【ISO14001とISO9001】違いを徹底解説!メリット・取得手順の比較ガイド!
- 【監修者】金光壮太(ISOトラストのコンサルタント)
- 11 時間前
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▼ 目次
1. はじめに
● ISO14001とISO9001を比較する意味
ISO14001とISO9001は、いずれもISO(国際標準化機構)が定めるマネジメントシステム規格です。ISO14001は環境マネジメント、ISO9001は品質マネジメントに焦点を当てています。「環境保護」と「品質向上」は一見別の話題のように思えますが、どちらの規格も**「組織が継続的に改善するための仕組み」**を求めており、共通する考え方が多く存在します。
私がコンサルに入った企業の中には、「まず品質面でしっかり体制を整え、企業イメージや取引拡大のために環境面も強化したい」と考えるケースが多くありました。そこで本記事では、ISO14001とISO9001の違いを軸に、それぞれのメリットや取得手順を比較して解説します。
● 本記事のゴール
ISO14001とISO9001の目的や対象領域の違いを把握する
各規格の導入メリット・取得までの手順を比較し、自社に合った導入方針を検討できるようになる
2. ISO14001とISO9001とは?
● ISO14001の概要:環境マネジメントシステム(EMS)
ISO14001は、企業や組織が環境に与える影響を継続的に改善するための仕組みを定めた国際規格です。
目的: 温室効果ガスや廃棄物の削減、法令遵守、環境負荷低減を組織的に取り組む
適用範囲: 製造業やサービス業、行政機関など、あらゆる組織に適用可能
主要な要求事項:
環境方針の策定
環境側面の把握(組織が環境に与える影響を分析)
法令・規制の遵守と管理
目標・計画の設定と実行
内部監査とマネジメントレビューによる継続改善
近年、SDGs(持続可能な開発目標)やESG投資(環境・社会・ガバナンス重視の投資)が注目され、企業が「環境面への取り組み」をアピールする重要性が高まっています。私のクライアントでも、海外企業と取引するためにISO14001の導入が必須条件になり、契約獲得につながった例があります。
● ISO9001の概要:品質マネジメントシステム(QMS)
ISO9001は、組織が提供する製品やサービスの品質を継続的に向上するための規格です。
目的: 顧客満足度の向上、不良率の低減、業務効率化など
適用範囲: 製造業だけでなく、サービス業や医療機関など広範囲
主要な要求事項:
品質方針・品質目標の設定
プロセスアプローチ(工程管理)の徹底
顧客ニーズや法規制の把握
内部監査・マネジメントレビュー
継続的改善(PDCAサイクル)の実施
例えば、ある製造業の企業ではISO9001を取得し、クレーム対応コストを年間数百万円単位で削減した上、リピートオーダーが増加するといった成果を上げました。
3. ISO14001とISO9001の違い・比較ポイント
1)目的と対象領域の違い
ISO14001: 地球環境・法令順守を中心とした取り組み。排出物削減や資源の有効活用など、「環境負荷を減らす」ことが大きなテーマ。
ISO9001: 顧客満足度・品質向上にフォーカス。製品やサービスの不良やクレームを減らし、ビジネス拡大に貢献する。
2)規格の構造・要求事項の違い
2015年版から、両規格とも**ハイレベルストラクチャー(HLS)**が採用され、章立ての大枠が統一されました。
共通項目: 組織の状況、リスク及び機会の特定、目標・方針の策定、内部監査など
異なる点:
ISO14001では「環境側面」「緊急事態への準備と対応」など特有の要求事項
ISO9001では「顧客要求への適合」「設計・開発」「外部提供プロセス管理」など品質特有の要求事項
3)経営効果・メリットの違い
ISO14001の経営効果:
省エネルギーや廃棄物削減によるコストダウン
社会的信用や企業イメージ向上(グリーン調達やESG投資の対象になりやすい)
ISO9001の経営効果:
不良率やクレームの削減、顧客満足度向上
社内プロセスが標準化され、ムダやミスが減る
4. メリット一覧:ISO14001・ISO9001それぞれの強み
● ISO14001導入メリット
廃棄物削減によるコストカット:私が支援した製造業A社では、廃棄物削減計画を立て、分別ルールを徹底した結果、年間で約15%の処理コスト削減を達成しました。
企業イメージアップ・新規顧客開拓:B社(サービス業)はISO14001取得をPRすることで、「環境に配慮する企業」としてマスコミにも取り上げられ、海外顧客からの問合せが増えました。
● ISO9001導入メリット
不良率の低減・クレーム対応コストの削減:C社(製造業)は、ISO9001導入に伴い検査体制を強化。初年度から不良率が3%→1%に減り、クレーム対応の人件費を大幅に削減しました。
業務可視化によるプロセス改善・属人化の防止:D社(IT企業)は、社内の作業手順を標準化。社員の離職によるノウハウ流出リスクが減り、従業員満足度の向上にもつながりました。
5. 取得手順の比較:ISO14001 vs ISO9001
1)基本的な導入プロセスの共通点
どちらの規格も**PDCAサイクル(Plan-Do-Check-Act)**を軸にした導入手順が基本です。
方針策定(目標設定)
計画(リスク・機会の特定、体制整備)
運用(実行)
評価(監査・測定)
改善(是正処置、目標更新)
2)ISO14001特有のステップ
環境影響評価(EIA): 事業活動が環境にどう影響するかを洗い出し、優先度を決める。
法規制調査: 廃棄物処理法や水質汚濁防止法など、多岐にわたる法令を確認。
緊急事態対応: 化学物質漏洩や災害時の備えなど、組織特有のリスクに対応策を準備。
3)ISO9001特有のステップ
品質目標の設定: 不良率何%削減、顧客満足度を何%にする、など。
プロセスアプローチ: 設計・開発、購買、製造(またはサービス提供)などの各工程で品質を保つ仕組みづくり。
顧客満足度調査の仕組み: 定期アンケートやクレーム対応の分析を通じて、継続的な改善を行う。
4)認証費用・期間の比較
費用: 規模や業種、認証機関によって差があるが、コンサル費用+審査費用+内部リソースの人件費が主。
期間: おおむね6ヶ月〜1年程度が目安。既に他のISO(9001や14001)を導入済みなら短縮も可能。
6. ISO14001とISO9001を同時に取得・運用する方法
● 統合マネジメントシステム(IMS)とは?
