ISO9001の法令一覧とは?関連法律のチェックポイントをまとめ、合格に近づく運用ヒントを紹介!
- 【監修者】金光壮太(ISOトラストのコンサルタント)
- 15 時間前
- 読了時間: 8分

▼ 目次
1. はじめに
● ISO9001の法令一覧とは? 記事のゴール
ISO9001を運用するうえで、よく取り上げられるのが**「法令一覧」**です。これは、企業が守るべき関連法律や規制をリストアップし、規格が求める法令遵守を具体的に行うための基盤となる文書です。
この記事では、なぜISO9001で法令遵守が必要なのか、どうやって関連する法律を洗い出すのかを中心にまとめます。
業種別の事例や運用ヒントも紹介しますので、これからISO9001の認証取得を目指す方、あるいは既に運用していて法令管理に悩む方にも役立つ内容を目指しています。
2. ISO9001で法令遵守が必要な理由
● 項番 4.2(利害関係者のニーズと期待)と法的要求
ISO9001の項番 4では「組織の状況を理解し、利害関係者のニーズや期待を把握する」よう求めています。ここには**「法令・規制を守ること」**も含まれます。
例えば、製品安全に関わる法律(食品衛生法、電気用品安全法など)を遵守していないと、顧客のニーズを満たせないどころか、企業イメージや信頼を失うリスクが高まります。
私のコンサル経験上、特に大手企業との取引を拡大したい場合、法令リスクを管理できているかが取引条件になることが多いです。
● リスク管理と信頼性向上
法令違反は、企業が負うリスクのひとつです。ISO9001の視点では「製品やサービスを安定して提供するには、法的要求をきちんと満たす必要がある」と考えます。
これを実践するために「法令一覧」を作り、どの部署がどの法律に対応し、どんな対策を取るかを明確にしておくことが重要です。
そうすることで、顧客や取引先からの信頼度を高め、継続的な品質向上にも繋がります。
3. ISO9001の関連法律をざっくり把握しよう
● 幅広い業種・製品に適用できるISO9001と法律の関係
ISO9001は製造業だけでなく、建設業やサービス業など幅広い業種に適用可能です。そのため、「どの法律が対象になるか」は企業ごとに異なります。
製造業なら製品安全法やPL法、サービス業なら特定商取引法や個人情報保護法、建設業なら建設業法や労働安全衛生法など、業種特有の法律が存在します。
● 一般的に関連する主要な法律の例
製品安全関連: 消費者保護や製品事故防止に関わるPL法、電気用品安全法など
労働安全衛生法: 作業環境や従業員の安全管理に関する法律
下請代金支払遅延防止法: 建設業や製造業などでの下請業者との取引を規制する法律
これらは一例であり、企業が扱う製品・サービスに応じて、法令や規制はさらに増える可能性があります。
4. 法令一覧をどう作る? 基本のチェックポイント
まずは事業の範囲を明確にする
製品やサービス、ターゲット市場、関係する部署など、ビジネスの全体像を整理。
輸出入があれば海外法規も含まれる可能性あり。
関連法規をリスト化
国や自治体、業界団体のホームページ、法務情報サイトなどで情報収集。
私が支援した企業では、業界団体のセミナーで主要な法律一覧を入手するケースが多かったです。
リスク評価と優先度設定
違反したときに罰則や顧客信用を失うリスクが高い法律には優先度を高く設定。
例:食品企業にとっての食品衛生法は最優先で常に最新情報をチェック。
文書化・更新ルール
法令リストはExcelやクラウドで管理し、担当部署や改訂履歴を明記。
半年〜1年ごとに見直すスケジュールを組む。
5. 【具体例】業種別の主要法律・規制
● 製造業の場合
労働安全衛生法: 工場の安全管理、作業員の健康・安全確保
PL法(製造物責任法): 製品の欠陥による損害賠償責任
電気用品安全法: 電子部品や電気製品を扱う場合
化学物質関連法(化審法など): 化学物質を取り扱う企業で必須
● 建設業の場合
建設業法: 建設業許可や監理技術者配置など
労働安全衛生法: 現場での安全確保(足場、墜落防止等)
騒音振動規制法・廃棄物処理法: 現場での環境リスク管理
● サービス業の場合
特定商取引法: 通信販売や訪問販売の規制
個人情報保護法: 顧客情報を扱うコールセンターやWebサービス
景品表示法: 商品やサービスの広告・表示に関する規制
6. 作成した法令一覧を運用するコツ
● 項番 7.5(文書化した情報)の活用
ISO9001では文書管理が重要とされています。法令一覧も**“文書化した情報”**の一部として管理対象に含めると良いでしょう。
例えば、社内のイントラネットやクラウドサービスで法令一覧ファイルを公開。
更新日や担当部署を明示し、いつでも従業員が確認できる状態にします。
● 定期的なレビュー体制
