ISO9001マネジメントレビュー報告書をこう作る!書き方のコツと具体例・参考例を徹底解説
- 【監修者】金光壮太(ISOトラストのコンサルタント)
- 23 時間前
- 読了時間: 9分

▼ 目次
1. はじめに
● マネジメントレビュー報告書とは?この記事のゴール
ISO9001では、品質マネジメントシステム(QMS)の状態を定期的にチェックして改善を図るために、経営トップが中心となって会議を行います。これがマネジメントレビューです。そして、その会議内容や決定事項をまとめた文書がマネジメントレビュー報告書です。
マネジメントレビュー報告書は、外部審査や内部監査で「経営層が本気でISO9001の運用を確認し、組織をリードしているか」を示す証拠にもなります。
この記事では、報告書の書き方のコツと具体例・参考例、そして失敗しないための改善手順を徹底的に解説します。
2. そもそもISO9001のマネジメントレビューって何をするの?
● マネジメントレビューの目的と範囲
ISO9001の項番 9.3では、トップマネジメントが品質目標や顧客満足度、リスクなどを総合的に見直すマネジメントレビューを定期的に実施するよう求めています。このレビューは、
現在の品質マネジメントの状況を評価
将来の改善策を決定
リソース(人員・設備・予算)の見直しなどを行う場となり、経営の視点から品質管理をリードするために欠かせないステップです。
● 品質目標・方針の見直しの場としての役割
マネジメントレビューでは、前年度や前回レビューで設定した目標(クレーム率の削減や不良率の改善など)の達成状況をチェックし、必要に応じて方針や目標を更新します。
例えば、私がコンサルで支援した製造業では、クレーム率を0.8%以下にするという目標を掲げていました。レビュー会議で「現状は1.2%なので、もう少し検査工程を見直そう」という結論を得て、次のアクションにつなげています。
3. なぜ報告書が必要なのか? メリットと役割
● 外部審査や内部監査の視点
外部審査(認証機関の監査)では、**「マネジメントレビューは本当に行われているのか?」**を確認するために報告書の存在がチェックされます。
報告書がないと、「レビューをやった証拠がない」と見なされる恐れも。
内部監査でも、「前回のレビュー指示事項がきちんと実行されているか」を確認するうえで報告書が頼りになることが多いです。
● 改善活動への活用
報告書には、経営層が決めた改善方針や、達成すべき目標などが明確にまとめられます。これを社内に共有することで、
改善活動の優先度が明確になる
担当部署や担当者が自分の責任を理解しやすい
進捗管理や評価がしやすくなる
● 責任と権限の明確化
「誰が何をやるのか」「なぜやるのか」が報告書にまとめられていると、後から新しく入社した人や異動した人も過去の経緯を把握しやすいです。
4. マネジメントレビュー報告書の基本構成
報告書の概要・目的
会議日時、場所、参加者、議題
例えば「令和○年度 第2回マネジメントレビュー会議 報告書」など
審議内容(項番 9.3.2に沿った項目)
達成状況(品質目標)、リスク・機会の検討、内部監査結果、顧客満足度、外部環境の変化など
結論・指示事項(改善計画、リソース配分など)
経営層の決定事項、承認された予算や人員、次回までの宿題など
次回レビュー予定・責任者
次回の日時・担当部署・経営層のコメントなど
5. 書き方のコツ:項番 9.3(マネジメントレビュー要求事項)のポイント
● 項番 9.3.2が提示する審議項目
ISO9001では、マネジメントレビューで最低限話し合うべき項目として以下を挙げています。
前回レビューのアクション結果
外部・内部の課題(項番 4.1)
顧客満足や苦情対応の状況
目標達成度合い・内部監査結果
資源の妥当性・改善の必要性など
これらを報告書に反映すると、審査員が見ても過不足ない内容になります。
● 経営層に伝わる報告書を書くための工夫
数値データやグラフを使う
クレーム件数や不良率のトレンド、顧客満足度の推移など
箇条書きや表で要点をまとめる
会議で決定したアクションは誰がいつまでに実行するかを明確化
専門用語は簡潔に解説
経営層や他部署の方にも伝わりやすいよう、必要最低限の用語でわかりやすく提示
6. 具体例・参考例:報告書のテンプレート紹介
● テンプレートサンプルA:シンプルなA4一枚構成
タイトル: 「○○年度第×回 マネジメントレビュー報告書」
開催日時・参加者・議題
検討事項:
品質目標の達成状況
不適合・クレーム数の分析結果
内部監査指摘事項のフォローアップ
結論・決定事項: 箇条書きで改善策や責任者、期限を明記
次回開催予定: 日時と大まかなテーマ
● テンプレートサンプルB:社内ポータル用フォーム
フォーム項目:
日時、参加者、主要議題、数値指標(KPI)入力欄、改善策の登録欄
メリット: Web上で入力するため、自動でPDF化・メール配信などが可能
私のクライアント企業では、Googleフォームを使って入力→スプレッドシート連携→共有フォルダに自動保存という仕組みを作り、作業負担を軽減しました。
7. 実際の運用:マネジメントレビュー報告書作成の流れ
事前準備:データ収集・分析
品質目標の進捗、不良率やクレーム件数、内部監査の指摘一覧などを担当部署から集める
例:半年分の不良率をグラフにし、原因をまとめておく
