【2026年10月更新】ISO9001改訂の変更点を徹底解説!2015年版との違い・移行期限・必要な対応とは?

更新日:6 日前

ISO9001は、製品やサービスの品質向上、顧客満足の向上、業務プロセスの継続的な改善を目的とした品質マネジメントシステム(QMS)の国際規格です。
2026年9月16日、ISO9001の新たな規格となる「ISO9001:2026」が正式に発行され、従来のISO9001:2015から約11年ぶりの改訂が行われました。
今回の改訂では、品質マネジメントシステムの基本的な仕組みを維持しながら、品質文化や倫理的行動の促進、リスクと機会の明確化、変更管理の強化、組織の知識の活用、事業中断への備えなど、さまざまな要求事項が見直されています。
一方で、今回の改訂は品質マネジメントシステムを根本から変更するものではなく、2015年版から継続して求められている事項も多くあります。そのため、既にISO9001の認証を取得している企業では、すべての書類や運用方法を作り直すのではなく、改訂内容を正しく理解し、必要な部分を見直すことが重要です。
しかし、実際に規格改訂への対応を進めるにあたっては、「ISO9001:2026では具体的に何が変わったのか」「2015年版との違いは何か」「品質マニュアルや関連書類の修正は必要なのか」「いつまでに移行すればよいのか」など、疑問をお持ちの企業担当者も多いのではないでしょうか。
本記事では、ISO9001:2026の正式な改訂内容をもとに、2015年版との違いや各要求事項の変更点、移行期限、企業が実施すべき具体的な対応方法について詳しく解説します。
さらに、品質マニュアルやリスク及び機会一覧表、内部監査計画書、マネジメントレビュー議事録など、改訂に伴って見直しが考えられる書類についても、製造業・建設業・サービス業の具体例を交えながら分かりやすく紹介します。
これからISO9001:2026への移行を進める企業はもちろん、現在の品質マネジメントシステムを見直したい企業の皆様も、ぜひ参考にしてください。
▼ 目次
1. ISO9001:2026の改訂概要と正式発行日
1-1. ISO9001:2026とは?
ISO9001:2026とは、品質マネジメントシステム(QMS)に関する国際規格「ISO9001」の最新版です。
ISO9001は、企業が顧客の要求事項や適用される法令・規制要求事項を満たす製品・サービスを継続的に提供し、顧客満足の向上を図るための仕組みを定めた国際規格です。
製造業や建設業をはじめ、運送業、情報通信業、サービス業など、業種や企業規模を問わず幅広く活用されています。
今回のISO9001:2026は、2015年に発行された「ISO9001:2015」以来、約11年ぶりとなる改訂版です。
2026年9月16日に正式発行され、従来の2015年版に代わる新たな国際規格となりました。
今回の改訂では、品質マネジメントシステムの基本的な考え方を維持しながら、企業を取り巻く経営環境の変化に対応できるよう、要求事項の一部が見直されています。
特に、品質文化や倫理的行動の促進、リスクと機会の明確化、経営戦略との整合性、組織の変化への対応などが重視されています。
ただし、ISO9001:2026は、これまでの品質マネジメントシステムを根本から変更するものではありません。
顧客重視、プロセスアプローチ、リスクに基づく考え方、継続的改善といった基本原則は、2015年版から引き続き維持されています。
そのため、既にISO9001の認証を取得している企業では、現在の仕組みを活かしながら、新しい要求事項に合わせて必要な部分を見直すことが重要です。
1-2. ISO9001:2026の正式発行日と改訂までの経緯
ISO9001:2026は、2026年9月16日に国際標準化機構(ISO)から正式に発行されました。
ISO9001の改訂は、国際的な専門家による検討や審議を経て進められており、今回も複数の段階を経て正式発行に至っています。
主な経緯は以下のとおりです。
時期 | 改訂の進捗 |
2023年11月 | ISO9001の改訂プロジェクトを承認 |
2024年 | 委員会原案(CD)の検討を実施 |
2025年8月 | 国際規格案(DIS)の投票開始 |
2025年11月 | DISの投票終了 |
2026年4月 | 最終国際規格案(FDIS)への移行を承認 |
2026年7月 | FDISの投票終了 |
2026年9月16日 | ISO9001:2026正式発行 |
これまでISO9001の改訂に関する情報は、DISやFDISといった規格案をもとに紹介されることが多くありました。
しかし、現在はISO9001:2026が正式に発行されているため、改訂予定や予測ではなく、確定した規格要求事項に基づいて対応を進めることができます。
なお、ISO9001:2026の国際規格が正式に発行されたことと、日本語版のJIS規格が発行されることは別の手続きです。
企業が規格改訂への対応を進める際には、適用する規格の版や審査機関からの案内を確認することが重要です。
1-3. なぜISO9001は2026年に改訂されたのか?
