【初心者向け】ISMSを自社だけで取得する方法:必要な準備・リスク・成功事例を詳しく紹介
- 【監修者】金光壮太(ISOトラストのコンサルタント)
- 3月19日
- 読了時間: 14分

▼ 目次
1. はじめに
1.1. 記事の目的と想定読者
本記事では、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)を導入・運用して認証取得を目指す際、「自社だけで本当に取得できるの?」と疑問を持つ企業担当者に向けて、必要な準備やリスク、成功事例、そしてコンサル活用を含む選択肢を初心者でもわかる形で解説します。
想定読者
ISMS導入を検討中で、コンサル無しでどこまでできるか悩む管理職や担当者
すでにISMS導入に着手しているが、書類整備や審査準備で行き詰まりを感じている方
コンサルに頼る費用対効果と、自社内で蓄積したいノウハウのバランスを検討している企業
1.2. なぜISMS認証を「自社だけ」で取得しようと考えるのか?
コスト意識: コンサルに外注すると費用がかかるため、できるだけ社内リソースで対応したい
ノウハウ蓄積: 外部に任せず、自分たちで規格を理解し運用ノウハウを身に付けたい
時間の柔軟性: 自社ペースで進めたいので、コンサルのスケジュールに左右されたくない
1.3. 本記事で得られるメリット(必要な準備・リスク・成功事例 など)
ISMS認証の全体像や「自力で取得する場合の流れ」がわかる
必要書類やリスクアセスメントなど、初心者がつまずきやすいポイントの対策を知る
成功事例・失敗事例を通じて自力導入のメリット・デメリットを把握できる
コンサル活用がどのように手間を省き、リスクを下げられるか知り、最適な選択ができる
2. ISMSを自力で取得する場合の全体像
2.1. ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)の概要
ISMS: ISO27001規格に基づき、情報資産を守るための仕組みを整え、継続的に改善する仕組み
PDCAサイクルを回すことが基本で、リスクアセスメントやセキュリティポリシーなど文書整備が必須
2.2. 自社内で完結させる際に押さえておくべき要点(規格理解・体制構築)
規格理解: ISO27001の要求事項(0~10章)と附属書Aの管理策を正確に把握
体制構築: 管理責任者や各部署の代表者を巻き込み、推進チームを作る
コンサル談: 「規格書が分厚くて難解」という声が多く、ここで挫折する企業も。初心者向けセミナーや解説本を活用すると理解しやすい
2.3. コンサルなしでの取得を目指す企業が増える背景と理由
背景: 中小企業でもセキュリティ認証を求められる取引先が増え、急ぎ導入する企業が多い
コスト面: コンサル依頼は数十~数百万円の費用がかかる場合がある→ できれば社内だけで進めたい
注意: 独力だと労力・時間がかかりすぎるリスクがある
3. 準備段階:規格理解・体制づくり・現状分析
3.1. 規格理解:ISO27001の要求事項や附属書Aについて
規格文書: ISO27001のメイン本文(条文)と、リスク対策がリスト化された附属書Aが核となる
初心者向け: まずは各条文の要点をまとめたガイドや解説書を読む→ 全体像をつかむ
3.2. 推進体制構築:プロジェクトリーダーや各部門代表の選定
方法: 経営層の承認を得て、情報システム部門+総務+人事+現場リーダーなど横断チームを編成
コンサル経験: チームリーダー(管理責任者)が力を発揮しないと、途中で煮詰まるケースが多い
3.3. 現状分析とギャップ確認(既存文書、セキュリティ対策、リスク評価 など)
手順: 現在の社内ルール(セキュリティポリシーや運用マニュアル)とISO27001要求を照合→ 不足項目をリストアップ
活用: ギャップ分析ツールやエクセル表で「要求事項 vs 現状整備度」を見える化
3.4. 他社事例:準備段階を軽視し、後に多大な手戻りが発生したケース
例: 製造業A社が書類整備を後回し→ ステージ1審査直前に膨大な文書作成が必要になり、3か月以上のスケジュール遅延
4. 必要書類・文書整備:自力で作成する際の流れと注意点
4.1. ISMS文書群(情報セキュリティ方針、リスクアセスメント記録、適用宣言書など)
必須文書例:
「情報セキュリティ方針」: 経営者の意志表明
「リスク評価表」: どの資産がどんな脅威に晒されているか
「適用宣言書」: 附属書Aの管理策を自社がどう適用するか一覧化
ポイント: どれも審査員が必ずチェックする主要書類
4.2. 書類テンプレート活用のメリット・リスク(汎用テンプレの落とし穴)
メリット: 雛形があれば書きやすく、整合性を保ちやすい
リスク: 自社の実態に合わない内容をコピペ→ 審査で「運用されていない」と指摘される
4.3. 成功例:小規模企業が独自で整備し、ステージ1審査をスムーズに突破した事例
事例: ITベンチャーB社がネットからダウンロードしたテンプレをベースに自社用に大幅カスタマイズ→ 1か月で主要文書を整備し、文書審査も1発合格
4.4. コンサル視点:作成工数の膨大さを軽減する方法
アドバイス: 必要最低限の文書からスタートして後で拡充、既存の業務マニュアルなどを再利用
コンサル導入: 実務経験豊富なコンサルが“抜けや漏れ”をすぐ指摘→ 作業量が大幅に減る
5. リスクアセスメントと管理策の選定:ここが最大の難関?
