ISO14001の環境側面とは?洗い出し手順・評価表の記入例と環境影響の違い

更新日:14 時間前

環境側面を洗い出すときは、「電気を減らす」「ごみを減らす」という目標から始める前に、自社のどの仕事が、どのように環境に関わるかを整理します。毎年の評価表をコピーするだけでは、設備や作業方法の変更が抜けることがあります。
環境側面は、環境と関わる活動・製品・サービスの要素です。その結果、環境に生じる変化が環境影響です。ここでは、両者を分ける具体例から、洗い出し、評価表、管理方法へのつなげ方までを説明します。
▼目次
1. 環境側面と環境影響をどう分けるか
例えば、車両の燃料使用や排気ガスの排出は環境との接点となる環境側面で、そこから生じる気候への影響や大気汚染が環境影響です。「何を行うか・何を使い何を出すか」と「環境がどう変わるか」を分けると整理しやすくなります。
影響には好ましくないものだけでなく、有益なものもあります。製品を修理して長く使えるようにする活動なら、新しい資源の使用や廃棄を抑える影響も考えられます。一方、売上の増加や従業員の満足度を、それだけで環境影響として置き換えないようにします。
2026年11月時点の現行版はISO14001:2026です。環境側面の検討では、自社の管理できる範囲と影響を及ぼせる範囲、ライフサイクルの視点を踏まえます。具体的な適用版や移行状況は自社の認証に合わせて確認してください。
2. 環境側面を洗い出す手順と、現場で聞くこと
対象範囲と仕事の流れを確認する
適用範囲に含まれる拠点・活動を確認し、調達、設計、製造、輸送、使用、廃棄までの関わりを考えます。事務所、現場、倉庫、保守・清掃、委託業務も、管理や影響を及ぼせる範囲を確認します。すべての取引先の全活動を、自社と同じ方法で調査するという意味ではありません。
使うもの・出るものを作業ごとに挙げる
業務フローや設備一覧を見ながら、電力、燃料、水、原材料、薬品などの投入と、廃棄物、排水、排気、騒音などの発生を整理します。「環境側面を教えてください」だけでなく、「この作業で何を使いますか」「清掃時は何が出ますか」と聞くと、実際の仕事に沿って確認できます。
通常・非通常・緊急時を分ける
普段の作業だけでなく、設備の立上げ・停止、点検、清掃などの非通常の状態も確認します。漏えい、火災、災害などの潜在的な緊急事態は、非通常作業と区別して、そのときに生じ得る環境影響を考えます。
新規・変更とライフサイクルの抜けを確認する
新しい設備や材料、増設、作業方法の変更などを既存表と照合します。自社の敷地内だけに限定せず、調達する材料、輸送方法、製品の使用や廃棄に関する情報など、影響を及ぼせる点も確認します。ライフサイクルの視点を考慮することと、すべての製品について詳細なLCA計算を行うことは同じではありません。
3. 環境側面・環境影響の記入例と評価表の項目
次の表は、仕事から環境側面と影響を整理するための説明用の例です。実在するお客様の評価表ではなく、著しさの判定結果も入れていません。自社に当てはまる作業や状態を確認してから使ってください。
業務・状態と環境側面の例 | 環境影響と確認したい情報の例 |
製造・通常時:設備の電力使用、加工端材の発生。 | 発電に伴う温室効果ガス排出、資源消費、廃棄物処分の負荷。電力量、材料・端材の量、処理方法を確認。 |
建設・通常時:重機の燃料使用、作業時の粉じん・騒音の発生。 | 気候・大気への影響、周辺生活環境への影響。燃料の種類・量、作業方法、現場の周辺条件を確認。 |
運送・通常時:車両の燃料使用や排気ガス排出。 | 温室効果や大気汚染。給油量だけでなく、走行距離、配送量など使用状況が変わる条件も確認。 |
事務所・通常時:照明・空調・PCの電力使用、紙の使用。 | エネルギー・原材料の資源消費、温室効果ガス排出。計測範囲、使用量、建物管理者との分担を確認。 |
保守・非通常時:設備清掃に伴う洗浄剤の使用や廃液の発生。 | 化学物質による水・土壌への影響、廃棄物処理の負荷。成分、量、回収・処理方法を確認。 |
貯蔵・緊急時:容器破損による油・薬品の漏えい。 | 土壌や水質の汚染。保管量、排水経路、流出防止措置、緊急時対応を確認。 |
