ISMSの機密性とは?初心者向けにわかりやすく解説!リスク低減のカギと運用ポイントを紹介
- 【監修者】金光壮太(ISOトラストのコンサルタント)
- 3月20日
- 読了時間: 12分

▼ 目次
1. はじめに
1.1. 記事の目的と想定読者
本記事の目的は、**ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)**を導入・運用するうえで重要となる「機密性」について、初心者の方でも理解しやすいように解説することです。
想定読者:
これからISMS認証を取得しようと準備している企業の担当者
すでにISMSを運用中だが、機密情報をどのように守ればいいか悩んでいる管理職
外部審査で「機密性」についての指摘を受け、不安を抱えている情報システム担当
1.2. なぜISMSで機密性が重要なのか?
ISMSは情報資産を守るための国際規格で、機密性・完全性・可用性の「CIAトライアングル」が基本となります。その中でも「機密性」は、情報を正当な権限を持たない人に見られたり盗まれたりしないようにするための要です。
プロの視点: 私がコンサルで見てきた中でも、「機密性の不足」が原因で情報漏えいが起きるケースがとても多いです。取引先の設計情報や顧客データが社外へ漏えいすれば、莫大な賠償金や信頼低下に繋がります。
1.3. 本記事で得られるメリット(機密性の定義、リスク低減策、運用ポイント など)
機密性の意味を正しく理解し、ISMSの観点でどのように扱うかがわかる
リスク低減に直結する管理策や運用の具体例を知ることができ、即実務に活かせる
外部審査や内部監査で評価されるチェックポイントを把握し、不適合を防ぐ
他社成功事例から、自社に合った機密性の守り方をイメージできる
2. ISMSにおける機密性の基本概念
2.1. 機密性とは何を指すのか?(情報セキュリティ三要素との関連)
機密性(Confidentiality): 情報を正当な権限を持たない人が閲覧・取得できないように守ること。
情報セキュリティ三要素(CIA): 機密性(Confidentiality)、完全性(Integrity)、可用性(Availability)。ISMSではこの3要素をバランスよく維持することが求められます。
2.2. ISO27001(ISMS)規格における機密性の位置づけ
ISO27001では、リスクアセスメントや管理策(附属書A)を用いて情報資産を保護しますが、その中で「誰が、どの情報にアクセス可能か」をしっかり定義することが必須。
例: アクセス制御(A.9)や暗号化(A.10)など、機密性を高める管理策が附属書Aにリストアップされています。
2.3. コンサル視点:機密性を軽視した際に起こりうる重大リスク
実例: 某企業で退職者アカウントが削除されておらず、機密ファイルにアクセスされ情報漏えい→ 数千万円規模の賠償。
教訓: 機密性の対策は「単にパスワードを設定する」だけでなく、退職・異動時のアカウント管理ルール、暗号化、物理施錠など多面的に考える必要がある。
3. 機密性を脅かすリスク例:具体的な脅威・脆弱性
3.1. 不正アクセス・ハッキング・ランサムウェア
説明: 攻撃者がネットワークを通じてサーバーやPCに侵入し、機密情報を盗み見たり暗号化して身代金を要求する
対策: ファイアウォール設定やパッチ適用、マルウェア対策ソフト、IDS/IPS導入などを行う
3.2. 内部不正(社員の故意・過失)、物理的盗難
例: 社員がUSBメモリにデータをコピーして持ち出し、不正転売。ノートPCを置き忘れて情報漏えい
コンサル談: ヒューマンエラーや内部不正は技術対策だけで防げない→ 権限管理や監視ログ、教育が重要
3.3. クラウド環境やサプライヤー管理での機密情報漏えい
状況: AWSやAzureなどクラウド利用時、設定ミスで外部から見える状態に。委託先が管理不備で漏えい
対策: 共有責任モデルを理解し、サプライヤーとの契約や監査も含めリスク管理が欠かせない
3.4. 他社事例:機密性の欠如で大規模漏えいに繋がった実例
事例: 海外大手企業の顧客データが大量に流出→ 数十億円の罰金と信用失墜
教訓: 攻撃者に対して常に脆弱性が狙われるリスクがあるため、組織全体で「機密性」を守る文化が必要
4. 機密性を守るためのISMS導入メリット
4.1. リスクアセスメントによる脅威の可視化
手順: 情報資産の洗い出し→ 脅威と脆弱性を評価→ リスクレベルを算出
メリット: 最も高いリスクを優先的に対策→ 機密情報漏えいの可能性を効率的に下げられる
4.2. 従業員教育・意識向上で人的ミスを減らす
実務: フィッシングメール訓練、セキュリティポリシー周知、集合研修など
例: パスワード使い回しやUSB紛失を防ぐルールが定着し、内部からの情報流出リスクが減少
4.3. 社内のセキュリティ文化醸成と取引先・顧客への信用向上
結果: ISMS認証を取得すると「この会社は情報セキュリティをしっかりやっている」と証明できる→ 大手企業や海外取引先との商談が進みやすい
コンサル談: 認証を取るだけでなく、実際にリスク対応する仕組みが整うと、社員の意識がガラリと変わりインシデント率が激減した例も多い
