ISMSでWeb会議の録画をどう管理する?保存・共有・削除のルール

更新日:7 時間前
打ち合わせを録画すれば、議事録を作るときや欠席者に説明するときに役立ちます。ただ、録画した人しか保存場所を知らない、リンクを受け取った人がどこまで見られるか分からない、数年前の録画が残ったまま、といった状態では会社として管理できません。
Web会議の録画には、会話だけでなく顧客情報、開発中の画面、システム構成なども含まれます。録画する前の判断から、保存、共有、削除、担当者交代までをつなげて考えましょう。ISOトラストが実際に支援した約30名のIT企業の運用も交え、決めておきたいルールを説明します。

▼目次
1. Web会議の録画は、目的と管理する人を決めて残す
録画の管理では、まず「何のために残すか」を確認します。議事録作成のための一時的な録画と、社内研修で繰り返し使う動画では、必要な保存期間や閲覧者が異なります。会議をすべて同じ条件で残すより、用途から扱いを決める方が実務に合います。
録画が必要な場合は、開始前に参加者へ録画することと利用目的を伝えます。顧客との取り決めや会議の内容に応じ、事前の承諾も確認しましょう。ツールに録画中と表示されることだけで、契約や相手の社内ルールの確認まで済むわけではありません。
管理する担当者も決めておきます。録画を開始した人、保存先を確認する人、社外共有を承認する人、期限を確認する人が分かれば、会議終了後に放置されにくくなります。小規模な会社では同じ人が担っても構いませんが、退職・異動時には引き継げるようにします。
録画前に共有する説明の例
「議事録作成のため録画し、担当プロジェクトのメンバーだけで確認します」と、目的と利用範囲を具体的に伝えます。これは説明例です。実際の顧客とのやり取りを引用したものではありません。
2. 保存先は、担当者が替わっても会社が管理できる場所へ
保存先は、会社が管理するストレージの指定フォルダなどにそろえます。個人PCや私用クラウドへ分散すると、どこに何が残り、誰が削除や権限変更をできるか分からなくなります。部署名、案件名、会議日など、後から見つけられる名前の付け方も合わせて決めます。
Web会議サービスが作る録画の保存先と、社内で最終的に保管する場所は、必ずしも同じではありません。自動保存の場所、録画の所有者、管理者が対応できる範囲を実際の設定で確認しましょう。会社管理のクラウドでも、担当者個人だけが権限を持つ状態では引き継ぎが難しくなります。
IPAのWeb会議に関する注意事項でも、録画を含むデータの所在や削除方法の確認が挙げられています。2020年の資料のため製品の現在の機能は各社の公式情報で確認し、自社が利用する契約・設定に合った保管方法を決めることが大切です。
文字起こしやAI要約の保存先も確かめる
録画から文字起こしや要約を作ると、別のサービスやフォルダに会議情報が残る場合があります。元の動画だけを管理して完了にせず、会社が認めたツールか、入力できる情報か、作成したテキストを誰へ共有するかも確認します。
3. 共有リンクを渡す前に、閲覧者と再共有の扱いを確認する
録画の閲覧者は、利用目的に必要な人へ限定します。会議の参加者、担当プロジェクトのメンバー、研修の対象者など、目的に応じて決めましょう。「社内の人なら誰でもよい」とは限りません。顧客情報や人事の話題が入る場合は、社内でも対象を絞る必要があります。
リンクをメールで渡すだけでは、閲覧できる人を限定したことにはなりません。指定したアカウントだけが見られるか、転送先でも開ける設定になっていないか、保存先フォルダから広い権限を引き継いでいないかを確認します。パスワードがあるだけで十分とも限りません。
社外へ共有する場合は、相手と目的を確認し、社内で承認する担当者を決めます。サービスで利用できる場合は、有効期限やダウンロード制限なども情報の重要度に応じて使います。ただし、閲覧者による画面撮影などまで完全に防げるとは考えず、再共有や二次利用の扱いも相手へ伝えます。
案件の終了や担当者の異動で閲覧の必要がなくなったら、権限を見直します。退職時もアカウント停止だけで終えず、録画の管理担当や共有先の情報を引き継げる状態にしておきましょう。
4. 保存期間と削除は、用途・契約・例外を合わせて決める
ISMSの録画管理で、すべての会社・すべての動画に同じ保存期限を当てはめる必要はありません。ISO/IEC 27001が重視する、自社の情報とリスクに応じた管理として、用途、契約、保存が必要な事情を整理します。後ほど紹介する「3か月」は、あるお客様が定めた運用基準です。
