ISO9001をやめた企業の本当の理由とは?導入メリットと形骸化を防ぐコツを徹底解説!
- 【監修者】金光壮太(ISOトラストのコンサルタント)
- 4月25日
- 読了時間: 9分

▼ 目次
1. はじめに
1.1. 本記事の目的と想定読者
ISO9001を導入・運用している企業は多い一方で、「ISO9001をやめた企業がある」という話を耳にすることがあります。「やめる」という選択はなぜ起こるのでしょうか? その背景にはコスト負担や形骸化など、さまざまな要因が潜んでいます。
本記事の目的:
ISO9001をやめた企業が抱えていた本当の理由を整理し、同じ失敗を回避するためのポイントを学ぶ
本来の導入メリットを改めて理解し、形骸化を防ぎ実務で成果を上げるための具体策を紹介
プロのISOコンサルタントの視点を通じて、審査で高評価かつ不良・クレーム削減に結びつく運用ノウハウを得る
想定読者:
ISO9001をすでに運用中で「形だけになっていないか…」と悩んでいる品質担当者・管理責任者
これから認証取得を考えているが、“維持コストや手間に見合わない”という不安を持つ経営者
「やめた企業の実態や、再導入・独自運用のメリット」を知りたい業務改善担当者
1.2. ISO9001とは? 企業が“やめる”ケースがあるのはなぜ?
ISO9001は国際規格の品質マネジメントシステム。プロセスアプローチやPDCA(Plan-Do-Check-Act)を基盤に、不良やクレームを減らし、顧客満足度を高めるのが狙いです。
しかし、**「運用コストが合わない」「形骸化してしまった」「経営方針の変更」**などの理由で、せっかく認証を取っても途中でやめる企業が存在します。短期的視点だけで見ると“意味がない”と感じるケースもあるでしょう。
初心者向け用語解説
サーベイランス審査: 認証取得後、毎年1回行われる維持審査。形骸化が進んでいると指摘を受ける
更新審査: 3年ごとに行われる再認証審査
形骸化: 規格要件を形式的に整えているだけで、実際の業務改善につながっていない状態
1.3. この記事で得られるメリット
ISO9001をやめた企業の本当の理由を深く知り、同じ失敗を回避するための指針を得られる
導入メリット(不良率・クレーム減、業務効率UP)を再確認し、やめずに成功している企業の実例を学べる
形骸化を防ぎ実務で成果を出すコツを把握し、コスト回収以上の効果を狙った運用ができるようになる
2. なぜISO9001をやめた企業があるのか?本当の理由を探る
2.1. 理由①:導入・維持コストが大きい
初回審査費用・コンサル費・年1回のサーベイランス審査など、金銭コストがかさむ
書類作成や内部監査に人件費がかかり、小規模企業では負担感が強い
他社事例: 中小製造業が「年数百万円の維持費がつらく、取引先要求もなくなったのでやめた」というケース
2.2. 理由②:形骸化による実務効果の欠如
“マニュアルを整えたが、現場が読んでいない”“書類ばかり増え、ミスは減らない”などが起こりやすい
ISO9001の要求事項を守るための書類作成がゴールになり、現場の改善に繋がらない
コンサル視点: 書類作り→ 審査対応で精一杯→ “形だけ”の体制に社員が疲弊→ “やめよう”となる
2.3. 理由③:経営トップの理解不足・方針変更
取引先の要請で取得したものの、取引関係が変わってメリットを感じなくなった
経営者がISO9001の価値を実感せず、品質改善の仕組みとして活かす意欲がない
失敗例: サービス業A社で社長が「書類ばかりで利益につながらない」と判断→ 社員の運用モチベーションも下がり“やめる”選択
2.4. 理由④:認証後の維持管理工数に追われる
毎年の審査対応や記録作成、内部監査などが必要→ 少人数の会社だとオペレーションが回らない
他社談: 「現場を回すだけで手一杯、ISO担当が常に書類整備… 本来業務に集中できずやめた」との声
