ISO9001文書体系図とは？わかりやすい具体例と作り方のステップを徹底解説！
- 【監修者】金光壮太(ISOトラストのコンサルタント)
- 4月26日
- 読了時間: 9分
▼ 目次
1. はじめに
1.1. 本記事の目的と想定読者
ISO9001を導入・運用するにあたり、**「文書体系図」**という言葉を聞いたことがある方は多いでしょう。これは、品質マネジメントに必要な文書を整理し、全体像をひと目で把握できるようにするための図です。しかし、いざ作ろうとすると「どんな文書を入れればいい？」「どの順番で階層化する？」など疑問が尽きないはずです。
本記事の目的:
ISO9001で重視される文書体系図の意味とメリットを理解する
わかりやすい具体例をもとに、組織ごとに合った文書体系図を短時間で作るための手順やコツを学ぶ
「形だけ」で終わらせずに、審査でも好評価を得られ、日々の業務改善に活かせるような運用ヒントを得る
想定読者:
「ISO9001導入を進めるが、文書体系図が何かよくわからない」初心者
文書体系図をつくってはみたものの、“複雑すぎ”や“形骸化”に悩む品質担当者
審査対策や実務効率を両立させたい経営者・管理責任者
1.2. ISO9001における文書体系図：なぜ重要？
ISO9001:2015では、品質マニュアルや手順書、記録など、必要な情報を管理し運用することが求められます。
文書体系図を作ることで、「どの文書がどんな役割を持ち、どこと繋がっているか」を一枚で整理でき、審査でも管理状況をアピールできます。
初心者向け用語解説:
品質マニュアル: 組織の品質方針や大枠のルールを示す最上位文書
手順書: 各部門・プロセスの詳細な作業方法や責任分担
記録文書: 実際に業務を行ったエビデンス（検査表や打ち合わせ記録など）
本記事のメリット: ここで紹介する具体例や作り方のステップを実践すれば、審査に役立つだけでなく、社内の混乱や文書の重複を減らし日々の業務効率もUPします。
2. ISO9001文書体系図の基本：どんな構造で考える？
2.1. 一般的な階層構造：品質マニュアル→ 手順書→ 記録文書
品質マニュアル（最上位）: 組織全体の方針や規定をまとめる。具体的には“社長の品質方針”や“どの部門がどの範囲を担当するか”など
手順書・作業標準書（中位）: “購買手順書”“製造手順書”“検査手順書”など、各プロセスの流れや責任者を示す
記録文書（下位）: 日々の検査結果や作業報告書、クレーム対応記録など。手順書で「この作業をしたらここに記録」と指定する
コンサル視点: 多くの企業では、この3階層がベース。しかし、業種や規模で文書数が増減し、もう少し細分化（作業指示書など）する場合もある。
2.2. 規格要件と文書の対応イメージ
ISO9001:2015は4章から10章まであり、企業はそれぞれの要件を文書化し、運用し、記録を残す。
例: 5章リーダーシップ→ “品質マニュアル”でトップの責任やコミット表明、7章支援→ “教育訓練手順書”や記録類
他社事例: 製造業A社では、文書体系図に「規格章番号」と“対応する文書名”を対応づけ→ 外部審査員から“わかりやすい”と好評
2.3. 形骸化しないためのポイント
“実際の業務フローに合わせた階層”にする→ 無理に規格順で文書化すると現場が混乱
事例: サービス業B社は、規格順ではなく「営業→契約→サービス提供→顧客対応」の業務プロセス順で文書体系図を整理→ 社員が迷わず活用
3. 文書体系図の作り方ステップ：初心者でもできる手順
3.1. ステップ1：現行文書の棚卸しと分類
やり方: まず社内にあるマニュアルや規定、手順書、記録類をリストアップ→ 重複・不足・更新漏れがないかチェック
