ISO9001の設計開発とは?初心者でも理解できる具体例でわかりやすく工程を解説!
- 【監修者】金光壮太(ISOトラストのコンサルタント)
- 4月21日
- 読了時間: 11分

▼ 目次
1. はじめに
1.1. 本記事の目的と想定読者
ISO9001を導入する中で、「設計開発の項目ってどう進めればいいの?」と悩む方は多いです。製造業やIT、サービス業など、製品やサービスの基本設計からリリースまでの一連の流れを、ISO9001では“設計開発”と呼んでいます。本記事では、その設計開発プロセスを初心者向けにわかりやすく解説し、具体的な事例や成功のコツを紹介します。
本記事の目的:
ISO9001が求める設計開発プロセスの基礎を理解し、自社の実務に応用できるようにする。
具体例や他社の成功事例を通じて、形だけではなく実際に効果の出る設計開発運用を学ぶ。
開発現場が円滑に動き、クレーム削減・品質向上・顧客満足UPというメリットを享受できるようにする。
想定読者:
ISO9001導入を検討しているが、設計開発工程の意味や進め方がイメージできない初心者
現在運用中だが形骸化しつつあり、より実務的なアドバイスを求める担当者
開発プロセスの手戻りやクレーム削減を目指し、ISO9001を有効活用したい管理責任者
1.2. ISO9001と設計開発プロセスの関係:なぜ重要?
設計開発は、製品やサービスを生み出す根幹の工程。ここでのミスや不具合がその後の品質を決定づける
ISO9001では、**8.3(設計開発)**のセクションで要求事項が定義されており、「インプット(要件)」「アウトプット(成果物)」「レビュー・検証・妥当性確認」「変更管理」などがポイント
初心者向け用語解説:
検証(Verification): 設計したものが仕様どおりに機能するかをチェック
妥当性確認(Validation): その製品やサービスが“顧客ニーズ・用途”を本当に満たしているかを確認
変更管理: 設計途中の仕様変更や追加要件を、混乱なくコントロールする仕組み
コンサル視点: 設計開発が不十分だと、後工程での手戻りや不良が増え、コストや納期に大きく影響→ 顧客クレームの原因にもなりやすい。
1.3. この記事で得られるメリット
設計開発の流れを初心者でも理解しやすい形で学べる
実務で役立つ具体例(製造業・IT・サービス業など)をイメージし、自社に合わせたカスタマイズが可能
コンサル経験からのアドバイスや他社事例で失敗を防ぎ、成果を最大化できる
2. ISO9001の設計開発とは?基礎をおさらい
2.1. 設計開発プロセスの概念と目的
ISO9001の8.3項目で定義される設計開発は、顧客ニーズを具体的仕様に落とし込み、試作・検証を経て完成品を出す流れを指す
目的: 顧客や市場の要求(品質・安全・法規制など)を満たす“正しい製品/サービス”をミスなく、最適な工程でつくり上げる
メリット: 要件定義や試作段階で問題を早期発見→ 大きな手戻りやクレームを防ぎ、コストと納期を守る
2.2. 規格上の要求事項(8.3項目)のポイント
8.3.1:設計開発の計画
誰が、どの工程を、いつまでにやるか? リソースは?→ スケジュールや役割分担が明確化
8.3.2:設計開発へのインプット
顧客要件、法令、過去の失敗事例など→ 必要な情報を整えてから設計開始
8.3.3:設計開発の管理(レビュー・検証・妥当性確認)
中間段階で仕様確認→ 試作品や実機テストを行い、顧客満足度をチェック
8.3.4:アウトプット
図面、仕様書、マニュアルなど最終成果物→ 次工程や顧客が使える形で整備
8.3.5:変更管理
仕様変更時の承認フローや文書改訂の手順→ 混乱防止
2.3. 初心者が理解すべき“入口→プロセス→出口”の基本
インプット(入力): 顧客ニーズ、法規制、社内技術仕様など
設計開発プロセス(中間工程): 計画→ 試作・レビュー→ 検証と妥当性確認→ 修正
アウトプット(出口): 製品図面、試作品、完成仕様書、サービスプロトタイプなど
3. 設計開発の具体的な工程と進め方
3.1. ステップ1:顧客要求・要件定義の明確化
ポイント: 不明確な要求のまま設計を始めると、“あとから大幅修正”が発生しコスト増大
具体例(製造業の場合): 客先が「軽量化したい」と抽象的要件→ “どの程度の重量までOKか?” “強度や耐久性は?”など詳細ヒアリング→ 要件定義書に反映
コンサル視点: ここを丁寧に行うことで、後工程のトラブル・クレームを大幅削減
3.2. ステップ2:設計計画の策定(スケジュール・資源計画)
計画: 誰がリーダーか? どの部門が関与するか? 予算はいくらか? いつまでに試作→ 検証→ リリース?
