取引先からISO取得を求められたら?期限・対象規格・認証範囲の確認方法

更新日:10 時間前
取引先からISO取得の依頼が届くと、まず取得にかかる期間や費用を調べたくなるものです。ただ、「ISOを取得してほしい」という言葉だけでは、見積もりや準備に必要な条件がまだ分かりません。どの規格の認証を、どの業務について、いつまでに示す必要があるのかを確認することが先になります。
同じ「年度内に取得」という依頼でも、審査を終えればよいのか、登録証を提出しなければならないのかで予定は変わります。この記事では、取引先への聞き直しから社内の準備まで、取得計画を立てる前に確認したい点を整理します。

▼目次
1. ISO取得は必須条件か、まず依頼文の意味を確認する
最初に、取引先から届いたメール、調達基準、取引先登録の案内などを読み直します。認証取得が取引開始・継続の条件なのか、今後の取得を推奨しているのか、取得状況を調査している段階なのかを分けて確認してください。担当者同士の会話だけで判断しにくい場合は、条件を決めている購買部門や品質保証部門などへの確認を依頼します。
条件が明確なら、社内でも取得の目的と優先順位を話し合えます。反対に、何を満たせばよいか曖昧なままでは、準備を始めても取引先の求める状態に届いているかを判断できません。認証が間に合わないと直ちに取引終了になる、あるいは取得予定を伝えれば必ず認められる、と決めつけず、相手の条件を確かめます。
確認する際の聞き方
「今回のご依頼は、取引先登録に必要な認証取得の必須条件でしょうか。それとも今後の取得に向けたご要望でしょうか。判断の基準となる書面があれば共有いただけますか」と聞く方法があります。これは取引先への確認文の例です。
2. 規格番号と、提出する証明書を確かめる
「ISO」という呼び方には、さまざまな規格が含まれます。ISO9001は品質、ISO14001は環境、ISO/IEC27001は情報セキュリティのマネジメントシステムに関わる規格です。製造業だからISO9001、IT企業だからISO27001と自社だけで決めず、取引先が指定する規格番号を確認しましょう。複数規格を同時に求められている場合もあります。
また、規格に沿った体制の整備を求めているのか、第三者の認証機関による認証と登録証の提出まで求めているのかも確認が必要です。コンサルタントとの契約や研修の受講は、それ自体で認証取得を意味しません。審査・認証を行うのは認証機関であり、ISOという団体が直接、個々の企業を認証するわけではありません。
版や認証機関の条件が書かれている場合
規格番号に発行年が付いている場合や、認証機関・認定に関する指定がある場合は、その記載も相談先へ共有します。改訂に伴う扱いを自社で決めず、取引先が受け付ける証明と、認証機関が対応する審査を照合してください。依頼書の表記を省略せず伝えると、認識のずれを減らせます。
既に認証を持っている場合も登録証を照合する
既存の登録証があれば、規格番号だけでなく、登録された組織名、対象業務、拠点、有効期限を見ます。親会社や別事業所の取得を、そのまま自社の取引対象業務の認証として示せるとは限りません。取引先が求める対象と一致しているかを確かめましょう。
3. 認証範囲は、取引に関わる業務と拠点から考える
費用や手間を抑えるために対象を狭く考えても、取引先へ提供する仕事が認証範囲に含まれていなければ、取得の目的を満たせない可能性があります。まず、その取引で自社が何を提供し、どこで、どの部門が担当するのかを書き出してください。製品の製造、設計、販売、サービス提供などのうち、どの活動に対して認証を求められているかを確かめます。
ここで挙げた業務や拠点は、認証範囲を検討するための情報です。そのまま自由に切り分けてよいという意味ではありません。対象業務につながる社内の機能や外部委託との関係も含め、規格に沿った範囲をコンサルタントや認証機関と検討します。
取引先の希望と、自社の業務の実態を並べる
たとえば本社で契約を受け、別の拠点で開発や製造を行う場合、本社だけを対象にする案でよいかは確認が必要です。取引先が確認したい仕事と、実際にその仕事を行う場所の両方を伝えます。これは範囲を考えるための説明例であり、特定のお客様の認証範囲ではありません。
全社取得が必要かも、最初から決めつけない
取引先から全社を対象とするよう求められているのか、特定の業務・拠点を対象とすることが認められるのかを確認します。そのうえで、対象外にしようとしている部門が認証対象の仕事を支えていないかを調べます。相手への説明と、認証に適した範囲の検討を並行して進めましょう。
4. 審査日と提出期限を分けて、取得計画を立てる
取引先には、「いつまでに取得するか」に加えて、「その日までに何を提出するか」を確認します。取引先登録の申請日、契約予定日、発注開始日と、登録証の提出期限が同じとは限りません。取得予定の報告でよい時点と、実際の証明が必要な時点を、相手の回答に沿って整理してください。
