ISO9001で設備管理はどう進める?具体的な方法と例を初心者にもわかりやすく紹介!
- 【監修者】金光壮太(ISOトラストのコンサルタント)
- 5月4日
- 読了時間: 8分

▼ 目次
1. はじめに
1.1. 本記事の目的と想定読者
ISO9001というと、製造工程や品質管理がメインと思われがちですが、実は設備管理も非常に重要なポイントです。もし設備が壊れたり調子が悪くなれば、品質不良や納期遅延につながり、顧客満足度に大きく影響を与えます。
この記事の目的:
ISO9001で求められる設備管理の基本から、具体的な点検・保全手法を理解する
実務に役立つ具体例と、よくある失敗を防ぐためのコツを把握する
内部監査や外部審査で評価されるポイントを知り、スムーズに認証を取得・維持できるようにする
想定読者: これからISO9001を導入する企業の担当者や、生産部門・品質管理部門で設備管理の責任を担う初心者の方におすすめです。
1.2. ISO9001で設備管理がなぜ重要?
ISO9001:2015では、リスクベース思考が強調されています。つまり設備が壊れたらどんなリスクが起こるかを考え、故障や不具合を未然に防ぐ仕組みを整える必要があるというわけです。
設備が故障すると…
生産ライン停止→ 納期遅延→ 顧客クレーム
不良品が大量に出る→ 品質低下・再作業コスト増大
作業者の安全リスク→ モチベーション低下・事故発生リスク
2. ISO9001の設備管理とは?基本的な考え方
2.1. 規格の位置づけ:7.1.3 インフラストラクチャーと7.1.5 監視測定機器
ISO9001の条文上では、設備管理は主に以下の項目に該当します。
7.1.3 インフラストラクチャー
工場の建物・設備・機械・ITシステムなど、製品やサービスに関わる物理的基盤を整備し、維持すること。
設備点検や保全がいい加減だと、インフラ不足として不適合指摘されるケースあり。
7.1.5 監視測定機器
測定器や検査装置などが正しく管理され、校正されているか→ 品質をチェックする装置自体が故障していたら、検査結果が信用できない。
例:ノギスやマイクロメータ、温度計や圧力計などの定期校正や適切な保管
2.2. リスクベース思考と設備管理
リスクベース思考の観点では、設備が故障するリスクを評価し、故障した際の影響度(ライン停止や不良発生)を考えて、優先度の高い設備から重点的に管理するのが効果的です。
プロの視点: 全設備を同じ頻度で点検するのはコスト大→ 重要度や故障リスクが高い設備(ボトルネック工程など)を細かく点検し、他は基本点検にするなどメリハリをつける。
2.3. 設備管理がもたらすメリット
ライン停止の激減→ 納期遅延リスクが低く、顧客から信頼を得やすい
不良品の抑制→ 重大不良や大量廃棄が減り、コストダウンにもつながる
作業者の安全確保→ 故障や漏電事故などを未然に防ぎ、モチベーション維持
企業イメージUP→ 外部審査でも“設備がきちんと管理されている”と高評価されやすい
3. 設備管理の具体的ステップ:わかりやすい方法例
3.1. ステップ1:設備リスト化と優先度分析
全設備をリスト化し、設備ごとに故障リスクや生産影響度を評価→ 故障時に致命的な設備は“重点管理設備”として識別
実務例: ある食品工場では、主要ラインの包装機が止まると在庫が作れず大混乱→ 最優先設備として2重化や毎週点検を実施
3.2. ステップ2:点検計画の作成(定期点検・日常点検)
定期点検: 月次・年次など周期的に専門スタッフや外部業者が詳細な点検
日常点検: 作業者が運転前後に目視・音・振動など簡易チェック
コンサルTIP: “予防保全”も取り入れて、重要部品を寿命前に交換→ 故障ゼロを狙う
3.3. ステップ3:点検項目と記録の明確化
「騒音レベル○dB以下」「温度○度以内」「ベアリングのガタつき有無」など点検項目を具体的数値やOK/NG基準で定義
ポイント: 記録を紙やデジタルで残す→ 誰が何をいつチェックしたか追跡可能に
3.4. ステップ4:異常発見時の対応フロー
異常を見つけた作業者がすぐに報告→ 保全部門や専門業者が対応→ 修理履歴と再発防止策をマニュアルに反映
成功例: 製造業A社では振動値がしきい値超→ 即メンテチームへ連絡→ 部品交換で大故障を防ぐ
4. よくある失敗と対策:設備管理で陥りがちな落とし穴
4.1. “チェックリスト形骸化”で実質見ていない
失敗例: 点検表に○印だけ付けて提出→ 実際の点検はしていない
対策: チェックポイントを必要最小限にし、写真や図解を添付→ 内部監査で担当者に直接ヒアリングして本当に点検しているか確認
4.2. 定期点検や保全費を後回し
故障後に修理→ 大きなライン停止と顧客クレームが発生→ コストもかさむ
コンサル経験: “故障による損失(緊急修理+生産ダウン)> 予防保全費”を試算→ 経営者を説得して保全費確保
4.3. 保守部品や消耗品在庫不足
交換部品がない→ メンテまで数日かかりライン停止→ 顧客納期が大幅遅延
事例(商社B社): 重要設備の消耗部品に“安全在庫”を設定し、定期的に棚卸→ 突発交換にも対応可能になりクレーム減
5. 内部監査・外部審査で評価される「設備管理」のポイント
5.1. 点検計画と実施履歴が合っているか
“月1回点検”のルールがあれば、本当に毎月やっているか? 記録に担当者名や日付、結果が残っているか?