レビュー会議開催
経営層・部門責任者が集まり、数値や課題をもとにディスカッション
項番 9.3.2の項目(過去のアクション、リスク・機会、資源など)を洗い出す
報告書ドラフト作成
事務局や品質管理部が中心になり、議事録+結論を報告書にまとめる
私の経験では、30分以内にドラフトを作り、1日〜2日後に最終化する企業が多い
経営層の承認・社内共有
完成版を全社メールや社内ポータルで公開。担当者にアクションを指示し、期限管理
8. 失敗しない改善手順:失敗例と成功例から学ぶ
● 失敗例A:形だけの報告書で同じ不適合が繰り返される
問題: 会議で指摘された不良原因や改善案が、実行されずに放置
教訓: 報告書は「次の行動」まで落とし込み、担当と期限を明記。内部監査でもフォロー
● 失敗例B:経営層が参加せず形骸化
問題: 実際は部門長や管理者だけで会議をして「経営層が形だけ承認」
教訓: 経営層自身が品質管理の重要性を理解し、積極的にコミット。報告書もトップが目を通す
● 成功例C:改善策を細分化し責任者と期限を明確化
状況: 年間不良率を1%下回らせたいという目標設定
対応: 報告書に「○○ラインの不良削減プロジェクト」→リーダーは誰、予算はいくら、期限はいつまで
結果: 毎月の進捗を報告書をもとにチェックし、クレーム率が半年で半減
9. 報告書を最大限活かすための注意点
● 項番 9.3.3で求められる出力事項を漏らさない
ISO9001 項番 9.3.3では、マネジメントレビューの出力として改善の決定事項やリソース計画などが求められます。
この内容を報告書にきちんと記載しないと「何を決めたのか不明」という状態に
● 内部監査や不適合報告との連動
不適合報告(項番 10.2)や内部監査結果(項番 9.2)で発見された問題をレビュー会議で検討し、報告書に改善策を明記
そうすることでPDCAがスムーズに回り、同じミスを繰り返さない組織づくりに近づきます
● 現場へのフィードバックが不可欠
報告書が経営層の机の上だけで終わらず、現場担当者が具体的な行動を取れるようきちんと伝達
「○○を修正しろ」と言われるだけではなく、「なぜ、どのように修正すればいいか」を情報共有する仕組みが大事
10. 成功事例:報告書を活用して品質向上を実現した企業
● 事例A:製造業がクレーム率を半年で半減
背景: 生産ラインで小さい不良が見落とされ、顧客クレームが多発
施策: マネジメントレビューで毎回クレーム数と原因を報告書にまとめ、経営層が改善案に予算をつける流れを確立
結果: 半年後にはクレーム率50%減&リピート注文増
● 事例B:建設業が施工品質を一段階レベルアップ
背景: 現場ごとに品質ルールがバラバラで、指摘が絶えなかった
施策: マネジメントレビューに「施工品質向上プロジェクト」を議題として常設し、報告書に進捗を毎回書き込む
結果: 一定期間で標準施工手順が全現場に浸透し、施工ミスが激減
● 事例C:サービス業が社員のモチベーションアップ
背景: クレーム対応が属人的で、顧客満足度アンケート結果がいまいち
施策: 報告書に顧客アンケートの数値や良い事例を載せ、経営層からの労いメッセージを加える
効果: 社員が成果を認められるようになり、顧客対応が積極的に
11. よくある疑問Q&A
Q1. 報告書のフォーマットは自由?
公式のフォーマット指定はありません。自社が使いやすい形ならOK。
ただし項番 9.3.2/9.3.3の内容をカバーする必要がある
Q2. どれくらいの頻度でマネジメントレビューを行うべき?
一般的には年1回以上。リスクや経営方針変化が多い企業は四半期に1回など柔軟に
Q3. 会議時間や会議体はどの程度が理想?
規模や議題数次第。小規模企業なら1~2時間程度、大企業だと半日かけることも
12. まとめ:ISO9001マネジメントレビュー報告書をこう作る!書き方のコツと具体例・参考例で失敗しない改善手順を紹介
マネジメントレビュー報告書は、**経営層が品質をリードし、組織全体を改善するための“行動計画書”**として機能します。
基本構成: 「概要・目的」「審議内容」「結論・指示事項」「次回計画」などを揃える
具体例とコツ: 項番 9.3.2にある審議項目をきちんと網羅し、データやグラフを交えてわかりやすく整理
運用面での鍵: 定期的に活用し、内部監査や不適合報告とも連動させることで、PDCAサイクルをしっかり回す
最後に
形だけの報告書に終わらないよう、経営層が目を通し、現場が具体的に動く仕組みづくりが大切。
“誰がいつまでに何をするか”を明確にした報告書は、ISO9001審査でも高評価を得やすく、実際の品質向上にも大きく貢献します。
あなたの企業でも、ぜひ本記事のヒントを活かし、失敗しないマネジメントレビュー報告書を作成してみてください。
この記事の監修者情報
金光壮太 (ISOコンサルタント)
大手商社にて営業を経験した後、ISOコンサルティングに従事。ISO9001、14001、27001を中心に、各業界の課題や特性に応じたシステム構築や運用支援を行い、企業の業務効率化や信頼性向上に貢献。製造業や建設業など、多岐にわたる業界での豊富な経験を活かし、お客様のニーズに応じた柔軟なソリューションの提案を得意としている
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