ISO9001品質目標の具体例:事務部門で成功する目標設定&運用のコツを徹底解説!
- 【監修者】金光壮太(ISOトラストのコンサルタント)
- 4月29日
- 読了時間: 9分

▼ 目次
1. はじめに
1.1. 本記事の目的と想定読者
ISO9001と聞くと、製造業の工場での“品質”に目が行きがちですが、事務部門の業務でも品質管理は非常に重要です。請求書や契約書の発行ミス、顧客対応の遅れなど――これらはすべてクレームにつながり、会社の信用を大きく損なうリスクがあります。本記事では、事務部門がISO9001で品質目標をどう設定し、どのように運用して成果を出せるかをわかりやすく解説します。
本記事の目的:
事務部門で役立つ具体的な品質目標例を提示し、イメージをつかんでもらう。
失敗しない目標設定と運用のコツを学び、形骸化を防ぎつつ効果を最大化する。
ISO審査でも好評価を得られるよう、文書化や運用事例を踏まえた実践方法を理解する。
想定読者:
これからISO9001認証を取得・更新しようとしている、事務部門の品質担当者・管理責任者。
「事務作業にも品質目標を設定して成果を出したい」と考える初心者。
ISO9001審査に向けて事務部門での品質目標が必要だが、どんな指標を作ればいいか分からない方。
1.2. なぜ事務部門でも品質目標が重要?
ISO9001は全社的な品質マネジメントシステム(QMS)を構築する規格→ 製造だけでなく、受注・管理・問い合わせ対応など事務領域も含む。
事務のミス(請求書誤発行、メール返信漏れなど)は直接クレームに繋がりやすく、企業の信用や顧客満足度を左右する。
初心者向け用語解説:
品質目標: 組織が達成したい品質に関する具体的目標(KPIなど)。事務部門なら“○○作業のミス率”“顧客応対速度”などが該当。
QMS: Quality Management Systemの略。品質を管理し、継続的に改善するための仕組み。
2. 事務部門におけるISO9001:品質目標設定の基本
2.1. ISO9001で事務部門を含める理由
事務作業の正確性や迅速さも顧客満足度に大きく影響→ クレーム対応や納期管理が不備だと製品・サービス全体の評価が落ちる。
他社事例(IT企業A社): ソフト開発部門だけでなく、事務の納品書発行精度を品質目標化→ クレームが大幅減少、審査員からも高評価。
2.2. 品質目標:リスクベース思考を考慮
リスクベース思考とは、どこに重大リスク(顧客トラブルの種)があるかを見極め、それを低減する目標を設定する考え方。
事務部門のリスク例:
顧客への請求ミス→ 信用喪失や支払い遅延
問い合わせ対応遅延→ クレーム増加
契約書の記載ミス→ 法的トラブル
コンサル視点: こうしたリスクの重大度に応じて“このプロセスを改善しよう”と品質目標を設定。
2.3. 形骸化を防ぐポイント
現場と一緒に決める: 現場が使っている指標や困っている問題をベースに目標設定する→ 当事者意識が生まれる。
数値化・定期測定: “クレーム率5%→3%”など明確にする→ 達成度が追いやすい。
3. 事務部門で成功する品質目標の具体例
3.1. 例①:書類ミス率の削減
目的: 請求書・契約書などの事務書類の発行ミスを減らす
目標例: 「月間発行件数に対する誤発行率を1%以下にする」
効果: クレーム減、支払い遅延防止、顧客信用度UP
3.2. 例②:電話・メール対応スピードの向上
目的: 顧客問い合わせへの初動対応を早め、満足度アップ
目標例: 「受信から24時間以内の返信率を90%以上とする」
他社成功談(サービス業B社): この目標を導入→ クレーム対応が早まりSNS評価が改善
3.3. 例③:納期管理の正確度
目的: 納期連絡ミスや遅れを減らし、社内外の混乱を防ぐ
目標例: 「納期連絡ミスを月×件以内に抑える」「納品遅延率を1%以下」
コンサル視点: 受注から発送までのプロセスを可視化→ 誰がいつ何を管理するか明確化
3.4. 例④:顧客満足度アンケートの向上
目的: 事務対応の丁寧さやスピードを顧客がどう感じているか評価
目標例: 「事務対応満足度を年1回アンケートで80点以上にする」
メリット: 改善の余地がわかりやすい→ クレームを未然に防ぐ
4. 目標設定のコツ:失敗を防ぎ成果を出す方法
4.1. SMARTの原則:具体的で測定可能な目標を
S(Specific): “請求ミス率1%以下”など、やるべきことが具体的
M(Measurable): 数値化して計測可→ 毎月集計
他社事例: 物流業C社が「発送誤りを月3件以下」→ 達成度をモニタリングし改善PDCAが回る
4.2. 部門全員で合意し、実行可能なレベルに設定
目標が高すぎる→ モチベーション低下
コンサルTIP: 初年度は達成しやすい目標→ 小さな成功体験で社員がやる気UP→ 次年度さらに難度を上げる
4.3. KPIを少数精鋭で選ぶ
たくさん作ると管理が煩雑化→ 結局どれも追いきれず形骸化
例(IT企業D社): 「バグ修正対応速度」「納品書ミス率」「顧客満足度」の3つに絞り運用→ 改善スピードが増す
5. 運用とモニタリングのポイント:形骸化を防ぐ
5.1. 定期的にデータ集計& 可視化
毎週・毎月など、目標に関する数値を集計→ 社内の掲示やイントラで共有
