ISO9001審査のトップインタビューとは?具体的な質問例と答え方を初心者にもやさしく紹介!
- 【監修者】金光壮太(ISOトラストのコンサルタント)
- 4月21日
- 読了時間: 11分

▼ 目次
1. はじめに
1.1. 本記事の目的と想定読者
ISO9001の外部審査には、経営者(社長、取締役など)を対象に行われる「トップインタビュー」という重要な場面があります。審査員は、トップが会社の品質マネジメントにどのくらいコミットしているかを確認するため、経営方針、リスク管理、資源配分などについて直接質問を投げかけます。
本記事の目的:
トップインタビューでよく聞かれる質問内容や意図を初心者でも理解できるように解説
コンサル経験や他社事例を交えながら、形だけではなく実務に役立つ答え方のポイントを紹介
審査をスムーズに通過しつつ、社内の品質管理を実際に強化してメリットを得られる方法を学ぶ
想定読者:
これからISO9001を導入または審査を受ける企業の経営者・経営幹部
初めてトップインタビュー対応する管理責任者や品質担当者
経営層が本当にISO9001を活かしているかを審査で見られると知り、不安を感じている初心者
1.2. トップインタビューの役割:なぜ審査員はトップに質問する?
ISO9001の要件: 「トップマネジメントのコミットメント」や「経営層による方針の策定・リスク管理」が重視されている
審査員の狙い:
経営者が品質方針やリスクへの考え方を十分に理解しているか
実際に必要な資源(人員、設備、予算など)をきちんと整備しているか
経営方針と現場活動が連動しているか、形骸化していないか
初心者向け用語解説
トップマネジメント: 社長や取締役など、経営方針や資源配分に責任を持つ人
コミットメント: 経営者が“自らの意思で積極的に取り組む姿勢”を示すこと
リスクベース思考: 企業活動において起こりうるリスク(悪い可能性)と機会(良い可能性)を分析し、対策を打つ考え方
1.3. この記事で得られるメリット
トップインタビューで頻出の質問を具体的に把握→ 対応策を考えられる
コンサル実務や他社事例を参考に、形骸化せず審査員に好印象を与えられる回答のコツがわかる
経営者がQMS(品質マネジメントシステム)を本当に活かすためのヒントを得られ、認証取得後の成果に結びつけられる
2. ISO9001審査のトップインタビューとは?基礎をおさらい
2.1. トップインタビューの位置づけ
外部審査では、審査員が直接トップに質問を行い、「会社の品質方針をどう考えているか」「経営戦略と品質管理の関係性」などを確認する
目的: 経営者が主体的にISO9001を推進しているか、単なる現場任せではないかを見極める
2.2. よくあるタイミングと流れ
Stage1審査(書類・文書の確認)後やStage2審査(本番の現場審査)の冒頭で行われることが多い
トップへの質疑応答→ その後、各部門や現場のヒアリングへ進み、トップの発言と現場運用の整合が取れているかをチェック
コンサルTIP: トップインタビューが不十分だと、他の部署への審査も厳しくなる傾向がある
2.3. 失敗を防ぐための心構え
経営者が規格を暗記する必要はない→ ただし、会社の品質目標やリスク管理方針、顧客ニーズを理解していないと“形だけ”と見られがち
注意: “担当者任せ”にしている企業は、トップが質問に答えられず“本気度がない”と判断されるリスク大
3. トップインタビューでよく聞かれる質問例
3.1. 品質方針や経営方針に関する質問
例:
「御社の品質方針はどのようなものですか? 経営戦略とどのように結びついていますか?」
「品質方針を社内にどのように周知・浸透させていますか?」
回答のコツ: 自社独自の経営理念や品質目標を自分の言葉で話す→ 数字や具体策(朝礼で共有、経営レビューでモニタリングなど)を示すと説得力UP
3.2. リスク及び機会への取り組み
例:
「主要なリスクや機会は何と捉えていますか? どのように対応する予算・人員を確保していますか?」
ポイント: ISO9001:2015で“リスクベース思考”が強調→ 経営者として“どんなリスクをどう優先しているか”“機会をどう活かすか”を具体例で話す
