ISO9001の是正処置とは?やり方・参考例・具体例でわかる失敗しない改善プロセス!
- 【監修者】金光壮太(ISOトラストのコンサルタント)
- 2 日前
- 読了時間: 8分

▼ 目次
1. はじめに
● ISO9001でいう“是正処置”とは?この記事のゴール
ISO9001は、組織が品質マネジメントシステム(QMS)を適切に運用し、不適合(問題)を根本原因から解消することを重視しています。その中でキーワードとなるのが**「是正処置」**です。
是正処置を誤解して「一時対応(表面的な修正)だけ」をやってしまう企業は意外と多いもの。
本記事では、ISO9001の是正処置を正しく理解するためのやり方、具体例、参考例を分かりやすく紹介します。
失敗しない改善プロセスを学んで、あなたの会社の不適合対応を一段上のレベルへ引き上げましょう。
2. ISO9001における是正処置の基本概念
● 項番 10.2(不適合と是正処置)の概要
ISO9001の項番 10.2には、「不適合が発生したら、根本原因を突き止めて再発防止する仕組みを作りなさい」と定められています。
不適合: 企業の定めた品質基準や顧客要求を満たしていない状態。たとえば、不良品の発生、納期遅れ、クレーム対応のミスなど。
是正処置: 不適合の原因を調べ、その問題が二度と起こらないようにする具体的な改善アクション。
● “不適合”の定義
不適合は、決して不良品だけに限りません。
サービス業では、顧客応対マニュアルどおりに対応できずクレームが増えるケース
建設業では、施工手順と違う工法を使い品質が落ちたケースこれらもすべて「不適合」として扱い、是正処置が必要になります。
3. なぜ是正処置が重要なのか?
● 同じ問題を繰り返さない仕組みづくり
多くの企業が**「一度発生した問題がまた起きてしまう」**という悩みを抱えます。是正処置はまさに「同じミスを再発させないための本質的対策」。
表面的な修正だけではなく、原因を深く追求して取り除くことで、長期的にトラブルを減らせます。
● 顧客満足度の向上とコスト削減
不適合対応はコストと時間を取られます。起きた問題を早く解決して再発防止すれば、クレーム対応や再施工、不良品廃棄などのコストが大幅に減少し、顧客満足度もアップします。
私のクライアント企業(製造業)では、不良率を下げてクレームを減らすことで年間1,000万円以上のコスト削減に成功した例があります。
● 外部審査での評価ポイント
ISO9001の外部審査でも、「不適合が出たときにどのように是正処置を行っているか」は重要チェック項目。
形だけの対応だと「再発防止策が不十分」と見なされ、指摘を受けることも少なくありません。
4. 是正処置の基本ステップ:やり方の全体像
不適合の発生と報告
社内で問題を発見したらすぐに報告する仕組みが重要。社内SNSや不適合報告フォーマットを整備する企業が増えています。
原因分析(なぜなぜ分析など)
「なぜ」五回法(5Why)や、**魚骨図(特性要因図)**を使って根本原因を掘り下げる。
表面的な「担当者のミス」で終わらず、教育不足や手順書の不備など本質を探るのが成功の鍵。
是正策の立案と実施
原因がわかれば、具体的な対策を考える。誰がいつまでに何をするかを明確に。
工程変更や設備メンテナンス、マニュアル更新、担当者研修など手法はさまざま。
効果確認と記録(項番 10.2.2)
是正策後、本当に再発していないかモニタリング。もし不備があれば追加対策を検討。
記録化して社内共有すれば、同様の不適合が別部署で起きるリスクも減らせる。
5. 【参考例・具体例】製造業・建設業・サービス業の場合
● 製造業の例
不良品が出荷されクレーム→原因は設備センサー故障
是正処置: センサー交換やメンテ手順の追加、在庫検査の強化
効果確認: 出荷前検査を強化し、クレーム率が3%→1%に低減
● 建設業の例
施工品質が不安定→特定の協力会社の技術力不足が発覚
是正処置: 技術研修の実施、協力会社選定基準の見直し、現場での二重チェック導入
効果確認: 工事後のクレームや再施工が減り、工期遅延リスクも低下
● サービス業の例
コールセンターでの対応ミス→クレームが増える
是正処置: 応対マニュアルを更新し、スタッフ全員を再教育。QAチームを設置して通話を定期評価
効果確認: クレーム件数が前月比30%減少し、顧客満足度が向上
6. 具体的な原因分析手法:失敗しないためのテクニック
● なぜなぜ分析(5Why)
手軽で効果的: なぜを5回繰り返すだけで、単なる表面のミスから根本原因まで到達しやすい。
注意点: 「人のミス」で終わらせず、教育システムや工程設計などの要因を探るのが重要。
● 魚骨図(特性要因図)
人、機械、材料、方法、環境などに分解して原因を整理する。
メリット: 複数の要因が絡むケースで、全体を俯瞰して見やすい。
