ISO9001の内部監査とは?製造業向け具体的な質問例をわかりやすく解説!
- 【監修者】金光壮太(ISOトラストのコンサルタント)
- 4月18日
- 読了時間: 11分

▼ 目次
1. はじめに
1.1. 本記事の目的と想定読者
ISO9001を導入している、またはこれから導入しようとしている製造業の企業では、内部監査がとても重要な役割を果たします。内部監査は自社の品質マネジメントシステム(QMS)をチェックする仕組みであり、問題点を早期に見つけ、継続的な改善につなげることが大きな目的です。
この記事の目的
製造業の現場でISO9001の内部監査をどのように行えば効果的か、基本の流れを整理
監査時に使える具体的な質問例を多数紹介し、実務に活かしてもらう
実際の導入・更新審査で役立つコンサル視点のアドバイスや他社事例を交えて、形骸化を防止しながら監査を成功させる方法を伝授
想定読者
製造業で品質管理を担当している初心者・管理者
これからISO9001認証取得、もしくは更新を控えている企業の監査員やリーダー
具体的な質問例や監査の実践ノウハウを学び、現場の改善につなげたい方
1.2. ISO9001の内部監査とは?製造業で重要な理由
内部監査の役割: 自社のQMSがISO9001の要求事項や自社規程を満たしているかを自主的にチェックする仕組み
製造業特有の視点: 生産工程や設備、資材管理など、品質に直結する要素が多い→ 不良品やクレーム、納期遅延を防ぐためにも重要
コンサル経験: 製造現場では、工程管理や不良率、作業手順の実施状況など、監査で見落としがないか確認することで大きな改善効果を得られます
1.3. この記事で得られるメリット
製造業ならではの監査ポイントを理解し、効果的にチェックできる
具体的な質問例や指摘事例をもとに、自社の内部監査を形骸化させずに進められる
コンサル経験や他社事例から成功のコツを学び、認証更新や顧客監査に備えて品質を高められる
2. 製造業でのISO9001内部監査:基本の流れ
2.1. 監査計画の作成と目標設定
年間監査計画: 対象とする製造工程、倉庫、検査部門、管理部門などを含む全体スケジュールを組む
目標設定: 例えば“不良率の実態をつかみ是正提案を行う”“現場の手順遵守率を確認し改善を行う”など明確なゴールを掲げる
コンサルTIP: 製造現場ごとに“問題が起きやすい工程”をリストアップし、重点的に監査することで効果を高める
2.2. チェックリスト準備:ISO9001要求事項+独自ルール
ISO9001条文の確認: 主に8.5(製造工程の運用管理)、8.6(リリース製品の検証)、8.7(不適合品の管理)などが製造で重要
社内基準や独自マニュアル: 作業標準書(SOP)、工程管理図、不良品処理手順など
他社事例: 製造業A社はチェックリストに“工程番号・使用設備・作業標準書の改定履歴”を入れてミスを特定しやすくした
2.3. 監査員のトレーニング・チーム編成
監査チーム: 現場をよく知る人+ 客観的に見る人の組み合わせが理想
研修: 監査手法(質問の仕方、証拠の取り方)、ISO9001要求事項の基本を習得
回避策: 同じ部署同士の監査だと“なあなあ”になりがち→ 異なる部署からの監査員を入れるのがおすすめ
3. 製造業ならではの内部監査ポイント
3.1. 工程管理:作業手順・標準類の順守状況
具体例: 製造工程で作業手順書が最新版と違う、実際の作業がマニュアルと食い違っているなど
質問例:
「この作業はどの標準書を参照?最新版はいつ改訂した?」
「手順変更時の承認フローは?担当者は認識している?」
失敗例: 製造現場C社で標準書が古いまま使用され、最新品質要件を満たしていない製品を出荷→ 大口クレームに発展
3.2. 不良品管理と改善活動
不良発生時のルール: 不良判定基準、隔離保管、再発防止策など
質問例:
「不良品が出た際、どこに記録する?どのように原因分析する?」
「原因ごとの対策は作業標準に反映されていますか?」
コンサル視点: 不良率が高いのに原因特定が曖昧だと、顧客クレームが増え&審査員から“改善不足”と指摘
3.3. 設備・計測機器の校正・保守管理
校正計画: 計測器や治工具の定期校正をスケジュール化
質問例:
「この測定器の校正はいつ実施?結果をどこに記録?」
「設備点検の頻度や基準は?異常あった場合の処置は?」
他社事例(製造業A社): 機器校正を全社リスト化し、校正期限や結果を管理→ 校正漏れゼロで品質安定
3.4. トレーサビリティ(製造記録・追跡性)
製品や部品のロット管理: 原材料から出荷まで一貫して追跡できる体制
質問例:
「材料ロットと製品ロットを紐づける仕組みは?」「クレーム時にどこまで遡れますか?」
