ISO9001:2015 内部監査の質問例を大公開!具体例付きで形骸化を防ぐ実践ノウハウ
- 【監修者】金光壮太(ISOトラストのコンサルタント)
- 4月26日
- 読了時間: 10分

▼ 目次
1. はじめに
1.1. 本記事の目的と想定読者
ISO9001を導入または運用している企業では、内部監査が欠かせません。しかし、「どんな質問をしたら不適合や改善点を的確に見つけられるのか?」という悩みが多いように感じます。特に、ISO9001:2015でリスクベース思考が強調されてから、監査のポイントが分かりにくいという声も耳にします。
本記事の目的:
ISO9001:2015で重視される内部監査を形骸化させないための具体的な質問例を紹介し、すぐに活かせるヒントを提供
実務経験&他社事例を踏まえ、失敗事例をどう避けるか、成功事例から何を学ぶかを明確化
質問リストを作る際のポイントや、監査後のフォローアップ方法を整理し、質の高い内部監査を実現する
想定読者:
内部監査担当になったばかりで「具体的にどんな質問をすれば?」と悩む初心者
「毎回同じ質問になりがち…改善につながらない」と形骸化を懸念する品質担当者
審査対策と同時に本当の業務改善を目指したい管理責任者・リーダー
1.2. ISO9001:2015の内部監査:なぜ質問例が重要?
内部監査は、企業内部で品質マネジメントシステム(QMS)が正しく動いているかをチェックし、問題点やリスクを早期に見つけるための重要プロセス。
質問例が明確だと、監査員が現場ヒアリングや書類確認で迷わずに要所を突ける→ 不適合の見逃しや、無意味な質問の繰り返しを防げる。
初心者向け用語解説:
リスクベース思考: 2015版で強調される考え方。業務のリスク(不良、クレーム)と機会(効率化、利益増)を常に意識し、対策を計画する。
不適合: 要求事項(規格や自社ルール)に合っていない状態。
是正処置: 不適合の原因を取り除き、再発防止を図る改善活動。
本記事で得られるメリット: 質問例を参考に、すぐにチェックリストが作れて、実際の監査をスムーズにスタートしやすい。
2. ISO9001:2015の内部監査:基本の流れとポイント
2.1. 内部監査の目的
不適合や問題を早期発見し、改善に繋げる: 組織内で問題を自主的に見つけることで、外部審査前に対策できる
経営陣への報告材料: 監査結果を経営レビューに反映→ 必要なリソース配分などトップが判断
コンサル視点: 単なる規格順守チェックでなく、“組織の品質体制をより強くする”段階と考えると成果を出しやすい
2.2. 監査の基本ステップ
監査計画の策定: どの部門・プロセスをいつ誰が監査するか? リスクの高さに応じて優先度を決める
監査の実施: 書類レビュー→ 担当者ヒアリング→ 作業現場確認→ 記録確認
報告書作成&是正指示: 不適合や改善点をまとめ、責任者に共有
フォローアップ監査: 是正処置の進捗や効果を確認
他社事例: 製造業A社が監査後2日以内に経営会議で結果を報告→ 必要予算を素早く確保し、改善を加速
2.3. リスクベース思考とプロセスアプローチ
2015版の内部監査では、単に手順書と現場が合っているかを見るだけでなく、“その工程のリスクは何で、対策が計画されているか?”を確認
初心者TIP: リスクを意識した質問を増やすだけで、監査が格段に実務的になる
例: 「購買工程のサプライヤーに品質リスクが高い場合、契約管理や受入検査はどう補強しているか?」
3. 内部監査の質問例:実務で役立つ具体例
※ここではISO9001:2015の章に合わせた質問例を挙げますが、プロセス単位で質問を組み立てる方法も効果的です。
3.1. 質問例①:トップマネジメントのリーダーシップ(5章)
サンプル質問
「経営者は品質方針や品質目標をどのように設定して、社員に周知していますか?」
「リスクや機会を踏まえた経営判断の具体的事例は? それを社内にどう伝えていますか?」
狙い: トップの考えが形だけでなく、具体的に現場へ落とし込まれているかを確かめる
