初心者向け!ISO9001のリスク及び機会とは?具体例とわかりやすい対策を徹底解説
- 【監修者】金光壮太(ISOトラストのコンサルタント)
- 4月29日
- 読了時間: 9分

▼ 目次
1. はじめに
1.1. 本記事の目的と想定読者
ISO9001:2015では、「リスク及び機会の取組み」が大きなテーマになっています。ところが、多くの企業が「どんなリスクと機会を洗い出せばいいのか、具体的にわからない…」「どうやって文書化し、対策すればいい?」と悩んでいるのを目にします。本記事では、初心者向けにリスク及び機会の考え方をわかりやすく整理し、具体例と対策法を示します。製造業・サービス業・IT企業など、幅広い現場での成功事例や失敗談も紹介し、ISO審査でも好評価を得られる運用ポイントを押さえます。
この記事を読むと:
自社のリスクや機会をどう探し、どのように文書化・対策すればよいかイメージがつく
実務で活かせる具体例を学び、改善にすぐ着手できる
形骸化を防ぎ、継続的に品質向上を目指せる運用法が理解できる
1.2. なぜ“リスクおよび機会”がISO9001で重要なのか
ISO9001:2015版では「リスクベース思考」が強調されています。これは、「企業が抱えるリスクをコントロールし、プラスの要素である機会を活かすことで、品質目標を達成し、組織の安定と成長を図りましょう」という考え方です。
初心者向け用語解説:
リスク: 事故や不具合、クレームなどマイナスの結果を引き起こす可能性
機会: 新規顧客獲得や新商品開発など、プラスの成果をもたらす可能性
リスクベース思考: リスクと機会をあらかじめ見つけ、管理策を計画→ 品質やビジネスを改善
2. ISO9001:2015でのリスクベース思考と機会の捉え方
2.1. リスクベース思考の基本
ISO9001は企業が“リスクを減らし、機会を活かす”プロセスを確立するよう要求します。つまり、以下のステップを回すことが重要です:
リスク&機会の洗い出し(どんなリスクや機会があるか?)
優先順位付け(どれが重大?どれが対応しやすい?)
対策や活用策を計画・実施
効果をモニタリングし、必要に応じて改善
2.2. “機会”とは?誤解しがちなポイント
機会=「売上拡大」や「新顧客獲得」だけではありません。むしろ、社内効率UPや不良低減なども機会と捉えるのがリスクベース思考。
他社事例(製造業A社): リコール防止策として工程標準化→ 不良率減少+ 工程短縮→ コスト削減という機会に繋がった
2.3. 形骸化を防ぐ:リスクだけでなく機会も意識する
多くの企業はリスク対策に注目しがち→ “危険を減らす”だけでは積極的効果が得られない
コンサルTIP: レビュー会議などで「どの機会をどのように活かす?」という視点を常に持つと改革が進む
3. リスク及び機会の具体例:業種・部門別サンプル
3.1. 製造業のリスク&機会
リスク例: 原材料不足や高騰、不良率上昇、熟練技術者の退職、機械故障
機会例: 自動化設備導入でのコスト削減、海外需要拡大で売上UP、新素材を使った高付加価値製品展開
実例: 車載部品メーカーがリコールリスクを逆に品質強化の機会と捉え→ 顧客信頼度アップ
3.2. サービス業・コールセンターのリスク&機会
リスク例: 電話応対ミス、クレーム多発、人手不足で待ち時間増加→ CS低下
機会例: FAQサイトやAIチャット導入でオペレーター負荷軽減→ 対応スピードUP&満足度向上
コンサル視点: サービス業こそ“一瞬の対応”が顧客ロイヤルティを左右→ 機会を逃さない品質体制を作る
3.3. IT企業のリスク&機会
リスク例: サイバー攻撃、サーバーダウン、主要エンジニア退職によるノウハウ流出
機会例: 新クラウドサービスで開発効率UP、海外市場への進出、技術者教育によるイノベーション創出
他社事例(IT企業B社): 予備サーバー設置で障害リスクを低減→ 24時間対応をPRし海外クライアント獲得
4. リスクと機会の見つけ方:初心者向け手順
4.1. ステップ1:業務プロセスを洗い出す
例: 受注→ 設計→ 製造or開発→ 検査→ 出荷→ アフターサポート…などフローを図にする
コンサルTIP: 流れを可視化し、“どこでトラブルが起きる?” “どの工程で新技術を入れられる?”を検討
4.2. ステップ2:リスク評価と優先度付け
影響度×発生可能性でリスクを数値化 or High/Mid/Lowに分け、最重要リスクから対策
実例: 製造業C社が“工程×部材”でリスクスコアを作成→ スコア上位の工程に集中投資
4.3. ステップ3:機会を捉える視点
リスクを逆手に取る: クレーム原因を分析→ 不具合改善で新製品開発、顧客満足度UPという機会に
他社事例(サービス業D社): クレーム多い商品→ 改良版を企画しヒット商品化
4.4. ステップ4:リスクと機会を文書化し、行動計画を立てる
理由: 審査でも文書化が必須→ 誰が何をいつまでにするか明確化
コンサル視点: リスク対策・機会活用の“優先度”“責任者”“期限”まで明示→ PDCAを回しやすい
5. リスク及び機会への対策:失敗しない運用法
5.1. 対策①:優先度に応じた段階的アプローチ
すべてのリスク・機会を一度にやろうとせず、最も重大なものから着手
メリット: 小さな成功体験を積み重ね、社員のモチベUP→ 組織的な改善が進む
5.2. 対策②:内部監査でフォローアップ
確認: “リスク対応が実行されているか”“機会活用が成果を生んでいるか”
コンサル経験: 監査で指摘→ 速やかに改善する企業はPDCAがうまく回り、審査で好評価
5.3. 対策③:マネジメントレビューでトップが意思決定
インプット資料にリスク&機会評価を加え、経営陣がリソース割り当てや優先度変更を決める
事例(製造業E社): 部品不良リスクを重視→ レビューで予算を承認し新検査設備導入→ 不良率半減
6. 実際の運用とモニタリング:形骸化を防ぐ方法
6.1. 定期的なデータ収集と可視化
例: 不良率・クレーム数・新規顧客数など、毎月集計→ 社員が見やすいグラフ化
効果: 変化がひと目でわかり、リスクが高まれば早期に対策、機会を逃さず行動
6.2. トップや管理責任者の積極参加
形だけでなく、実際にリスクや機会のリストを見て予算配分→ 社員が“経営が本気で品質を考えている”と感じる
コンサルTIP: 経営者がレビュー会議で具体的質問→ 部門長が真剣に取り組む好循環
6.3. 成果や失敗の事例共有→ 全社員が学ぶ
“リスク対策でこれだけ損失が減った”“機会活用で新事業が成功”など実例を社内に広める
他社事例(IT企業F社): バグ対策成功例を各プロジェクトに水平展開→ 品質向上に加速
7. ISO審査で評価されるリスク&機会管理:審査員視点
7.1. 審査員が見るポイント①:リスク・機会の洗い出し根拠
どうやってリスクや機会を特定? 部門連携してる? 優先順位はどう決めた?