メリット: “今○%まで減った”と進捗が見えて、改善意識が続く
5.2. 内部監査でのフォローアップ
監査質問例: 「この目標達成率は? ミスが多い原因は分析済み?」
コンサル視点: 監査で“形だけか、成果が出ているか”を見て、必要なら是正措置→ PDCAサイクルの強化
5.3. トップや管理責任者の積極関与
目標達成に必要なリソース(予算、人員)を速やかに決定→ 部門が動きやすい
事例(製造業E社): 事務の残業が増えていた→ マネジメントレビューで新人を補充し、ミス率半減
6. ISO審査を意識した事務部門の品質目標:審査で評価されるポイント
6.1. 審査員が見る焦点:目標の“意義”と“数値化”
ただ“事務の効率UP”だけでなく、どの指標が“どれだけ”改善かを示せるか
コンサルTIP: 目標と実績の差を見える化→ “なぜ差が生まれた? どう対策する?”議論が有効
6.2. 実際の達成度と改善記録
審査員は“目標を立てた→ 実際どうなった?”をチェック→ 未達なら原因を分析し次策を検討
事例(サービス業F社): 目標達成までのアクションと成果をグラフ化→ “PDCAがしっかり回っている”と評価
6.3. 事務部門の品質=顧客満足や組織効率への貢献
“バックオフィスだから品質は関係ない”と思われがち→ しかし審査員は事務プロセスも含めて顧客満足に繋がるかを重視
他社経験談: 事務部門の不備が全社クレームを増やしていた事例→ 目標で改善後クレーム激減
7. 成功事例:事務部門で品質目標を設定・運用し成果を出した企業
7.1. 小売業G社:請求書ミス率を月0.5%→0.2%に改善
背景: 請求書の誤記載でクレーム→ 回収が遅れ売上に影響
取り組み: ISO9001で事務部門の品質目標「請求ミス率0.3%以内」を設定→ 検印プロセスやダブルチェック体制を導入
成果: 半年後0.2%達成→ クレーム減、経理業務も効率化
7.2. サービス業H社:顧客問い合わせ対応時間を平均10分→5分へ短縮
方法: コールセンターの応答速度と初回解決率をKPI化→ 目標を設定
結果: 担当者教育&マニュアル整備→ 対応時間が半減し、顧客満足度が大幅アップ
審査員の評価: “事務部門でも具体的目標を運用し、改善成果を出している”として高い評価
7.3. IT企業I社:バックオフィスの報告書提出遅延がゼロに
対策: “報告書提出期限遵守率100%”を目標→ 部署間連携を強化し、管理システムを導入
成果: レビュー会議前の準備がスムーズ→ 経営判断の速度が上がり、案件進行も早まる
コンサルコメント: 事務作業も品質目標を作るだけでなく、運用ルールを整備しPDCAを回した好例
8. まとめ:ISO9001 品質目標の具体例:事務部門で成功する目標設定&運用のコツを徹底解説
8.1. 記事の総括:ポイントの再確認
事務部門でもISO9001品質目標が必要: 請求書ミス、問い合わせ対応、納期管理など→ 企業の信頼に直結
具体例: (1)書類ミス率 (2)対応スピード (3)納期管理精度 (4)顧客満足度など→ 数値化しやすく効果が見えやすい
設定のコツ: SMART原則、無理のない範囲、部門全員の合意→ 形骸化を防ぎ、実行可能に
運用のポイント: 定期集計・可視化・内部監査でチェック→ 必要なリソースや教育を上層部が速やかに支援
審査での評価: 根拠ある目標、達成度と改善策の実行、事務部門の顧客満足貢献を示す→ “実質的なISO運用”とみなされる
8.2. 今すぐできるアクション:初心者が意識すべきステップ
事務業務の課題を洗い出し: どの作業でミスが多い? 時間がかかりすぎる?
品質目標を数値化: “ミス率×%以下”“問い合わせ対応×時間以内”など具体化
部門の合意とPDCAの準備: 社員が“達成できる”と感じるレベルを設定→ 定期的にデータ集計
内部監査& マネジメントレビュー: 進捗や問題点を上層部に報告→ 必要ならリソース配分を要望
成果の共有→ 次年度の目標更新: 達成できたら次はもう少し高い目標で挑戦し、継続的にレベルUP
あとがき
ISO9001の品質目標は、製造現場だけでなく事務部門でも十分効果を発揮します。請求書発行や問い合わせ対応など、一見“間接業務”と思われる領域こそ、目標を明確に設定し、ミスや遅延を管理すると、顧客の不満やクレームを大幅に減らせるのです。本記事で示した具体例(書類ミス率、対応速度、納期管理精度、顧客満足度など)を参考に、事務部門のリスクやニーズに合った目標を立ててみてください。定期的なモニタリングや内部監査を通じて、問題があればすぐに改善し、形骸化を防ぐ。そうして回し続ければ、社員の意識や業務効率がぐんぐん向上し、顧客満足度も確実に上がるはずです。ぜひ、ISO9001を事務部門の強化に活かし、全社的な品質向上を目指しましょう。
この記事の監修者情報
金光壮太 (ISOコンサルタント)
大手商社にて営業を経験した後、ISOコンサルティングに従事。ISO9001、14001、27001を中心に、各業界の課題や特性に応じたシステム構築や運用支援を行い、企業の業務効率化や信頼性向上に貢献。製造業や建設業など、多岐にわたる業界での豊富な経験を活かし、お客様のニーズに応じた柔軟なソリューションの提案を得意としている
Comments