事例: 製造業A社の社長が“原材料価格高騰リスクに対して仕入先を複数化し、機会として新製品を開発”と語り高評価
3.3. 経営資源の確保と支援体制
例:
「品質目標達成のために、どのように予算や人材を配分していますか?」
「社員教育はどのように行い、必要な設備はどう決定していますか?」
回答のコツ: “具体的にどのプロジェクトにどれだけ投資したか”など事例を挙げる→ 経営判断が数字に基づいていると好印象
コンサルTIP: トップが曖昧に答えると“資源が足りないのに放置されている”と疑われやすい
3.4. 目標設定とPDCAサイクルの維持
例:
「年度ごとの品質目標やKPIは何ですか? 進捗をどうチェックし、達成度をどう評価していますか?」
初心者向け解説: PDCA(計画→実行→評価→改善)の仕組みをトップがしっかり把握しているかを確認
失敗回避: “現場で頑張っています”だけでは不十分→ “半期ごとに経営レビューで目標進捗を監視”など具体策必須
3.5. 顧客満足やクレーム対応に対する経営者の考え
例:
「クレーム対応の流れはどうなっていますか? 経営者としてどんな再発防止策を取る予定ですか?」
コンサルTIP: 顧客満足度の向上策やクレーム発生時の原因分析フローなどを把握→ “トップが直接チェックし、次回の予算にも反映”という姿勢を示すと信頼度UP
4. トップインタビューで審査員が見ているポイント
4.1. 経営者の“コミットメント”
ISO9001要件: 経営者が品質改善を真剣に考え、社内全体をリードしているか
失敗例: “担当者が勝手にやっている”印象を与えると、コミット不足と見なされ印象ダウン
4.2. 現場を把握しているか
審査員はトップへの質問回答と、部門・現場インタビューとの整合性を確認→ トップが語る目標やリスクを現場も認識しているか
他社事例: 製造業B社の社長が“毎週工場巡回”を回答→ 現場で“社長が週1回来る”という発言と一致し高評価
4.3. 言動と実態が一致しているか
トップインタビューで経営者が「不良率は1%以下」と言ったが、現場部門インタビューで「3%超の不良率…」と発覚→ 不一致→ 信用を失う
コンサル視点: トップの言葉が具体的であるほど、社内への浸透度を証明しやすい
5. 回答のコツ:初心者でもできるポイント
5.1. 自社の品質方針や目標を自分の言葉で語る
規格の専門用語をむやみに使うより、自社のビジョンや強み・弱みを踏まえ“なぜこの品質方針か”を説明
具体例: 「当社は“顧客第一”を掲げ、クレーム件数を月2件以内に抑える目標を設定。内部監査で定期チェックし、トップレビューで改善策を決定しています」など
5.2. 具体事例を交える
“社員教育をしています”ではなく、「○○研修を年2回開催し、現場リーダーが技能検定を受けている」など
審査員視点: “経営者がどの程度具体的に把握しているか”がわかりやすいほど、高い評価
5.3. リスク管理や設備投資の実績を事前把握
新しい設備導入や、リスク対策のための予算など、実際の数字や成果を把握
コンサルTIP: 経理や総務と連携し、年度予算や実績データを共有→ 数字を示せると説得力が倍増
6. 失敗事例:トップインタビューで苦戦した企業
6.1. 事例1:製造業C社が規格用語を勘違い→ 不適合指摘
背景: 社長が“リスクはコスト面のみ”と誤解→ 安全性や顧客ニーズ変化を考慮しない姿勢を露呈
審査結果: リスクベース思考が十分でない→ 追加調査や不適合是正要求
学び: リスクベース思考=コストだけでなく、安全・品質・市場動向など総合的に把握する必要あり
6.2. 事例2:建設業D社が現場状況を知らず、不一致発覚
問題: トップが「クレームはほぼゼロ」と回答→ 現場部門で“毎月1~2件クレームあり”と判明
結果: “トップが現状を理解していない”と見なされ低評価→ 再審査で対応策を提出
コンサル視点: 月次レポートや経営レビューを活用し、日常的にクレーム情報を確認すべき
7. 形骸化防止:トップインタビューを有効活用するには?
