ISO9001で言う文書化した情報って何?運用方法を具体的参考例つきで優しく紹介!
- 【監修者】金光壮太(ISOトラストのコンサルタント)
- 5月8日
- 読了時間: 8分

▼ 目次
1. はじめに
1.1. 本記事の目的と想定読者
ISO9001を導入しようとするとき、よく耳にするのが「文書化した情報」という言葉です。これは、会社の業務に必要なマニュアルや手順書、各種記録などをきちんと管理することを指しますが、「実際には何をどう管理すればいいの?」「電子データも含めるの?」と、初心者だと混乱しがちです。
この記事で得られること:
ISO9001規格で求められる「文書化した情報」の定義や目的を、初心者でも理解できる
運用方法や具体的事例を知り、すぐに自社の文書管理を改善できる
コンサル視点のアドバイスや、実際の他社事例・失敗談を参考に、効率よく導入可能
想定読者は、ISO9001をこれから取得したい企業の品質担当者や管理者で、“文書化した情報”の意味や実務での扱いに疑問を持つ初心者の方です。
1.2. ISO9001で“文書化した情報”がなぜ重要?
ISO9001の規格では、組織の業務を正しく行い、品質不良やクレームを防ぐためには、必要な文書を整備・管理し、常に最新状態を使うことが求められています。
初心者向け用語解説:
文書化した情報= 「品質マニュアル、手順書、記録など、品質活動に必要な情報のこと。紙・電子ファイル問わず対象」
2. ISO9001で言う文書化した情報って何?基礎を優しく解説
2.1. 規格上の定義:7.5文書化した情報の概要
ISO9001の7.5項では、組織が必要とする文書を策定・保管・改訂・廃棄する仕組みを求めています。どの文書をどのように管理するかは組織で決めますが、手順や役割分担をしっかり定めなければいけません。
例: 品質方針、品質マニュアル、作業手順書、点検記録、クレーム対応記録、内部監査報告書などが典型
2.2. リスクベース思考と文書管理の関係
リスクの高い業務ほど手順書をしっかり整備し、最新版を確実に使うことが大切です。古い仕様で作業してしまうと、不良率上昇やクレームにつながるリスクが高まります。
コンサルTIP: 重要工程には必ず手順書を置き、改訂時に旧版は確実に撤去 or 電子的にアクセス禁止を徹底する
2.3. 初心者が押さえるべき用語
マニュアル: 企業の方針や大まかな品質管理体制をまとめた文書(以前は“品質マニュアル”が必須だった)
記録: 検査結果、作業実績、クレーム対応履歴など、業務を行った証拠になる情報
改訂履歴: 文書を更新する際に“いつ・誰が・どこを変更した”かを管理する仕組み
3. 文書化した情報を運用するメリット:なぜ取り入れるのか?
3.1. 業務の標準化・ミス防止
最新のマニュアルや記録がきちんと整備・更新されていれば、作業員や担当者の勘違いや過去の古い手順が原因のミスを防げます。
他社事例(製造業A社): 古い図面が現場に残っていて不良多発→ 電子ファイルの管理システム導入→ 常に最新図面を参照する仕組みに→ 不良率減
3.2. 顧客への信頼度UPとクレーム削減
クレーム発生時に記録が揃っていれば原因追跡がスピーディ→ 迅速な解決が顧客満足度UPにつながる
メリット: しっかりした文書管理は“この会社は品質に真剣に取り組んでいる”と示す強力なアピール要素
3.3. 内部監査や外部審査での評価
ISO9001審査では、「文書化した情報が整理・更新されているか」が重点チェック項目。
成功例: どこに何があるかすぐ説明できる→ 審査がスムーズに進み、不適合リスクも低下
4. 文書化した情報の運用方法:具体的手順と注意点
4.1. ステップ1:必要な文書をリストアップ
マニュアル類:品質方針、組織体制など大枠を説明する文書
手順書:作業プロセスごとの詳細手順
記録:検査結果・クレーム対応履歴・内部監査報告など
実務アドバイス: 「どの業務にどんな文書が必要か」を一覧化→ 重要度や改訂頻度もメモしておく
4.2. ステップ2:文書の作成・改訂・承認フローの設定
誰が文書を作る(作成者)→ 誰がチェックする(レビュー者)→ 最終的に誰が承認(承認者)するかを明確化
コンサルTIP: 改訂したら旧版を破棄or使用不可にしないと、現場で混乱→ 不適合品やクレームリスク
4.3. ステップ3:保管場所・更新頻度・廃棄ルールを決める
紙・電子どちらでもOKだが、アクセス権やバックアップを考慮し、クラウド活用も便利
事例(サービス業B社): クラウドで共有→ 社員全員が常に最新版を参照可→ 改訂時のメール通知機能で現場周知を徹底