評価表には、拠点・工程、活動、発生する状態、環境側面、環境影響、判断に使った情報、評価基準と結果、著しい環境側面の判定、管理方法、確認日・担当者などを整理します。列名は自社で使いやすく決められます。点数だけを残すより、量や条件など判断理由も分かる方が、変更時に見直しやすくなります。
4. 著しい環境側面の評価と、管理・目標へのつなげ方
洗い出した側面のうち、環境に著しい影響を及ぼすもの、または及ぼす可能性のあるものを、自社の基準で決めます。環境影響の種類、規模、深刻さ、発生頻度などを判断し、必要に応じて順守義務や関係者の要求も考慮します。ISO共通の合計点や「何点以上」という一律の基準があるわけではありません。
点数化は一つの方法です。ただし、対策費用が高い、発生回数が少ないという理由だけで、環境上の重大な影響を見落とさないようにします。有益な影響と有害な影響を単純に相殺して、有害な影響の管理を不要とすることも避けます。
評価結果は、必要な作業手順、点検、教育、緊急時対応、監視・測定につなげます。環境目標を設定する際は著しい環境側面などを考慮しますが、すべての著しい環境側面に毎年同じ削減目標を一つずつ立てる、という機械的な運用にはしません。法令・契約等の守るべき条件は、評価点が低いからといって外せません。
5. ISOトラストの支援経験:計測と影響評価を一緒に整理する
ISOトラストでは、建設業・運送業・製造業のお客様から、電気や車両の燃料使用量をどう把握・計算すればよいかという相談を受け、一緒に計測を進めた経験があります。これまでに支援した別のお客様の取組も参考にしながら、その会社の仕事に合う方法を考えています。
使用量の把握とあわせて、実際の業務がどの環境側面に関わり、どのような環境影響につながるかを「環境側面抽出・影響評価表」を使って整理してきました。お客様自身が仕事と環境の関わりを理解し、環境負荷を抑える工夫を一緒に考えることで、省電力や紙の削減、電子化などの取組につながっています。
これは複数のお客様への支援経験です。一社の特定の削減率や費用削減額を示すものではありません。評価表を埋めることから始めず、実際の作業内容と、把握できるデータを確かめることが、続けられる運用を考える土台になります。
6. 環境側面の見直しと、よくある疑問
環境側面は毎年同じ表を使ってよいですか?
既存表は活用できますが、現場と合っているかを確認します。設備、原材料、作業方法、拠点、委託業務などに変化があった場合は、影響と評価を見直します。定期確認に加えて、変更を事前に評価へ反映する手順を決めておくと、表だけが古い状態を防げます。
オフィスでは紙と電気だけで十分ですか?
仕事内容によります。社用車、出張、機器の更新・廃棄、購買、委託業務など、管理できる・影響を及ぼせる点も確認します。紙と電気だけで十分とも、必ず項目を増やさなければならないとも、一律には判断できません。
有益な環境側面も整理しますか?
環境には有益な変化もあります。再利用や長寿命化など、自社の活動・製品・サービスがどのような変化につながるかを確認します。有益という名称を付けること自体を目的にせず、有害な影響の管理とともに実際の環境パフォーマンスにつなげます。
評価基準や使用量の把握から相談できますか?
ISOトラストでは、業務内容の確認、環境側面・環境影響の整理、運用資料の整備などをご支援します。現在の評価表、業務の流れ、計測で困っている点をお知らせいただければ、必要な対応を一緒に整理できます。
この記事の監修者情報
金光壮太 (ISOコンサルタント)
大手商社にて営業を経験した後、ISOコンサルティングに従事。ISO9001、14001、27001を中心に、各業界の課題や特性に応じたシステム構築や運用支援を行い、企業の業務効率化や信頼性向上に貢献。製造業や建設業など、多岐にわたる業界での豊富な経験を活かし、お客様のニーズに応じた柔軟なソリューションの提案を得意としている






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