メリット: 不良発見時に範囲を正確に絞り、リコールコストを最小化できる
4. 具体的な質問例:よくある監査Q&A
4.1. マネジメントレビュー関連
質問例:
「経営者は品質目標をどう設定し、結果をどうレビューしている?」
「製造現場から上がる不良データやクレーム情報を経営層へ共有する仕組みはある?」
意図: トップマネジメントが品質改善に関与しているかを確認し、リソース配分や方針決定の実効性を見極める
4.2. 文書・記録管理
質問例:
「この工程の標準書はどこで管理?古いバージョンはどう扱われている?」
「記録は紙とデジタルのどちら?誰がいつ確認?」
目標: バージョン不備や記録の紛失を防ぎ、規格要求の“最新文書を活用”を実現する
4.3. 人材教育・技能訓練
質問例:
「新しい作業者が配属された場合、どのような研修を受ける?誰が責任を持つ?」
「技能評価はどう行い、合格基準はある?」
メリット: 教育計画がしっかりすれば、品質安定・作業者の意識向上→ 不良削減につながる
4.4. 工程管理と不良率対策
質問例:
「毎日の不良品数をどこに記録し、誰が分析?」「是正処置の成果はいつチェック?」
「顧客クレームを工程改善につなげる仕組みはあるか?」
意図: PDCAサイクルが現場レベルで回っているかを確認し、不良品対策の有効性を判断
4.5. 顧客要求・クレーム対応
質問例:
「顧客要求変更時の周知方法は?」「クレーム発生後、原因分析と再発防止を誰が行う?」
事例(サービス業B社): クレームを営業部だけが対処→ 製造現場には情報が伝わらず同じ不具合が繰り返し発生→ 内部監査で発覚し改善
5. 監査実施の流れと実践手順
5.1. 監査計画の立案
監査対象部門・工程の選定: 製造工程(プレス、組立、検査など)や設計部門、倉庫など
目標・範囲設定: 例えば“不良原因を見極め改善提案を行う”など焦点を定める
日程調整: 現場の繁忙期を避けつつ、定常の業務に支障が出ないよう配慮
5.2. チェックリスト作成&ヒアリング準備
ISO9001条文+ 社内規程のマッピング: 8.5(製造の運用管理)、8.6(リリース製品の検証)などを重点化
現場独自のリスク要因: 設備老朽化、不良率上昇、在庫管理ミスなどをリストに追加
運用TIP: 適度にオープンクエスチョン(「どのように…?」)とクローズドクエスチョン(「はい・いいえ」)を混ぜる
5.3. 監査の実行(現場巡回・ヒアリング)
インタビュー: 作業者やリーダーに対し、手順書の有無や更新履歴、記録方法などを質問
現場観察: 作業実態と標準書が一致しているか、不良品保管エリアの運用、計測器ラベル
記録・証拠収集: 必要に応じ写真やメモを残し、是正提案の根拠にする
5.4. 監査結果の報告・是正処置の指示
報告会: 監査チームがまとめた指摘事項と推奨改善を、現場責任者・経営層に共有
不適合区分: 重大不適合(即是正必要)か軽微な改善提案なのかを分類
フォローアップ: 指摘事項に対して責任者・期限を決め、次回監査や定期レビューで確認
6. 監査を形骸化させないコツ:プロ視点でのアドバイス
6.1. 現場目線を重視したチェックリストづくり
要点: 現場で頻発するトラブルや不具合、社員が困っている点をリスト化→ 規格条文との対応付け
具体例: “作業指示に不明点が多い”という声があれば、関連手順書や記録の扱いを監査で確認
メリット: 形だけでなく、監査結果が実際の品質向上につながりやすい
6.2. 監査員の教育・異部署アサイン
研修: 質問技法、文書チェックの要点、品質管理の基礎(QC七つ道具など)
異部署監査: 同じ部署内だと甘くなりがち→ 異なる部門が互いに監査し合うと客観性UP
コンサル視点: 監査が初めての人でも、先輩監査員とペアを組むとスムーズに習熟
6.3. 経営層の関与と是正処置へのリソース投下
トップマネジメントの役割: 指摘事項を軽視せず、重大な課題には予算や人員を投入
失敗例: 経営層が「コストがかかる」と改善提案を却下→ 結果として顧客クレームや生産ロスで余計に損失
教訓: 内部監査の意見を定期会議で取り上げ、優先度の高い課題から解決する姿勢が大切
7. 成功・失敗事例:製造業での実際の監査成果
7.1. 成功事例:製造業A社が不良率を3%→1%に減
監査の着眼点: 作業手順書が古いまま現場が運用→ 現行標準書と異なる方法で作業→ 不良率増
対策: 監査で不適合を指摘→ 手順書を最新版に統一&現場教育強化→ 半年で不良率1%にダウン
審査でも高評価: 外部審査員から“現場と連携しPDCAを回している”と合格をスムーズに取得
7.2. 失敗事例:IT企業B社(製造部門併設)が監査形骸化