内部監査やマネジメントレビューで、法令リストが最新かをチェック。
新たに追加された法律や改正内容をキャッチアップし、リストを更新。
私の経験上、これを怠る企業ほど監査時に「リストが古い」と指摘を受けがちです。
● 担当部署を明確化
法務部や総務部、品質管理部など、どの部署がどの法律を担当するかを決めておく。
企業規模が大きい場合は、事業部ごとに法令リストを分けることも検討。
中小企業なら、経営者や品質管理責任者が一括管理する形でもOK。
7. 運用ヒント:ISO9001合格に近づく仕組みづくり
● 内部監査で法的要求の遵守状況をチェック
内部監査のチェックリストに「法令リストを参照しているか」「最新改正に対応しているか」を加える。
現場が守るべき安全基準や顧客保護ルールを形骸化させないためにも、監査員が確認を徹底。
● リスクと機会の管理(項番 6)と連動
法令違反は重大なリスクとなるだけでなく、正しく遵守することで顧客信頼を高める機会にもなる。
項番 6の計画立案時に「法令違反リスク評価」「順守をPRすることでのビジネスチャンス」を検討すると良いです。
8. 成功事例:法令一覧でミスや違反を防いだ企業
● 事例A:製造ラインの化学物質管理
背景: 化学物質取扱いで海外からの規制(REACH規則など)に対応せず、トラブルが発生しかけた
対策: 化審法や海外規制をまとめたリストを作り、原材料調達から出荷までプロセスごとに担当を設定
結果: 輸出時のトラブルが激減し、認証審査でも「法令リストがしっかり管理されている」と高評価
● 事例B:建設業が騒音振動規制法を遵守しクレーム激減
背景: 施工現場で騒音・振動へのクレームが相次いだ
法令一覧作成: 騒音振動規制法を重点項目に設定。施工時間や測定ルールを明確化
効果: 近隣住民への告知や改善策がスムーズになり、クレームが半減
● 事例C:サービス業が個人情報保護法に対応し顧客の信頼UP
背景: 顧客データを扱うコールセンターで、個人情報漏えいリスクが懸念
施策: 個人情報保護法を中心に、社内ルールと管理体制を法令一覧に反映
結果: 顧客満足度向上と取引企業からの信用度アップ
9. 失敗事例と注意点
● 法律リストを作ったまま更新しない
問題: 法改正があってもリストを改訂せず、現場が古い基準で作業→監査で指摘
対策: 「半年ごとの見直し」や「改正情報を部署責任者にメール配信する」などルール化
● 担当不明で形骸化
問題: 誰が管理するか決めないと、「あるだけの表」に
対策: 法務部門や品質管理責任者など担当を明確にし、内部監査で必ず管理状況を確認
10. よくある疑問Q&A
Q1. 全部の法律を網羅しないと不合格?
企業の事業範囲と関連する法律を取りこぼしなくリストアップすればOK。関係ない法律まで含める必要はないが、影響があるかどうか検討した形跡が重要
Q2. どこで情報収集すればいい?
官公庁のWebサイト(経済産業省、厚生労働省など)、業界団体のガイドライン、社外セミナー、法務情報サービスなど
Q3. 海外展開中の場合は?
輸出先国の法律や規制も考慮。現地認証機関や貿易事務所、専門コンサルのサポートが必要
11. 今すぐ始める!法令一覧作成のステップ
社内プロジェクトチームの結成
関連部署(法務、品質管理、総務など)からメンバーを選びリーダーを決める
業務フローと照らし合わせ
工程ごとに「どんな法令リスクがあるか」を整理
優先度づけ
違反リスク・影響度が高い法律から詳しく調査
定期更新スケジュールを設定
半年〜1年に1回は見直しと内部監査でチェック
12. まとめ:ISO9001の法令一覧とは?関連法律のチェックポイントをまとめ、合格に近づく運用ヒントを紹介!
ISO9001運用の要として、「自社が守るべき法律・規制をリストアップし、適切に更新・活用していくこと」が求められます。法令一覧を作ることで、
リスク管理が明確化し、顧客や取引先への信頼度が上がる
内部監査や審査でも「法令要求を遵守している」ことを示しやすくなる
最後のアドバイス
業務範囲を見極め、関連する法律を取りこぼさない
定期的に更新し、部署ごとに担当を明確にする
内部監査・マネジメントレビューで常に見直し、環境変化や改正にも素早く対応
これらを押さえれば、ISO9001認証審査でもスムーズに合格できるだけでなく、顧客満足や企業の信用度向上にも大いに役立ちます。ぜひ取り組んでみてください。
この記事の監修者情報
金光壮太 (ISOコンサルタント)
大手商社にて営業を経験した後、ISOコンサルティングに従事。ISO9001、14001、27001を中心に、各業界の課題や特性に応じたシステム構築や運用支援を行い、企業の業務効率化や信頼性向上に貢献。製造業や建設業など、多岐にわたる業界での豊富な経験を活かし、お客様のニーズに応じた柔軟なソリューションの提案を得意としている
Comments