ISO9001が改訂された背景には、2015年版の発行以降、企業を取り巻く経営環境や事業活動が大きく変化したことがあります。
例えば、デジタル技術の普及、サプライチェーンの複雑化、顧客ニーズの多様化、事業継続に関する課題など、企業には従来以上に柔軟な対応が求められるようになっています。
また、製品やサービスの品質を安定させるだけでなく、企業全体で品質を重視する文化を育て、従業員一人ひとりが適切な判断や行動を取れる環境を整えることも重要になっています。
こうした変化を踏まえ、ISO9001:2026では、従来の品質管理の仕組みを活かしながら、企業の経営活動や組織運営と品質マネジメントシステムの関係をより明確にする方向で改訂が行われました。
今回の改訂で特に注目されるのは、次のような点です。
① 品質文化と倫理的行動の重視
製品やサービスの品質を維持・向上させるためには、作業手順や検査方法を整備するだけでなく、従業員が品質を大切にする意識を持ち、適切に行動できる組織文化が重要です。
2026年版では、トップマネジメントによる品質文化や倫理的行動の促進が、より明確に求められるようになりました。
② リスクと機会の明確化
2015年版でも、リスク及び機会への取組は重要な要求事項でした。
2026年版では、リスクと機会をより明確に区別し、それぞれについて必要な対応を検討する構成へ整理されています。
これにより、問題の発生を防止するための対応だけでなく、改善や事業上の成果につながる機会についても、より明確に検討できるようになっています。
③ 経営戦略と品質マネジメントシステムの整合性
品質マネジメントシステムは、ISO認証を維持するためだけの仕組みではありません。
企業の経営方針や事業目標と連携し、顧客満足や業務改善などにつなげることが重要です。
2026年版では、組織の状況や戦略的な方向性と品質方針との関係が、より明確に整理されています。
④ 変化に対応できる組織づくり
近年は、原材料の調達環境の変化、外部委託先の問題、自然災害、システム障害など、企業活動に影響するさまざまな事象が発生しています。
2026年版では、こうした経営環境の変化や事業中断への備えなども踏まえ、品質マネジメントシステムを適切に運用することが重視されています。
1-4. ISO9001:2015から2026年版への改訂は大幅な変更なのか?
結論からいうと、ISO9001:2026は、2015年版から品質マネジメントシステムの仕組みを全面的に変更するような大規模改訂ではありません。
今回の改訂では、従来から求められていた内容の整理や明確化に加えて、一部の要求事項が追加・変更されています。
例えば、品質文化や倫理的行動に関する要求事項は、今回の改訂で特に重視された内容です。
一方、内部監査やマネジメントレビュー、文書化した情報の管理、是正処置など、ISO9001の基本的な運用に関する要求事項は引き続き維持されています。
また、ISO9001:2026では、他のISOマネジメントシステム規格との整合性を高めるため、最新の共通構造(Harmonized Structure)が採用されています。
ただし、規格の基本的な章立ては維持されているため、既存の品質マニュアルや関連書類を活用しながら対応できる部分も多くあります。
そのため、既にISO9001の認証を取得している企業では、まず2015年版と2026年版の要求事項を比較し、現在の運用で対応できている部分と、見直しが必要な部分を整理することが重要です。
例えば、品質マニュアルを規格の項番に沿って作成している場合には、項番の変更や新たに明確化された要求事項を確認する必要があります。
一方、既存の管理方法で2026年版の要求事項を満たしている場合には、必ずしも新しい書類を作成する必要はありません。
重要なのは、書類の数を増やすことではなく、新しい規格要求事項に適合した品質マネジメントシステムが、実際の業務の中で適切に運用されていることです。
1-5. ISO9001:2026への改訂で企業がまず確認すべきこと
ISO9001:2026への対応を進める企業では、最初に現在の品質マネジメントシステムの状況を確認することをおすすめします。
具体的には、以下のような事項が確認のポイントになります。
品質マニュアルや関連規程が2026年版の要求事項に対応しているか
品質文化や倫理的行動に関する取組が適切に行われているか
リスクと機会について、必要な事項が明確になっているか
品質方針や品質目標が組織の状況や経営方針と整合しているか
変更管理や外部委託先の管理が適切に行われているか
内部監査やマネジメントレビューで新しい要求事項を確認できるか
ただし、これらの事項について、すべて新たな書類や管理表を作成する必要があるわけではありません。
現在の仕組みを確認し、不足している部分を補うことで、企業の負担を抑えながら移行対応を進めることができます。
また、ISO9001:2026への移行は、単に新しい規格への適合を目指すだけでなく、これまでの品質マネジメントシステムを見直す機会にもなります。
例えば、形骸化している管理表の見直し、重複している記録の整理、実際の業務に合っていない手順の改善などを進めることも考えられます。
今回の規格改訂をきっかけに、認証維持のためだけではなく、実際の業務改善や顧客満足の向上につながる品質マネジメントシステムを目指すことが重要です。
2. ISO9001:2026への移行期限とスケジュール
2-1. ISO9001:2026への移行期限はいつまで?
