ISO9001の“不適合”をわかりやすく:定義・事例・対策を初心者視点でまるごと解説!
- 【監修者】金光壮太(ISOトラストのコンサルタント)
- 5月6日
- 読了時間: 8分

▼ 目次
1. はじめに
1.1. 本記事の目的と想定読者
ISO9001を運用するにあたって、よく耳にするのが“不適合”という言葉です。しかし「具体的にどんな状態を指すの?」「どうやって対策すればいいの?」と、実際のところピンと来ない方もいるのではないでしょうか。
この記事の目的:
ISO9001における“不適合”の定義を、初心者でもわかりやすく理解する
不適合の具体的な事例や失敗例を紹介し、実務での対策や運用ポイントを把握できるようにする
内部監査や外部審査でも“どう不適合を管理し、是正しているか”をスムーズに説明できるようになる
想定読者: これからISO9001を導入・運用したい企業の担当者、または「不適合管理の運用がイマイチうまくいっていない」と感じる経営者や品質管理者に向け、プロのISOコンサルタント視点でわかりやすく解説します。
1.2. ISO9001で“不適合”がなぜ重要?
ISO9001は“顧客満足度の継続的向上”をめざす国際規格です。その中で、不適合は品質不良や顧客クレーム、規格や社内基準のズレを指しており、これを放置すると大きなコストや信頼失墜につながる恐れがあります。
初心者向け用語解説:
不適合: 製品・サービス・プロセスが要求事項や規格から逸脱した状態
是正措置: 不適合が起きた際、その原因を取り除くための再発防止策
2. ISO9001における“不適合”の定義:基本の考え方
2.1. 規格上の定義:要求事項との不一致
ISO9001では、顧客の要求事項や規格・法令、そして自社が決めた社内基準と合わないことを不適合と呼びます。
具体例:
製品の寸法公差が図面規定を超えている
サービス業で「1時間以内に返信」というルールがあるのに実際は2日遅れた
社内で決めた手順書に書いてある工程が行われていない
2.2. 不適合管理の条文概要(8.7, 10.2など)
8.7(不適合なアウトプットの管理): 製品やサービスが不適合な場合、どう識別し、隔離し、処置するか
10.2(不適合及び是正措置): 不適合発生時に「原因分析→根本対策→効果確認」の流れを確立し、再発を防ぐ
2.3. リスクベース思考との関連
不適合は発生後に対処するだけでなく、事前にリスクを見極めて予防策を打つことが理想。
メリット: 「不良が起きやすい工程」を重点管理→ 大量不良の防止やクレーム対応コスト削減に直結
3. よくある“不適合”の具体例と事例紹介
3.1. 製造業での不適合例
製品寸法不良: 図面と実測値が食い違い→ 出荷後に顧客から返却・交換要求
ラベルや印字ミス: 異なる品番が貼られていたり、賞味期限を間違える
他社事例(製造業A社): 検査記録の記入漏れが頻発→ 後から不具合原因を追えず、社内で混乱→ 内部監査で不適合として指摘され是正
3.2. サービス業での不適合例
対応遅延や手順違反: “24時間以内に回答”ルールが守られず、顧客クレーム連発
マニュアル不備: 新人スタッフが古い手順書で作業→ 顧客要望に合わない対応
事例(サービス業B社): コールセンターのFAQ更新が滞り、誤案内→ “社内情報が不適合”と判断され改善を余儀なくされた
3.3. 文書管理やシステム運用における不適合
規格や社内ルールで“承認必須”とされている文書に承認印がない→ 審査員から不備指摘
実務TIP: バージョン管理がバラバラで、同じ作業手順が2種類存在し、現場が混乱→ 不適合対象
4. 不適合を見つけたらどうする?対策方法・運用手順の基本
4.1. 不適合品の識別と隔離(8.7)
製造業の場合: ダメな製品を良品と混ざらないよう“赤タグ”や“隔離棚”などで明確に区分
サービス業の場合: ミスが起きた書類やメール対応ログをエラーフォルダに入れて管理→ 再発防止策を全社展開
コンサルTIP: 重要なのは“現場全員が、不適合は必ず隔離する”意識を共有すること
4.2. 是正措置と原因分析(10.2)
根本原因の追求: “5WHY分析”や“特性要因図”を用いて“なぜこうなったか”を深堀り
実務例: 不良寸法品→ 原因は“測定器の校正切れ”だった→ 是正措置として“測定器管理システム導入”と定期監査を設定
4.3. 再発防止策の実行・フォローアップ
改善策をいつまでに誰が行うかを明確化し、マネジメントレビューや内部監査で効果確認