5.1. リスクアセスメントの基本手順(情報資産の洗い出し→ 脅威・脆弱性→ リスク評価)
フロー: 資産を列挙→ 脅威(火災・不正アクセスなど)×脆弱性(パスワード設定不備など)→ 影響度と発生確率を掛け合わせてリスクレベルを算定
初心者ポイント: スコア化・優先度設定が曖昧になると審査時に「理由が弱い」と指摘されやすい
5.2. 附属書Aの管理策をどう適用・非適用にするか
適用宣言書: 114の管理策(ISO27001:2013版の場合)や2022年版附属書Aの新構成など、どれを使うかを整理→ 理由を明記
例: 「物理アクセス制限を強化する」「暗号化は重要データだけ」など、自社リスクに合った対策を選ぶ
5.3. 自力で取り組む際のミス例(リスク評価が形骸化、適用宣言書の不備など)
典型: 「全部適用」としたが実際には実装されていない→ 外部審査で重大不適合
原因: 内部だけで仕上げると客観的チェックが不足しがち
5.4. 他社事例:コンサル活用でリスク評価を短期完了→ 合格率アップ
事例: 製造業C社が自力でリスク表を作るも混乱→ コンサル導入し、2週間で書類完成→ ステージ1で好評価
6. 運用フェーズ:社内教育・内部監査・マネジメントレビュー
6.1. 社員教育の実施方法(eラーニング、集合研修、周知文書 など)
実務例: オンライン講座を定期配信、メールでセキュリティ意識を高める、集合研修でクイズ形式
メリット: 社員が「なぜやるのか」を理解しないと、形だけになってしまう→ 定期的に学習機会を設ける
6.2. 自社内での内部監査:初心者が陥りがちな誤りと対処策
誤り: 「監査リストが曖昧」「形だけの監査で指摘がない」→ 外部審査で大きく不適合が出る
対処: 内部監査員を外部研修やIRCA認定コースで教育、監査チェックリストを整備し、厳しめに点検
6.3. マネジメントレビュー:経営層のコミットメントを得るコツ
ポイント: インシデント報告やリスク評価の結果を経営トップに示し、リソース配分や方針を確認
コンサル経験: 経営層が真剣に参加しないと、部署間連携が弱くなり、導入が進まない
6.4. コンサル視点:独力運用で社内理解を得る難しさと説得ポイント
経験談: 内部スタッフだけでやろうとすると「普段の仕事もあるのに大変」という反発が出やすい→ 経営者がしっかり後押しを
アドバイス: コンサルが入ると「外部の専門家が言うなら仕方ない」と社内協力が得やすい場合も多い
7. 審査対策:ステージ1・ステージ2審査を自社で乗り切る
7.1. ステージ1(文書審査):想定質問と事前準備
文書審査: ISMS文書(ポリシー、リスク評価、適用宣言書)を審査員がチェック→ 形だけでなく内容の整合性や運用方法を問われる
想定質問: 「なぜこの管理策を選んだ?」「リスク評価の理由は?」など。答えに詰まると不適合リスク大
7.2. ステージ2(実地審査):運用証拠の提示、社員への周知状況確認
実地審査: 審査員が現場社員に直接質問。「ルールはどこで見られる?」「実際どうやってパスワード管理している?」など
対策: 社員教育を徹底し、必要な文書やログをすぐに示せるよう準備
7.3. 不適合指摘に対する是正方法(期限内の再提出・証拠補完)
例: 重大不適合→ 再審査が必要、追加費用と時間がかかる。軽微不適合→ 是正報告書で修正内容を提出
コンサル談: 不適合の修正にはノウハウが必要で、自力だと時間がかかりがち
7.4. 成功事例:独力で取得した企業の努力ポイントと苦労談
事例: サービス業D社が1年かけて独力導入→ 文書作成と社内教育に大量の工数がかかったが、認証後は自社ノウハウが蓄積し運用コストが下がった
8. 自社だけでの取得が難しい理由・リスク
8.1. 規格内容が広範囲で専門知識が必要(リスク評価、暗号化、物理セキュリティ など)
解説: ISO27001はITだけでなく組織全体のセキュリティを網羅→ 法令や人事面も多い