ISO9001:2015からISO9001:2026への移行期限は、2029年9月30日です。
2026年9月16日にISO9001:2026が正式発行されたことに伴い、既にISO9001:2015の認証を取得している企業には、約3年間の移行期間が設けられています。
この移行期間内に、新しい規格要求事項に対応した品質マネジメントシステムを整備し、審査機関による移行審査を完了する必要があります。
移行期限までに必要な手続きを完了できなかった場合、従来のISO9001:2015に基づく認証を維持することができなくなるため、注意が必要です。
ただし、ISO9001:2026への移行にあたって、現在の認証を一度取り消して新規取得し直す必要はありません。
既存の認証を維持しながら、通常の維持審査(サーベイランス審査)や更新審査、または別途実施する移行審査を通じて、新しい規格への移行を進めることができます。
なお、具体的な移行審査の実施時期や申込方法については、契約している審査機関によって異なるため、事前に確認しておくことが重要です。
2-2. ISO9001:2026の正式発行から移行完了までのスケジュール
ISO9001:2026の正式発行から移行期限までの主なスケジュールは、以下のとおりです。
時期 | 主な内容 |
2026年9月16日 | ISO9001:2026正式発行 |
2027年3月31日まで | 認定機関が2026年版の審査に対応できる体制を整備 |
2027年6月30日まで | 認証機関が移行に必要な申告・資料を提出 |
2027年9月30日まで | 認定機関による認証機関の移行判断を完了 |
2028年3月31日以降 | 新規の認定認証はISO9001:2026のみ |
2029年9月30日 | ISO9001:2015から2026年版への移行期限 |
上記のスケジュールは、ISOの公式な移行ガイダンスに基づくものです。
ここで注意したいのは、2027年に設定されている期限の多くは、認定機関や認証機関に関するものであり、ISO認証を取得している一般企業の移行期限ではないという点です。
既にISO9001:2015の認証を取得している企業は、2029年9月30日までに移行を完了する必要があります。
一方、これから新規でISO9001の認証を取得する企業については、2028年3月31日以降、新規の認定認証はISO9001:2026に基づいて行われることになります。
そのため、新規取得を検討している企業では、取得予定時期に応じて、どちらの規格で審査を受けるべきか審査機関へ確認することをおすすめします。
2-3. ISO9001:2015の認証はいつまで有効?
現在ISO9001:2015の認証を取得している企業は、ISO9001:2026が発行されたからといって、直ちに認証が無効になるわけではありません。
移行期間中は、従来のISO9001:2015に基づく認証を維持しながら、2026年版への移行準備を進めることができます。
ただし、2029年9月30日までに移行を完了できなかった場合、ISO9001:2015に基づく認証は有効性を失います。
また、認証書に記載されている有効期限が2029年9月30日より先であっても、それだけで2015年版の認証を継続できるわけではありません。
例えば、2027年に更新審査を受け、認証書の有効期限が2030年となっている場合でも、2029年9月30日までに2026年版への移行を完了する必要があります。
そのため、認証書の有効期限だけでなく、規格改訂に伴う移行期限についても把握しておくことが重要です。
2-4. ISO9001:2026への移行審査とは?
ISO9001:2026への移行審査とは、現在の品質マネジメントシステムが、新しい2026年版の規格要求事項に適合しているかを確認する審査です。
通常のISO9001審査では、品質マネジメントシステムが規格要求事項や自社のルールに適合し、有効に運用されているかを確認します。
移行審査では、これらに加えて、2015年版から2026年版への変更点に対して、必要な対応が行われているかが確認されます。
例えば、今回の改訂で重視されている品質文化や倫理的行動、リスクと機会の整理などについて、企業がどのように対応しているかが確認対象となります。
また、品質マニュアルや関連規程などを変更した場合には、その内容が実際の業務に反映されているかも重要です。
なお、移行審査で確認される具体的な項目や必要な審査時間については、審査機関の方針や企業の状況によって異なります。
そのため、事前に審査機関へ移行審査の実施方法や必要な準備について確認しておきましょう。
2-5. 移行審査は維持審査・更新審査と同時に受けられる?
ISO9001:2026への移行審査は、通常の維持審査(サーベイランス審査)や更新審査と合わせて実施することが可能です。
また、必要に応じて、移行審査を単独で実施する方法もあります。
それぞれの特徴は以下のとおりです。
① 維持審査と合わせて移行する場合
毎年実施される維持審査に合わせて、ISO9001:2026への適合状況を確認する方法です。
通常の審査と同じタイミングで移行審査を受けられるため、審査日程をまとめやすいというメリットがあります。
ただし、新しい要求事項の確認に必要な審査時間が追加される場合もあります。
② 更新審査と合わせて移行する場合
原則として3年ごとに実施される更新審査に合わせて、ISO9001:2026への移行を行う方法です。
品質マネジメントシステム全体を確認する更新審査と合わせて、規格改訂への対応状況を確認できます。
ただし、更新審査の予定が移行期限に近い場合には、十分な準備期間を確保する必要があります。
③ 移行審査を単独で実施する場合
通常の維持審査や更新審査とは別に、ISO9001:2026への移行審査を実施する方法です。
次回の定期審査まで待たずに移行を進めたい場合や、移行期限との関係で別途審査が必要となる場合などに検討されます。
ただし、追加の審査費用が発生する可能性があるため、事前に審査機関へ確認することをおすすめします。
いずれの方法でも、企業の審査スケジュールに合わせて、無理のない移行計画を立てることが重要です。
2-6. ISO9001:2026への移行準備はいつから始めるべき?
