ISO9001の内部監査員に資格は必要?役割・メリットをわかりやすく解説!
- 【監修者】金光壮太(ISOトラストのコンサルタント)
- 2 日前
- 読了時間: 10分

▼ 目次
1. はじめに
● 内部監査員ってどんな役割を担う?
ISO9001を導入している企業では、内部監査という仕組みが必須となります。これは、品質マネジメントシステム(QMS)が正しく運用されているかどうかを社内でチェックし、改善につなげるための活動です。その中心的存在が内部監査員です。
しかし、初めてISO9001に触れる方の中には、「内部監査員には何らかの資格が必要なの?」と疑問を持つ方が多いと思います。本記事では、「ISO9001の内部監査員に資格は必要なのか?」という問いに答えつつ、内部監査員の具体的な役割やメリットをわかりやすく解説していきます。
● 本記事のゴール
内部監査員に関する「資格の必要性」についての誤解を解消
内部監査員に求められるスキルや教育方法を紹介
読み終えた方が「内部監査員の重要性」と「実務での育成ステップ」を明確にイメージできるようになる
2. そもそも内部監査とは
● 内部監査の目的と範囲
内部監査は、ISO9001で構築した品質マネジメントシステム(QMS)が適切に運用されているかを社内で確認する活動です。社外の審査員や認証機関ではなく、自分たちで客観的にチェックするのが大きな特徴。
具体的には、部署ごとの手順書や作業標準が守られているか、不適合(問題点)がないかを確認し、見つかった問題点を是正処置につなげる役割を担います。
外部監査(認証機関の審査)と違って、より気軽に社内で改善点を話し合えるメリットがあります。
● 外部監査との違い
外部監査: いわゆる審査機関(JQA、BV、SGSなど)の審査員が行うもので、認証の可否や更新審査の判定をする。
内部監査: 自社のスタッフが行い、自分たちで問題を早期発見して改善を回すための活動。費用もかからず、より細かい指摘ができる。
内部監査員は、こうした内部監査を進める上でのキーパーソンです。
3. ISO9001の内部監査員に資格は必要?
● 公式の国家資格は存在しない現状
結論からいうと、ISO9001の内部監査員になるための国家資格や公的資格はありません。
一部で「内部監査員資格」のような名称が使われることがありますが、これは認証機関やコンサル会社が独自に発行する「研修修了証」のようなものです。
つまり、ISO9001を運用する上で法的・公的に必須な資格は存在しないというのが事実です。
● なぜ「資格が必要?」と思われがちなのか
多くの企業や講習会で「ISO9001内部監査員養成セミナー」などが開催され、修了証や民間資格を発行しているため、「資格がないとダメなのかも」と誤解されやすい面があります。しかし、実際の審査では「内部監査員がどんな研修を受け、どの程度規格を理解しているか?」が重要視されます。資格そのものの有無よりも、運用スキルや規格知識、社内業務理解が評価されるのです。
4. 内部監査員に求められるスキルと知識
● ISO9001の基本理解
内部監査員は、少なくとも**ISO9001の主要な要求事項(Clause 4〜10)**を理解している必要があります。具体的には、以下のポイントが重要です。
組織の状況や利害関係者の理解(Clause 4)
リーダーシップや品質方針(Clause 5)
リスクや機会の計画(Clause 6)
運用管理・外部提供プロセス(Clause 8)
内部監査や測定、マネジメントレビュー(Clause 9)
● プロセスアプローチ・リスク思考
ISO9001:2015以降、プロセスアプローチやリスク思考がより強調されています。内部監査員は、業務を「工程の連なり」として見るスキルが求められます。
例:受注→設計→製造→出荷の流れを見渡し、どこにリスクや改善ポイントがあるかをチェックする。
「不良が起きているのはなぜ?」「改善すればコスト削減できるかも?」といった視点が大切です。
● コミュニケーション力・質問力
監査では、現場のスタッフにヒアリングするシーンが多くあります。**「どういう手順で作業しているか」「どこに困りごとがあるか」**をうまく引き出せるかどうかで、監査の質が大きく変わります。
難しい専門用語を使わず、相手がリラックスして答えやすい雰囲気づくりも内部監査員の大切な役目の一つです。
5. 資格以上に大切なポイント:実務経験と社内知識
● 社内業務への精通
例えば、製造工程を監査するなら製造現場の基本的な流れを知っている方が断然、指摘や確認がしやすいです。サービス業なら顧客対応やバックオフィスのプロセスを理解している人が監査員になると、より具体的に問題を見つけられます。
● 「内部監査員養成コース」などの研修受講
資格がなくてもよいとはいえ、ISO9001の基本や監査手法を学ぶために研修は非常に有益です。コンサル会社や認証機関が提供する講習を受ければ、修了証や民間資格のような証明書が得られます。
これを社内外で示すと「ちゃんとISOを勉強しているんだな」という信用につながります。
● 先輩監査員・コンサルタントからのOJT
私が支援先の企業によくおすすめするのが、先輩監査員とのペア監査です。初めての監査でいきなり全体を見るのは難しいので、先輩やコンサルタントが実際に監査をする場面を見学し、質問しながら学ぶ方法です。
1度や2度の監査で確実にスキルが上がるので、独り立ちが早くなります。
6. 内部監査員を育成するための効果的なステップ
● 社内教育プログラムの整備
多くの企業では、ISO推進チームが社内向けに勉強会や研修を行っています。主な内容としては、
ISO9001の要求事項の概要
内部監査の流れ(計画→実施→報告→是正処置)
具体的なチェックリストの作り方
