品質管理部門で役立つISO9001内部監査の質問例:具体例&参考例で運用ノウハウを完全網羅!
- 【監修者】金光壮太(ISOトラストのコンサルタント)
- 11 時間前
- 読了時間: 9分

▼ 目次
1. はじめに
● 品質管理部門での内部監査が重要な理由
ISO9001の内部監査は、組織が自分たちの品質マネジメントシステム(QMS)をきちんと運用しているかを社内で客観的にチェックするための仕組みです。特に品質管理部門は、日頃から不良品の発生状況やクレーム対応など品質に関わる重要な情報を扱っています。
内部監査では、品質管理部門が設定した品質目標やリスク管理が適切に進んでいるか、実際の業務プロセスとマニュアルが整合しているかを確認することで、品質をさらに高めるチャンスが得られます。
本記事のゴール
品質管理部門に特化した内部監査の質問例を具体的に紹介
それらを使って、効果的に内部監査を進める運用ノウハウを理解してもらう
2. ISO9001内部監査の基本概念
● 内部監査の目的と範囲
内部監査は、**「自社が決めた品質マネジメントルール(QMS)を本当に守れているのか?」**をチェックし、問題があれば早めに改善する活動です。
外部監査や顧客監査(第二者監査)と違い、社内の人間がヒアリングや記録確認を行うため、気づきやすい小さな不具合を拾いやすいメリットがあります。
● 審査や外部監査との違い
外部監査(第三者認証審査): JQA・BV・SGSなどの認証機関の審査員が来社し、認証や更新を判断する。
内部監査: 自社のスタッフ(場合によっては他部署の人)を監査員として、日常業務に沿った形で実施。ISO9001 項番 9.2に定義される内部監査は「自社の活動を自分たちで評価し、PDCAサイクルを回すための仕組み」と言えます。
● 品質管理部門が果たす役割
不良品の分析やクレーム対応の最前線に立ち、製造や施工の現場とも連携をとるポジション。
内部監査においては、品質方針や品質目標を正しく反映しているか、他部署との連携が機能しているかなどを重点的にチェックすることで、全社的な品質レベルの向上に大きく貢献できます。
3. 品質管理部門に特化した内部監査のポイント
● 品質方針・品質目標との整合性
品質管理部門は、経営層が定めた品質方針や品質目標を現場に浸透させ、具体的に数値化して達成を目指します。
内部監査では、**「これらの目標が部門内でしっかり周知され、運用されているか?」**を重点的に確認する。
● 工程管理・検査体制の確認
製造業の場合
製造ラインでのインライン検査や最終検査が適切に行われているか。
不良品発生時の手順や記録が整備されているか。
建設業の場合
各工程(基礎工事、配筋検査、コンクリート打設など)の施工品質基準を定めているか。
協力会社との品質基準が統一されているか。
● 文書化した情報と記録の把握
品質管理部門は多くの記録(検査結果、クレーム対応履歴など)を扱います。
項番 7.5「文書化した情報」に基づき、最新の手順書や検査記録が最新化しているか、改定履歴が管理されているかをチェック。
4. 質問例【品質管理部門編】:項番別一覧
以下では、ISO9001の主な項番(4〜10)ごとに、品質管理部門への質問例をまとめます。これらの質問を元に、監査チェックリストを作成すると便利です。
項番 4「組織の状況」
Q: 品質管理部門として把握している外部・内部の課題は何ですか?(例:新規顧客要件、設備老朽化など)
Q: 強みや弱みをどのように認識し、どのプロセスで対策していますか?
項番 5「リーダーシップ」
Q: 部門長は経営層の品質方針や目標をどのように伝えていますか?
Q: 部門内で品質に関する責任・権限は明確になっていますか?
項番 6「計画」
Q: リスクと機会をどのように洗い出し、品質目標の設定に反映していますか?
Q: 具体的な目標(不良率◯%削減など)をどれくらいの頻度で見直していますか?
項番 7「支援」
Q: 必要な資源(人員、検査機器、ソフトウェア等)は十分に揃っていますか?
Q: 社員の教育・訓練計画と記録は管理されていますか?
項番 8「運用」
Q: 検査手順やクレーム対応の標準書(SOP)は最新化されていますか?
Q: 外部委託先(外注先・協力会社)に対する品質要求や監査はどうしていますか?
項番 9「パフォーマンス評価」
Q: 内部監査の結果や顧客満足度調査を、品質改善にどう活かしていますか?
Q: 部門内で品質指標(KPI)をモニタリングする仕組みはありますか?
項番 10「改善」
Q: 不適合が発生した際、根本原因をどのように分析し、再発防止策を導入していますか?
Q: 継続的な改善(Kaizen)活動の成果をどのように評価していますか?