ISO9001:2026への移行期限は2029年9月30日ですが、期限直前まで対応を先延ばしにすることはおすすめできません。
規格改訂への対応では、単に品質マニュアルの記載内容を変更するだけでなく、必要に応じて業務手順の見直しや従業員への周知、内部監査、マネジメントレビューなどを実施することが考えられます。
そのため、移行審査を受けるまでに一定の準備期間を確保しておくことが重要です。
例えば、2027年から2028年にかけて、以下のような流れで準備を進めることが考えられます。
時期の目安 | 推奨する対応 |
2026年後半 | 2026年版の改訂内容を確認する |
2027年前半 | 現在の品質マネジメントシステムとの違いを整理する |
2027年後半 | 品質マニュアルや関連書類、運用方法を見直す |
2028年 | 変更内容を運用に反映し、内部監査・マネジメントレビューで確認する |
2028年〜2029年前半 | 維持審査・更新審査などに合わせて移行審査を受ける |
2029年9月30日まで | ISO9001:2026への移行を完了する |
上記は一般的な準備スケジュールの一例であり、すべての企業がこの日程で対応する必要があるわけではありません。
例えば、既存の品質マネジメントシステムが十分に整備されている企業であれば、比較的短期間で移行準備を進められる場合もあります。
一方、複数の事業所がある企業や、品質マネジメントシステムの運用方法を大きく見直す必要がある企業では、準備に時間がかかる可能性があります。
そのため、自社の運用状況や次回審査の予定を踏まえて、適切なスケジュールを検討することが重要です。
2-7. ISO9001:2026への移行で注意すべきポイント
ISO9001:2026への移行を進める際には、次のような点に注意しましょう。
① 書類の改訂だけで対応を終わらせない
品質マニュアルや関連規程を2026年版に合わせて修正しただけでは、十分な対応とはいえません。
変更した内容が実際の業務に反映され、必要な運用が行われていることが重要です。
② 新しい要求事項への対応状況を確認する
品質文化や倫理的行動、リスクと機会など、今回の改訂で明確化された事項について、現在の運用で対応できているか確認しましょう。
既存の仕組みで対応できている場合には、必ずしも新しい書類を作成する必要はありません。
③ 内部監査やマネジメントレビューで確認する
新しい要求事項への対応状況について、内部監査やマネジメントレビューなどを通じて確認することが重要です。
これにより、移行審査を受ける前に、不足している部分や改善が必要な事項を把握しやすくなります。
④ 審査機関の移行方針を確認する
移行審査の開始時期、申込方法、審査時間、費用などは、審査機関によって異なる場合があります。
特に、維持審査や更新審査と合わせて移行する場合には、事前に審査機関へ確認しておくことをおすすめします。
⑤ 移行期限に余裕を持って対応する
移行期限が近づくと、審査機関の予約状況などによって、希望する時期に移行審査を受けられない可能性もあります。
また、審査で不適合が指摘された場合には、是正処置や追加確認などが必要になることも考えられます。
そのため、移行期限の直前ではなく、余裕を持って審査を受けることが望ましいでしょう。
2-8. ISO9001:2026への移行は早めの準備が重要
ISO9001:2026への移行期限は2029年9月30日であり、既にISO9001:2015の認証を取得している企業には約3年間の移行期間が設けられています。
そのため、直ちにすべての書類や運用方法を変更する必要はありませんが、移行期限までに必要な対応を完了できるよう、計画的に準備を進めることが重要です。
特に、今回の改訂では、従来の品質マネジメントシステムの基本的な仕組みを維持しながら、一部の要求事項が整理・明確化されています。
まずは2015年版と2026年版の違いを把握し、現在の品質マネジメントシステムで対応できている部分と、見直しが必要な部分を整理しましょう。
既存の仕組みを最大限に活用しながら、必要な部分だけを見直すことで、企業の負担を抑えた円滑な移行対応につなげることができます。
3. ISO9001:2015と2026年版の主な違い【新旧比較表】
ISO9001:2026では、従来のISO9001:2015から一部の要求事項が追加・変更されるとともに、既存の要求事項についても表現や構成の見直しが行われています。
今回の改訂で特に注目されるのは、品質文化及び倫理的行動の促進、リスクと機会の区分、変更の計画策定に関する要求事項の明確化などです。
一方で、ISO9001の基本的な考え方である顧客重視、プロセスアプローチ、PDCAサイクル、継続的改善などは引き続き維持されています。
そのため、既にISO9001の認証を取得している企業では、現在の品質マネジメントシステムを全面的に作り直すのではなく、2015年版と2026年版の違いを把握し、必要な部分を見直すことが重要です。
ここでは、ISO9001:2015とISO9001:2026の主な違いについて、要求事項ごとに比較しながら解説します。
3-1. ISO9001:2015と2026年版の変更点一覧表
ISO9001:2026における主な変更点は、以下のとおりです。
要求事項 | 2015年版からの主な変更内容 |
4.1 組織及びその状況の理解 | 気候変動への考慮を含め、組織の状況に関する要求事項を整理 |
4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解 | 品質マネジメントシステムで対応する利害関係者の要求事項を明確化 |
