ISO9001プロセスフロー図をわかりやすく解説!参考例・具体例から学ぶ作成のコツと運用ガイド!
- 【監修者】金光壮太(ISOトラストのコンサルタント)
- 2 日前
- 読了時間: 9分

▼ 目次
1. はじめに
● ISO9001プロセスフロー図とは?この記事のゴール
ISO9001で重視される「プロセスアプローチ」を、視覚的にわかりやすく示したものが「プロセスフロー図」です。
業務工程を図にすることで、工程ごとの責任や手順、リスクを明確にでき、業務改善や内部監査、外部審査でも有効に活用できます。
本記事では、プロセスフロー図の作り方から運用のコツ、具体例までを初心者でも理解しやすいようにまとめました。
2. そもそもISO9001でプロセスフロー図が求められる理由
● 項番 4.4(プロセスアプローチ)の基本
ISO9001の項番 4.4では、組織の品質マネジメントシステム(QMS)を「プロセス」として捉え、インプットやアウトプット、責任やリソースを明示することが求められています。
プロセスアプローチとは、業務全体を小さな工程(プロセス)に分割し、それぞれのつながりを理解しながら改善を図る考え方。
フロー図を作ることで、このプロセス同士の関係を簡単に可視化できるため、項番 4.4で求められる要件をシンプルに満たせるのです。
● 品質マネジメントシステム(QMS)内での役割
可視化: 誰が何をやるかが図でわかる
工程間のつながり: 調達→製造→検査→出荷など、インプット・アウトプットをはっきり示せる
リスクや手順逸脱の発見: フロー図を見比べると「この工程にリスクがある」と察知しやすい
3. プロセスフロー図がもたらすメリット
● 全体像の可視化と担当責任の明確化
フロー図を描くと、「受注部署→製造部署→検査部署→出荷部署」という流れがひと目でわかります。
不良やクレームが発生した場合でも、「どの部署がどこまで責任を負うか」がはっきりするため、ミスやクレームの原因究明がスムーズです。
● 新人教育・マニュアル化の強化
文章だけの手順書だと読み込みに時間がかかり、理解度もまちまち。しかし、フローチャート形式にすれば、視覚的に工程がわかるため、教育コストを下げられます。
私がサポートしたある食品工場では、フロー図を貼り出すだけで新人の作業習熟度が上がり、研修期間が2割短縮された事例があります。
● 外部審査や顧客への説明がスムーズに
ISO9001の外部審査員や取引先が「この企業はどんな流れで商品を作っているのか?」と疑問を持ったとき、フロー図があれば一発で答えられます。
認証審査でも、プロセスフロー図がしっかり作られている企業は**「プロセスアプローチを理解している」と評価**されやすいです。
4. プロセスフロー図の基本構成:書き方の全体像
業務範囲の定義
まず「どの製品やサービスの工程を図にするか」を決め、余計な範囲を含めないように。
入力・出力の明確化
例:製造業なら「原材料」がインプットで「完成品」がアウトプット。サービス業なら「顧客依頼内容→提供サービス」など。
主要ステップの洗い出し
受注→設計→製造→検査→出荷のように、大きく工程を分ける。
責任部門・担当者の設定
部署や担当者名を入れておくことで責任・権限が分かりやすい。
大規模企業なら部門レベル、小規模なら個人名まで明記してもOK。
フィードバックループ(監視・測定・改善)
各工程でどんな測定をして、問題があればどこにフィードバックするのかを矢印で示すと効果的。
5. 作成方法のステップ:簡単に始めるコツ
● 必要ツールの選択
手書き: 小規模や試作品の段階で有効
VisioやPowerPoint: Microsoft系ツールで社内利用しやすい
専用ソフト(Lucidchartやdraw.ioなど): クラウド上で共同編集でき、バージョン管理も簡単
● 関係者とのヒアリング
実際にその工程を担当している人に**「実際の作業はどうなっている?」**と聞くのが近道。
現場と図にギャップがないかを確認するため、ヒアリング用チェックリストを用意するとスムーズ。
● ドラフト化とレビュー
1枚にまとめすぎず、工程が多い場合はサブフロー図を用いると見やすい。
部門横断でレビューし、「本当にこの通りになっている?」を徹底確認。
● 最終承認と文書管理
イントラネットに掲載したり、バージョン管理(改訂履歴)を設定し、いつでも最新を見られるように。
定期的な見直し時期(年1回など)を決めて更新漏れを防ぐ。
6. 参考例・具体例:業種別のプロセスフロー図サンプル
● 製造業の例
工程フロー: 受注→資材調達→組立→工程内検査→最終検査→梱包・出荷
ポイント:
検査工程を2段階にし、最初の検査でNGなら再加工ラインへ戻る分岐を描く
部署名(購買部、製造課、品質管理課など)をそれぞれの工程に配置
● 建設業の例
工程フロー: 受注→設計→許認可取得→施工→検査→引き渡し
ポイント:
協力会社との契約や天候リスク、資材遅延などのリスク箇所を図に注記
項番 8.5(運用)での「監視・測定」のタイミングも矢印で明示
● サービス業の例
工程フロー: 問い合わせ受付→要件ヒアリング→サービス提供→顧客評価→改善フィードバック
