ISO9001で押さえる内部の課題・外部の課題!具体例と失敗回避ポイントを初心者にもやさしく解説
- 【監修者】金光壮太(ISOトラストのコンサルタント)
- 4月18日
- 読了時間: 9分

▼ 目次
1. はじめに
1.1. 本記事の目的と想定読者
ISO9001を導入しようとしたときに、「内部の課題って具体的には何?」「外部の課題はどんなものがあるの?」と悩む方が多いです。2015年版のISO9001ではリスクベース思考が強調され、組織の内外の状況を把握することが必須となりました。本記事では、**“内部の課題・外部の課題”**の具体例や、そのリスクをどう管理すれば成功につながるかを、初心者でも理解しやすい表現でまとめています。
この記事の目的:
ISO9001で必要な「内部・外部の課題」の定義をわかりやすく整理
それぞれの課題への対策を“リスクと機会”として捉える具体例を紹介
コンサル経験や他社事例を通じて、形骸化せず成果に結びつく運用ポイントを明確化
想定読者:
ISO9001初心者や担当者で、“内部の課題・外部の課題”の洗い出し方や活かし方に戸惑っている方
審査や内部監査の前に、リスクと機会の整理をきちんと行いたい経営層・品質管理責任者
これから認証審査を受ける中小企業、部署横断プロジェクトチームで導入検討中のリーダー
1.2. ISO9001で“内部の課題・外部の課題”が必要とされる理由
リスクベース思考: ISO9001:2015から強く打ち出され、組織の内外で起こりうるリスクや機会を理解→ 品質マネジメントが継続的に機能するように
組織の状況理解(4.1条文): 自分たちが抱える“弱み”や“強み”、そして市場や顧客の変化を見極め、QMSへ組み込む必要
初心者向け用語解説:
リスク: “困る可能性があること”
機会: “プラスのチャンス”
内部課題: 組織内部の状態・問題点・強み弱み
外部課題: 市場や業界、法規制など、組織外から来るリスクや機会
1.3. この記事で得られるメリット
内部課題・外部課題それぞれの具体的イメージを得られ、抽象的な議論で終わらない
リスクと機会の考え方を実務に取り入れ、内部監査や審査で“運用の有効性”を示しやすくなる
形骸化を防ぐためのコンサル視点のヒントがわかり、成果重視のISO9001導入が可能
2. ISO9001における“内部の課題”と“外部の課題”とは?
2.1. 内部の課題:組織内の問題・強みの要素
例:人材・設備・組織文化
人手不足、社員教育不足、設備が老朽化している、作業標準が未整備など
強み:固有技術、優秀な人材、特許やブランド力なども内部要因
コンサルTIP: “課題=問題”と短絡的に考えがちだが、社内にある“プラス要素”もリスクと機会の管理で活かせる→ 新規プロジェクトや差別化戦略に展開
2.2. 外部の課題:組織外の要因・変化への対応
例:市場・法規制・顧客ニーズ
競合製品の台頭、法改正(安全基準アップ)、消費者のニーズ変化(エコ志向)など
他社事例(製造業A社): 海外の安価製品の参入を“外部課題”と認識→ 自社技術の高付加価値化を進め生き残りに成功
注意: 外部課題を見逃すと顧客離れや機会損失につながりやすい
2.3. リスクと機会の考え方:内部・外部の課題と直結
ISO9001が強調: “組織の状況”を分析→ 内部・外部課題を踏まえてリスクと機会を設定→ 改善や目標管理を進める
コンサル視点: 多くの企業が“負のリスク”ばかり注目するが、外部課題の中に“ビジネスチャンス”が潜んでいる場合もあり、積極的活用が成功のカギ
3. 内部の課題:具体例と対処法
3.1. 人員不足・スキルギャップ
具体例: 中堅社員の退職が相次ぎ技術継承が滞る→ 不良率増、納期遅延リスク
対策: 作業標準書の整備、教育プログラムの充実、OJT計画
失敗回避TIP: 形だけの研修スケジュールで終わらず、内部監査で技能マップや教育結果を点検し、運用実体を確認
3.2. 設備老朽化・インフラ不備
例: 生産ラインが古く頻繁に故障→ 納期・品質リスク
コンサル視点: リスク優先度を高く設定→ 経営層の判断でリニューアル予算を早期確保
成功事例(製造業B社): 設備更新を2年計画で分割→ 負担を平準化し、不良率が2%改善
3.3. 組織文化・コミュニケーション不足
問題: “トップダウン命令のみ”“部署間連携が弱い”など→ 情報共有ミス、不良原因の放置
改善: 定期横断会議、問題発見の仕組み(提案制度)、内部監査でのヒアリング強化
事例(サービス業C社): 朝の短時間MTGで顧客要望を全員共有→ クレームが激減、顧客満足度向上
3.4. その他:資金繰り、ITシステム未整備など
例: キャッシュフローが悪化すると品質投資ができない→ 不良率やクレーム対応に遅れ
対策: 経営層が財務戦略をQMSと連動→ 重要改善に予算を優先配分
4. 外部の課題:具体例と対処法
4.1. 法規制・基準の変更
例: 食品安全基準強化→ 新たな衛生管理やトレーサビリティが必須
コンサルTIP: “誰がどの情報源をモニターし、いつ法改正をキャッチするか?”を定義→ 社内ルールに組み込み
製造業D社の成功: 1年前から法改正をキャッチし先行対応→ ライバルより早く新基準製品を発売しシェア拡大
4.2. 競合他社の動向・技術革新
例: 類似商品が低価格で市場に出回る→ 自社の売上が落ちるリスク
対策: 製品差別化やサービス向上、先進技術の採用で優位性維持
事例(IT企業E社): クラウド化を機会と判断→ 既存システムをSaaSへ移行しコスト削減&新規顧客増
4.3. 顧客ニーズや市場トレンドの変化
例: エコ・サステナビリティ要求が高まる→ 環境に配慮した原材料や省エネ工程が必須
メリット: 新製品やサービスを開発すれば売上UPのチャンス
成功例: 製造業F社が顧客のエコ要望を受け、リサイクル素材商品を拡充→ 新規顧客率が2割増
4.4. 災害・社会不安リスク
例: 地震・台風など自然災害で拠点停止→ 遅延・クレーム増
コンサルTIP: BCP(事業継続計画)とリンクし、リスク評価し対策(サブ拠点、在宅勤務システムなど)