コンサル経験談: ある企業で“似たような手順書が5つ”あったり、“全く使っていない古い文書”が放置されていた→ 審査時に不適合
3.2. ステップ2：品質マニュアル（最上位文書）の設計
組織の品質方針や品質目標、トップの責任など“骨格”をまとめる→ 文書体系図の“核”
事例: 製造業C社がA3サイズ1枚に品質方針・組織図・基本ルールを収めた“簡易マニュアル”→ 社員全員が見やすく審査員にも好評
3.3. ステップ3：手順書・作業標準書の作成（部門別・プロセス別）
例: 購買手順書→ 材料発注から検収までの流れ、製造手順書→ 製造工程ごとに作業手順と記録ルールなど
ポイント: 書きすぎない、しかし必要事項は網羅→ 写真や図解を入れると現場が使いやすい
3.4. ステップ4：記録文書の位置づけと運用ルール
それぞれの手順書に「どのタイミングで、どの記録が必要か」を明示→ “検査記録”“作業日報”“クレーム報告書”など
コンサルTIP: 記録の保管場所や保存期間、版管理を決めておかないと後々混乱→ 内部監査でもよく指摘されがち
3.5. ステップ5：全体を図式化（文書体系図）して共有
最上位→ 中位→ 下位という階層を一枚の図にまとめる。矢印や番号を付けて関連を示す
他社事例: サービス業D社がwebサイト化し、社員がクリックすると関連手順書や記録にリンク→ 文書検索が大幅効率化
4. 文書体系図の具体例：わかりやすいサンプル構成
4.1. サンプル構成図（製造業の場合）
品質マニュアル: 経営者の品質方針、組織体制、ISO9001対応方針
手順書: 設計手順書、購買手順書、製造手順書、検査手順書、出荷手順書…
記録文書: 受入検査記録、作業日報、検査成績書、クレーム対応記録…
ビジュアル例: ツリーダイアグラム形式で「最上位：マニュアル」→「手順書グループ（購買/製造/検査…）」→「対応する記録」
4.2. 他業種（サービス・ITなど）応用例
品質マニュアル: 会社のサービス全体の方針、リーダーシップ、顧客満足目標
手順書: 「顧客対応手順」「開発手順」「課金・請求手順」などプロセスごと
記録類: 顧客問い合わせログ、バグ管理表、請求明細書など
コンサル視点: 業種が違っても、階層構造の考え方は同じ
4.3. 電子化・デジタル活用例
クラウド管理: SharePointやGoogleドライブで文書をリンク→ 文書体系図もweb化
事例: 製造業E社がPDFや動画で手順書を作り、社員が常に最新版を閲覧→ 誤った手順書の使用ゼロ
5. よくある失敗と対策：文書体系図でのミスを防ぐポイント
5.1. 過度な細分化で現場が混乱
例: 部署ごとに手順書を作りすぎ→ 類似内容が大量に作成され、結果誰も見ない文書の山
対策: “似ている工程はまとめる”“一文書の範囲をやや広めに設定”で運用しやすく
5.2. 更新頻度が低く、古い文書が放置
典型例: 組織変更や新製品導入後も文書体系図を更新せず→ 現場運用と乖離
コンサルTIP: 変更があったら必ず文書管理責任者が体系図を更新、周知するルール設定が重要
5.3. 他部門との重複が多い
ケース: 購買部と製造部が同じ工程を別々に管理し、記録がダブる
防止策: プロセスアプローチを徹底し、“部署別”でなく“工程別”で文書化を検討
6. 形骸化を防ぎ、審査でも好評価を得る運用術
6.1. 経営層・管理責任者が積極関与
文書体系図の作成や更新を“現場任せ”にすると軽視されがち
事例: 大手製造業F社で社長が「組織全体の文書フローを理解する」と宣言→ 全員が積極的に改善提案を出し、審査でも高評価
6.2. 内部監査での実効性チェック
監査手法: “手順書にはこう書いてあるが、現場の実際作業と合っているか？”をサンプリングする
他社事例: サービス業G社の内部監査で、手順書に書かれていない実際の運用が判明→ 審査前に発覚し修正し大トラブル回避