例: 物理セキュリティ(サーバールーム施錠)、人事管理(退職者の権限剥奪手順)などにも対策が必要
8.2. 書類作成・文書管理の工数が大きい(本業に支障が出る可能性)
実務: ポリシー、手順書、リスクアセスメント、教育記録など、多種多様な文書が必要
事例: 中小企業E社で担当者が1人しかおらず、業務の片手間では到底進まず、認証取得が2年も遅れた
8.3. 外部審査員への説明や不適合対応に時間を取られ、スケジュール遅延
状況: 審査で指摘された不備を修正するたび、追加文書を作る→ 再審査が必要
コンサル視点: こうした不確定要素で期限が大幅に伸び、コスト削減どころか逆に時間とお金がかかる例も多い
8.4. コンサル視点:特に中小企業が人員不足で挫折しやすい点
理由: ISMS導入担当が他業務も抱えている→ 専任のセキュリティ担当がいない→ 書類作りや審査対応が後回しになり、認証が進まない
9. コンサル活用のメリット:自社内完結との比較
9.1. コンサル企業が提供するサポート内容(文書テンプレ、リスク評価支援、内部監査代行 など)
具体例: 全文書のテンプレート準備、リスクアセスメント手法のレクチャー、ステージ1・2審査対策や模擬監査など
メリット: 経験豊富な専門家が要点を押さえ、効率よく不足項目を補完→ 時短&品質向上
9.2. 短期導入・不適合ゼロを目指す際のコンサルの強み
コンサル視点: 独力だと1~2年かかるケースが多いが、コンサル導入で半年~1年以内のスピード取得が可能
事例: あるIT企業F社は、コンサルを活用して短期で文書作成を完了し、審査も1回で合格
9.3. 成功事例:コンサル導入で1年以内にスムーズに認証取得→ 社内リソースを最小限に抑えたケース
事例: 製造業G社、専任スタッフ2名のみ→ コンサルが全体マネジメントと教育を支援→ 現場の工数を最小化し、1年で合格
効果: 社員は通常業務を続けながら必要部分だけ対応
9.4. コスト面の比較(自力 vs コンサル依頼)とROI(投資効果)
解説: コンサル費用は数十~数百万円だが、失敗や時間ロスを考慮するとトータルでコストパフォーマンスが良い場合も多い
ROI: 早期認証取得により取引先からの信頼アップ、ビジネス獲得→ 投資効果が出やすい
10. 注意点:コンサルに丸投げしないために
10.1. 組織の実態を理解するのは自社社員:コンサルは補助役
理解: コンサルは規格や審査ノウハウに強いが、社内業務フローや実態までは理解しきれない
ポイント: 自社が主体となり、コンサルを“サポーター”として活用するのが最も効果的
10.2. コンサル依存によるノウハウ蓄積不足を防ぐ方法
例: 社内担当者がコンサルと一緒に文書整備を行い、運用ノウハウを吸収→ 再審査や更新審査に備える
コンサル談: 完全丸投げでは、導入後にメンテナンスができず“形骸化”する危険
10.3. 他社事例:コンサル依存しすぎて運用が続かない→ 再審査で苦労した企業
事例: サービス業H社がコンサルにほぼ丸投げ→ 合格はできたが、担当者が何をどう管理すればいいか不明→ 更新審査時に不適合連発
11. 成功事例:自社だけでは難しかったがコンサル活用で乗り越えた企業
11.1. IT企業A社:初期準備を独力で行うも、審査対策でコンサル導入→ 合格率向上
流れ: 基礎文書は社員が作成→ 外部審査直前に不安を感じコンサルに点検依頼→ 文章の不整合を迅速修正→ 不適合ゼロで通過
効果: 社内に一定のノウハウが蓄積しつつ、最終仕上げはコンサルがサポート
11.2. 製造業B社:文書作成・リスク評価をコンサルのテンプレ活用→ 半年でステージ2合格
経緯: 社内リソースが限られ、全て手作業は厳しい→ コンサルが提供するテンプレと研修を導入→ スケジュールどおり6か月で本審査合格
成果: 内部監査やマネジメントレビューのやり方もコンサルから学び、運用定着