4.4. コンサル視点:機密性向上がビジネス拡大にも繋がるケース
事例: 製造業A社がISMSを導入→ 大手取引先から「機密データを安心して預けられる」と評価→ 契約数が増加
5. 具体的な運用ポイント:機密性を高める管理策
5.1. アクセス制御・権限管理(ユーザー認証、最小権限の原則 など)
内容: 「必要最小限の権限を付与する」「退職・異動時には権限を速やかに変更」などのルール化
注意: アクセス制御が甘いと、内部不正や外部攻撃で機密データが盗まれるリスクが高まる
5.2. 暗号化(データ暗号化・通信暗号化・鍵管理)
例: データをAESやRSAなどで暗号化し、鍵管理を厳格化→ 万が一データが盗まれても復号は困難
コンサル談: 暗号化だけでなく鍵の保管・更新ルールが甘いと意味がない。大手企業でも鍵管理が不備で漏えいした事例あり
5.3. ネットワークセグメント分割やファイアウォール設定
目的: 一部のシステムが侵害されても全体へ影響が広がらないように分割→ 機密情報は「DMZではなく内部ネットワーク」で厳格管理
実例: ランサムウェア感染が広範囲に波及しなかった企業はネットワーク分割がしっかりしていたケースが多い
5.4. 物理セキュリティ対策(サーバールーム施錠、入退室管理)
ポイント: 機密情報はデジタルだけでなく紙やサーバー現物でも狙われる→ 入退室管理ログの確認や監視カメラで抑止
事例: 昔、サーバールームが無施錠→ 夜間にUSBでデータを抜き取られた企業があった→ 施錠と入退室記録で対策
5.5. 他社事例:管理策の追加で機密情報漏えいを阻止した成功例
例: サービス業B社が暗号化とアクセスログ監視を導入→ 外部からの不正アクセス試みを初期段階で検知し被害を免れた
6. リスク低減のカギ:インシデント対応と継続的なPDCAサイクル
6.1. インシデント発生時の初動対応とログ管理
手順: ①被害範囲確認 ②該当アカウントの停止やサーバー遮断 ③ログ保全 ④上長・経営者・取引先への報告
コンサル視点: 初動が遅れると被害が拡大し、信用失墜も甚大。ログ管理がないと原因追及が困難
6.2. 内部監査・マネジメントレビューで弱点を改善
ISMS: 年1回以上の内部監査で「運用実態が文書と合っているか」「機密性対策が機能しているか」チェック
レビュー: 経営層が監査結果やリスク状況を見て、予算配分や追加施策を決定→ 継続的改善
6.3. 不適合やインシデントから学び、PDCAでアップデート
流れ: 不適合指摘→ 改善策(Plan)→ 新ルール運用(Do)→ 効果検証(Check)→ 次の対策(Act)
効果: 機密性に関する弱点が徐々に補強される→ インシデントリスクが減少
6.4. コンサル経験:PDCAが機能している企業ほど重大事故を未然に防ぐ
実例: IT企業C社が月1回のミニ監査と毎年の大規模監査を実施→ 小さな問題を早期に発見・改善し、大きな事故が起きない文化が根付いた
7. ISMS審査で評価される機密性運用のチェックポイント
7.1. 運用実態と文書(セキュリティポリシー、手順書)の整合性
審査員視点: 書類には暗号化すると書いているのに、実際には暗号化されていない等のギャップがないかを確認
対策: 定期的に現場ヒアリングし、手順や設定が文書通りか検証
7.2. リスクアセスメントに基づく管理策の妥当性
例: 個人情報が最重要リスクなのにアクセス制御が甘いと不適合→ 管理策がリスクレベルに見合っているかが問われる
実務: リスク評価表と適用宣言書で「なぜこの対策を選んだか」を説明できるように
7.3. 教育・周知状況(社員が実際にルールを理解しているか)
審査での質問例: 「パスワードのルールを教えてください」「USB利用はどうなっていますか?」→ 社員がすぐ答えられるかを確認
コンサル談: 形だけの研修でなく、定期的にテストやアンケートを行う企業が評価されやすい
7.4. コンサル談:審査員がよく質問する機密性関連の確認例
例: 「このデータを扱うサーバーへのアクセス権限はどのように設定していますか?」「退職者のアカウントは即時無効化されていますか?」など
8. 他社成功事例:機密性強化でリスクを大幅削減した企業
8.1. 製造業A社:機密設計図を暗号化・権限管理→ 開発流出を防止
背景: 開発図面が社外に流出し、模倣品が出回る恐れ→ ISMS導入で図面共有サーバーに暗号化と厳重アクセス制御を設定
成果: 機密性管理が徹底され、競合他社への情報漏えいリスクが大幅減
8.2. サービス業B社:物理セキュリティ強化とログ監視で社内不正を防いだ
具体策: サーバールームの入退室管理を徹底し、CCTVとログ監視を導入→ 怪しいアクセスを即アラート
結果: 未然に内部不正を発見し、重大事故を回避
8.3. IT企業C社:社内全体のセキュリティ意識向上で顧客満足度アップ
取り組み: 定期的なセキュリティ研修、社員のモラルハザード防止策、エンジニア向けに暗号化研修など
効果: 大手取引先から「セキュリティ水準が高い企業」と評価され、契約が増加
9. コンサル活用のメリット:機密性強化を効率よく進めるには?