他社事例: 製造業A社がプロジェクト管理ソフトやガントチャートを使い、進捗を可視化→ 納期遅延が激減
注意: 計画時点でリスクを想定し、バッファや代替案を用意しておくと柔軟に対応可能
3.3. ステップ3:試作・レビュー・検証(中間段階)
試作(プロトタイプ)を作り、関係部門や顧客とレビュー→ 意見を反映して修正
検証: 仕様書どおり動作するかテスト
妥当性確認: 顧客ニーズ・実際の使用環境で問題ないかチェック→ 実機テストやユーザー試用など
コンサルTIP: “レビューが形だけ”になりがち→ 本当に課題を洗い出す仕組み(チェックリストや複数部門参加など)を整える
3.4. ステップ4:最終アウトプットと妥当性確認
最終成果物: 製品図面、最終仕様、操作マニュアル、使用ガイドなど
顧客確認: 必要に応じて顧客承認やユーザーテスト→ 問題なければリリースへ
注意: リリース後の不具合が大きいトラブルを招く→ ラストチェックを丁寧に行う
3.5. ステップ5:変更管理と記録の保持
変更管理: 追加要件や設計ミスが発覚→ 必ず文書・図面のバージョンを更新し、承認フローを通す
失敗回避: “最新版がどれかわからない” “複数バージョンが混在”という混乱を防ぐ→ 大規模な不良やトラブルを回避
他社事例: 製造業B社が変更承認ワークフローをIT化→ リードタイム大幅短縮&ミス削減
4. 分かりやすい具体例:業種別に見た設計開発の運用
4.1. 製造業:機械部品の開発プロセス
流れ: 顧客要望→ 仕様決定→ CAD設計→ 試作部品→ 強度・耐久試験→ 修正→ 量産OK
現場のメリット: 準備段階で強度試験や耐久テストを実施→ 品質リスクや不良率を初期に抑えられる
コンサル経験: 大手自動車部品メーカーが試作段階で既に海外工場にもテスト品を送り、国際規格適合を確認→ 後の変更が最小限に
4.2. IT企業:ソフトウェア開発の設計工程
流れ: 顧客ヒアリング→ 要件定義書→ 設計書(UI/DB/機能)→ コード実装→ 単体・結合テスト→ ユーザーテスト・妥当性確認
注意: 要件定義が不十分だと“機能追加”や“仕様変更”が後半で発生→ 納期遅延やバグ増大
成功例: IT企業C社が徹底的に要件定義とプロトタイプ検証→ バグやクレームが減り、クイックデリバリーにも対応可能
4.3. サービス業:新サービス企画の開発フロー
例: 新プラン・新イベントの企画→ 顧客アンケートやテスト実施→ 試行運用→ 改善→ 正式リリース
コンサルTIP: サービス業でも“設計開発”の考え方は有効→ 形のないサービスでも試行運用(PoC)やユーザー評価を行えば失敗リスクが大きく減る
他社事例: 人材派遣サービスD社が新マッチングプランを試行し、顧客満足度を調査→ 早期に課題を改善しヒットプランへ
5. 成功事例:設計開発をISO9001で効率化した企業
5.1. 事例1:製造業B社が設計トラブルを半減
背景: 顧客要件があいまい&試作不足で、後工程で大量不良が発生→ 手戻りコスト増
導入: ISO9001の設計開発プロセスを適用→ 要件定義の精度UP、試作レビューを増やす
結果: 量産段階の不良が激減し、製品リコールのリスクが大きく下がった→ 納期も守れるようになり顧客評価UP
5.2. 事例2:IT企業C社が要件定義を明確化しリリース遅延を回避
問題: 顧客との認識違いで仕様変更が多発→ 納期常に遅れ、バグ対応コストが膨らむ
改善: “設計開発計画”を定義→ 要件定義会議を複数回実施し、試作(プロトタイプ)で顧客承認を得る仕組みを導入
成果: 大幅な後工程変更がほぼなくなり、開発期間を20%短縮→ 顧客満足度も高まり追加受注獲得
6. よくある課題:設計開発で陥る失敗パターン
6.1. 要件があいまいなまま次の工程へ進む
原因: 顧客や現場が抽象的な要望しか出せず、具体化せずに設計を開始
対策: 要件定義書に落とし込み、顧客や関係部門が合意→ お互いの認識齟齬を防ぐ
コンサル視点: 後工程で大きなやり直しになるとコストと工数が何倍もかかる
6.2. レビューや検証が形だけで深掘り不足
問題: レビュー会議で“問題なし”と終わりがち→ 実は技術的課題やリスクが潜んだまま
TIP: チェックリストを用意、複数部門や専門家を加える→ 形だけでなく実質的な議論を行う
6.3. 変更管理が曖昧でバージョン混乱
例: 複数メンバーが同じ図面や仕様書を勝手に修正→ 最新版がわからずミス連発
解決: 変更申請書・承認フローを整備し、バージョン管理ソフトを活用→ 混乱とミスを回避
7. 形骸化しない設計開発運用のコツ
7.1. 経営層の関与とリソース確保
経営者や役員が設計開発を重視し、必要な予算・ツール・人材を整備→ 部門任せにしない
