて、テスト時に顧客識別不可→ 再設定&簡易マスク導入で数日で回復



7. メリット・デメリット:データマスキング導入の効果と課題

7.1. メリット:開発・テスト環境での安全なデータ活用、リークリスク減少

  • 解説: 開発チームや外部委託先も“実データに近い形”でテストでき、データ漏えいリスクを極力下げられる

  • コンサル談: 外部審査でも「テスト環境はマスキング済データのみ使用」と言えると高評価

7.2. デメリット:パフォーマンスへの影響、導入コスト・運用負荷

  • パフォーマンス: 大量データをマスクする処理が重くなる場合→ サーバースペックや並列処理を検討

  • 導入コスト: 専用ツールや開発費、社員教育などトータル費用がかかる

7.3. コスト対効果をどう評価し、経営層を説得するか

  • 手法: 情報漏えいが起きた場合の賠償やブランド毀損コストと比較し、マスキング導入が安い投資であると示す

  • 事例: 金融業での漏えい事件は数億円の損害→ マスキング導入費用は数百万円で済み、導入を決定



8. 成功事例:機密情報を安全に保護した企業の具体例

8.1. 製造業A社:顧客情報をトークナイゼーション化し、漏えい事故ゼロに

  • 背景: 海外委託先との共同開発で、設計図や顧客情報共有リスクが高い

  • 対応: 顧客情報はトークナイゼーションを採用→ 委託先はトークンしか扱えず、中身は分からない

  • 結果: 過去にあった漏えいトラブルがゼロに。外部審査でも高評価

8.2. IT企業B社:開発・テスト環境で実データを使わずに品質維持&セキュリティ向上

  • 方法: テスト環境用に置換方式でデータをマスク→ フローや量は本番と同じ、内容は虚偽値

  • 効果: 開発者が顧客情報に触れない→ 不正閲覧やSNS流出などリスク激減

8.3. サービス業C社:クレジットカード情報をマスキングし、不正アクセス被害を最小化

  • 事例: カード番号を部分マスク、課金処理は決済代行会社に委託→ 自社DBには実番号を持たない

  • 成果: 不正アクセスがあったものの、カード情報はすべて“×××”になっており、漏えい被害なし



9. データマスキングとISMS外部審査の関連

9.1. 外部審査員がチェックするポイント:管理策適用宣言書への記載

  • 宣言書: 附属書Aのどの管理策でデータ保護を行っているか明確にする→ マスキングを活用している場合はその理由や範囲も記載

  • 審査員: 「具体的にどの手法を採用?」「運用ルールは文書化されている?」などを確認

9.2. マネジメントレビューへの報告(導入効果・リスク低減など)

  • レビュー: 経営層に対し、導入後のインシデント減少や運用コスト報告→ 次年度の予算や体制にも影響

  • 成功例: データマスキングで“ほぼ事故ゼロ”を達成し、レビューで“さらに他システムへ拡大”が決定

9.3. 審査時に「なぜマスキングを採用したのか?」と問われた回答例

  • 想定回答: 「テスト環境で個人情報を扱わなくても機能検証ができるため。顧客情報漏えいリスクが大幅に減る」

  • コンサル視点: “コストとリスクを比較し、マスキングが最適と判断”という合理的説明が重要


ISMSのデータマスキングとは?機密情報を安全に保護する導入手順や成功事例、リスク低減の実務ポイントをわかりやすく詳しく解説し、外部審査対策にも役立ちます。


10. ツール選定のコツ:市販ソリューション・自社開発どちらがいい?

10.1. 市販ソリューションのメリット・デメリット(サポート、導入費用 など)

  • メリット: 専門的サポート、最新の脆弱性対策がアップデートされる、導入が早い

  • デメリット: ライセンス費用やベンダーロックインなど検討が必要

10.2. 自社開発する場合の注意点(技術リソース、運用保守体制)