ポイント:
コールセンターや営業部など複数部門が連携するシーンを矢印で表す
顧客満足度アンケートを回収し、PDCAを回すループを描く
7. 項番ごとの関連:プロセスフロー図で押さえるポイント
● 項番 4.4(QMSとそのプロセス)
フロー図は項番 4.4が求める「プロセスの必要事項(インプット、アウトプット、責任、リスクなど)」を視覚化する手段。
例:図中にインプットとアウトプットを必ず示す。
● 項番 6.1(リスクおよび機会)
プロセスごとに想定されるリスクと機会を矢印や注釈で入れておく企業も。
例:生産ラインに「設備故障リスク」「品質不良リスク」を記載。
● 項番 8.1(運用の計画及び管理)
実際の工程管理とフロー図のリンク。どの段階で作業標準書を参照するかなど。
例:工程FMEAなどを組み込む際にもフロー図に記載するとわかりやすい。
8. 実務に直結!プロセスフロー図の活用事例
● 事例A:クレームが激減した電子部品メーカー
状況: 何度も同じ不良が出る→原因を特定できず困惑
対策: 全工程をフロー図化し、不良が起こりやすい工程を可視化。工程内検査を増やすなど改善策を実施
効果: クレーム率が半年で30%減少し、内部監査でも高い評価を受けた
● 事例B:建設会社で施工管理がスムーズに
課題: 社内の異なる部署間の連携ミスで工期遅延が頻発
施策: 受注→施工→検査までのフロー図を共有し、どこで誰が引き継ぎするかを明記
成果: 設計変更や資材調達ミスが減少し、工期遅延が激減
● 事例C:コールセンターが顧客対応フローを可視化
問題: 担当者ごとに対応が異なり、クレーム増
対応: 問い合わせ→要件確認→応対スクリプト→フォローアップという流れをフロー図化
結果: 新人育成がスピードアップし、応対品質が安定
9. よくある落とし穴と対策
● 落とし穴A:細かすぎて読みにくい
問題: 1つのフロー図に工程を詰め込みすぎ、文字だらけになる
対策: 大まかな上位フローと、詳細工程フローを分ける。補足説明は別資料にまとめる
● 落とし穴B:作ったきり更新されない
問題: 工程変更や部署改編があっても図が古いまま放置。監査時に「現実と違う」と指摘される
対策: バージョン管理を明確にし、定期的にレビューや内部監査で更新の必要を確認
● 落とし穴C:部署責任が曖昧
問題: フロー図に「工程A→工程B」だけ書いて、どの部署が何を担当するか分からない
対策: 工程ごとに責任部署や担当者の役職を明記し、問い合わせ先や承認ルートを明確に
10. Q&A:プロセスフロー図に関するよくある疑問
Q1: どのソフトを使えばいい?
VisioやPowerPointが一般的。無料のdraw.ioやLucidchartも便利。小規模ならExcelでも対応可能
Q2: 全部の工程を1枚にまとめる必要がある?
企業規模や製品数が多い場合は複数ページに分け、全体図と部門別フローを組み合わせて運用すると良い
Q3: 項番 4.4のプロセスアプローチとどう違う?
プロセスアプローチは考え方。フロー図は、その考え方をビジュアル化して運用するためのツール
11. 運用ガイド:作成後の管理・更新方法
● 定期的なレビュー(マネジメントレビューや内部監査)
フロー図が実際の業務と一致しているか、変更があればすぐ反映しているかをチェック
改善点が見つかれば即更新し、社内ポータルなどで周知
● 部署横断での共有と教育
新人教育にフロー図を活用すると理解しやすい
複数拠点や海外拠点がある場合は、英語版や多言語版のフローチャートも検討
● 改訂履歴の明確化
改訂日や改訂理由、担当者を必ず記録。
前バージョンと何が変わったかを簡潔にまとめると、審査や監査でも評価されやすい
12. まとめ:ISO9001プロセスフロー図をわかりやすく解説!参考例・具体例から学ぶ作成のコツと運用ガイド
ISO9001のプロセスフロー図は、業務プロセスの可視化と責任分担の明確化、そしてリスクや改善点を発見するために非常に有効なツールです。
作成するメリット: 部署連携がスムーズになり、クレームや不適合が減る
作り方のコツ: インプット・アウトプットを明確化、責任部署、バージョン管理を徹底
運用上の注意: 作っただけで満足せず、定期的に更新とレビューを行い、現場の声を反映
初心者でも大丈夫
まずは主要工程をざっくり描き、そこから詳細を追加していくスタイルでもOK。社内の現場担当者と一緒に進めることで、効率的かつ実務に即したフロー図が完成します。ISO9001の外部審査でも高評価を得られるだけでなく、組織全体の品質意識を高める効果も大いに期待できます。ぜひ活用してみてください。
この記事の監修者情報
金光壮太 (ISOコンサルタント)
大手商社にて営業を経験した後、ISOコンサルティングに従事。ISO9001、14001、27001を中心に、各業界の課題や特性に応じたシステム構築や運用支援を行い、企業の業務効率化や信頼性向上に貢献。製造業や建設業など、多岐にわたる業界での豊富な経験を活かし、お客様のニーズに応じた柔軟なソリューションの提案を得意としている
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