メリット: 試作やテストをしっかり実施できる→ 製品やサービスの完成度UP
他社事例: 製造業E社で社長が試作評価会に参加→ 重要決定が早く、プロジェクトがスムーズに進行
7.2. 内部監査で設計開発を重点チェック
内部監査で“インプットの明確化”“レビュー記録”“変更履歴”などを確認→ 不備があれば早期是正
コンサル視点: 設計開発工程を監査対象に加える企業は、開発トラブルの発生率が低い傾向
注意: 形だけの監査では効果なし→ インタビューや現場資料をしっかりチェック
7.3. チーム連携・部門横断のレビュー体制
利点: 設計部門だけでなく、品質・生産・営業など関連部門が集まるレビュー→ 多角的視点で潜在リスクを発見
事例: 製造業F社が定期的な“デザインレビュー会議”を導入→ 不良やリコール激減、納期遵守率大幅UP
8. Q&A:設計開発に関する初心者の疑問
8.1. 「自社に設計部門がない場合は?」
回答: “設計開発なし”として宣言する企業もあるが、サービスや小規模製品にも企画や仕様決定の工程があれば対象→ 手順を整理してISOの要求に応えるか検討
TIP: 競争力を高めるためにも、簡単な企画・開発工程を設定するのは有益
8.2. 「試作って本当に必要?」
回答: 製品やサービスが複雑なほど試作は有効→ 早期段階で問題を発見し、手戻りを減らす
他社事例: IT企業G社がプロトタイプやモックアップ開発を導入→ 顧客認識違いが激減
8.3. 「外注やOEMの場合でも適用される?」
回答: 外注先に設計工程を委託するなら、その部分もQMSの適用範囲→ 外注先との契約や仕様書作成で管理
コンサル視点: OEM先とのレビュー・試作連携も設計開発プロセスの一部→ 不具合原因の責任所在を明確に
8.4. 「設計と開発の違いは?」
回答: 実務では大きく分けない企業も多い→ 設計=図面や仕様決め、開発=実作業や検証というイメージ
メリット: ISO9001では一連の工程を「設計開発」と総称→ 細かい区分にこだわりすぎず、全体フローで捉える
9. まとめ:ISO9001の設計開発とは?初心者でも理解できる具体例でわかりやすく工程を解説!
9.1. 記事の総括:ポイントの再確認
設計開発の重要性: 顧客ニーズを製品やサービスに落とし込み、不良や手戻りを防ぐ要→ クレームやコスト増を回避
ISO9001での要求(8.3): インプット、計画、レビュー・検証・妥当性確認、アウトプット、変更管理
工程の具体例: (1)要件定義 (2)計画 (3)試作・レビュー (4)最終アウトプット&妥当性確認 (5)変更管理
業種別事例: 製造業の機械部品開発、IT企業のソフトウェア開発、サービス業の新企画→ どの分野でも活用可
成功と失敗: 要件あいまい→ 手戻り、形だけのレビュー→ 見逃し、バージョン管理不足→ 混乱など
形骸化防止: 経営層の投資、部門横断レビュー、内部監査の重点チェック→ 常にPDCAを回し、品質向上
9.2. 今後のアクション:初心者が取り組むべきステップ
自社の設計開発フロー可視化: 現状のやり方を整理→ ISO9001要求と照らし合わせギャップを洗い出す
運用ルール決定: 要件定義、試作・レビュー、変更管理などのプロセスを明文化→ 関係部門へ周知
内部監査・レビュー会強化: 定期的に確認→ 不具合が早期に見つかれば手戻りやクレームを最小化
成果測定: 不良率、開発リードタイム、顧客クレーム数など指標を見てPDCA→ 継続的改善
あとがき
ISO9001の設計開発プロセスをしっかり運用すると、顧客要求を抜け漏れなく捉え、試作やレビューを行いながら不具合やミスを初期段階で潰せるようになります。製造業、IT、サービスなど、業種を問わず活用できる考え方なので、形だけの書類作りで終わらせず、実際の工程に落とし込みましょう。本記事の工程解説や事例を参考に、内部監査や経営層の関与を強化しながら、常にPDCAサイクルを回すことで、クレーム減少・コスト抑制・納期厳守といった成果が得られます。ISO9001をうまく活かし、競争力の高い製品・サービスを提供できる企業を目指してください。
この記事の監修者情報
金光壮太 (ISOコンサルタント)
大手商社にて営業を経験した後、ISOコンサルティングに従事。ISO9001、14001、27001を中心に、各業界の課題や特性に応じたシステム構築や運用支援を行い、企業の業務効率化や信頼性向上に貢献。製造業や建設業など、多岐にわたる業界での豊富な経験を活かし、お客様のニーズに応じた柔軟なソリューションの提案を得意としている
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