ISO9001における測定器の日常点検とは?具体例とミスを防ぐ運用ポイントを徹底解説!
- 【監修者】金光壮太(ISOトラストのコンサルタント)
- 4月26日
- 読了時間: 8分

▼ 目次
1. はじめに
1.1. 本記事の目的と想定読者
ISO9001の規格では、測定器の管理が品質管理上とても重要です。その中でも、日常的な点検をどう行うかが不良やクレームの発生を左右します。しかし、「具体的に何をチェックすればいいの?」「定期校正との違いは?」と疑問を持つ方も多いでしょう。
本記事の目的:
ISO9001で求められる測定器の日常点検について、具体的手順と運用のコツをわかりやすく解説
コンサルタント視点の失敗・成功事例を踏まえ、よくあるミスを防ぐ実務的な方法を学べる
日常点検を形だけにしないで品質向上に活かすヒントを得られる
想定読者:
ISO9001を運用中で「測定器の点検が形骸化している…」と悩む品質・管理責任者
これから規格を導入し、日常点検のやり方や審査でのアピールポイントを知りたい初心者
測定器の日常点検をどうマニュアル化すれば良いか迷っている経営者・現場リーダー
1.2. ISO9001における測定器管理:なぜ“日常点検”が大切?
ISO9001では、測定器の精度確保や誤差管理を「品質マネジメントにおいて重要な要素」として位置づけています。
日常点検は、定期校正の合間に行う“簡易的なチェック”ですが、ここをサボると計器の誤差や不良が大きくなる可能性が高い。
初心者向け用語解説:
台帳: 測定器の名前、型番、点検・校正の記録などをまとめた一覧。
内部監査: 組織内部で行う監査で、測定器日常点検が実際に機能しているかチェックする場面が多い。
本記事で得られるメリット: 日常点検をしっかり行うことで、不良やクレームを未然に防ぐと同時に、審査でも高い評価を得られます。
2. ISO9001で求められる測定器の日常点検とは?
2.1. 規格上の要件と運用のイメージ
ISO9001:2015の“7.1.5 監視および測定のリソース”では、使用する測定器や装置が適切に管理されているかを求めています。
日常点検=使用ごとor 毎日などの短スパンで行う簡易チェック。
コンサル視点: 定期校正が年1回や半年1回に対して、日常点検は「普段使う前に必ず確認する」イメージを持つとよい。
2.2. 日常点検と定期校正の違い
日常点検: レンズやゲージに傷が無いか、動きがスムーズか、ゼロ点がずれていないか等を簡単に確認
定期校正: 基準器(標準器)と比較し、数値としての誤差を定期的に測定+補正する
他社事例: 製造業A社は「日常点検で異常があればその場で使用中止し、定期校正を待たずに修理依頼」→ 大きなクレームを未然に防止
3. なぜ日常点検が重要?:実務的メリットとリスク回避
3.1. ミスを早期に発見・対処できる
日常点検のメリット: 「測定値がおかしいかも?」という軽微な異常をすぐにキャッチ→ 不良品の量産を防ぐ
事例: サービス業B社が、温度センサーの日常点検漏れから製品温度管理がずれ→ 顧客クレーム続出。日常点検を徹底後はクレーム激減
3.2. クレームや不良に繋がりやすいポイントを事前にブロック
設備の振動・埃・汚れなど、日常環境で計器がダメージを受けることが多い
具体例: メーカーC社のラインでは、作業中に計測器が落下したものの、気付かずに使用→ 数百個の不良品発生
3.3. 審査でも高評価を得られる運用
ISO審査員は「測定器を実際に使う前のチェックをどうやっているか?」をよく見る
他社事例: 大手自動車部品D社が、全スタッフが入社時に“日常点検の標準手順”を研修→ 外部審査で「日常運用が非常にしっかりしている」と好印象
4. 日常点検の具体例:初心者にもわかるチェックリスト
4.1. チェック項目①:物理的状態(傷・汚れ・破損)
表面汚れ・傷: 計測面にバリや汚れがあると、0.1mm程度の誤差が出ることも
破損: 針が曲がっている、デジタル表示が不安定、電池漏れなど
対策: 目視でサッとチェックできるようにチェックシートやラベルを準備
4.2. チェック項目②:動作・表示の正常性
アナログ計器: 針のスムーズさ、ゼロ点リセットがしやすいか
デジタル表示: LCDの欠け、電池残量、ON/OFF動作
失敗例: リチウム電池切れで表示が暗いまま計測→ 大きな納期遅延・クレームに繋がった事例
4.3. チェック項目③:ゼロ点確認や簡易リファレンス計測
ゼロ点: 使用前後にゼロ点が正しいか確認するだけで大半の問題を発見できる
簡易基準ゲージ: ノギスなどは標準ブロックゲージで1~2点測定し差異を確認
コンサル視点: 毎朝のゼロ点合わせで測定誤差を見抜き、クレームを減らしている会社は多い
4.4. 結果の記録・ラベル管理
記録方法: “OK/NG”だけでなく、NGの場合の原因・対策も簡潔にメモ→ 後の分析に活かす
ラベル: 使用可(緑)/ 使用不可(赤)など色分けすると現場で即判断
