ISO9001×気候変動:企業が取り組む実務の具体例とは?品質管理で環境リスクも減らす方法!
- 【監修者】金光壮太(ISOトラストのコンサルタント)
- 4月18日
- 読了時間: 9分

▼ 目次
1. はじめに
1.1. 本記事の目的と想定読者
本記事の目的:
「品質マネジメント」の仕組みを用いて、気候変動リスク(CO₂排出、エネルギー浪費など)をどう抑えられるかを解説
ISO9001の導入・運用中の企業が、追加コストを極力かけずに環境対策にも寄与できるヒントを提供
コンサル経験や他社事例を参考に、形骸化を防ぎつつ環境リスクを減らす具体的なステップを示す
想定読者:
すでにISO9001を導入しているが「環境にも活かせるの?」と興味がある担当者・初心者
これから品質管理を強化したいが、SDGsや気候変動対策も同時に検討中の企業リーダー・経営者
“ISO14001までは要らないけど、環境負荷を下げたい”という会社
1.2. 気候変動とISO9001が結びつく理由
ISO9001の本質: プロセス管理や内部監査、継続的改善といった仕組みを備える→ 不良率や顧客満足度だけでなく、“環境に関するムダ”の改善にも応用できる
社会のトレンド: SDGs・ESG投資・カーボンニュートラルなど“環境責任”が企業評価の大きな要素に
コンサル視点: 既存の品質マネジメントフレームワークに、少し視点を加えるだけでもエネルギー節約や排出削減が可能
1.3. この記事で得られるメリット
ISO9001導入の枠内で、気候変動対策を併せて進める具体的イメージが掴める
実務の具体例(工程改善や内部監査で環境項目を確認など)を知り、すぐに活用できる
コンサル経験や他社事例から失敗を防ぎ、費用対効果を高めるポイントを学べる
2. ISO9001で気候変動を意識する理由
2.1. 品質マネジメントの枠組みが環境にも応用可能
PDCAサイクル: 不良品低減などで使うPDCAを、エネルギー消費や排出ガス削減でも同じように適用
リスク管理: ISO9001:2015で強調される“リスクと機会の考え方”に、気候変動リスク(災害・猛暑・原材料逼迫)を含める
他社例(製造業A社): 工程のムダ排除を進める→ 不良率と排出CO₂が同時に減った→ 省エネ投資の効果も上がり、経費節約に成功
2.2. 顧客・取引先の要求と社会トレンド
SDGs/ESG投資: 取引先が“サプライチェーン全体の環境負荷”を重視→ 「CO₂排出量を管理しているか?」を品質監査で問われるケースあり
ISO9001の認知度: “品質管理がしっかりした企業”という評価が、“環境にも配慮している”という印象と結びつきやすい
コンサルTIP: 競合他社との差別化や、CSR報告書で“ISO9001活用の環境成果”をアピールする企業が増えている
2.3. ISO14001との連携
ISO14001: 環境マネジメントシステム規格で、より深い環境リスク管理を目指す場合に導入
併用メリット: ISO9001で構築したPDCAや内部監査仕組みを活かして、ISO14001を統合(IMS)すれば効率が良い
他社事例: 製造業B社が先にISO9001で生産工程を標準化→ 環境視点を追加しISO14001もスムーズに取得
3. 企業が取り組む実務の具体例:ISO9001を環境対応に生かす
3.1. 工程改善でCO₂排出削減
例: 不良品・手直し作業を減らす→ 原材料やエネルギーを節約→ 排出ガス・廃棄物削減
事例(製造業C社): 不良率を3%→1.5%に下げた結果、材料ロスが激減&排出量も毎月5%減。社内のエコ意識も向上
コンサルアドバイス: “品質目標”に環境指標を設定(例:不良削減で年間○tのCO₂削減)すると社員が一石二鳥の感覚で取り組む