「ロールプレイ」を取り入れて、監査時の質問や記録の仕方をシミュレーションすると実践的です。
● 外部セミナー・講習会の活用
認証機関やコンサル会社のセミナーでは、最新の規格動向や他社事例を学べる利点があります。特に、他社の監査事例を聞くと**「うちでも同じ問題が起こりそう」**という気づきを得られることが多いです。
● 定期的な勉強会・情報共有の仕組みづくり
勉強会が一度きりで終わると、社内浸透が進みません。社内ポータルやチャットツールで監査の成果や是正処置の進捗を共有し、定期的にアップデートしていくことが大事です。
7. 内部監査員がもたらすメリット
● クレーム減少・品質向上
内部監査で小さな不良や手順ミスを早期発見し、是正処置を取ればクレーム件数が明らかに下がります。製造業では、不良率が改善し、顧客満足度が上がった事例が多数あります。
● コスト削減とリスクマネジメント
品質問題が大きくなると、製品回収や取引先の信用失墜につながるリスクが。内部監査で問題を未然に防げれば、事故やリコール対応のコストを大幅に削減できます。
● 社内コミュニケーションの活性化
監査では、普段接点の少ない部署同士が意見交換する場が生まれます。これがきっかけで改善アイデアが出たり、属人的なノウハウが共有されたりするケースも多いです。
8. 具体的な成功事例と失敗事例
● 成功事例
A社:若手社員を内部監査員に育成経営層が若手にチャンスを与える方針で、新入社員や中堅社員を積極的に研修へ参加させた。若手の視点が斬新な改善策を生み、社内の品質意識が高まる。結果、クレーム率が2年で半減。
B社:監査結果をしっかり活かし、クレーム対応コストを◯%削減毎月の内部監査で発見された不適合をリアルタイムで是正処置し、PDCAを徹底。現場スタッフのアイデアも積極的に取り入れた結果、顧客満足度が上昇し、売上にも好影響。
● 失敗事例
形骸化:書類だけ整えて実態を監査しない監査員が形だけ質問して終わりにし、実質的な問題点が放置される。外部審査で大きな指摘を受け、慌てて改修する羽目に。
担当者が辞めてノウハウが消失:チーム体制を作らず属人化内部監査を1人のベテランに任せていたら、退職とともに監査の進め方や記録が引き継がれず、運用が崩壊。新しく担当になった社員が一から学び直しの手間がかかった。
9. 内部監査員になるための実践的アドバイス
● 研修やセミナーの選び方
日数・費用・講師の実績をよく比較
可能なら他社事例や演習を多く取り入れている研修が望ましい
● 内部監査チェックリストの活用
規格要求事項、社内ルール、想定リスクをまとめたチェックリストを作成
スマホやタブレットで記入できるツールを使うと、後で集計しやすい
● トップマネジメントのサポートを得るコツ
経営層が内部監査の価値を認識しないと、予算や人員が集まらず形骸化しがち
監査結果が経営指標の改善につながるという事例や数値をこまめに報告し、理解を得る
10. よくある質問(FAQ)
Q1. 内部監査員の民間資格を持っていれば審査で有利?
研修修了証などの民間資格があれば、スキルの証明にはなるものの、ISO9001の審査では必須ではありません。どれだけ運用できているかが重要です。
Q2. どれくらいの人数を選任すべき?
規模や業務範囲によりますが、複数部署から1〜2名ずつは欲しいところ。部署を越えた監査で客観性が増します。
Q3. 内部監査員と外部監査員の違いは?
内部監査員は社内の人(自部署以外を監査するなど独立性を確保する)。外部監査員は認証機関など第三者。
Q4. ISO9001以外のISO規格も同じ監査員でいいの?
企業の状況によりますが、**ハイレベルストラクチャー(HLS)**のおかげで複数規格を統合運用する会社も増えています。共通部分が多く、同じ監査員が対応するケースもあり。
11. まとめ:資格の有無よりも大切な運用と継続的改善
● 「資格なしでもOK」は事実だが、スキル・知識は必須
ISO9001の内部監査員になるために法的・公的な資格は必要ありません。しかし、規格の要求事項や社内業務への理解、監査手法などの知識は欠かせない要素です。研修やセミナーを活用して、しっかりスキルを身につけましょう。
● 内部監査員が企業にもたらす価値を再確認
品質改善の推進力:現場の声を吸い上げ、継続的にクレーム削減
リスク低減:大きなトラブルを未然に防ぎ、経営リスクをコントロール
コスト削減:ムダを発見し、改善を繰り返すことで経費を削減
● 次のアクション
社内で「誰が内部監査員になるか」を検討し、教育プランを作る
定期的な勉強会や情報共有でスキルを維持・向上
経営層の協力を得て、PDCAサイクルをしっかり回す
おわりに
「ISO9001の内部監査員に資格は必要?役割・メリットをわかりやすく解説!」と題して、内部監査員にまつわる疑問や実務ポイントを深く掘り下げてきました。実際のところ、『資格がないとできない』わけではありません。しかし、研修やセミナーを受けて知識を獲得し、社内業務への理解を深めれば、内部監査員としての活動がよりスムーズに、そして効果的になります。内部監査員は、組織の品質改善に大きく貢献できる重要なポジションです。資格の有無にとらわれず、本記事を参考に運用方法を工夫し、継続的な品質向上へとつなげていただければ幸いです。
この記事の監修者情報
金光壮太 (ISOコンサルタント)
大手商社にて営業を経験した後、ISOコンサルティングに従事。ISO9001、14001、27001を中心に、各業界の課題や特性に応じたシステム構築や運用支援を行い、企業の業務効率化や信頼性向上に貢献。製造業や建設業など、多岐にわたる業界での豊富な経験を活かし、お客様のニーズに応じた柔軟なソリューションの提案を得意としている
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