5. 具体例・参考例:質問と回答のシチュエーション
● 製造業のケース
質問例: 「工程内検査で見つかった不良情報は、どのように共有され、再発防止に繋げていますか?」
想定回答: 「検査記録システムに不良内容を登録し、翌朝のミーティングで原因分析→対策決定を行う。累積不良率が高い工程には追加のチェックを導入している。」
● 建設業のケース
質問例: 「施工中の検査(配筋検査、コンクリート強度確認など)はどんなタイミングで行い、結果をどう保存していますか?」
想定回答: 「施工計画書に基づいて各工程完了時に写真と点検表を現場事務所で管理。データはクラウドにもアップし、本社や協力会社とも共有する。」
6. 運用ノウハウを活かすための事例集
● 成功事例:A社の品質管理部門が大幅クレーム減に成功
背景: 不良品発生時に現場レベルで隠蔽してしまうケースがあり、顧客クレームが続出
内部監査対策: 品質管理部門が「不良が起きたらすぐ品質会議を開く」ルールを敷き、監査チェックリストに「不良報告件数と改善内容」を必ず聞く項目を追加
結果: クレームが月10件→3件へ激減。内部監査で出た改善提案が全社に波及し、生産性も上がった
● 失敗事例:B社が内部監査の質問内容を形骸化
背景: 毎年同じ質問リストを使い回し、形式的に「異常なし」で済ませる
問題: 現場が新しい不良パターンを抱えていても、質問が古くて拾えず改善が進まない
対策: 定期的に質問リストを項番 6(計画)のリスク&機会や最近のトラブル事例に合わせて更新する
7. 内部監査を進めるステップとタイムライン
監査計画の作成(年間スケジュール)
部門ごとの監査日程・範囲を決定。品質管理部門の監査は優先度高めに設定してもよい
監査チェックリストの準備
先ほどの項番別質問例をベースに、社内独自のリスクや課題を盛り込む
監査員の任命と研修
監査員が品質管理部門の仕事を理解しているかどうかが大事。複数人でクロス監査も効果的
監査実施とフィードバック
質問項目ごとに現場や文書を確認。気づいた点は即メモし、監査後に担当者へ共有
報告書作成・是正処置とモニタリング
監査結果をわかりやすくまとめ、部門リーダーと改善計画を策定。進捗状況を追跡する
8. 質問リスト作成時の注意点
● 抽象的な質問にならないように
「管理は大丈夫ですか?」という漠然とした聞き方では、詳細を引き出せない
「この3ヶ月間で発生した不良内容と原因分析を見せてください」など、具体的に聞くと良い
● Yes/Noだけで終わらせない
「はい、守っています」だけでは不十分。
「どういう理由でそうなっているか」「どのような証拠(記録)があるか?」も問うことで、運用実態を把握できる
● 回答者が答えやすい言葉で
専門用語ばかりや規格の条文をそのまま引用すると現場が戸惑う
なるべく平易な言葉で「最近の不適合事例を教えてください」「検査基準が変更された際の社内周知方法は?」など
9. よくある疑問と対策
内部監査員に専門資格は必要?
ISO9001の内部監査員には国家資格などはなく、研修を受けて規格を理解していればOK。
コンサル会社の「監査員養成講座」などを活用するとスキルアップが早い。
質問内容が毎回同じになりがち…
年度ごとに部門のリスクや新施策を取り入れ、質問をアップデートすると効果的。
外部監査や顧客からの指摘事項を反映するのも手。
品質管理部門以外への質問はどうする?
他部署(製造部門、営業部門など)とも連動した品質管理体制を確認。
品質管理部門がカバーできない領域があれば、別の監査チームを組むのも一案。
10. 内部監査を品質管理部門で定着させるヒント
● 経営トップのサポート
経営層が内部監査の結果をしっかりレビューし、改善提案を支援すると、現場のモチベーションが上がる
品質管理部門のリーダーだけが頑張っても限界があるため、トップからの後押しが不可欠
● 教育と研修の継続
新人や他部署の人が品質管理の意義を理解するには、定期的な研修が効果的
「監査の仕方」「質問のポイント」を社内勉強会で共有すると、監査スキルの底上げが期待できる
● オンラインツール・デジタル化
チェックリストをオンライン化し、回答やエビデンスをデータベース化すると、分析や共有が容易
コロナ禍でテレワークが増えた企業では、オンライン会議システムで遠隔監査を行うケースも増加
11. まとめ:品質管理部門向け質問例を活かして効果的なISO9001内部監査を
内部監査は品質管理部門にとって大きなチャンス
不良発生やリスクを早期発見し、改善する好機
実務に即した質問例を作ることで、形だけではない有益な情報を得られる
数値や具体的な手順を聞くなど、回答者が明確に答えやすい形に
継続的なPDCAサイクルで全社的な品質向上を
審査だけでなく、顧客満足や効率化にもつながる
ISO9001内部監査は単なるチェックではなく、会社の品質管理レベルを底上げする重要な仕組みです。品質管理部門で活かせる質問例や運用ノウハウを取り入れ、ぜひ自社に合った形で成果を出してみてください。
おわりに
ここまで、品質管理部門で役立つISO9001内部監査の質問例を、具体例や参考例とともに詳しくご紹介しました。質問リストを活用することで、部門としての品質管理レベルを高め、結果的に顧客満足やコスト削減につなげることができます。ぜひ参考にしてみてください。
この記事の監修者情報
金光壮太 (ISOコンサルタント)
大手商社にて営業を経験した後、ISOコンサルティングに従事。ISO9001、14001、27001を中心に、各業界の課題や特性に応じたシステム構築や運用支援を行い、企業の業務効率化や信頼性向上に貢献。製造業や建設業など、多岐にわたる業界での豊富な経験を活かし、お客様のニーズに応じた柔軟なソリューションの提案を得意としている
コメント