他社事例: 製造業E社が“日常点検シート”をカートに常備→ 点検結果をスマホで撮影しクラウドにアップ
5. よくある失敗・ミス事例と対策
5.1. “忙しくて点検を省略…”を常態化
原因: 生産スケジュール優先で管理者が点検を後回しに→ 結果的に不良率増加
対策: スケジュール表に“点検時間”を明確に組み込み、朝礼で“今日の担当”を確認
コンサルTIP: 日常点検に5分もかからないが、これで数百万の損失を回避した事例多数
5.2. 点検結果がNGでも放置
失敗例: 温度計にズレがあると分かっていながら、生産ライン止めるのが面倒で使い続け→ 大規模クレーム
対策: “NGの場合すぐ報告&使用不可ラベル→ 管理者判断”のフローを決め、社員が迷わないように
5.3. 形だけの記録で実際のチェックなし
状況: 現場リーダーが“書類にはOKと書くけど、見ていない”→ 内部監査や外部審査でバレる
対策: 定期的なローテーション監査や二人確認制度→ 記録と現物が一致するか検証
6. ミスを防ぐ運用ポイント:実務に活かすコツ
6.1. シンプルなチェックリスト&台帳
要点: 多すぎる項目はやる気を削ぐ→ “外観OK、動作OK、ゼロ点OK”の3~5項目で十分
他社例: 製造業F社がA4サイズの1項目1チェック表を作成→ 現場では1分以下で完了
6.2. 担当者交代やローテーション監査の導入
理由: 同じ人が毎日だと流れ作業化→ 見落としが増える
事例: サービス業G社が月毎の交代制を導入→ 新しい視点で点検し抜け漏れを発見
6.3. 内部監査でのフォローアップ
チェック方法: サンプリングで実際の測定器を棚から出して確認→ 点検表と現物が整合しているか
コンサル視点: “日常点検欄にOKがあるが、計器はホコリまみれ”など形骸化を見つけやすい
7. 日常点検と定期校正の連携:効率的な管理フロー
7.1. 日常点検で気づいた不具合を定期校正へ繋ぐ
流れ: 日常点検NG→ 計器使用停止・報告→ 必要なら早期に校正リスケ or 修理依頼
メリット: 大きな誤差を持ったまま大量生産するリスクが激減
7.2. 測定器台帳統合:日常点検結果+校正履歴を一元管理
方法: “日常点検欄”と“校正欄”を同じシステムで管理→ 一目で計器の使用状況が追える
事例: 製造H社がエクセル台帳に“日常点検”シート追加→ 内部監査で照合しやすくなり審査も高評価
7.3. 内部監査・マネジメントレビューで俯瞰
集計: 日常点検NG件数、修理費、校正費→ コストや不具合傾向を分析
PDCA: もしNGが多いなら、新しい計器購入や点検頻度上げを検討→ 改善策を経営陣に報告し予算化
8. まとめ:ISO9001における測定器の日常点検とは?具体例とミスを防ぐ運用ポイントを徹底解説!
8.1. 記事の総括:ポイントの再確認
日常点検の重要性: 定期校正だけでなく、毎日or使用時の簡易チェックで不具合を早期発見→ 不良・クレーム予防
具体例: 物理的状態、動作、ゼロ点、簡易基準ゲージなど、5分以下のチェックで品質を大きく変えられる
よくあるミス: “忙しさで省略”“NG放置”“形だけの記録”→ 大きなトラブル拡大の要因
成功のコツ: シンプルなチェックリスト、担当交代、IT管理、内部監査でPDCAを回す
定期校正との連携: 日常点検で軽微なズレを発見→ 早めの修理or再校正→ 無駄なクレームとコストを回避
8.2. 実務でのアクション:初心者が始めるステップ
チェック項目を定めたリストを作る→ 分かりやすく短時間でできるように
担当者やスケジュールの決定: 朝礼で宣言、ローテーションで形骸化防止
結果の記録&NGフロー: 使えないものは即ラベリング、上長報告→ 他の計器や補修手配
内部監査で定期フォロー: 実際にやれているか? 記録と現物の矛盾ないか?を確認
あとがき
ISO9001では、測定器の管理が製品品質を左右します。日常点検は定期校正の合間に行う小さなチェックですが、ここを怠るとクレームや不良が一気に拡大し大きな損害を招くリスクが高いです。本記事で紹介した具体的なチェックリスト項目(外観、動作、ゼロ点)や失敗防止策(担当交代、ITシステム、内部監査の活用)を取り入れて、現場での点検を形だけでなく実務に活かすようにしましょう。日常点検がしっかりしていれば、不良防止+ 審査での好評価にも繋がり、企業の信用やコスト削減に大きく寄与します。ぜひ、今日から実践してみてください。
この記事の監修者情報
金光壮太 (ISOコンサルタント)
大手商社にて営業を経験した後、ISOコンサルティングに従事。ISO9001、14001、27001を中心に、各業界の課題や特性に応じたシステム構築や運用支援を行い、企業の業務効率化や信頼性向上に貢献。製造業や建設業など、多岐にわたる業界での豊富な経験を活かし、お客様のニーズに応じた柔軟なソリューションの提案を得意としている
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