9.1. 専門的ノウハウでリスクアセスメントや文書整備を効率化
サービス例: コンサルがリスク評価のワークショップを開催、管理策のテンプレート提供、内部監査代行など
利点: 自社だけで試行錯誤するより短期導入・不適合リスク減少
9.2. 短期導入や外部審査対策のサポート
現場談: スケジュールが厳しい時、コンサルが審査機関との日程調整や書類チェックをサポート→ 結果として労力・期間を半分以下に削減した企業も
9.3. 注意点:コンサル丸投げで社内ノウハウが残らないリスク
懸念: 自社社員が内容を理解しないままでは、更新審査や運用で苦労→ 形骸化したルールになりがち
対策: コンサルと共同作業し、最終的に「自走できる仕組み」を社内に定着させる
9.4. 成功例:コンサル導入でISMS構築を半年で完了し、不適合ゼロ達成
事例: サービス業D社が暗号化ルールやアクセス権限をコンサルと協力して設定→ ステージ2審査でも機密性対策が高評価
10. Q&A:ISMSの機密性に関するよくある疑問
10.1. 「機密性・完全性・可用性の中でどれが優先?どう決める?」
回答: 企業のビジネスやリスク次第。機密性が最重要な企業もあれば、可用性(システム停止できない)が優先の場合も→ リスクアセスメントで判断
10.2. 「中小企業でも機密性対策を本格的にやる必要はある?」
回答: はい。漏えいが起これば大企業より体力がない分、倒産リスクが高い→ むしろ徹底すべき
実例: 小規模ECサイトが個人情報漏えいで賠償できず事業停止した例
10.3. 「クラウドや在宅勤務の増加で機密性はどこまで守れる?」
回答: VPNや多要素認証、端末のセキュリティルールを強化→ クラウドサービスの責任分担を明確化し、在宅勤務者にも研修を徹底
10.4. 「機密性と暗号化は同義?どこが違うの?」
回答: 暗号化は機密性を高める“技術的対策”の一部。機密性には物理対策や人的対策も含まれ、広い概念
11. まとめ:ISMSの機密性とは?初心者向けにわかりやすく解説!リスク低減のカギと運用ポイントを紹介
11.1. 記事の総括:機密性がISMSの軸のひとつを担う理由
要点: ISMSでは情報セキュリティ三要素(機密性・完全性・可用性)を全て守るが、その中でも「機密性」を怠るとデータ漏えいが一瞬で起きるリスクが高い
成果: 機密性確保に注力すれば情報漏えいから企業を守り、外部審査でも評価される
11.2. リスクアセスメントや管理策で「何を」「どう」守るか明確に
行動: 情報資産を分類し、脅威や脆弱性を洗い出し、最適な管理策(暗号化・アクセス制御・物理対策など)を設定→ 文書化&周知
メリット: ミスや不正が発生しにくい仕組みが企業文化に根付く
11.3. 継続的改善と周知徹底で、外部審査でも高い評価が得られる
PDCA: 内部監査やインシデント対応を通じて常に改善→ 外部審査で「運用実態と文書が一致し、不適合なし」という結果が出やすい
結論: “機密性”はISMS認証取得・維持の要→ セキュリティと企業信用を大きく高める手段
おわりに
ISMSでの「機密性」確保は、情報セキュリティにおいて最も基本的で重要な要素です。
情報漏えいが起こると、企業の信用は一気に失墜し、賠償問題や取引停止など大きなダメージを受けるリスクがあります。
機密性を守るには、適切なリスクアセスメント、管理策の徹底、社員の教育、定期的な監査や改善が欠かせません。
本記事を参考に、ISMS運用で機密性を高めるための対策を一歩ずつ実行し、安全な情報資産管理を実現してください。
この記事の監修者情報
金光壮太 (ISOコンサルタント)
大手商社にて営業を経験した後、ISOコンサルティングに従事。ISO9001、14001、27001を中心に、各業界の課題や特性に応じたシステム構築や運用支援を行い、企業の業務効率化や信頼性向上に貢献。製造業や建設業など、多岐にわたる業界での豊富な経験を活かし、お客様のニーズに応じた柔軟なソリューションの提案を得意としている
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