5.1.1 リーダーシップ及びコミットメント | 品質文化及び倫理的行動の促進を明確化 |
5.2 品質方針 | 組織の状況や戦略的な方向性との関係を整理 |
6.1 リスク及び機会への取組 | リスクへの取組と機会への取組を別々の項番に整理 |
6.3 変更の計画策定 | 変更内容の伝達、変更の有効性の評価、結果のレビューなどを明確化 |
7.1.4 プロセスの運用に関する環境 | 品質文化や倫理的行動と職場環境との関係を注記で補足 |
7.1.6 組織の知識 | 必要な知識の管理や活用に関する表現を整理 |
7.3 認識 | 品質文化及び倫理的行動に関する認識を追加 |
8.1 運用の計画策定及び管理 | 運用管理に関する要求事項の表現を整理 |
8.4 外部から提供されるプロセス、製品及びサービスの管理 | 外部提供者への要求事項や管理に関する表現を整理 |
9.3 マネジメントレビュー | レビューの入力事項や結果に関する構成を整理 |
10.1 継続的改善 | 従来の改善に関する要求事項を整理・統合 |
附属書A | 各要求事項の意図や解釈に関する補足説明を充実 |
なお、上記は主な変更点を整理したものであり、すべてが新たに追加された要求事項というわけではありません。
従来から求められていた内容を明確化したものや、項番・表現を整理したものも含まれています。
また、気候変動への考慮については、2024年にISO9001:2015に対する追補として既に追加されているため、2026年版で初めて導入された要求事項ではありません。
3-2. 今回の改訂で特に重要な変更点
ISO9001:2026への移行にあたって、特に確認しておきたい変更点を紹介します。
① 品質文化及び倫理的行動の促進
今回の改訂では、5.1.1「リーダーシップ及びコミットメント」において、トップマネジメントによる品質文化及び倫理的行動の促進が明確になりました。
また、7.3「認識」においても、品質文化及び倫理的行動に関する認識が追加されています。
例えば、製造業では、不良品や作業ミスが発生した際に問題を隠さず報告できる職場環境を整えることが考えられます。
建設業では、施工上の問題や品質に関する懸念事項を現場から適切に報告し、必要な対応につなげられる体制を整えることなどが考えられます。
② リスクと機会に関する要求事項の整理
2015年版では、6.1「リスク及び機会への取組」において、リスクと機会を一体的に取り扱う構成となっていました。
2026年版では、リスクへの取組と機会への取組が別々の項番に整理されています。
これにより、問題の発生を防止するための対応と、改善や成果の向上につながる機会について、それぞれ明確に検討することが重要になります。
例えば、製造業では設備故障による納期遅延をリスクとして検討し、設備の予防保全を進めることが考えられます。
一方、生産工程の自動化による品質の安定化や作業効率の向上を、機会として検討することも考えられます。
③ 変更の計画策定に関する要求事項の明確化
6.3「変更の計画策定」では、品質マネジメントシステムに関する変更を計画的に進めるための考慮事項が整理されています。
2015年版でも、変更の目的や影響、必要な資源、責任及び権限などを考慮することが求められていました。
2026年版では、変更内容の伝達や変更の有効性の確認、変更結果のレビューなどについても明確になっています。
例えば、製造工程を変更する場合には、変更前に品質への影響を確認するだけでなく、変更内容を関係者へ伝え、変更後に不良率や作業状況などを確認することが考えられます。
④ 組織の知識に関する要求事項の整理
7.1.6「組織の知識」では、品質マネジメントシステムの運用に必要な知識を明確にし、適切に維持・活用することが引き続き求められます。
例えば、特定の従業員しか把握していない作業上の注意点や、過去の不具合への対応方法などについて、必要に応じて社内で共有できる仕組みを整えることが考えられます。
ただし、今回の改訂によって、すべての知識を新たに文書化することが求められるわけではありません。
現在の教育や情報共有の方法を確認し、必要な知識が適切に利用できる状態になっているか見直すことが重要です。
⑤ 外部提供者の管理に関する要求事項の整理
8.4では、外部から提供されるプロセス、製品及びサービスに対する管理について、要求事項の表現が整理されています。
例えば、製造業では外注加工先の品質管理、建設業では協力会社の施工品質、サービス業では外部委託先の業務品質などが該当します。
基本的な管理の考え方は従来と同じですが、現在の外部委託先管理や購買管理の方法が適切であるか確認することが重要です。
3-3. ISO9001:2026でも変わらない主な要求事項
今回の改訂では、一部の要求事項が追加・変更されていますが、ISO9001の基本的な運用方法が全面的に変更されたわけではありません。
例えば、以下のような活動は、2026年版でも引き続き重要です。
顧客要求事項の把握と顧客満足の向上
品質方針及び品質目標の設定
業務プロセスの明確化と管理
必要な力量の確保と教育
文書化した情報の管理
製品及びサービスの品質管理
不適合への対応及び是正処置
内部監査の実施
マネジメントレビューの実施
品質マネジメントシステムの継続的改善
そのため、既にISO9001:2015の認証を取得し、適切に運用している企業では、現在の仕組みを活用しながら2026年版へ移行できる部分も多くあります。
例えば、現在使用している品質目標管理表や内部監査報告書、マネジメントレビュー議事録などについても、必要な要求事項を満たしていれば、そのまま活用できる場合があります。
3-4. ISO9001:2026への移行では何を優先して見直すべき?