事例(サービス業G社): 電力障害対策でクラウド移行→ 災害時も運用継続が可能、顧客信頼度UP
5. Strategies: 内部の課題・外部の課題をどう扱うか?
5.1. リスクベース思考に基づく一貫した管理
流れ: 課題洗い出し→ リスクと機会を評価→ 優先度付け→ 対策プランと責任部署→ 定期的に進捗確認
メリット: 無駄な対策にリソースをかけず、本当に大きいリスク/重要な機会に集中
コンサル経験: 製造業H社で“サプライヤーの倒産リスク”を高リスクと評価→ 代替ルート確保し被害を最小化
5.2. 内部監査・マネジメントレビューで定期フォロー
内部監査: “組織の状況把握”が形骸化していないか、対策実行・責任が明確かを点検
マネジメントレビュー: トップが課題進捗を見て追加リソースを決定、目標修正を検討
メリット: リスク対策が臨機応変にアップデートされ、外部審査でも高評価を得やすい
5.3. 従業員への意識付けと共有
“リスクやチャンス”を全員で話し合う: 現場の気づきやアイデアが新事業の種になる可能性も
事例(サービス業I社): 朝礼で“今日のリスク発見”を一言ずつ出し合い、注目すべき外部の課題や内部トラブルを早期把握→ ミス激減
6. よくある失敗パターン:形骸化を防ぐために
6.1. リストだけ作って放置
原因: “課題一覧”をExcel化するが、対策期限や責任者を設定せず、PDCAが回らない
改善策: 各課題に対してアクションプランを必ず付与し、内部監査で実施状況を確認
6.2. 内部監査員が課題を深掘りせずスルー
事例: 「文書整合OK」とだけ確認→ 実際のリスクや問題に踏み込まず
対策: 監査チェックリストに“リスク・機会の管理状況”を追加し、現場ヒアリング強化
6.3. 経営層の関心が薄い
結果: リスクを把握しても予算・人材が出ず対策が実行できない→ 重大クレームや災害で大損失
コンサルTIP: 経営層に“放置リスクの損害想定”を数字で示す→ 必要投資を検討するきっかけに
7. まとめ:ISO9001で押さえる内部の課題・外部の課題!具体例と失敗回避ポイントを初心者にもやさしく解説
7.1. 記事の総括:ポイントの再確認
内部の課題: 人材・設備・組織文化など、社内要因→ 弱みや強みを整理してリスクと機会を明確化
外部の課題: 法規制・市場トレンド・競合・災害など、組織外の変化→ チャンスも含め事前対策
具体例: 製造、サービス、ITなど業種別の実例でイメージしやすく、対策の参考になる
リスクベース思考: (1)課題を洗い出し (2)優先度をつけ (3)改善策を実行 (4)内部監査で定期フォロー
失敗回避: リスト放置せず、経営層のサポートや社員への共有を強化→ PDCAを回す仕組み
7.2. 今後のアクション:初心者が取り組むべきステップ
組織内外の課題をリストアップ: 人員不足、設備、競合、法改正など→ “強み”も含む
リスクと機会を評価: 発生可能性や影響度で優先度付け→ 重要な項目にリソース集中
対策計画と責任者・期限を設定: 内部監査・レビューで継続監視→ 未達なら再対策
社内共有: 従業員が課題や機会を意識して動けるよう情報を可視化・共有
あとがき
“内部の課題”と“外部の課題”を的確に捉え、リスクと機会として管理することは、ISO9001を実務で成果に繋げるうえで欠かせないステップです。単に課題のリスト化で終わらず、責任者・期限・対策を明確化し、内部監査や経営レビューでPDCAを回すことで、クレーム減や納期確保、売上拡大といった具体的なメリットを得られます。本記事の具体例(人材・設備、法規制、競合動向など)を参考に、自社に合った課題管理を試してみてください。会社の状況や強みを正しく把握し、外部の変化に対応できるよう常にアップデートしていけば、ISO9001の認証審査でも高評価を受けるだけでなく、実際の業務効率や業績向上にも直結するでしょう。
この記事の監修者情報
金光壮太 (ISOコンサルタント)
大手商社にて営業を経験した後、ISOコンサルティングに従事。ISO9001、14001、27001を中心に、各業界の課題や特性に応じたシステム構築や運用支援を行い、企業の業務効率化や信頼性向上に貢献。製造業や建設業など、多岐にわたる業界での豊富な経験を活かし、お客様のニーズに応じた柔軟なソリューションの提案を得意としている
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