3.2. 内部監査でエネルギー浪費や環境リスクを点検
ISO9001の内部監査: 普段は文書・工程管理・不具合チェックを行う→ そこに“エネルギー使用状況”“廃棄物管理”など環境項目を含める
具体例: “この機械、待機時にも大量電力を消費していない?”や“ゴミ分類が適切?”など
他社事例(サービス業D社): 事務所で監査時に照明・空調のムダを発見→ 年間の電気代5%削減に成功
3.3. 顧客要求への対応と製品改良
エコ製品や環境対応サービス: 顧客が“省エネ設計”や“低排出技術”を望む場合→ ISO9001の設計管理プロセスに環境要件を追加
事例(IT企業E社): サーバー負荷を減らすソフトウェア最適化を“品質要求”の一環で実施→ 電力使用削減に成功
メリット: 顧客満足度UP&企業イメージ向上で新規受注も増加
3.4. クレーム対応を“環境目線”で強化
クレーム対応プロセス: ISO9001では顧客苦情への即応を求める→ 環境関連の苦情(騒音、排水など)も同じ仕組みで対処可能
成功例: 製造業F社が近隣住民からの騒音苦情をQMSで管理→ 原因調査や対策(夜間稼働の削減)を素早く実施→ 信頼回復
4. 品質管理で環境リスクも減らす方法:ISO9001運用の拡張
4.1. トップマネジメントのリーダーシップ
経営層が“環境も重要”と明言: 品質方針に“環境負荷低減”を盛り込み、具体的な数値目標を設定
事例(製造業G社): 社長が「省エネ&不良率削減」を同時目標に掲げ、現場がモチベーションを高めてPDCAを回し始めた→ 電気代や廃棄コスト大幅ダウン
コンサル視点: トップがコミットすれば予算・人材を整えやすく、内部監査での環境チェックもスムーズ
4.2. 品質目標に“環境指標”を組み込む
例: 「不良率○%削減」+「エネルギー使用量/CO₂排出○%削減」を同時目標に→ PDCAで管理
メリット: 不良減=材料・エネルギー消費減→ 自然と環境対策が進む
他社アドバイス: バランスを取り、社員が「また増えた目標…」と疲れないよう進め方が大事
4.3. リスクベース思考で“気候変動リスク”を洗い出す
ISO9001:2015はリスクの特定と対応策を必須→ 生産拠点が豪雨・猛暑・台風などの影響を受けるリスクを評価
対応例: 工場の排水対策強化、施設の耐水性向上、物流ルートの多様化 など
コンサル視点: 気候変動リスクを先取りして対策すれば、将来の大きな損失を回避できる
4.4. 内部監査で環境配慮もチェック
通常の監査項目に“省エネ・廃棄物管理”を追加: 設備の稼働状況、照明や空調のムダ、廃棄物の分別ルールなど
成果: 社内ルールが一本化され、監査結果も品質面+環境面の両面改善が期待できる
失敗回避: 環境項目を一気に増やしすぎると担当者が混乱→ 段階的に取り入れる
5. Q&A:ISO9001×気候変動に関する初心者向け疑問
5.1. 「ISO9001は品質規格なのに、なぜ気候変動対策が可能?」
回答: ISO9001で培う“リスク管理・PDCA・内部監査”のフレームワークを、環境リスク(排出量、廃棄物)にも転用できるから
例: 不良率を減らす仕組みと同様に、エネルギーや廃棄物の削減も定量目標を設定→ 改善を繰り返す
5.2. 「ISO14001を取ればいいのでは?」
回答: ISO14001は環境マネジメント規格なので、より深い環境リスク管理が可能。だが、ISO9001でも基礎的環境対策はできる。両方導入する会社も多数
TIP: すでにISO9001があるなら、まずそこに環境要素を加えるのも効率的
5.3. 「環境対策にまで手を広げるとコストが増えるのでは?」
回答: 工程改善と環境負荷削減をセットで進めれば、不良削減や省エネ効果でむしろコスト削減に繋がる例が多い