他社事例: 製造業B社では、社長自身が月1回の品質会議に参加→ リーダーシップの実行例として審査員から高評価
3.2. 質問例②:リスクと機会の管理(6章 計画)
サンプル質問
「この工程で考慮しているリスクは? その対応策は計画書に明確になっていますか?」
「機会(新規顧客や改善によるコスト削減)をどう特定し、行動に移していますか?」
コンサル視点: 旧版ではあまり聞かれなかったリスクへの具体的対策を問うのが2015版の特徴
3.3. 質問例③:支援(7章) - 資源・教育・インフラなど
サンプル質問
「必要な資源(設備、ソフトウェア、教育)は十分に確保されていますか?」
「スキル不足の社員がいた場合、どのような研修やOJTを行い、その効果をどう測定していますか?」
事例: サービス業C社が研修後にアンケートや実務テストを実施→ 教育の有効性が測定でき審査でも好評価
3.4. 質問例④:運用(8章) - 製造・サービス提供のプロセス
サンプル質問
「作業手順書と実際の作業内容は合っていますか? 変更時の承認フローは?」
「不適合品が出た場合、どうやって検知し、どの工程で隔離・処置しているか?」
他社事例: 製造業D社で“工程Aで不具合があった場合、すぐに工程Bにも共有されるか?”を確認→ コミュニケーション不足が発覚
3.5. 質問例⑤:パフォーマンス評価(9章) - 監視・測定・内部監査・レビュー
サンプル質問
「品質目標のKPIは何ですか? 達成率が低い場合、どのように対策を検討していますか?」
「内部監査の結果は経営レビューで活かされていますか?」
初心者解説: 監査員自身の監査プロセス(9.2)もチェック→ “計画にない工程をなぜ監査したのか?”などを聞かれることも
3.6. 質問例⑥:改善(10章) - 不適合・是正処置
サンプル質問
「クレームや不適合が起きた際、原因分析はどの手法(5Why、特性要因図など)を使っていますか?」
「再発防止策をどのように評価し、社内で共有している?」
コンサル視点: ここが曖昧だと不具合が何度も繰り返される→ “根本原因除去”の有無を厳しく問う
4. 典型的な失敗パターンと原因
4.1. 形だけの質問リスト→ 実務との乖離
現象: 監査員が規格条文を丸読みして質問→ 現場は「何を答えれば?」で困惑
対策: “プロセスやリスク”の流れを意識し、柔軟に質問する(例:工程フロー図を手元に進める)
4.2. フォローアップ不足→ 不適合指摘が活かされない
失敗例: “不適合を出すが是正処置が曖昧”→ 次回同じ指摘が再発
他社事例: 製造E社で、リピート不適合が5件→ “是正処置の期限管理”をITシステムで導入し改善
4.3. 担当者が監査の目的を理解していない
傾向: “監査=チクる場”という誤解→ 隠蔽や形だけの回答が増える
コンサルTIP: “社内改善のための協力作業”と認識させる→ 監査員のコミュニケーションがカギ
5. 形骸化を防ぐ実務運用のコツ
5.1. 監査計画でリスクベース思考を盛り込み、プロセスを優先順位付け
例: クレームが多い部署や新しい工程を重点的に深堀り→ 時間を有効活用
メリット: 限られた監査リソースでも、最もリスクの高い部分から問題を発見できる
5.2. ヒアリング重視で現場の声を引き出す
方法: 書類だけ確認せず、作業者に「困りごとや改善アイデア」を聞く→ 現場が協力しやすい環境づくり
成功事例: サービス業F社が15分のヒアリングタイムを確保→ 不満や課題が多数発覚、改善後顧客満足度向上
5.3. 監査後のフォローアップと是正処置追跡
不適合リストに対し“誰がいつまでに対応? その効果をどう確認?”を明確化
コンサル視点: 経営レビューに合わせてフォローすると、トップの注目が集まり早期決定が可能
6. 内部監査で使える質問リストの作り方:短時間で作成する方法
6.1. ステップ1:監査範囲とプロセスを確定
例: 「設計」「購買」「製造」「検査」「出荷」「顧客対応」といった部門や工程で優先度を設定
