ISO9001の校正とは?初心者でもわかる具体的手順と測定器管理のポイントを徹底解説!
- 【監修者】金光壮太(ISOトラストのコンサルタント)
- 4月26日
- 読了時間: 10分

▼ 目次
1. はじめに
1.1. 本記事の目的と想定読者
ISO9001の規格を運用していると、**「校正」**という言葉を耳にすると思います。これは、製造業やサービス業を問わず、測定器の精度を定期的にチェックする大切な仕組み。しかし、実際には「何をどうやるの?」と疑問に思う初心者も多いです。
本記事の目的:
ISO9001が求める校正の意味・手順・メリットを具体的に把握し、日々の管理や審査対策で役立つ知識を得る
プロのコンサルタント視点や他社事例から、形だけでなく本当に品質を高める測定器管理のコツを学ぶ
校正に関するトラブルを回避し、クレームや不良を減らすための実務的ノウハウを初心者向けにわかりやすく説明
想定読者:
ISO9001をこれから導入・運用するが、校正の具体的な流れや要件が分からない品質担当者
審査で測定器管理を指摘された経験があり、トラブルを無くす運用方法を知りたい管理責任者
社内の校正費用や管理手間に悩みつつも、コストと品質の両立を目指したい経営者・実務リーダー
1.2. ISO9001における「校正」の位置づけ:なぜ重要?
校正は、「使用している測定器や計測器が正しく動いているかどうか」を定期的に確認する行為です。
ISO9001の規格では“計測機器の精度管理”を強調しており、不良・クレーム防止に直結する重要なポイント。
初心者向け用語解説:
不確かさ:測定結果が真の値からどれだけ離れている可能性があるかの指標
トレーサビリティ:使用している標準器が、国家標準や国際標準とどのように繋がっているか示す仕組み
校正証明書:外部業者や自社内で校正した結果を証明する書類で、測定誤差や測定環境が明記される
形だけの点検だけでなく、「実際の製品品質を守るための確かな仕組み」として校正を位置づけることが大切です。
1.3. この記事で得られるメリット
校正の具体的なやり方や測定器管理の要点を理解し、日常業務で活かせる
コンサル経験&他社事例から、失敗例や審査トラブルを回避するためのヒントを得られる
初心者にもわかりやすいステップ解説で、コストを抑えつつ質の高い校正運用を実現できる
2. ISO9001における校正の基本:意味と目的
2.1. 校正とは何をするもの?
校正: 測定器が“基準となる標準器”や“認証されたマスターゲージ”等と比べて、どれだけ誤差があるか確認し必要に応じて補正や調整を行う
例: マイクロメータを国家標準にトレーサブルなブロックゲージで計測→ 誤差が0.02mmあれば補正
初心者TIP: 校正とメンテナンスは似て非なるもの→ メンテは動作不良や清掃などの維持管理、校正は“測定精度”の維持が目的
2.2. ISO9001規格が求める理由
結果の信頼性を確保: “計測器のズレ”があると、不良品混入や顧客クレームが多発
PDCAサイクルの土台: 校正記録をデータ化→ 傾向をつかみ、予防保全を行う
コンサル視点: 実際にクレームが多かった企業が校正を徹底した途端、品質トラブルが激減する例は多い
2.3. 測定器管理と校正の関係
管理台帳(測定器名、型式、校正周期、前回実施日など)+ “実際の校正作業”がセット
他社事例: 製造業A社がクラウドシステムとラベル管理を導入→ 大幅なミス削減&内部監査も容易
3. 校正の具体的手順:初心者でもわかるステップ解説
3.1. ステップ1:校正計画の策定
方法: 測定器リストを作成し、使用頻度や重要度ごとに校正周期を設定
例: 高精度要求の温度計は半年に1回、ノギスは年1回など
コンサルアドバイス: 重要工程や顧客要件が厳しい部分は短い周期、雑多な測定器はまとめて外部業者依頼
3.2. ステップ2:標準器(リファレンス)の選定
基準器: “目標となる高精度器具”で、国家標準や国際標準へトレーサブル