11.3. サービス業C社:内部監査とマネジメントレビューをコンサルが支援→ 実務負担を大幅減
例: 自社で基本構築したISMSに、内部監査だけコンサルが参加→ 社員は報告書作りや是正策の実行を中心に実施
結果: 合格後も継続的にコンサルに疑問点を相談し、更新審査もスムーズに
12. Q&A:ISMSを自社だけで取得する際の疑問
12.1. 「どれくらいの期間・コストがかかる?」
回答: 規模や文書量によるが、小規模企業でも1年近くかかるケースあり。コンサル費用は数十~数百万円が相場だが、自力でも人件費や機会損失が発生
12.2. 「専門用語や規格書が難しい…どこで学べばいい?」
回答: ISO27001公式解説書や認証機関のセミナー、各種コンサル企業の無料Webinarなどを活用
TIP: 規格書を最初から最後まで読むより、概要から入ると理解が早い
12.3. 「審査後の更新・サーベイランス対応も自社だけで大丈夫?」
回答: 年1回のサーベイランス、3年ごとの更新審査がある。最初の導入だけでなく、運用を継続しないと認証失効の可能性
コンサル視点: 自力でも可能だが、運用ノウハウを維持し続けるには担当者の交代などに注意
12.4. 「何人くらいの体制が必要?」
回答: 最低でも管理責任者+各部署の代表(IT、総務、営業など)でチームを作ることが多い。小規模でも2~3人は必要
理由: 書類整備や内部監査、リスク評価などの作業が膨大なため、1人では時間が足りない
13. まとめ:【初心者向け】ISMSを自社だけで取得する方法:必要な準備・リスク・成功事例を詳しく紹介
13.1. 記事の総括:自力取得の手順と注意点、コンサル活用メリット
ポイント: 自力でも理解しながら進めれば企業のノウハウになるが、工数と専門知識が必要→ スケジュール遅延や不適合リスクも高め
コンサル: 費用はかかるものの、効率的に不足を補い合格率を上げられる
13.2. まずは規格理解と社内体制づくりから始め、無理ならコンサルを検討
行動: 全社的にISMSが何かを理解させ、プロジェクトチームを結成→ ギャップ分析→ 書類や運用ルールの整備
コンサルがサポート: 一定段階まで自力で進め、詰まったらコンサル導入という選択も有効
13.3. 最後のメッセージ:負担を最小化し、確実に成果を上げるには柔軟な選択を
結論: 自社だけでやるかコンサルと組むかは、企業の人員体制・スケジュール・予算に合わせて柔軟に検討
成果: ISMS認証取得は一度で終わりではなく継続運用→ その先の更新審査や運用を見据え、最適な方法を選びましょう
おわりに
ISMSの認証取得を目指す企業にとって、「自社だけでできるのか」「コンサルは必須なのか」は大きなテーマです。
自社だけで取り組むメリットは、ノウハウが社内に積み上がることや費用を節約できる点ですが、導入には時間と労力が必要で、手戻りリスクや不適合が出た場合の再審査対応など想定以上のコストがかかることもあります。
一方、コンサル活用では費用は増えるものの、短期間で合格率を上げるノウハウを得られ、社内の負担も軽減可能です。
企業の状況やリソースに合わせ、自社だけで進めるか、部分的にコンサルを使うかを柔軟に選び、リスクを最小化しながら確実にISMSを取得していただければ幸いです。
この記事の監修者情報
金光壮太 (ISOコンサルタント)
大手商社にて営業を経験した後、ISOコンサルティングに従事。ISO9001、14001、27001を中心に、各業界の課題や特性に応じたシステム構築や運用支援を行い、企業の業務効率化や信頼性向上に貢献。製造業や建設業など、多岐にわたる業界での豊富な経験を活かし、お客様のニーズに応じた柔軟なソリューションの提案を得意としている
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