3. ISO9001の本来の導入メリット:やめずに成功している企業の実態
3.1. 不良率・クレームの削減、品質改善
業務手順を標準化し、ポイントごとにチェック体制を入れる→ エラーを早期発見・対処
成功事例(製造業B社): ISO導入後、内部監査を徹底→ 不適合の原因を是正→ 半年でクレーム数4割減
コンサルTIP: PDCAを定着させ、現場を巻き込みながら仕組みを育てると効果が出やすい
3.2. 業務効率アップ、コストダウン
プロセスアプローチ: 受注→製造→出荷→アフターサービスまでの流れを可視化し重複やムダを除去
事例(サービス業C社): 顧客対応のフローを文書化し、一元管理システム導入→ 作業時間20%短縮&ミス激減
3.3. 社員意識向上&リスクマネジメント強化
定期的な内部監査やマネジメントレビューを通じ、社員が“問題を早期に見つけて改善する”習慣を醸成
メリット: クレーム発生時の対応が速く、顧客離れを防ぎやすい→ 企業ブランド向上
3.4. 対外的信用度のアップ
BtoB取引や公共事業入札で、ISO9001認証が要件になっている場合も多い
他社事例: 建設業D社が公共工事入札のためISO取得→ 新規案件を多数獲得し売上拡大
4. やめた企業でもうまくいく?実際のその後
4.1. “ISO9001なし”で独自品質体制を構築した例
事例(IT企業E社): 内部監査やクレーム対応の独自ルールを運用し、顧客満足度を維持→ 規格認証なしでもトラブル少なめ
コンサル視点: 大手取引先が少ないor 自社独自の強みで顧客獲得できる場合は可能。ただし一定のリスクも
4.2. 結果的に再取得した企業のケース
一度やめたが、大手取引復活などで「やはり認証が必要」と再導入→ 今回は形骸化を防ぐ工夫を行い、実務改善にも成功
メリット: 過去に運用したノウハウがあれば、再取得はスムーズ→ ただし初回審査レベルの負担も
4.3. コンサルTIP: “やめても別の品質手法を継続できるか?”が重要
ISO9001に替わるシステム(独自のPDCA運用、5S、TPMなど)を守り続ける企業もある
やめたあと何もしない→ トラブル増、品質低下のリスク高→ 戻りたい時にも工数・コストがかさむ
5. ISO9001をやめる決断のリスクと注意点
5.1. 取引先の要求・入札で不利になる可能性
まだまだ多くの企業や自治体がISO認証企業との取引を好む
失敗例: 中小製造F社が認証終了後、大手メーカーのサプライヤー選定から外れ売上減
5.2. 社内品質意識の低下
規格による定期監査や手順書が無くなる→ 誰も品質チェックをしなくなり、致命的な不良やクレームが増大
コンサル経験談: やめた直後は問題なかったが、半年~1年で徐々にトラブルが増え始め後悔するケース
5.3. 再取得の手間とコスト
再度初回審査と同じステップ(文書整備、内部監査準備など)→ 時間・費用がかかる
他社例: “数年ぶりに再取得したら審査費+ コンサル費+ 社員工数で大きな負担”という声も
6. 形骸化を防ぎ、実務で成果を出すコツ
6.1. 経営層の本気度と全社的な巻き込み
トップの意志: “ISO9001を経営戦略の一部”と捉え、必要な予算・人材を投入
成功例: 社長が品質会議に毎回参加→ 現場の提案を即決し改善促進→ 不良率急減
6.2. 内部監査・マネジメントレビューで本質的な検証を行う
監査: 書類だけでなく、現場が手順どおり動いているか・改善策が実行されているかを重視
レビュー: データ(不良率、クレーム件数、納期遅延など)をトップが評価し、次の対策を決定
コンサルTIP: 定期的なPDCAが回れば、社員は“やらされている”から“自発的な改善”へ意識が変わる
6.3. 現場を巻き込んだルール・マニュアル整備
ポイント: “現場の実情に合った手順書”を作り、社員が操作しやすい形に→ やる気UP・定着率UP