6.3. 現場教育・簡易マニュアル活用
文書体系図をA3で掲示 or WEB化→ 新人や外注スタッフにも“どこを見ればいいか”教えやすい
コンサル視点: 現場レベルで文書体系を理解していれば、クレームや不適合が起きにくくなる
7. コンサルタント視点：導入・維持で成果を出すコツ
7.1. プロセスアプローチとリスクベース思考を結びつける
アプローチ: 文書体系図を“工程フロー”に紐づけ→ 各工程のリスク（クレームや納期遅れなど）に対応する手順書や記録を整理
メリット: 社内で“誰がどのリスクを管理すべきか”明確化しやすくなる
7.2. ITシステムで文書管理を効率化
事例: 製造業H社がクラウド上で“文書体系図”をクリック→ 手順書PDFや記録フォームが開く仕組み
利点: 版管理ミスが減り、社員が常に最新版を使用→ 審査で版ズレ指摘が皆無に
7.3. 定期レビュー＆改善を繰り返す
“半年～年1回”など区切りで「本当にこの文書構成で合っているか？」を会議で点検→ 新工程追加なら体系図に反映
コンサルTIP: 続けていくと、自然に“無駄な文書を省き、必要文書を補完する”流れになり、効率がどんどん上がる
8. まとめ：ISO9001文書体系図とは？わかりやすい具体例と作り方のステップを徹底解説
8.1. 記事の総括：ポイントの再確認
文書体系図の役割: マニュアル・手順書・記録のつながりを一枚で表し、規格要件と現場運用を円滑にする
具体例: 製造業なら「品質マニュアル→ 購買/製造/検査手順→ 各種記録」の3階層、サービス業でも考え方は共通
作り方ステップ: (1)現行文書の棚卸し (2)品質マニュアル設計 (3)手順書分類 (4)記録類設定 (5)図式化
よくある失敗: 細分化しすぎ、更新忘れ、他部門重複→ 審査で不適合や現場混乱
形骸化防止策: 経営者の関与、内部監査で確認、ITシステムやPDCAで絶えず改善
8.2. 実務でのアクション：初心者が取り組むべきステップ
社内文書の棚卸し: 重複や古い文書を特定→ 運用する文書だけを抽出
品質マニュアルと主要手順書の編成: 規格要件を満たしつつ、実際の業務プロセスに沿った区分
記録文書の関連付け: 各手順で“どの記録を残すか”を明示し、台帳やシステムで管理
文書体系図の作成・共有: 階層図をA3やWebページで社員に見える形に→ 誰でも確認しやすい
定期レビュー: 半年～年1回などで文書体系を見直し→ 新規工程や変更を適切に反映
あとがき
ISO9001文書体系図は、組織の品質マニュアルや手順書、記録文書を整理し、どこがどの規格要件に対応しているかを一目で見える化する“羅針盤”のようなものです。本記事で紹介した作り方のステップや具体例を参考に、自社の業務フローに沿ったシンプルでわかりやすい体系図を作ってみてください。形だけではなく、内部監査や日常運用で実際に活用すれば、クレーム削減や業務効率化など大きな効果が期待できます。さらに、**審査でも“現場との整合性が取れている”と評価が高まり、社員全員が“どの文書を見ればいいか”**迷わず行動できるようになるはずです。ぜひ、わかりやすい文書体系図を軸に、ISO9001運用の成功を目指してください。
この記事の監修者情報
金光壮太 (ISOコンサルタント)
大手商社にて営業を経験した後、ISOコンサルティングに従事。ISO9001、14001、27001を中心に、各業界の課題や特性に応じたシステム構築や運用支援を行い、企業の業務効率化や信頼性向上に貢献。製造業や建設業など、多岐にわたる業界での豊富な経験を活かし、お客様のニーズに応じた柔軟なソリューションの提案を得意としている
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