ISO9001:2026への移行では、まず今回の改訂で追加・変更された要求事項を中心に確認することをおすすめします。
特に、品質文化及び倫理的行動、リスクと機会、変更の計画策定などについて、現在の品質マネジメントシステムで適切に対応できているか確認することが重要です。
また、品質マニュアルを規格の項番に沿って作成している場合には、要求事項の構成や項番の変更についても確認する必要があります。
ただし、規格改訂に対応するために、すべての書類や運用方法を変更する必要があるわけではありません。
重要なのは、2015年版と2026年版の違いを正しく理解し、現在の仕組みで対応できている部分と、追加・修正が必要な部分を明確にすることです。
次の章では、ISO9001:2026の各要求事項について、2015年版との具体的な違いや企業が実施すべき対応方法、見直しが考えられる書類などを詳しく解説します。
4. ISO9001:2026の要求事項別の変更点と対応方法
ISO9001:2026では、品質マネジメントシステムの基本的な考え方を維持しながら、一部の要求事項について追加・変更や表現の明確化が行われています。
特に、品質文化及び倫理的行動、リスクと機会、変更管理などは、今回の改訂で注目される項目です。
一方、従来から求められていた内容が整理された部分も多く、すべての要求事項について新しい書類や管理方法が必要になるわけではありません。
ここでは、ISO9001:2015と2026年版の主な違いを要求事項ごとに整理し、企業が確認すべき内容や具体的な対応方法について解説します。
4.1 組織及びその状況の理解
今回の改訂で変わったこと
ISO9001:2015では、品質マネジメントシステムの目的や意図した結果に影響する内部・外部の課題を明確にし、それらの情報を監視・レビューすることが求められていました。
2026年版でも基本的な考え方は維持されています。
なお、気候変動が組織に関係する課題であるかを判断する要求事項は、2024年に発行された追補によって既に追加されています。
そのため、気候変動への考慮を2026年版で初めて追加された要求事項として説明しないよう注意が必要です。
企業が行うべき対応
現在の内部・外部の課題一覧表などを確認し、品質マネジメントシステムに影響する課題が適切に把握されているか見直しましょう。
例えば、人材不足、原材料の調達環境、顧客要求事項の変化、自然災害などが考えられます。
すべての課題を新たに追加する必要はありません。自社の事業活動や製品・サービスの品質に関係する事項を中心に整理することが重要です。
製造業の対応例
原材料の供給不足によって生産計画や納期に影響が生じる可能性を確認し、必要に応じて代替調達先の確保などを検討します。
建設業の対応例
技能者不足や資材価格の変動、異常気象などが施工品質や工期に与える影響を確認します。
サービス業の対応例
顧客ニーズの変化や従業員不足がサービス品質に与える影響を確認し、必要な対応を検討します。
見直しが考えられる書類
内部・外部の課題一覧表
SWOT分析表
品質マニュアル
経営計画書
4.1では特定の書類の作成が直接要求されているわけではありません。既存の方法で課題を把握・確認できていれば、新しい書類を作成する必要はありません。
4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解
今回の改訂で変わったこと
ISO9001では、顧客、従業員、取引先、行政機関など、品質マネジメントシステムに関係する利害関係者と、その要求事項を把握することが求められています。
2026年版でも、この基本的な考え方は維持されています。
また、2024年の追補では、関係する利害関係者が気候変動に関する要求事項を持つ場合があることが注記として示されています。
企業が行うべき対応
現在の利害関係者一覧表などを確認し、顧客や取引先から求められる事項が適切に把握されているか見直しましょう。
例えば、顧客からの品質要求、納期に関する要求、法令・規制要求事項などが考えられます。
要求事項を把握するだけでなく、実際の業務で必要な対応が行われているか確認することも重要です。
製造業の対応例
顧客から求められる製品仕様や品質基準、納期などを確認し、製造工程や検査方法に反映します。
建設業の対応例
発注者から求められる施工品質や工期、安全性に関する条件などを確認し、施工計画に反映します。
サービス業の対応例
顧客が求める対応時間やサービス内容、個人情報の取扱いなどについて、必要な管理方法を確認します。
見直しが考えられる書類
利害関係者一覧表
顧客要求事項一覧表
品質マニュアル
契約内容確認記録
5.1.1 リーダーシップ及びコミットメント
今回の改訂で変わったこと
ISO9001:2026では、トップマネジメントによる品質文化及び倫理的行動の促進が、重要な変更点の一つとなっています。
従来から、経営者には品質マネジメントシステムに責任を持ち、品質方針や品質目標を設定し、必要な資源を確保することなどが求められていました。
2026年版では、これらに加えて、組織全体で品質を重視し、倫理的に適切な行動を取れる文化を促進することが、より明確になっています。
企業が行うべき対応
品質文化や倫理的行動について、経営者がどのように関与しているか確認しましょう。
例えば、品質上の問題が発生した際に、従業員が問題を隠さず報告できる職場環境を整えることが考えられます。
また、品質に関する問題や改善提案について、経営者が適切に対応し、必要な資源を確保することも重要です。
なお、品質文化や倫理的行動への対応として、新たな規程や管理表の作成が一律に要求されるわけではありません。
既存の社内ルールや教育、会議などを通じて対応できる場合もあります。
製造業の対応例
不良品や作業ミスが発生した場合、担当者が問題を隠さず報告できる仕組みを整え、原因の確認や再発防止につなげます。
建設業の対応例
施工上の問題や品質に関する懸念事項を現場責任者が速やかに報告し、必要な対応を取れる体制を整えます。
サービス業の対応例
顧客への説明ミスや対応上の問題が発生した場合、従業員が正確に報告し、適切な改善につなげられる職場環境を整えます。
見直しが考えられる書類
品質マニュアル
品質方針
行動規範・倫理規程
