ISO9001の受入検査とは?具体的な手順をわかりやすく徹底解説!
- 【監修者】金光壮太(ISOトラストのコンサルタント)
- 4月30日
- 読了時間: 9分

▼ 目次
1. はじめに
1.1. 本記事の目的と想定読者
ISO9001を導入しようと考えている企業や、すでに取得したが品質管理をより強化したい方に向けて、受入検査の重要性と具体的な進め方をわかりやすく解説します。とくに、初めて受入検査を担当する人や「仕入先から届く材料や部品をどうやってチェックすればいいの?」と疑問を持つ初心者の方に役立つ内容です。
この記事で得られること:
受入検査の基本的な意味とISO9001での位置づけ
実務にすぐ使える具体的な検査手順と合否判定のポイント
コンサル経験に基づく失敗例・成功例や、内部監査・外部審査で好評価を得るコツ
1.2. なぜISO9001で受入検査が重要なのか?
受入検査は、サプライヤーから仕入れた部品や原材料が、正しい仕様・品質を満たしているか最初に確認する工程です。もし受入検査を怠ったまま不良品を製造ラインに流してしまうと、後工程でのリワークや最終製品のクレームが増え、手戻りコストや顧客不満を招きます。ISO9001では「外部提供プロセスの管理」が大きなテーマの一つであり、リスクベース思考の視点でも、仕入れ段階での検査体制は品質リスクをぐっと下げる大きなカギとなります。
2. ISO9001における受入検査とは?基本の考え方
2.1. 受入検査の位置づけ:リスクベース思考への対応
ISO9001:2015で強調される“リスク及び機会”の考え方では、受入段階での不良を早期に除外できるかどうかが大きなリスク対策になります。
具体例: サプライヤーから届いた材料に微妙な寸法ズレがあっても、受入検査で判定できれば、最終製品まで流さずに済みます。
コンサルTIP: 「受入検査は仕入れた部品や材料を最初に確認する工程」という意識が重要→ 後工程の混乱を予防。
2.2. 受入検査の目的:不良品混入防止とコスト削減
仕掛品や最終製品で不良が見つかるより、受入段階でブロックする方が時間とコストを削減できます。
他社事例(製造業A社): 受入検査を強化し、これまで不良率3%→1%へ減少。結果的にクレーム対応コストが約30%下がり、顧客満足度も向上。
2.3. 設計・要求仕様との対応確認
設計図面や顧客要求に照らし合わせて検査することが肝心です。
コンサル視点: ここで曖昧な仕様や甘い基準だと、後々「そんなはずじゃなかった」とトラブルに…→ 事前にサプライヤーと検査基準をすり合わせるのがおすすめ。
3. 受入検査の具体的な手順:初心者向けステップ解説
3.1. ステップ1:検査計画の策定
受入検査を行う際、どの品目に対してどの程度の検査をするかをまず決めます。
リスク高い品目: 重要部品や高価材料は全数検査、または念入りに抜き取り率を上げる
リスク低い品目: 数量が多ければ抜き取り検査を採用し、無駄なコストを抑える
実務例: “合否基準”、サンプリング方法(AQL、MIL-STDなど)を事前に選定
3.2. ステップ2:事前準備(資料・検査工具の用意)
必要資料: 発注仕様書・設計図・検査規格書など
検査工具: ノギス、マイクロメータ、外観検査用拡大鏡など
他社事例(サービス業B社): IT企業が仕入れるパソコンパーツも、メーカー仕様書を先に確認してチェックリストを作成→ 担当者が迷わない
3.3. ステップ3:受入物品の開梱・識別
納品された箱を開封し、品名・型番・ロット番号などを確認→ 数量違いや、異なる部品が混在していないか最初にチェック
注意: 混在やラベル不備があれば、その時点でサプライヤーに連絡→ 早めに是正要求
3.4. ステップ4:検査作業(外観検査・寸法測定・機能試験など)
外観検査: キズ・汚れ・色ムラ、エッジ部分の割れなど
寸法測定: 図面寸法と公差、角度などの測定
機能試験: 必要に応じて通電テスト、動作確認
プロの視点: 検査チェックシートや写真サンプルを用い、合否の基準を統一→ 担当者間のバラつきを防ぐ
3.5. ステップ5:合否判定と記録
合格: ラベルを貼って次工程へ保管、不合格は隔離エリアへ→ なぜ不合格かも記録
メリット: どのロットがいつ、誰の判断で合否となったか追跡できる→ 後でクレームが出ても調査がスムーズ
3.6. ステップ6:不合格品の処理(返却・特採判断など)
サプライヤーへ返品・交換要求、あるいは“特別採用(特採)”するか検討→ “どうしても納期が厳しい”場面で一部許容する場合も
他社事例(製造業C社): 急ぎの生産ラインでは軽微なキズを特採で認め→ ただし後日サプライヤーと交渉し再発防止策を協議
4. 受入検査で押さえておきたいISO9001の要求事項
4.1. 7.1.5“監視測定リソース”
測定器の校正や定期点検が必須→ ノギスやマイクロメータが狂っていないか
失敗例: 校正期限を半年過ぎた測定器を使い、“合格”と判定→ 実は寸法不良品が大量に流れた
4.2. 8.4“外部提供プロセスの管理”
仕入先(サプライヤー)をどう選び、どう品質を保証してもらうか→ 受入検査はその一部
コンサルTIP: サプライヤー評価や監査を行い、“どうやって不良を減らすか”を双方で協議→ 相乗効果を生む
4.3. 8.5.4“製品・サービスの保存”
受入後の保管ルール→ 合格品と不合格品を明確に分け、再度混在しない管理
実例: 倉庫の棚を色分け(青=合格、赤=不合格)+棚番ラベルでロットを管理→ 誰でも間違いなく品を探せる
5. よくある失敗例と対策:受入検査で不適合を減らす
5.1. 検査基準が曖昧で担当者ごとに判定が違う
失敗例: Aさんは“傷OK”、Bさんは“NG”→ 結果合否がぶれる
対策: 図面公差や外観NG例の写真を用意、数値基準・外観基準を具体的に書く→ 社員全員で共有
5.2. 検査記録を残さず口頭報告だけ
後でクレーム発生時に“誰がいつ何を判定した?”が不明→ トレーサビリティ喪失
プロの経験談: “いざ不具合ロットを特定したいが、記録がない…”→ 大規模リコールや返品対応に発展、コスト増
5.3. 不合格品が隔離されず混在リスク
混雑した倉庫で合格品と不合格品が隣接→ 間違ってラインに投入してしまう
他社事例: 不合格品が最終製品に混入→ 顧客クレーム大量、社内混乱→ 以降隔離エリアを厳格運用
6. 内部監査・外部審査で評価される“受入検査の運用”とは?