成功事例: “クレーム対応フロー”を電子化→ 担当者が24時間以内に処理できる仕組み→ 類似クレームが減少し、顧客満足度UP
5. 不適合を失敗なく管理するための運用ポイント
5.1. 記録の徹底:不適合報告書(NCR)作成
発生した不適合ごとに、いつ・どこで・どんな原因・対策内容があったか文書化→ 審査でのエビデンス
注意: 口頭伝達やメールだけだと監査員に“形だけかもしれない”と疑われるリスク
5.2. 定期的なマネジメントレビューで不適合動向を確認
経営者や管理者が、不適合件数・原因傾向・対策結果を定期的に振り返り→ 改善指示
他社事例(製造業C社): 毎月レビュー会で不良品発生件数を報告→ “同じ不具合が3ヵ月連続”なら重点対策を即決→ 効果測定で評価
5.3. 内部監査でのモニタリングとフィードバック
内部監査は不適合管理が適切に行われているか確認する場→ 実際に不適合記録や是正報告をチェック
アドバイス: “不適合を隠す”のではなく、早く発見し改善した事例を監査員に堂々と説明→ “改善のPDCAが回っている”と評価
6. よくある失敗と対策:不適合管理で陥りがちな落とし穴
6.1. 形だけの“是正措置”で根本原因を追求しない
失敗例: 不良品が出た→ “検査を増やす”だけ→ 真因が“作業手順書誤り”なのに対処せず繰り返し不良が出る
対策: “なぜその不良が発生したのか”を5回WHYを繰り返すなど、根本原因まで探る→ 手順書改訂や社員教育を実施
6.2. 不適合品を誤って良品ラインに戻す
事例: 混在防止策が甘く、赤タグつき不良品を他の作業員が良品と勘違い→ 出荷→ 顧客クレーム大
コンサルTIP: 不適合品には赤いラベル・QRコードなどで厳重管理。作業ステーションも隔離場所を明確に
6.3. 報告漏れや未処理の不適合が放置される
“軽微な不良だから”と勝手に自己判断し記録しない→ 後に大規模不適合に発展
体験談(ISO監査): 社内で隠された小さな不具合が累積し大問題化。監査員に指摘され多数の是正措置が必要となりバタバタ
7. まとめ:ISO9001の“不適合”をわかりやすく:定義・事例・対策を初心者視点でまるごと解説
7.1. 記事の総括:ポイントの再確認
不適合の定義: “規格・顧客要求・社内基準との不一致”、製品や工程、書類運用など幅広く
よくある事例: 製品寸法不良、サービス対応ミス、文書管理不備など
対策の基本: (a)不適合品/サービスの隔離 (b)原因分析→是正措置 (c)再発防止の運用
管理運用のポイント: 不適合報告書を作成し、マネジメントレビューや内部監査で継続チェック
失敗例: 形だけの対策、未処理不適合の放置、混在防止策不十分→ いずれも早期発見・PDCAが重要
7.2. 今すぐできるアクション:初心者が意識すべきポイント
自社における不適合例をリストアップ→ どれが重大リスクか優先度づけ
原因分析ツール活用: 5WHYや特性要因図で真因を追求し、再発防止策を考える
不適合報告&隔離のルール整備: ラベル管理や担当者フローを明文化→ 現場教育も徹底
定期レビューと内部監査: 不適合件数や是正策の効果を追跡→ 改善策が形骸化しないようPDCA
小さな不適合も記録: “軽微だが原因は深刻”なことも→ 大きなトラブルを未然に防ぐ
あとがき
ISO9001で“不適合”を正しく管理することで、顧客満足度の低下やクレームの発生、コスト増大などのリスクを大幅に抑えられます。ここで大事なのは、不適合を「ただのミス」として終わらせるのではなく、根本原因まで追究して再発防止に活かすというPDCAサイクル。本記事で紹介した定義や具体例、対策を踏まえ、ぜひ自社の不適合を洗い出し、記録・原因分析・是正措置の流れを明確にしてみてください。内部監査や外部審査でも、“不適合対応が徹底され、改善が継続している”と高評価を受けるだけでなく、社内のミス削減や品質向上を実感できるはずです。今すぐ始められる小さな改善から取り組み、顧客と社員の信頼をより高めていきましょう。
この記事の監修者情報
金光壮太 (ISOコンサルタント)
大手商社にて営業を経験した後、ISOコンサルティングに従事。ISO9001、14001、27001を中心に、各業界の課題や特性に応じたシステム構築や運用支援を行い、企業の業務効率化や信頼性向上に貢献。製造業や建設業など、多岐にわたる業界での豊富な経験を活かし、お客様のニーズに応じた柔軟なソリューションの提案を得意としている
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