4.4. ステップ4:監視・評価・内部監査でのチェック
文書化した情報が形だけにならないよう、定期的に内部監査やレビュー会議で“最新か?現場が守っているか?”を確認
失敗例: 新しい手順書ができても現場に配布されず、旧版の手順を使い続け→ トラブル頻発
5. 具体的な参考例:文書化した情報の運用事例
5.1. 製造業の図面・手順書管理
改訂番号を必ず付ける&色紙やスタンプで旧版は“使用不可”と明記→ 見間違い防止
コンサル体験: ある自動車部品メーカーで、図面の誤使用が頻発→ 最新版を専用システムで一括管理し、改訂時にメール通知→ 不適合品激減
5.2. IT企業の電子ドキュメント管理
開発マニュアルやテスト記録をGitなどのバージョン管理ツールで管理→ 誰がどの変更をいつ行ったかが明確
メリット: リモートワークでも最新手順書を全員が参照でき、レビューやコメント機能で内容を改善しやすい
5.3. サービス業のマニュアル・記録運用
接客手順やクレーム対応マニュアルをタブレットに入れ、現場スタッフがいつでも確認可能
成功例: クレーム対応時に“過去の対応履歴”を即検索→ 同様のトラブルを素早く解決
6. 失敗例・成功事例:文書管理が機能しなかったケースと改善のヒント
6.1. 失敗例:電子管理と紙が混在し、どれが最新版かわからない
原因: 部署ごとにルールが違う、改訂のたびに古い紙を廃棄し忘れ→ 現場の混乱
対策: 全社共通のルールを設定→ 改訂時には古い紙を破棄し、電子データを使う流れを統一
6.2. 失敗例:改訂履歴を管理せず、旧版が放置
原因: “誰がいつどこを変更した?”が曖昧→ 不具合や不適合が発生しても原因追えず
コンサルTIP: 改訂時に承認フロー+改訂履歴欄を必須に→ 審査で“文書履歴不備”を指摘されないように
6.3. 成功事例:徹底した文書化でクレーム率半減&審査高評価
製造業C社: マニュアル・記録をすべてクラウドに集約→ 現場では常に最新版を参照し、不良率が月2%→1%
IT企業D社: バグ管理レポートや客先要望書を細かく記録→ 客先トラブル対応が迅速化し、CSスコア上昇
7. まとめ:ISO9001で言う文書化した情報って何?運用方法を具体的参考例つきで優しく紹介
7.1. 記事の総括:ポイントの再確認
文書化した情報の意味: 品質マネジメントに必要なマニュアルや手順書、記録などの全般を指す
規格上の要件(7.5): 作成~改訂~廃棄まで管理ルールが必須→ リスク大の工程は重点管理
運用手順: (1)必要文書リスト化 (2)フロー決定 (3)保管・更新・廃棄ルール (4)内部監査でチェック
具体例: (a)製造業→ 図面管理 (b)IT→ バージョン管理 (c)サービス業→ 接客マニュアル共有
失敗・成功事例: 旧版混在や改訂履歴不備でトラブル→ 徹底管理でクレーム減&審査もスムーズ
7.2. 今すぐできるアクション:初心者が意識すべきポイント
まず必要な文書を洗い出し一覧表に: マニュアル・記録・手順書など
紙か電子かを統一&改訂ルール決定: 誰が承認し、旧版はどう扱うかを明確化
アクセス権やバックアップを計画: クラウドや社内サーバでセキュリティも考慮
内部監査で実運用を点検: “最新版使ってる?”“古い紙は廃棄してる?”をチェック
形骸化防止のため定期レビュー: 業務変化に合わせてマニュアルや記録を更新
あとがき
ISO9001における“文書化した情報”は、会社の品質管理を支える大事な土台です。最新の正しい手順書を使い、記録をしっかり残すことで、作業ミスやクレーム対応の遅れなどをぐっと減らせます。本記事でご紹介した運用のステップや成功・失敗事例を参考に、ぜひ自社の文書管理を見直してみてください。もし、改訂フローが曖昧で旧版が混在しているようなら、承認ステップの整備や一元管理などから始めると効果的です。文書管理がしっかりできれば、内部監査や外部審査でも評価UPに繋がり、長期的なコスト削減や顧客満足度の向上といった成果も期待できます。
この記事の監修者情報
金光壮太 (ISOコンサルタント)
大手商社にて営業を経験した後、ISOコンサルティングに従事。ISO9001、14001、27001を中心に、各業界の課題や特性に応じたシステム構築や運用支援を行い、企業の業務効率化や信頼性向上に貢献。製造業や建設業など、多岐にわたる業界での豊富な経験を活かし、お客様のニーズに応じた柔軟なソリューションの提案を得意としている
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