原因: 監査員が毎回同じ部署を監査し「特に問題なし」と書くだけ→ 改善提案ゼロ
結果: 実際には不良処置が曖昧でクレーム増→ 顧客監査で指摘され慌てて是正
学び: 監査の客観性を保ち、質問例を活用し深掘りしないと真の問題を見逃す恐れ
8. Q&A:ISO9001の内部監査に関する疑問
8.1. 「初心者でも監査員になれる?」
回答: 必要な知識(ISO9001要求事項・監査手法)を研修すれば可能。最初は先輩監査員とペアがおすすめ
TIP: 規格の基本条文と自社の業務フローをしっかり把握するのが大事
8.2. 「どのくらいの頻度で監査するべき?」
回答: 一般的に年1回以上。ただし規模が大きい企業や工程数が多い場合、半期ごとや四半期ごとに分割監査もあり
他社事例: 製造業A社は毎年2回、繁忙期前後に行い対策を年度中に反映
8.3. 「監査で挙げられた指摘は必ず是正しないとダメ?」
回答: 不適合の場合は是正が必要。改善提案レベルなら優先度を考え、社内判断で実施可否を決める
注意: 外部審査時に“指摘されたのに放置”はマイナス評価
8.4. 「製造現場は口頭指示が多いが、記録化は必要?」
回答: 口頭だけだとトラブル時に根拠が残らない→ 作業指示や変更内容を簡易的でもよいので記録化がおすすめ
TIP: 紙orデジタルで指示履歴を残せば、工程ミスや責任追及が防げる
9. 他社事例:内部監査を活かして製造現場を改善
9.1. 製造業A社:不良率削減&顧客クレーム半減
実施内容: 不良データの集計方法を監査でチェック→ 現場が記録しやすいフォーマットに改良→ 要因分析が進む
成果: 半年後に不良率3%→1.5%にダウン、クレーム半減→ 社内の士気向上
審査でも好評価: “監査が実質的な改善につながっている”と外部審査員から評される
9.2. 製造業B社:多工程監査で品質のバラつきを解消
方法: 部署横断チームを編成し、工程間の連携ミスや在庫管理不備を掘り下げ→ 是正処置
成果: 工程間の引き継ぎロスが改善し、納期遅延と不良品が減少→ 顧客満足度UP
コンサル視点: 横断的な視点で“サプライチェーン全体”を見られると大幅改善が期待できる
10. まとめ:ISO9001の内部監査とは?製造業向け具体的な質問例をわかりやすく解説!
10.1. 記事の総括:ポイントの再確認
内部監査の役割: QMSがISO9001要求事項や自社規定を満たしているかを自主チェックし、改善を促す
製造業で重要な監査項目: 工程管理、不良品対応、設備校正、トレーサビリティ、文書管理など
具体的な質問例: 「手順書は最新版?」「不良発生時の記録・原因分析は?」「測定器校正はいつ、どこで?」など
成功のコツ: (1)現場をよく知り、チェックリストを使いながら深掘り (2)監査員研修&客観性確保 (3)指摘に対する是正処置をPDCAで回す
メリット: 不良率ダウン、顧客クレーム減少、審査合格や更新がスムーズになり、会社全体の品質意識が向上
10.2. 次のアクション:初心者が取り組むべきステップ
監査計画の策定: 対象部署・日程・チェックリストの準備
監査員トレーニング: ISO9001の基本や質問技法、異部署アサインによる客観性UP
実地監査: 工程観察、担当者ヒアリング、文書・記録突合
報告&是正処置: 指摘事項を整理し、責任者と期限を設定→ 改善を次回監査や外部審査に反映
PDCAサイクル: 定期的に監査を行い、継続的に品質向上やトラブル防止を進める
あとがき
ISO9001の内部監査は、製造業において“品質を高めるエンジン”です。形だけのチェックリストではなく、実際の工程や不良品管理、設備の校正状況などを深く掘り下げることで、重大な不良やクレームを減らし、社員の品質意識も高められます。本記事で紹介した具体的な質問例やステップを参考に、ぜひ現場のリアルな課題を拾い上げ、PDCAサイクルを回して改善を続けてください。経営層も内部監査の成果を重視し、必要なリソースや施策を後押しすれば、ISO9001認証や更新審査でも確実に良い評価を得られ、顧客満足度と企業競争力の向上につながるでしょう。
この記事の監修者情報
金光壮太 (ISOコンサルタント)
大手商社にて営業を経験した後、ISOコンサルティングに従事。ISO9001、14001、27001を中心に、各業界の課題や特性に応じたシステム構築や運用支援を行い、企業の業務効率化や信頼性向上に貢献。製造業や建設業など、多岐にわたる業界での豊富な経験を活かし、お客様のニーズに応じた柔軟なソリューションの提案を得意としている
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