ポイント: 標準器自体の校正も忘れずに→ これを疎かにするとトレーサビリティが途切れ、審査で指摘されやすい
事例: 小規模企業B社は“必要な基準器だけ外注の校正業者に委託”してコスト削減
3.3. ステップ3:実際の校正作業
準備: 計測環境(温度・湿度など)を規定値に調整→ 誤差増加を防ぐ
校正手順: 計測器を標準器と比較し、指示値と真の値との差を測定→ 誤差データ取得
補正・修理: 許容範囲超なら調整、修理、交換を検討→ 計測器のラベルに“使用不可”と明示することも重要
経験談: 製造業C社が“毎月1日は測定器校正デー”を実施→ 全社員が立ち会い、意識向上に繋がった
3.4. ステップ4:結果記録・不適合対応
校正記録: 誤差量、補正値、校正した人、日時をしっかり残す
不適合管理: 校正誤差が大きい場合、該当測定器で測った製品の品質影響を調査→ 必要なら追加検査や製品回収
コンサルTIP: ここを曖昧にしている企業が審査で指摘を受ける→ “ズレが分かったけど、その影響範囲は?対策は?”という観点
3.5. ステップ5:更新・管理システムの維持
定期レビュー: 校正周期が適正か、検査件数に対する負担は適切か見直す
ITシステム連携: クラウド台帳やリマインド機能で期限切れ測定器の使用防止
他社事例: サービス業D社がアプリで自動通知→ 校正忘れ激減&審査で好印象
4. 測定器管理のポイント:ISO9001審査で評価される運用とは
4.1. 台帳(リスト)作成と識別管理
基本項目: 測定器ID、型番、校正周期、前回実施日、結果、不具合履歴
成功事例: 大手部品E社でバーコードを貼り、サッとスキャン→ 台帳と紐付け→ 内部監査で管理体制を高評価
コンサル視点: 定期的な棚卸しや台帳更新が重要→ 古い測定器や壊れた器具が放置されていないか確認
4.2. 外部委託 vs. 自社内校正
外部委託: 高精度器具や専門ノウハウが必要な場合に便利。初期投資が少なく安定精度が期待
自社内校正: 大量の測定器を頻繁に校正する企業に向く。担当者の教育や設備投資は必要
他社事例: 中小製造業F社は“重要計器のみ外部”でコスト最適化→ よく使うノギスやゲージは社内簡易校正
4.3. 内部監査でのフォローアップ
チェックポイント: “台帳と実際の数が合致するか?” “不適合時の対応を的確にできているか?”
経験談: 多くの企業が“校正期限切れの器具が使われていた”という指摘を受ける→ 適切な是正措置必須
コンサル視点: 内部監査が形骸化すると誤差発見が遅れ→ 大きなクレームや顧客不信に繋がりやすい
5. 校正を形骸化させない仕組み作り:実務的ヒント
5.1. 経営層・管理者の本気度
コスト削減優先で校正を軽視→ 後々大きなクレーム対応費が発生し、逆に損失大
成功事例: 経営者が品質方針で“測定精度最優先”を明確化→ リソース確保→ クレーム半減・工数減
5.2. 社員教育・意識づけ
何を測っているか分からないまま校正しても現場はモチベ低→ “なぜこの精度が必要?”を教える
事例(製造G社): 朝礼で“校正不良が原因でクレームがあったら莫大な損害になる”を具体例で共有→ 社員の理解が深まる
5.3. 定期レビューとPDCA
半年~年1回で“校正周期や不具合発生率”を振り返り→ さらに最適化
コンサルTIP: “頻度が多すぎて無駄になっていないか?” “逆に緩すぎて精度ズレていないか?”を見極める
6. よくあるミスと対策:校正トラブル回避のために
6.1. 1. 校正期限切れの測定器を使ってしまう
原因: 台帳更新漏れ、ラベル未管理、担当者不在時のチェック漏れ
対策: ITシステム・アプリでリマインド& ラベル色付けで期限を視覚化
他社事例: 小規模工場で赤ラベル=期限切れ、黄ラベル=1ヶ月前など色分け→ ミス激減
6.2. 2. 外部業者の校正範囲や証明書が曖昧
例: 校正証明書に測定範囲や不確かさが明記されていない→ 実際の精度保証ができず審査NG
