ISO14001の原単位とは?電気使用量と仕事量から省エネ効果を見る方法

先月より電気の使用量が減った。省エネの成果だと思ったら、実は受注が減り、設備を動かす時間も短くなっていた。総量だけを見ていると、こうした変化を見落とすことがあります。
そこで役立つのが原単位です。『製品一個を作るのに何kWh使ったか』のように、電気使用量を仕事の量と組み合わせて見ます。難しい分析から始めず、手元の請求書と生産記録で何が分かるかを考えてみましょう。

▼目次
1. 原単位は「仕事の量あたり、どれだけ使ったか」を表す
原単位は、ある量を活動の量で割って、一単位あたりに直した指標です。この記事では電気に絞り、『電気使用量÷生産数』を例に説明します。単位はkWh/個です。
生産数のほかに、製品の重量、設備の稼働時間、来場者数などを分母にする場合もあります。ただし、何でも割ればよいわけではありません。電気使用量と関係があり、実際の仕事の変化を捉えやすい指標を選びます。
ISO14001の環境活動では、目標に向けた実績を評価するために、何をどの方法で測るかを決めることが大切です。すべての会社が同じ原単位を使う、全目標を原単位で管理する、という一律のルールとして捉えないようにしましょう。
2. 総量が減っても、原単位が悪化することはある
次は考え方を理解するための架空の計算例です。ISOトラストのお客様の削減実績ではありません。同じ種類の製品を、同じ範囲の設備で作っていると仮定します。
原単位だけで環境負荷全体も判断しない
反対に、一個あたりの使用量が減っても、生産量が大きく増えれば電気の総量が増えることがあります。効率を見る原単位と、使った量を見る総量を並べて確認しましょう。原単位の悪化だけで省エネの取り組みが失敗したと決めず、その理由を調べることも必要です。
4月
電気使用量10,000kWh、生産数1,000個。10,000÷1,000=10kWh/個。
5月
電気使用量9,000kWh、生産数600個。9,000÷600=15kWh/個。
二つの数字から分かること
電気の総量は10%減っていますが、一個あたりでは10kWhから15kWhへ50%増えています。総量の減少だけで、生産効率が改善したと判断することはできません。
3. 分母は、毎月取れて仕事との関係を説明できる数字を選ぶ
選びやすさだけで分母を決めると、結果が仕事の実態と離れることがあります。たとえば単価が変わっただけで売上高が増えると、設備の使い方が同じでも『電気使用量÷売上高』は下がる場合があります。なぜその分母を使うかを説明できるようにします。
同じ製品を多く作るなら、生産数や重量から考える
似た製品を同じ工程で作るなら、生産数は理解しやすい候補です。一方、重量や加工時間が大きく違う製品を、すべて一個として足すと比較が難しくなります。製品群を分ける、重量や稼働時間を使うなど、作業の実態に合う方法を検討します。
オフィスやサービス業は、電気の使われ方を先に見る
事務所では、人数が減っても照明や空調が同じ時間動くことがあります。単に従業員数で割る前に、在室人数、利用時間、床面積、季節などとの関係を見ます。分母を変えて数字をよく見せるのではなく、活動量で説明できる部分と固定的な使用を分けて考えましょう。
途中で定義を変えたら、そのまま前月と比べない
工場全体の使用量を一部のラインの生産数で割ると、対象範囲がそろいません。対象設備、期間、分母の定義、元の資料を決めておきます。定義を見直した場合は変更点を残し、可能なら過去の数字も同じ条件で計算し直して比較します。
4. 数字が悪化したときは、先に条件と記録を確かめる
原単位が上がった月に、すぐ『社員の節電意識が下がった』と判断するのは早計です。入力間違い、検針期間と生産集計期間のずれ、休業日数、気温、製品構成、試運転や設備停止など、数字に影響する条件を確認します。
たとえば電気の請求書が前月下旬から当月下旬までの期間なのに、生産数は月初から月末までで集計されていると、繁忙期の前後で結果が揺れます。比較に使う期間をそろえるか、ずれがあることを踏まえて評価する必要があります。
生産が少ない月も、待機電力や空調などが一定程度かかります。生産数がゼロなら、一個あたりの計算はできません。ゼロで割った結果を0として記録せず、『算出不可・生産なし』などと理由を残し、その月の総量を確認します。
5. 製造業B社の支援事例と、月次記録への提案
ISOトラストが支援した製造業B社は、主要取引先の要求を受けて環境への対応を強化する必要がありました。担当者1名、限られたリソースの中でISO14001の取得を進め、支援後は認証取得と環境管理体制の効率化、業務プロセスの標準化につながっています。
B社の公開事例には、原単位の採用や電力削減率の記載はありません。そこで、実際の成果を補って語るのではなく、同じような担当体制で月次管理を始める場合の方法を、弊社から提案します。
最初の記録には、月、電気使用量、活動量、原単位、変化の理由を並べます。電気使用量は請求書、活動量は既存の生産日報など、元の数字の保管場所も決めます。『なぜ変わったか』を一言残す欄があると、数か月後に振り返るときに助かります。
月次の記載例(架空)
5月/9,000kWh/600個/15kWh・個あたり/生産日数が減少。空調・待機電力の使用を確認する。元資料:5月電力明細、5月生産実績。
翌月の確認につなげる一文
『節電を徹底する』だけで終えず、『非稼働時間の設備使用を確認し、停止できる機器を設備担当と決める。担当○○、確認日○月○日』など、次の行動を残す。
6. 環境目標は、計算結果から次の行動へつなげる
原単位を計算しても、数字を転記するだけでは改善につながりません。何を確かめ、どの行動を試すかを決め、その後の総量と原単位を同じ条件で見直します。設備を止める場合は、安全や品質、保全上の条件も確認してください。
なお、ここで扱ったkWh/個は社内で電気の使い方を見る簡単な例です。省エネ法の報告で使うエネルギー消費原単位や、CO2排出量の算定と、そのまま同じものではありません。法令報告や取引先への報告には、それぞれの計算条件を確認します。
まずは一つの対象で、使用量と仕事量を三か月分並べてみましょう。数字の上下を説明できるかが、管理方法を選ぶ手がかりになります。環境目標や月次記録を、担当者が続けられる形に整えたい方は、ISOトラストへご相談ください。
著者情報
金光壮太 (ISOコンサルタント)
大手商社にて営業を経験した後、ISOコンサルティングに従事。ISO9001、14001、27001を中心に、各業界の課題や特性に応じたシステム構築や運用支援を行い、企業の業務効率化や信頼性向上に貢献。製造業や建設業など、多岐にわたる業界での豊富な経験を活かし、お客様のニーズに応じた柔軟なソリューションの提案を得意としている。





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