環境(ISO14001)と品質(ISO9001)を同時に運用する場合、**IMS(Integrated Management System)**として統合する方法があります。
メリット: 文書や内部監査を一体化でき、管理工数や審査費用を削減可能。
デメリット: 組織の規模や体制が整っていないと、逆に運用が煩雑になる場合も。
● 同時取得のための具体的な進め方
共通部分の洗い出し: HLSの章立てをベースに、文書管理や内部監査の仕組みを統合。
プロジェクトチームの発足: 環境担当と品質担当が連携し、計画を共有。
審査スケジュールの設定: 認証機関と相談し、同時審査または連続審査を検討。
成功事例: 生産工場を有するE社は、ISO9001ですでに確立していた内部監査手順を拡張し、ISO14001の審査にも対応。結果的に半年ほどで両規格を取得しました。
失敗事例: システムの大枠だけ統合してしまい、細かい運用が属人的になったケース。現場担当者が増加する書類に追われ、本来の改善活動がおろそかに。
7. 導入・運用の注意点と成功事例
● 社内体制の整備と教育の重要性
トップマネジメントのコミットメント: 経営者が「なぜISOを導入するのか」を明確に示し、予算や人員を確保する。
現場担当者の巻き込み: 新しい仕組みを導入する際には、従業員や担当者の理解・協力が不可欠。私はよく「週1回のチームミーティング」を提案し、現場の声を吸い上げる工夫をしています。
● 内部監査と外部監査への備え
監査準備: 監査前には必要な文書や記録を整理し、担当者への確認を徹底。
是正処置・フォローアップ: 指摘事項は早期に是正し、次年度の計画に生かす。再発防止策を定着させることが大切。
● 成功事例
A社:ISO14001とISO9001を連動させた相乗効果:生産ラインを見直してエネルギー消費を下げながら品質管理も強化。環境負荷の低減と不良率削減を同時に実現し、取引先からの評価が上がりました。
B社:小規模事業でも短期間で認証取得:従業員20名ほどの企業でも、必要最低限の文書化と明確な役割分担で6ヶ月で取得を完了。「形だけではなく実務に役立つ仕組みを作れた」と好評でした。
8. 企業が抱えるよくある疑問Q&A
Q1. 先にISO9001を取得してからISO14001を取得するほうがいい?
回答: 一概にどちらが先とも言えませんが、品質と環境の両面でリスクが高い場合は同時取得も選択肢。まずは自社の課題を整理し、どちらが優先度高いか検討しましょう。
Q2. 費用やコンサル依頼の目安は?
回答: コンサル費用は数十万〜数百万円と幅広いです。認証費用は企業規模や審査範囲によって変動。認証機関やコンサルタントを複数比較するのがおすすめです。
Q3. 取得後に運用が形骸化しないためのコツは?
回答: 定期的な内部監査とトップレビューが重要。方針や目標を更新しないと、導入直後は良くても数年後には形だけになることがあります。
Q4. 小規模事業者でも認証を取る価値はある?
回答: 規模が小さくても取引拡大や経費削減、企業ブランド向上につながるケースは多いです。ただし、コストや人的リソースとのバランスを十分検討する必要があります。
9. まとめ:ISO14001とISO9001の違いを理解し、効果的な取得を目指そう
両規格とも、企業が持続的に成長するうえで「何を管理し、どのように改善していくか」を明確にするための仕組みです。
ISO14001: 環境負荷削減や法令順守がメインテーマ。
ISO9001: 品質向上や顧客満足度アップがメインテーマ。
しかし、どちらもリスク管理やPDCAサイクルの考え方は共通し、経営効果も大きいです。
自社の戦略やリソースに合わせて、先にどちらを取得するか、あるいは同時取得するかを検討
形だけの認証ではなく、実際に業務改善やコスト削減に活かせる運用を目指す
ISO認証を「強制的な作業負荷」ではなく「成長のためのツール」と捉えることで、社内の意識が変わり、より大きな成果を得ることができます。
おわりに
「ISO14001とISO9001の違い」を軸に、それぞれの特徴や導入メリット、取得手順を比較してきました。環境と品質、どちらを優先すべきかは企業の現状や目標によって異なりますが、どちらも組織が持続的に発展するための有力なフレームワークであることに変わりはありません。
これから取得を検討している方は、本記事で紹介した具体例や注意点を参考に、自社の状況に合った最適な導入シナリオを考えてみてください。ISO規格は決して難しいものではなく、正しく運用すれば、大きな経営効果をもたらす強力なツールになります。ぜひ積極的に活用し、企業としての競争力を高めていきましょう。
この記事の監修者情報
金光壮太 (ISOコンサルタント)
大手商社にて営業を経験した後、ISOコンサルティングに従事。ISO9001、14001、27001を中心に、各業界の課題や特性に応じたシステム構築や運用支援を行い、企業の業務効率化や信頼性向上に貢献。製造業や建設業など、多岐にわたる業界での豊富な経験を活かし、お客様のニーズに応じた柔軟なソリューションの提案を得意としている
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