審査アドバイス: “計画だけ立派で実施していない”と不適合リスク→ 台帳にサイン&チェック内容を明確に
5.2. 異常時の是正措置・再発防止
故障が起きたら“原因は何か?”“次はどう防ぐか?”を報告・共有しているか→ ISO9001は再発防止重視
成功例: “異常検知→ 保全部署が原因分析→ 部品交換→ 次回交換タイミングを短縮しマニュアル更新”という流れがスムーズ→ 審査員から高評価
5.3. 校正や測定器管理の適正度合い
設備管理と同時に測定機器(ノギス、温度計など)の校正計画・履歴もチェックされる
注意: 校正切れの計器で検査していた→ 信頼性なしとみなされ不適合指摘→ 製品全体の品質保証が危ういと評価されるリスク
6. 失敗しない「設備管理」の導入事例:品質向上を実現したケース
6.1. 事例①:製造業C社がIoT監視を導入し故障激減
背景: 設備故障が頻発し納期遅延も増→ 顧客クレーム多発
対策: 主要設備にセンサーを取り付け振動・温度をリアルタイム監視→ 閾値を超えたら保全チームへアラート
成果: 突発故障が激減し、クレーム率が3%→1.5%に半減→ ライン停止コストも大幅ダウン
6.2. 事例②:サービス業D社で空調・電源設備の点検徹底しトラブルゼロ
内容: コールセンターや店舗などで空調故障や電源トラブル→ 顧客対応が滞りクレーム
導入: 年2回専門業者が詳細点検+ 毎週社内担当が外観・温度チェック→ 異常兆候を即報告
結果: ダウンタイムがほぼゼロに→ 顧客満足度&スタッフ快適度もアップ
7. まとめ:ISO9001で設備管理はどう進める?具体的な方法と例を初心者にもわかりやすく紹介
7.1. 記事の総括:ポイントの再確認
設備管理がISO9001で重要な理由: 故障→ 不良品やライン停止→ 顧客満足度低下
規格の考え方: (a)インフラ(7.1.3) (b)監視測定機器(7.1.5) (c)リスクベース思考で設備故障リスクを事前に対策
具体的ステップ:
(1)設備リスト化&優先度分析
(2)点検計画(定期点検・日常点検)
(3)点検基準や記録整備
(4)異常発見時の対応フロー
よくある失敗と対策:
(1)形骸化するチェックリスト
(2)保全費をけちって故障対応が後手
(3)交換部品在庫不足による長期停止
監査で評価されるポイント: (a)計画と実施履歴の一致 (b)異常時の是正措置 (c)校正・測定器管理
導入事例: (1)IoTセンサー活用で突発故障激減 (2)サービス設備の点検徹底→ トラブルゼロ
7.2. 今すぐできるアクション:初心者が意識すべきポイント
設備を全てリストアップし、故障時の影響度を整理→ 最重要設備から重点的に管理
日常点検・定期点検の計画表を作成し、担当者と頻度を明確化→ 記録を必ず残す
異常発見時の連絡・修理フローを決める→ 原因分析&再発防止もセットで
校正や測定器管理も同時に進める→ 設備だけでなく計測機器の精度確保
内部監査やマネジメントレビューで改善を継続→ PDCAを回して設備管理レベルをアップ
あとがき
ISO9001の導入・運用で設備管理をしっかり行うことは、製品やサービスの品質はもちろん、納期遵守や顧客満足度向上、さらに事故防止など、多方面のリスクを抑えるカギとなります。本記事で紹介した具体的ステップや注意点を参考に、まずは設備リストの作成や点検計画の策定などから始めてみましょう。形だけではない運用を実現すれば、内部監査や外部審査でも高い評価を得やすく、会社の信頼度や顧客との継続的な取引拡大につながります。設備管理を“コスト”ではなく将来のリスク回避と品質向上のための投資と位置づけ、継続的な改善を行っていきましょう。
この記事の監修者情報
金光壮太 (ISOコンサルタント)
大手商社にて営業を経験した後、ISOコンサルティングに従事。ISO9001、14001、27001を中心に、各業界の課題や特性に応じたシステム構築や運用支援を行い、企業の業務効率化や信頼性向上に貢献。製造業や建設業など、多岐にわたる業界での豊富な経験を活かし、お客様のニーズに応じた柔軟なソリューションの提案を得意としている
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