教育訓練記録
マネジメントレビュー議事録
5.2 品質方針
今回の改訂で変わったこと
ISO9001では、トップマネジメントが品質方針を確立し、維持することが求められています。
品質方針は、組織の目的や状況、戦略的な方向性に対して適切であり、品質目標を設定するための枠組みとなる必要があります。
2026年版でも基本的な考え方は維持されており、組織の状況や経営戦略との整合性を確認することが重要です。
企業が行うべき対応
現在の品質方針が、自社の事業内容や経営方針と整合しているか確認しましょう。
例えば、顧客満足の向上や品質の安定化を経営上の重要課題としている場合、それらが品質方針や品質目標に適切に反映されているか確認します。
また、品質方針が従業員に周知され、その内容を理解できる状態になっているか確認することも重要です。
製造業の対応例
不良率の低減や納期順守を重視する経営方針に合わせ、品質方針と品質目標の整合性を確認します。
建設業の対応例
施工品質の向上や顧客からの信頼確保など、事業方針に沿った品質方針となっているか確認します。
サービス業の対応例
顧客対応品質の向上やサービスの安定提供など、経営方針と品質方針の関係を確認します。
見直しが考えられる書類
品質方針
品質目標管理表
品質マニュアル
経営計画書
6.1 リスク及び機会への取組
今回の改訂で変わったこと
ISO9001:2015では、6.1「リスク及び機会への取組」において、リスクと機会を一体的に取り扱う構成となっていました。
ISO9001:2026では、リスクへの取組と機会への取組が別々の項番に整理されています。
これにより、問題の発生を防止するための対応と、改善や成果の向上につながる機会について、それぞれ明確に検討する構成となっています。
ただし、リスクと機会を別々の管理表で管理しなければならないという意味ではありません。
既存のリスク及び機会一覧表を活用し、必要な事項を整理することも可能です。
企業が行うべき対応
現在のリスク及び機会一覧表などを確認し、リスクと機会が適切に把握されているか見直しましょう。
例えば、納期遅延や品質不良の発生可能性はリスクとして考えられます。
一方、設備の自動化による品質の安定化や、新しい技術の導入による生産性向上などは機会として考えられます。
それぞれについて必要な取組を検討し、実際の業務に反映することが重要です。
製造業の対応例
設備故障による生産停止や納期遅延をリスクとして把握し、予防保全や代替設備の確保などを検討します。
一方、検査工程の自動化による品質の安定化や作業効率の向上を機会として検討します。
建設業の対応例
技能者不足や資材の納入遅延をリスクとして把握し、必要な対応を検討します。
一方、施工管理システムの導入による工程管理の効率化などを機会として検討します。
サービス業の対応例
担当者の退職によるサービス品質の低下をリスクとして把握し、業務の標準化や教育を検討します。
一方、オンライン対応の導入による顧客利便性の向上を機会として検討します。
見直しが考えられる書類
リスク及び機会一覧表
品質目標管理表
内部・外部の課題一覧表
改善計画書
6.3 変更の計画策定
今回の改訂で変わったこと
ISO9001では、品質マネジメントシステムに関する変更を計画的に実施することが求められています。
2015年版でも、変更の目的や影響、必要な資源、責任及び権限などを考慮する必要がありました。
2026年版では、変更内容の伝達や変更の有効性の確認、変更結果のレビューなどについて、より明確に整理されています。
企業が行うべき対応
設備や業務手順、組織体制などを変更する際に、品質への影響が適切に確認されているか見直しましょう。
例えば、製造工程を変更する場合、変更前に品質への影響を確認し、必要な準備を行うことが考えられます。
また、変更内容を関係者へ周知し、変更後に問題が発生していないか確認することも重要です。
製造業の対応例
製造設備を変更する場合、変更前に製品品質への影響を確認し、必要な試運転や検査を実施します。
変更後には、不良率や検査結果などを確認します。
建設業の対応例
施工方法を変更する場合、施工品質や工期への影響を確認し、必要に応じて施工計画や作業手順を見直します。
サービス業の対応例
顧客対応システムを変更する場合、対応漏れや情報の引継ぎミスが発生しないよう、事前確認や従業員への教育を行います。
見直しが考えられる書類
変更管理手順書
変更申請書
作業手順書
教育訓練記録
品質マニュアル
7.1.4 プロセスの運用に関する環境
今回の改訂で変わったこと
ISO9001では、製品及びサービスの適合を達成するために必要な作業環境を明確にし、提供・維持することが求められています。
作業環境には、温度や湿度、照明などの物理的な要素だけでなく、社会的・心理的な要素も含まれます。
2026年版では、品質文化や倫理的行動と作業環境との関係について、補足的な説明が整理されています。
企業が行うべき対応
現在の作業環境が、製品やサービスの品質を維持するうえで適切であるか確認しましょう。
例えば、作業者が品質上の問題を報告しやすい職場環境になっているか、必要な情報共有が行われているかなどが考えられます。
製造業の対応例
製造工程に必要な温度や湿度を管理するとともに、作業者が異常を発見した際に報告しやすい環境を整えます。
建設業の対応例
現場での情報共有や作業環境を確認し、施工品質に影響する問題を早期に把握できるようにします。
サービス業の対応例
従業員が顧客対応上の問題を相談しやすい環境を整え、サービス品質の維持につなげます。
見直しが考えられる書類
作業環境管理表
職場環境点検表
品質マニュアル
社内教育資料
7.1.6 組織の知識
今回の改訂で変わったこと
ISO9001では、業務プロセスの運用や製品・サービスの適合を達成するために必要な知識を明確にし、維持することが求められています。
2026年版でも基本的な考え方は維持されており、必要な知識を適切に管理し、活用することが重要です。
例えば、過去の不具合への対応方法や、特定の業務に関する専門知識などが該当します。
企業が行うべき対応
現在の業務に必要な知識が明確になっているか、また、必要な担当者がその知識を利用できる状態になっているか確認しましょう。