コンサルTIP: 委託先選定時に“JCSS認定”などトレーサビリティが明確か事前確認
6.3. 3. 不適合発見後の是正処置が曖昧
失敗例: 誤差大の測定器を使っていた→ 該当製品の追跡や顧客への連絡なし→ クレーム拡大
対策: 影響範囲を洗い出すルールを明確化→ 必要なら在庫再検査や出荷停止を速やかに行う
7. コンサルタント視点:導入・維持で成果を出すコツ
7.1. プロセスアプローチとリスクベース思考の活用
測定器管理を一つのプロセスと捉え、入口(購買・受入)~使用~保管~校正まで流れを可視化
リスク評価: “もし測定器が狂った場合、顧客被害はいくらか?” → 重要度が高ければ頻度を増やす
事例: ITツール導入で不適合指摘率60%減、社内で品質意識が飛躍的に上がった製造業H社
7.2. IT活用で効率化とミス防止
例: クラウド台帳で校正日を自動リマインド→ 現場がアプリで報告、内部監査もリモート可
メリット: 作業ミスや紙書類の紛失を防ぎ、メンテコストを最適化
コンサルTIP: 初期投資はかかるが、長期的には大幅な効果と審査での好印象を得やすい
7.3. 形骸化を防ぐための人材育成
担当者教育: 誤差測定の手順、基準器の扱い方、不適合時の対応フロー
成功例: 定期的に社内研修を行う企業は、測定器関連のトラブルが格段に少ない→ 審査でも指摘がほぼゼロ
8. まとめ:ISO9001の校正とは?初心者でもわかる具体的手順と測定器管理のポイントを徹底解説
8.1. 記事の総括:ポイントの再確認
校正の意味と重要性: 測定器の誤差を定期的にチェック→ 製品品質・顧客満足を守る
具体的手順: (1)計画 (2)標準器選定 (3)校正実施 (4)記録と不適合処置 (5)システム更新
管理のポイント: 台帳整備、ラベルで期限管理、内部監査で実態を検証
形骸化防止策: 経営層の意識・社員教育・IT活用・PDCAを回す
コンサル視点: 校正は単なるコストではなく“不具合を未然に防ぐ投資”と考えると、長期的に大きなメリット
8.2. 実務への落とし込み:初心者が取り組むべきステップ
測定器リストを作る: 重要度や使用頻度を把握し、校正周期を設定
外部委託or自社内どっちが良い?: 規模やコスト、技術力を考慮し最適解を選ぶ
校正フローを明文化: 手順書+ 実際の作業を一致させる→ 現場の声を反映
定期レビュー&改善: 半年や年1回など区切りで見直し→ 不具合やコストを最適化
8.3. 参考リソース
ISO9001:2015: “7.1.5 監視および測定のリソース”に校正要件
内部監査ガイド: 測定器台帳や記録をチェックする際の質問例やポイント
コンサルセミナー: 他社の運用成功事例やITツール紹介→ スムーズな導入・運用
あとがき
ISO9001の“校正”は、測定器の精度を確保して顧客不満やクレームを減らす要となるプロセスです。形骸化すると「ただの点検」「書類作り」になりがちですが、現場で実務的に活かすことで、不良率削減・信頼度UPに大きく貢献します。本記事で紹介した手順(計画→実施→記録・不適合処理→管理更新)やコンサル視点のコツ(経営層の関与、社員教育、IT活用)をぜひ参考に、形だけでなく“品質向上”に繋がる校正運用を目指してください。適切な測定器管理が整えば、内部監査や外部審査でも高評価を得られ、企業ブランドの向上にも結びつきます。
この記事の監修者情報
金光壮太 (ISOコンサルタント)
大手商社にて営業を経験した後、ISOコンサルティングに従事。ISO9001、14001、27001を中心に、各業界の課題や特性に応じたシステム構築や運用支援を行い、企業の業務効率化や信頼性向上に貢献。製造業や建設業など、多岐にわたる業界での豊富な経験を活かし、お客様のニーズに応じた柔軟なソリューションの提案を得意としている
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