事例(製造業G社): 現場リーダー参加のワークショップでマニュアル更新→ 現場納得度が高く、ミスが激減
7. Q&A:ISO9001をやめた企業に関する初心者の疑問
7.1. 「コストが高いが、やめても問題ない?」
回答: 取引先の要求や業界慣習が無ければ短期的には問題ない場合も→ ただし将来的に認証必須となる可能性や、品質管理が崩れてクレーム増のリスクがある
コンサル視点: やめる前に“ISO以外の品質保証体制”が十分かチェックを
7.2. 「やめた後に不良やクレームが増えない?」
回答: 代替の仕組み(独自ルールや教育・監査)を維持すれば大丈夫→ 何もせず放置ならリスク大
他社例: 小規模IT企業が独自のPDCA運用で顧客満足度維持し続けて成功
7.3. 「再度取得するのに時間や費用はどれくらい?」
回答: 初回認証に準じた費用・工数が必要→ 規模によるが、3~6ヶ月程度+ 数十万~数百万円が目安
経験談: 過去の文書が残っていても陳腐化している場合が多く、結局1から整備に近い労力
7.4. 「形骸化を防ぐ手軽な方法は?」
回答: 毎月の品質会議で“不良率やクレーム件数”をデータ化し、改善提案を議論→ 目標と実績のギャップを明確にする
コンサルTIP: 社員が数字を見て進捗を感じると、モチベーションも上がりPDCAが自然に回る
8. まとめ:ISO9001をやめた企業の本当の理由とは?導入メリットと形骸化を防ぐコツを徹底解説
8.1. 記事の総括:ポイントの再確認
ISO9001をやめた主な理由: コスト負担、形骸化で効果実感が薄い、経営方針変更、維持工数が大きい
本来の導入メリット: 不良・クレーム減、業務効率UP、社員意識向上、対外的信用度アップ
やめた企業のその後: 独自ルールで品質維持できる場合もあるが、再度取得時には大きなコストが再発
形骸化防止の実務コツ: 経営層の本気度、内部監査の徹底、現場の声を反映したマニュアル整備
コンサル視点: ISO9001は形だけでなく“業務改善の仕組み”として運用すれば、コストを回収する以上の価値を得られる
8.2. 今後のアクション:初心者が取り組むべきステップ
現場ヒアリング: ISO運用が形骸化していないか? 社員が不満を抱えていないか調査
PDCA強化: 内部監査やレビュー会議でデータを共有→ 改善策を実行し、次の目標へ反映
経営トップと協議: ISOを戦略的に活かすためのコスト・リソース配分や、今後の方向性を明確化
やめるか続けるか: 取引先要件・品質リスク・メリットを総合判断→ 代替システムを構築できるのか検討
あとがき
「ISO9001をやめた企業」には確かに、コスト負担や形骸化などの理由がありますが、それは多くの場合、真の運用メリットを活かしきれなかった結果とも言えます。本来のISO9001は、不良・クレームの削減、社員の意識向上、業務効率化によるコストダウンなど、長期的な効果をもたらす強力な仕組みです。本記事で紹介した成功事例やコンサルの視点を参考に、もし今「やめるか続けるか」で悩んでいるなら、まずは形骸化を防ぐ具体策を試してみてください。経営トップの本気度と現場の声をバランスよく取り入れ、内部監査でPDCAを回すことで、ISO9001が“ただの書類作り”以上の価値を発揮し、不良率やクレームの大幅削減、顧客満足度UPといった成果につながる可能性があります。
この記事の監修者情報
金光壮太 (ISOコンサルタント)
大手商社にて営業を経験した後、ISOコンサルティングに従事。ISO9001、14001、27001を中心に、各業界の課題や特性に応じたシステム構築や運用支援を行い、企業の業務効率化や信頼性向上に貢献。製造業や建設業など、多岐にわたる業界での豊富な経験を活かし、お客様のニーズに応じた柔軟なソリューションの提案を得意としている
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