他社事例: 製造G社がまず“購買&検査”に絞り込む→ 品質トラブル源となりやすい部分から監査
6.2. ステップ2:規格章対応 or プロセス対応で質問を整理
規格章対応: 4~10章をそのまま質問の枠組みに→ 体系的だが実務がやや縦割り
プロセス対応: 実際の作業フローを追う→ 現場と一緒に流れを確認しながら質問できる
コンサルTIP: どちらか一方に偏らず、組み合わせるとバランスが良い
6.3. ステップ3:リスク視点の質問を加える
例: 「この手順で失敗するとどんなリスクがある? どう対策している?」
メリット: 形だけの“手順書にあるか”確認に留まらず、本質的な防止策を聞き出せる
7. コンサルタント視点:導入・維持で成果を出す秘訣
7.1. 経営層や管理者のコミットメント
理由: 監査結果を経営が真剣に受け取り、必要な予算・人材を手配しないと改善が止まる
失敗例: “トップが監査報告をスルー”→ 不適合が永遠に放置され、外部審査で大きく指摘される
7.2. ITツール活用で効率アップ
事例: 製造H社がクラウドで質問リストと回答を共有→ 現場の是正ステータスをリアルタイムに確認
メリット: 紙のやり取りで生じるミスを削減し、フォローアップもスピーディー
7.3. 外部講師や他社との交流で監査力を向上
例: コンサル会社の研修や他社監査事例を学ぶ→ 新たな視点や質問例を得られる
効果: 自社独自の考え方に偏らず、業界全体のベストプラクティスを取り入れやすい
8. まとめ:ISO9001:2015 内部監査の質問例を大公開!具体例付きで形骸化を防ぐ実践ノウハウ
8.1. 記事の総括:ポイントの再確認
内部監査の目的: 規格順守だけでなく、リスクや改善点を発見し、組織の品質を高める
質問例(章別): トップマネジメント(5章)~リスク管理(6章)~支援(7章)~運用(8章)~パフォーマンス評価(9章)~改善(10章)まで具体的に
よくある失敗: 形だけの質問リスト、NG放置、監査目的の誤解→ クレームや不適合再発
形骸化防止策: リスクベース思考の質問、経営陣の本気度、内部監査後の是正措置追跡
コンサル視点: プロセスアプローチ+ リスク視点を組み合わせた質問が、実務と監査を結びつけ成果を出す
8.2. 実務でのアクション:初心者が取り組むべきステップ
監査計画を立案: 監査範囲(部門/工程)を決め、優先度を設定→ リスクが高い所から深堀
質問リストの作成: 規格章別 or プロセス別+ リスク視点を盛り込み、形骸化を防ぐ
ヒアリング重視の実施: 現場担当者に「困りごと」や「具体的運用」を聞き出し、書類だけに頼らない
フォローアップ徹底: 不適合や提案を迅速に経営報告→ 是正処置&再発防止を追跡
継続的教育&レビュー: 定期的に監査スキルを学び、質問リストやリスクを更新
あとがき
ISO9001:2015の内部監査を形だけにしないためには、効果的な質問例とリスク視点が不可欠です。本記事で示した質問リストはあくまでサンプルですが、これを自社の工程や課題に合わせてアレンジすれば、実務と直結した改善点を多数見つけられます。大切なのは、監査後のフォローアップをきちんと行い、指摘事項を経営レベルで対策していく流れを作ること。ぜひ今回紹介した具体例やポイントを参考に、**内部監査を単なる審査対策ではなく、品質向上とコスト削減を同時に実現する“武器”**へと進化させましょう。
この記事の監修者情報
金光壮太 (ISOコンサルタント)
大手商社にて営業を経験した後、ISOコンサルティングに従事。ISO9001、14001、27001を中心に、各業界の課題や特性に応じたシステム構築や運用支援を行い、企業の業務効率化や信頼性向上に貢献。製造業や建設業など、多岐にわたる業界での豊富な経験を活かし、お客様のニーズに応じた柔軟なソリューションの提案を得意としている
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