6.1. 現場の理解度・手順遵守
マニュアル通りに検査しているか、現場の担当者に聞く→ “この寸法はどこを測る?”など基本質問
コンサルTIP: 担当者が答えられない= 現場教育不足と見なされる可能性→ 全員に周知が重要
6.2. 不合格品の対処・サプライヤーへの連絡体制
不合格品を速やかに隔離→ サプライヤーと合意したルールで返品や再検査を行う
事例: 製造業D社で受入検査時に発覚した不具合を即報告→ サプライヤーが早期改善し、結果的にクレーム減に成功
6.3. データ活用・不良率低減のPDCA
検査合否データを集計→ 不合格率が高い部品やサプライヤーを特定→ 改善策を立案
体験談(サービス業E社): IT備品受入で同じメーカーのパーツだけ故障多発→ サプライヤー変更しトラブル激減
7. 受入検査の運用を強化するコツ:初心者向けアドバイス
7.1. チェックリストや写真・サンプル活用
外観検査は特に担当者の“感覚差”が大きい→ “このレベルの傷ならOK/NG”を写真つきで示す
メリット: 新人でも短時間で基準を把握でき、ベテランとの判定差が減る
7.2. サンプリング手法の最適化
すべて全数検査するとコスト大→ AQLやMIL-STD-105Eなど抜き取り検査手法を使う
コンサルTIP: リスクの高低に合わせて検査頻度を調整→ 効率良く品質を保つ
7.3. サプライヤー連携と定期評価
品質改善は仕入先との協力も大事→ 定期的に評価やレビューを行い、不良原因を一緒に分析
成功例(製造業F社): 受入検査データでサプライヤーにフィードバック→ 品質が全体的に上がり、ライン停止リスクも激減
8. まとめ:ISO9001の受入検査とは?具体的な手順をわかりやすく徹底解説!
8.1. 記事の総括:ポイントの再確認
受入検査の意味: 仕入先からの材料や部品を最初に検査→ 不良を後工程へ流さず品質リスクを低減
ISO9001での位置づけ: リスクベース思考や外部提供プロセス管理で重要→ 品質マネジメントの根幹を支える
具体的手順: (1)検査計画 (2)事前準備 (3)開梱&識別 (4)検査 (5)合否判定 (6)不合格処理
よくある失敗と対策: 基準が曖昧、記録不備、不合格品混在→ 明確な基準・記録・保管ルールで解決
監査・審査視点: 担当者の理解度、データ活用、不合格時の処理など→ 実運用が評価される
運用強化コツ: 写真サンプル活用、抜き取り検査の最適化、サプライヤーと協力して品質を引き上げる
8.2. 今すぐできるアクション:初心者が意識すべきポイント
受入検査基準・合否ルールを明確化: 写真・数値付きのガイドブック
チェックリスト+記録保存: 誰がいつどんな判定をしたか→ 後々のトレーサビリティ確保
不合格品の隔離管理: ラベルや色別ラックで合格品と混在しない仕組みづくり
内部監査で重点チェック: 実際に現場がどんなふうに判定しているかモニタリング→ 形骸化を防ぐ
サプライヤーと改善協議: 不合格品の原因を共有し、原因を根本から解決→ クレームや再発リスク激減
あとがき
ISO9001の受入検査は、品質管理の最初の防波堤といえるほど重要な工程です。ここで“少しの不良品くらい大丈夫かな”と妥協すると、後工程や最終製品で大きなクレームや手戻りコストにつながりかねません。本記事で解説した具体的手順や基準の設定、記録方法、サプライヤーとの連携などを活用すれば、不良の早期発見だけでなく、リスク削減・顧客満足度向上を実現できます。ぜひ、受入検査の精度を高めながら、ISO9001の“継続的改善”を自社の中に根付かせ、企業競争力の向上を目指してください。
この記事の監修者情報
金光壮太 (ISOコンサルタント)
大手商社にて営業を経験した後、ISOコンサルティングに従事。ISO9001、14001、27001を中心に、各業界の課題や特性に応じたシステム構築や運用支援を行い、企業の業務効率化や信頼性向上に貢献。製造業や建設業など、多岐にわたる業界での豊富な経験を活かし、お客様のニーズに応じた柔軟なソリューションの提案を得意としている
Comentários