例えば、議事録を確認するための録画は確認後に必要性を見直し、教育用動画は内容が有効な間だけ残す、といった分け方が考えられます。会社としての基準に加え、顧客との契約や適用される保存義務、調査などで保存すべき事情がある場合は、削除前に責任者へ確認します。
延長する場合も、理由と次の確認日を残す
期限を過ぎても必要なら、責任者の承認で延長できる方法を決めます。「必要だから残す」だけで終えず、保存理由、管理担当、次に見直す時期が分かるようにします。確認日や承認結果は、既存の案件記録や管理の仕組みに残す方法でも整理できます。
削除の操作と、情報が残る範囲を確かめる
画面上で消した動画が、ごみ箱や復元機能、別の保存先に残る場合があります。自動削除の設定も、社内の保存基準と合っているかを確認します。契約やサービスの仕様を確かめ、ダウンロードした複製、共有先、文字起こしも含めて、対応できる範囲と担当者を決めて処理します。
5. ISOトラストの支援事例:約30名のIT企業で録画ルールを統一
従業員約30名のシステム開発・ITサービス企業では、顧客との打ち合わせや社内研修、進捗会議の一部を、議事録作成や欠席者への共有のために録画していました。保存先が個人PCやクラウドなどに分かれ、共有範囲や保存期間、退職・異動時の確認手順が明確になっていませんでした。
ISOトラストは、担当者へのヒアリングで録画の用途・保存場所・共有方法を確認し、既存のISMS管理規程を活用してルールを整備しました。録画は業務上必要な場合に限り、開始前に参加者へ目的を伝え、顧客との会議では必要に応じて事前の承諾を得る運用としました。
保存先は会社管理のクラウドストレージの指定フォルダへ統一し、個人PCや私用クラウドへの保存は原則禁止としました。共有は参加者や関係プロジェクトメンバーに限定し、社外共有は管理責任者の承認を必要としました。誰でも閲覧できる公開リンクも使わないルールにしました。
保存期間は原則として録画日から3か月とし、経過後に業務上の必要性を確認して削除する運用です。契約上の保存や教育での継続利用が必要な場合は、責任者の承認で延長できるようにしました。退職・異動時の権限確認は既存のアカウント管理手順へ組み込み、ルールは情報セキュリティ教育で周知しました。
対応後は録画の所在と共有ルールが明確になり、担当者が替わった場合も会社として管理を続けやすくなりました。専用の複雑な台帳や申請書を増やすことなく、既存の規程とアクセス権限管理を利用して運用負担を抑えました。
6. 録画管理を無理なく続けるための確認ポイント
管理担当者は、まず現在残っている録画をいくつか選び、目的、保存先、閲覧できる人、期限、管理担当を確認してみてください。分からない項目があれば、そこがルールや設定を見直す手がかりになります。すべての動画を同じ台帳に細かく転記することから始める必要はありません。
自動保存・自動削除に任せればよいですか?
自動化は役立ちますが、保存先や権限、期限が会社の基準と合うかを先に確認します。契約上の保存が必要な録画が自動で消えたり、不要な複製が別の場所に残ったりしないよう、例外への対応も決めておきます。
録画が増えるたびに、新しい管理書類が必要ですか?
既存の情報セキュリティ管理規程、フォルダの権限設定、アカウント管理、教育の仕組みへ組み込めます。案件や動画の用途に応じて管理担当と見直す時期が分かる状態を作り、確認した結果を会社で必要な範囲で残します。
今の運用に合わせて、どこから整えるとよいですか?
保存先が散らばっているなら所在と管理者の整理、共有先が分からないなら権限の確認から進めます。ISOトラストでは、お客様の録画の用途や現在のISMS文書を確認し、日々の会議で守れる保存・共有・削除のルールづくりを支援しています。
著者情報
金光壮太 (ISOコンサルタント)
大手商社にて営業を経験した後、ISOコンサルティングに従事。ISO9001、14001、27001を中心に、各業界の課題や特性に応じたシステム構築や運用支援を行い、企業の業務効率化や信頼性向上に貢献。製造業や建設業など、多岐にわたる業界での豊富な経験を活かし、お客様のニーズに応じた柔軟なソリューションの提案を得意としている。




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