● FMEA(Failure Mode and Effects Analysis)
製造や開発段階で起こりうる故障モードを事前評価し、リスクスコアを付けて改善優先度を決める。
ハイレベルな手法だが、製品品質の安定に大きく貢献。
7. 項番 10.2を踏まえた“再発防止策”の立案と運用
● 本質的原因をつぶす
ISO9001 項番 10.2は、根本原因を排除する対策を求めています。
作業者を変えればいい、罰則を設ければいい…ではなく、「なぜ作業者がミスを起こすのか」「どうすれば適切に作業できるか」まで深掘りする必要があります。
● 内部監査との連動
内部監査(項番 9.2)では、是正処置の実行状況や、過去に指摘された不適合が再発していないかをチェック。
内部監査チームが改善策のモニタリングをすることで、記録だけで終わらず実行までしっかりされます。
● マネジメントレビュー(項番 9.3)への報告
経営層が品質マネジメント全体を確認するマネジメントレビューの場で、是正処置の進捗を報告しましょう。
経営層から追加のリソース(予算、人員)をもらえるチャンスでもあります。
8. 実際の運用事例:成功と失敗の分かれ道
● 成功事例A:小規模製造業がクレーム率50%減
背景: 同じ不良が半年以上続き、顧客クレームが毎月発生。
施策: 「なぜなぜ分析」で作業手順書の更新漏れを発見→最新手順を全員に教育。
結果: 不良率が月5%→2%に下がり、クレーム件数は半年で半減。
● 成功事例B:建設会社が再発事故をゼロに
背景: 足場の不具合に起因する安全事故が繰り返し発生。
対応: 再発防止のために施工前チェックリストと安全教育を徹底し、協力会社にもルールを共有。
成果: 過去1年間で同種の事故がゼロに。労災リスク低減、社内外の信頼度アップ。
● 失敗事例C:形だけの報告書で同じミス続出
問題: 原因分析を「担当者の不注意」で済ませ、構造的な問題を見逃す。
結果: 別の担当者が同じ作業ミスを繰り返し、内部監査や外部審査でも指摘が増加。
9. よくある疑問Q&A
Q1: 軽微な不具合も是正処置を適用すべき?
影響が小さい不具合は簡易的な対策でもOK。ただし繰り返し起きるなら重大化する恐れがあるので要注意。
Q2: 原因分析が難しい…どうすれば?
一人で抱え込まず、複数部署やスタッフで意見を出し合うと本質的な原因が見つかりやすい。
なぜなぜ分析や魚骨図で情報を整理すると効果的。
Q3: どの部署が是正処置を主導すればいい?
組織規模や業種によるが、多くは品質管理部門や管理部門がまとめ役に。実際の実行は関連部署と協力して進めるのが基本。
10. 失敗しない改善プロセスのまとめ
● PDCAサイクルを回す
Plan: 不適合発生状況やリスクを把握し、是正策を計画
Do: 実施し、担当者・期限・リソースを明確に
Check: 結果をモニタリングし、再発有無や新たな問題点を検証
Act: 改善が不十分なら対策を追加・見直し
● 担当者・期限・必要リソースを明確に
「何をいつまでに誰がやるか」を文書化し、社内共有。
内部監査やマネジメントレビューで定期的に進捗をフォローすれば、確実に改善が進む。
● 経営層のコミットメント
経営トップが是正処置に興味を持ち、問題が再発しない仕組みづくりに予算や人員を投入すれば、社内でも真剣に取り組まれやすい。
結果として、クレーム減少や信頼度向上など、大きな効果が期待できる。
まとめ:ISO9001の是正処置とは?やり方・参考例・具体例でわかる失敗しない改善プロセス
ISO9001において是正処置は、不適合を根本原因から取り除き、再発防止を徹底するための大切な仕組みです。
不適合が起きたら: すぐ報告、原因分析、対策立案、効果確認
参考例を活かす: 製造業・建設業・サービス業、それぞれの成功体験から学ぶ
初心者にも優しいやり方: なぜなぜ分析や魚骨図などの手法を利用
PDCAサイクルで継続改善: 内部監査やマネジメントレビューと連動して、形だけの対策に終わらない運用を目指す
適切な是正処置を行うことで、社内のトラブル・クレームを減らし、品質・顧客満足度を上げるだけでなく、外部審査でも高い評価を得られるでしょう。今回のガイドを参考に、ぜひ失敗しない改善プロセスをあなたの企業でも実践してみてください。
この記事の監修者情報
金光壮太 (ISOコンサルタント)
大手商社にて営業を経験した後、ISOコンサルティングに従事。ISO9001、14001、27001を中心に、各業界の課題や特性に応じたシステム構築や運用支援を行い、企業の業務効率化や信頼性向上に貢献。製造業や建設業など、多岐にわたる業界での豊富な経験を活かし、お客様のニーズに応じた柔軟なソリューションの提案を得意としている
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