7.1. トップ自らのマネジメントレビュー参加
経営レビュー: 半期や四半期ごとに、品質目標の進捗やリスクを確認→ トップが直接判断
メリット: トップが普段から品質指標を追っていれば、審査でも“自然に語れる”→ インタビューも説得力UP
7.2. 社内広報&勉強会の実施
方法: トップインタビューに出そうな“品質方針・リスク管理の質問”を社内で共有→ 経営層と部門責任者が同じ認識を持つ
他社事例: サービス業E社が月1回の勉強会で経営者が品質方針を解説→ 社員が理解し一体感が生まれ、不適合も激減
7.3. PDCAサイクルを回し続ける文化
ポイント: トップインタビューで問われるのは“会社が改善し続ける体制”
コンサルTIP: 改善提案制度、成果発表会など社員が自主的にPDCAに参加できる仕組みがあると形骸化しにくい
8. Q&A:トップインタビューに関する初心者の疑問
8.1. 「経営者が規格を細かく暗記しないとダメ?」
回答: 条文を丸暗記する必要はなし→ ただし“品質方針やリスク管理方針をどう進めているか”を自社の事例で語れるのが大事
注意: 規格用語の基本は押さえつつ、自社の言葉で話すと好印象
8.2. 「用意した回答を読み上げてもいい?」
回答: 最低限メモはOKだが、棒読みはマイナス印象→ “質問に対して自然に説明する”のが理想
TIP: 主要ポイントをカードに書き、キーワードだけ確認しながら回答するとスムーズ
8.3. 「時間はどのくらいかかる?複数人で受ける?」
回答: 15~30分程度が多い→ 社長や品質担当役員など数名が同席し、質問を分担
失敗回避: “誰がどの質問に答えるか”事前にすり合わせ→ 社内でリハーサルすると良い
8.4. 「英語での回答が必要になることも?」
回答: 海外審査機関や国外拠点がある場合は英語審査があり得る→ 通訳を用意したり英語で要点をまとめておく
コンサル経験: 言語障壁があると誤解を生みやすい→ 重要ポイントは通訳を介して正確に伝える
9. まとめ:ISO9001審査のトップインタビューとは?具体的な質問例と答え方を初心者にもやさしく紹介
9.1. 記事の総括:ポイントの再確認
トップインタビューの役割: 経営者がISO9001を本気で推進しているか、経営方針やリスク管理が現場と連携しているかを確認
具体的質問例: 品質方針や目標、リスク管理、予算配分、クレーム対応… “実際どう運営しているか”を聞かれる
審査員が見ているポイント: 経営者のコミット度合い、具体事例やデータを挙げられるか、現場運用との一致
回答のコツ: 自社の言葉で語る&具体事例を添える→ 数字やプロセスを把握し、形骸化を防ぐ
形骸化防止: マネジメントレビューや社内勉強会でトップ方針を日常的に共有→ PDCAを回し続ける
9.2. 今後のアクション:初心者が取り組むべきステップ
自社の品質方針を再確認: 経営戦略やリスク管理との結びつきを社長・役員が理解
主要質問リストの作成&メモ: “リスク・機会”“資源配分”“現場との連携”など→ 数字や具体例を把握
内部監査と現場ヒアリング: トップが言う方針と現場活動が合致しているか確認→ 不一致を修正
勉強会やリハーサル: トップインタビューを想定した質疑練習でスムーズに答えられるようにする
あとがき
トップインタビューは、ISO9001審査の中でも経営者が“自分の言葉で企業の品質管理を語る”重要な場面です。ここで審査員に好印象を与えられれば、全社的にISO9001をしっかり運用しているとアピールでき、認証取得や維持がスムーズになります。本記事の具体例や回答のコツを参考に、経営層自身が会社の品質方針・リスク管理・目標と成果をしっかり把握し、数字や現場事例を挙げて話せるよう準備してください。形骸化を防ぎ、経営者と現場が協力してPDCAを回す文化を築けば、クレーム削減や顧客満足度向上など、本来のISO9001のメリットを最大限に享受できるでしょう。
この記事の監修者情報
金光壮太 (ISOコンサルタント)
大手商社にて営業を経験した後、ISOコンサルティングに従事。ISO9001、14001、27001を中心に、各業界の課題や特性に応じたシステム構築や運用支援を行い、企業の業務効率化や信頼性向上に貢献。製造業や建設業など、多岐にわたる業界での豊富な経験を活かし、お客様のニーズに応じた柔軟なソリューションの提案を得意としている
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