  • 技術リソース: SEのスキルが不可欠。保守担当が辞めるとノウハウ消失リスク

  • 運用保守: 不具合修正や機能追加も社内で対応するコストが高い

10.3. 失敗例:要件定義が曖昧で、ツール導入後に想定外の不具合続出→ 不満足に終わったケース

  • 背景: マスキング対象の範囲が広がるたびに新たなバグが出る

  • 解決策: 事前にどのデータをどの程度マスクするか、詳細な要件定義&PoC(概念実証)で確認



11. よくある疑問・悩みを解決

11.1. 「暗号化とマスキングは何が違う?併用すべきか?」

  • 回答: 暗号化は鍵を持つ人が復号可、マスキングは元データを意図的に見えない形に変換→ 無復号でもOK

  • 併用: 機密度が高い部分を暗号化、テスト用にマスキング、という組み合わせが多い

11.2. 「部分マスクだと情報が再現可能?どの程度隠すのがベスト?」

  • 回答: 完全マスクだと実データとの照合が難しいが、部分マスクだと復元リスクあり。リスクレベルと運用目的でバランス調整

  • : 氏名なら苗字だけ残す、カード番号なら後ろ4桁を残すなど

11.3. 「クレジットカード情報などPCI DSSとの違いは?」

  • 回答: PCI DSSはクレジットカード業界のセキュリティ基準。データマスキングはひとつの施策として利用できる

  • 注意: PCI DSS要件は暗号化やトークナイゼーションを推奨→ ISMSの中でもさらに厳格なルールが必要な場合も

11.4. 「海外拠点・クラウド環境でも適用できる?」(GDPRや各国法令との関連)

  • 回答: はい、クラウドや海外拠点でもマスキング手法は有効。GDPRなど海外法令でも“個人情報保護”が求められる

  • ポイント: データがどの国に保管されているか把握し、マスキングサーバーの位置や運用権限も確認



12. データマスキング導入を成功させるための実務ポイント

12.1. リスク評価で対象データを厳選し、過度なマスクを避ける

  • 理由: すべてをマスクすると業務効率ダウン→ 必要性やリスク度合いを考慮し、優先順位をつける

  • 実例: 人事データはフルマスク、顧客氏名は苗字のみ表示、など細かな設定

12.2. 社員教育とルール徹底(開発テスト環境で誤操作を防ぐ)

  • 教育: 社員が「なぜマスキングするのか」を理解→ 安易に実データをコピーしない

  • ルール: テストDBへのデータ投入やダンプファイルの扱い方法を文書化

12.3. 定期的な検証&ログ監査でマスキングが正常に行われているか確認

  • 検証: マスキングが外れている箇所がないか?

  • ログ監査: 誰がどのデータをいつマスク解除したかなどの操作履歴を残す

12.4. 小さく始めて徐々に範囲を拡大するアプローチ

  • 利点: 全社的に一気に導入すると混乱が大きい→ まずは1部門や1システムで導入→ 成果を見つつ拡大

  • 事例: コンサル実務でも、テスト環境のうち1サブシステムから導入→ 1~2年かけて全環境へ拡張がスムーズ



13. まとめ:ISMSにおけるデータマスキングとは?機密情報を安全に保護する手順と成功事例を解説

13.1. 記事の総括:マスキング導入がセキュリティと開発効率を両立

  • ポイント: 本番レベルのデータを安全に扱える→ 開発・テストの利便性と情報漏えい防止を実現

  • ISMSの視点からも、管理策を強化する有力な方法

13.2. まずは自社の情報資産を把握し、必要部分だけマスキングからスタート

  • 行動: どのデータをどの程度守るか?リスクアセスメントで明確化→ 適切なマスキング手法を選ぶ

  • 効果: 過度なコストや運用負荷を避け、最適なセキュリティレベルを確保

13.3. 最後のメッセージ:実践的なデータマスキングでISMS運用をさらに強固に

  • 結論: データマスキングは単なる技術導入でなく、ルール整備・教育・監査を含む総合的な管理

  • 外部審査でも「データ保護策がしっかりしている」と高く評価され、企業の信頼度が高まる

おわりに

ISMSを運用する上で、データマスキングは機密情報を安全に活用できる強力な手段です。

  • 本番データを使わなくてもテストや分析ができ、かつ情報漏えいリスクを大幅に下げるメリットは大きい。

  • しかし、どの情報をどんな形でマスキングするかは、企業の業務フローやリスクアセスメントにより異なります。

  • 本記事を参考に、まずは小規模な範囲から導入・検証し、結果を踏まえて徐々に拡大するアプローチをおすすめします。結果として、ISMSの外部審査や顧客からの信頼も一段と高まることでしょう。

ISMSのデータマスキングとは?機密情報を安全に保護する導入手順や成功事例、リスク低減の実務ポイントをわかりやすく詳しく解説し、外部審査対策にも役立ちます。

この記事の監修者情報

金光壮太 (ISOコンサルタント)

大手商社にて営業を経験した後、ISOコンサルティングに従事。ISO9001、14001、27001を中心に、各業界の課題や特性に応じたシステム構築や運用支援を行い、企業の業務効率化や信頼性向上に貢献。製造業や建設業など、多岐にわたる業界での豊富な経験を活かし、お客様のニーズに応じた柔軟なソリューションの提案を得意としている

Comments


Commenting on this post isn't available anymore. Contact the site owner for more info.
もっと効果的な集客施策してみませんか?
ISO取得の情報を定期的に受け取りたい方
メールマガジンに登録する(準備中)

取材・メディア掲載に関するお問い合わせは、こちらからお問い合わせください。

bottom of page