他社事例: 製造業H社が設備更新と工程改善を同時に実施→ 年間100万円以上のエネルギーコスト削減
5.4. 「内部監査で環境項目を追加したら規格違反にならない?」
回答: 全く問題ない。規格条文には“環境対策をしろ”とは書いていないが、“リスクと機会”の範囲に気候変動リスクを加えてPDCAするのは自由
メリット: 既存の監査プロセスでチェックできるため、追加コストも最小限
6. 成功・失敗事例:ISO9001で環境リスク軽減を実現した企業
6.1. 成功事例:製造業A社がCO₂排出を年5%削減
背景: プレス工程で高いエネルギー消費→ 不良率&再稼働でさらに電力を浪費
取り組み: 不良率削減プロジェクトをQMSの一環で展開→ 作業手順や検査精度を見直し→ 工程時間短縮&電力消費ダウン
成果: 年間CO₂排出量5%減少、電気代も削減→ 社内に“品質改善が環境にもいい”というモチベーション高まる
6.2. 失敗事例:サービス業B社が形だけCSR活動して効果ゼロ
原因: 「エコを意識しましょう」とスローガンだけ掲げ、具体的な目標設定や監査項目を設定せず
結果: 実際にはエネルギー使用や紙の無駄遣いが放置され、コストも増加→ 社員からも“口先だけ”と不満
学び: 目標を数値化し、内部監査など具体的な仕組みを通じて実践しなければ成果が出ない
7. まとめ:ISO9001×気候変動:企業が取り組む実務の具体例とは?品質管理で環境リスクも減らす方法
7.1. 記事の総括:ポイントの再確認
ISO9001と気候変動対策の関係: 品質向上を目指すPDCAやリスク管理手法を、環境負荷削減にも応用できる
実務の具体例: 工程改善でCO₂排出削減、内部監査でエネルギー浪費チェック、顧客要求への環境配慮対応など
メリット: 不良率減&コスト削減→ 社員意識UP→ 顧客・取引先からも評価向上
形骸化防止: 経営層の意欲、品質目標に環境指標を追加、内部監査で環境項目もチェック
失敗を避けるコツ: “口先だけのCSR”ではなく、ISO9001の既存枠組みに環境視点を組み込み運用し続ける
7.2. 次のアクション:初心者が取り組むべきステップ
トップのコミット: “環境にも配慮した品質管理を行う”と明確に打ち出す
現状分析: 不良率やエネルギー使用量、排出量などを可視化
改善計画: ISO9001の目標に環境要素を設定→ 内部監査でポイントを確認
PDCAサイクルを回す: 改善策を実施→ 効果検証→ 次の段階へ
外部審査・報告: 取得済みの認証やCSR報告書で“品質×環境”の相乗効果をアピール
あとがき
ISO9001は品質に関する国際規格ですが、その構造(PDCAサイクル、リスクと機会、内部監査)を活かせば、気候変動リスクや環境対策にも十分応用できます。工程改善で不良率とエネルギー浪費を同時に減らし、コスト節約と地球環境への配慮を両立することが可能です。本記事の具体例(CO₂排出削減、内部監査でエネルギー浪費をチェックなど)を取り入れ、まずは品質目標に環境指標をプラスしてみてください。形骸化しないよう、**経営層が“品質と環境は両輪”**と打ち出すことが大切です。そうすれば、ISO9001の枠内でも気候変動リスクを減らす実践的な取り組みが可能となり、社会的信用・競争力アップにも大きく貢献するでしょう。
この記事の監修者情報
金光壮太 (ISOコンサルタント)
大手商社にて営業を経験した後、ISOコンサルティングに従事。ISO9001、14001、27001を中心に、各業界の課題や特性に応じたシステム構築や運用支援を行い、企業の業務効率化や信頼性向上に貢献。製造業や建設業など、多岐にわたる業界での豊富な経験を活かし、お客様のニーズに応じた柔軟なソリューションの提案を得意としている
Comments