審査を受けた日と、認証が決定して登録証を受け取る日は別です。認証機関へは、提出期限を伝えたうえで、申請、審査、指摘があった場合の対応、認証の判定、登録証の発行までの日程を確認します。準備期間も企業の規模や現在の仕組みによって変わるため、他社の取得期間をそのまま自社の約束に使わないことが大切です。
社内で必要な作業も日程に入れる
現在の手順書や業務記録を確認し、足りない仕組みの整備、社員への周知、運用、内部監査、マネジメントレビューなどを計画に入れます。担当者が確認できる時間や経営者と打ち合わせる機会も確保します。書類の作成日だけが並んだ計画では、実際に運用する時間が抜けてしまいます。
間に合わない可能性が見えたら、早めに状況を伝える
期限に対して無理がありそうなら、未確定の取得日を約束せず、認証機関と確認した日程や現在の準備状況を整理して取引先へ相談します。途中経過として受け付けてもらえる資料や、提出期限を相談できるかを確認してください。認められる対応は相手の条件次第であり、取得予定だけで代替できるとは限りません。
5. ISOトラストが支援した、取引条件・入札に向けたISO取得
ISOトラストには、製造業、建設業、IT・システム開発業など、取引先の要求や入札をきっかけとする相談が寄せられています。製造業では取引先からISO9001・ISO14001を求められた相談や入札に向けた相談、建設業ではISO9001・ISO14001を入札のために取得したいという相談があります。IT・システム開発業では、官公庁案件や大手企業との取引に向けてISO27001(ISMS)が必要になったケースがあります。
こうした相談では、できるだけ早く取得したいというご希望も多くあります。ISOトラストの支援で、4か月〜半年ほどで認証取得に至った事例があります。ただし、これは実際に支援した企業での所要期間であり、すべての企業が同じ期間で取得できるという意味ではありません。取引先の提出期限に対応できるかは、社内の準備状況と認証機関の日程などを確認して判断します。
最初に約1時間のヒアリングを行い、必要な書類を洗い出す
ISOトラストでは、最初に約1時間のヒアリングを行い、作成が必要な書類を洗い出して支援を進めています。その内容をもとに、運用に使う書類のほとんどをコンサルタント側で作成します。お客様が一から様式を探し、すべてを書き上げる負担を抑えながら、準備を進める方法です。
内部監査から審査当日のフォロー、取得後の維持まで支援する
書類の作成に加え、内部監査やマネジメントレビューも支援し、審査当日はコンサルタントが同席してフォローします。マネジメントレビューでは、資料整理や準備・進行、記録作成を担い、経営者の評価や方針決定をヒアリングして記録にまとめます。認証機関についても、これまでの支援経験を踏まえて候補を紹介し、費用面などを確認しながら選定を支援しています。
取得して終わりにせず、翌年以降も運用を続ける
認証を取得した後も、2年目以降の維持審査や更新審査に向けて、ISOトラストとの契約を継続しているお客様がいらっしゃいます。取引条件を満たすための取得であっても、その後の書類更新や審査準備は続きます。相談の段階で、取得後に誰が運用を支えるかまで考えておくと、担当者が本業と両立できる体制を組みやすくなります。
6. 相談前にまとめたい情報と、取引先への確認文例
相談のために新しいマニュアルを作る必要はありません。まず、取引先から届いた依頼文、求められた規格、提出期限、取引対象の仕事と拠点、現在の認証の有無をまとめます。社内で窓口になる方と、準備に使える時間も分かる範囲でお知らせください。分からない項目は、未確認と分かる状態のままで大丈夫です。
費用を相談するときは、コンサルティングの費用と認証機関の審査費用を分け、取得後の維持運用まで見て検討します。最初の金額だけで決める前に、文書作成や審査準備を誰が担当し、自社にどの作業が残るのかも確かめましょう。
取引先へ送る確認文の例
「ISO認証の取得について、対象となる規格番号と版、認証を求める業務・拠点、登録証の提出期限をご教示ください。認証機関などの指定条件があれば、あわせて確認させてください。いただいた条件をもとに準備状況と取得日程を確認し、ご報告いたします。」依頼文で既に分かっている項目は省き、まだ確認できていない部分を尋ねてください。
著者情報
金光壮太 (ISOコンサルタント)
大手商社にて営業を経験した後、ISOコンサルティングに従事。ISO9001、14001、27001を中心に、各業界の課題や特性に応じたシステム構築や運用支援を行い、企業の業務効率化や信頼性向上に貢献。製造業や建設業など、多岐にわたる業界での豊富な経験を活かし、お客様のニーズに応じた柔軟なソリューションの提案を得意としている。




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