例: 手法として“リスクスコア表”や“リスクアセスメントシート”を作り、定期更新
7.2. 審査員が見るポイント②:対策・活用策の具体性と実行度
“実際の成果や進捗”が大事→ 文書だけで終わっていないか
事例: 製造業G社が“工程×不良率”対策をレビュー→ 3ヶ月で明確な改善が見られ高評価
7.3. 審査員が見るポイント③:改善サイクル(PDCA)が回っているか
“決めた対策をチェック→ 必要なら修正”が継続的に行われているか
コンサル視点: リスクや機会が変化したらリストを更新し、対策計画を変える柔軟性を見せるとより高評価
8. 成功事例:リスク及び機会を的確に捉え、企業が成長したケース
8.1. 製造業H社:リコールリスクを機会に品質ブランドを確立
背景: 過去にリコール多発→ イメージが悪化
リスク対策: ISO9001導入で工程改善、検査体制強化→ 不良率激減
機会活用: “高品質”をPRし新顧客を獲得→ 売上15%増
8.2. サービス業I社:クレーム多発リスクを“新サービス立ち上げ”チャンスに
内容: 電話対応が遅くクレーム頻発→ AIチャットやFAQ整備
メリット: 対応速度UP& 新たにFAQサブスクサービスを開発→ 新収益源になった
8.3. IT企業J社:セキュリティリスク→ 海外展開の足がかりに
対策: データセンター冗長化などリスク対策→ “安全性”を売りに海外顧客へアピール
成果: 海外大手企業と契約→ 受注増加し社内体制も強化
9. まとめ:初心者向け!ISO9001のリスク及び機会とは?具体例とわかりやすい対策を徹底解説
9.1. 記事の総括:ポイントの再確認
ISO9001でリスク&機会が重要な理由: 企業が不具合や損失を防ぎ、プラスの可能性を活かして品質や顧客満足度を高めるため
具体例: 製造業・サービス業・ITで異なるリスク・機会を想定→ 自社のプロセスを分析して洗い出し
失敗しない運用法: (1)優先度付け (2)内部監査&レビューでフォロー (3)トップの決断→ PDCAで継続改善
審査で評価されるポイント: リスク・機会特定の根拠、対策の実行状況、改善サイクル
成功事例: リコール・クレームリスクを逆に“品質強化”や“新サービス開発”の機会へ転換→ 企業が成長
9.2. 今すぐ取り組むアクション:初心者が押さえるステップ
業務フローを可視化し、リスク&機会をリスト化: 発生確率と影響度で優先度をつける
対策・活用計画の策定: 誰がいつまでに何をする? 必要予算や責任者を設定
内部監査とマネジメントレビュー: 進捗や成果を定期チェック→ 改善が必要なら追加リソースを投入
成果共有とリスト更新: リスクや機会は常に変化→ 最新情報を取り入れてリストを更新し続ける
あとがき
ISO9001における“リスク及び機会”の考え方は、企業が不具合やトラブルを未然に防ぐだけでなく、新たなチャンスを見つけて活用する枠組みとして非常に有効です。本記事で紹介した具体例(製造業・サービス業・ITなどの事例)や運用のコツを参考に、まずは社内でリスク&機会を洗い出してみましょう。定期的な内部監査やマネジメントレビューを通じて、リスクに早めに対応し、機会を逃さず掴むPDCAを回せば、クレーム減少や新事業開発といった目に見える成果が得られます。ISO審査でも、単なるリスト作成に終わらず実際の改善や成長につながっている姿勢が高く評価されるはず。ぜひ、リスクベース思考を武器にして、企業の品質力・競争力を大きくアップさせてください。
この記事の監修者情報
金光壮太 (ISOコンサルタント)
大手商社にて営業を経験した後、ISOコンサルティングに従事。ISO9001、14001、27001を中心に、各業界の課題や特性に応じたシステム構築や運用支援を行い、企業の業務効率化や信頼性向上に貢献。製造業や建設業など、多岐にわたる業界での豊富な経験を活かし、お客様のニーズに応じた柔軟なソリューションの提案を得意としている
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