特に、特定の従業員しか把握していない作業方法や、過去の不具合への対応方法などについて、必要な情報が社内で共有されているか確認することが重要です。
例えば、長年勤務している従業員の経験や技術に依存している業務では、その従業員が退職した場合に品質の維持が難しくなる可能性があります。
そのため、必要に応じて作業手順の標準化や教育、情報共有などを行い、組織として必要な知識を維持できるようにすることが考えられます。
ただし、すべての知識を文書化する必要があるわけではありません。業務の内容や品質への影響を踏まえ、適切な方法で管理することが重要です。
製造業の対応例
製造業では、熟練作業者が持つ加工技術や設備調整の方法などについて、必要な知識を整理することが考えられます。
例えば、特定の作業者しか把握していない設備の調整方法について、作業手順書や教育資料にまとめ、他の担当者でも適切に対応できるようにします。
建設業の対応例
建設業では、過去の工事で発生した施工不良や、その改善方法などを社内で共有することが考えられます。
例えば、過去に発生した施工ミスの原因や再発防止策を整理し、同様の工事を行う際に参考にできるようにします。
サービス業の対応例
サービス業では、顧客からの問い合わせへの対応方法や、過去のクレームへの対応事例などを共有することが考えられます。
例えば、よくある問い合わせと回答方法をまとめ、担当者によって対応品質に大きな差が生じないようにします。
見直しが考えられる書類
品質マニュアル
作業手順書
業務マニュアル
教育訓練記録
不具合・クレーム管理表
組織の知識については、既存の教育や情報共有の仕組みを活用することも可能です。新たな管理表を作成することよりも、必要な知識が適切に維持され、利用できる状態になっているか確認することが重要です。
7.3 認識
今回の改訂で変わったこと
ISO9001:2015では、組織の管理下で働く人々が、品質方針や関連する品質目標、品質マネジメントシステムへの貢献、不適合による影響などについて認識することが求められていました。
2026年版では、これらに加えて、品質文化及び倫理的行動に関する認識が重要な変更点として挙げられています。
品質文化とは、組織全体で品質を重視し、製品やサービスの品質向上に向けて適切に行動する考え方や習慣などを指します。
また、倫理的行動については、品質上の問題を隠さず報告することや、検査結果を正確に記録することなどが具体例として考えられます。
企業が行うべき対応
現在実施している従業員教育や社内周知の内容を確認し、品質文化及び倫理的行動に関する事項が適切に伝えられているか見直しましょう。
例えば、品質上の問題を発見した場合には速やかに報告することや、検査結果を事実に基づいて記録することなどを、従業員に周知することが考えられます。
また、品質方針や品質目標について、単に掲示するだけでなく、従業員が自分の業務との関係を理解しているか確認することも重要です。
なお、品質文化や倫理的行動に関する専用の教育を新たに実施することが一律に求められるわけではありません。
既存の教育や会議、朝礼などを活用して必要な内容を周知することも考えられます。
製造業の対応例
製造業では、検査結果の正確な記録や、不良品を発見した際の報告方法などについて教育することが考えられます。
例えば、検査で不適合が確認された場合には、納期への影響を理由に問題を隠すのではなく、定められた手順に従って報告・処置することを周知します。
建設業の対応例
建設業では、施工品質に関する問題や、図面・仕様書との相違を発見した際の報告方法について周知することが考えられます。
例えば、施工上の問題が発生した場合には、現場責任者へ速やかに報告し、必要な確認や是正を行うことを徹底します。
サービス業の対応例
サービス業では、顧客への説明内容やサービス提供時の記録について、正確性や適切な対応を重視することが考えられます。
例えば、顧客への案内に誤りがあった場合には、事実を確認したうえで速やかに訂正し、必要な改善につなげることを周知します。
見直しが考えられる書類
品質マニュアル
教育訓練計画書
教育訓練記録
品質方針
社内行動規範
今回の改訂では、品質文化及び倫理的行動について、従業員が適切に認識しているか確認することが重要です。
既存の教育や周知方法で対応できる場合には、新たな書類を作成する必要はありません。
8.1 運用の計画策定及び管理
今回の改訂で変わったこと
ISO9001では、製品及びサービスに関する要求事項を満たすため、必要な業務プロセスを計画し、管理することが求められています。
2015年版では、製品・サービスに関する要求事項の明確化、業務プロセスの管理基準の設定、必要な資源の確保、記録の管理などが求められていました。
2026年版でも、基本的な考え方は維持されています。
今回の改訂では、運用の計画策定及び管理に関する要求事項の表現が整理されており、業務プロセスを適切に管理することが引き続き重要です。
また、外部から提供されるプロセス、製品及びサービスとの関係についても、必要な管理が行われているか確認することが重要です。
企業が行うべき対応
現在の業務プロセスや作業手順を確認し、製品・サービスの品質を維持するために必要な管理が行われているか見直しましょう。
例えば、顧客要求事項が適切に業務へ反映されているか、必要な検査や確認が実施されているかなどが考えられます。
また、業務内容や作業方法を変更する場合には、変更によって品質に問題が生じないよう、必要な確認や管理を行うことが重要です。
製造業の対応例
製造業では、製造工程ごとに必要な作業条件や検査基準を明確にし、適切に管理することが考えられます。
例えば、加工条件や検査方法を作業手順書に定め、製造工程で適切に実施されているか確認します。
建設業の対応例
建設業では、施工計画や品質管理計画に基づき、必要な工程管理や検査を実施することが考えられます。
例えば、施工前に図面や仕様書を確認し、施工中には必要な検査や記録を行います。
サービス業の対応例
サービス業では、顧客からの依頼内容や提供するサービスの条件を確認し、必要な業務手順を定めることが考えられます。
例えば、顧客対応の手順や確認項目を整理し、担当者によってサービス品質に大きな差が生じないようにします。
見直しが考えられる書類
品質マニュアル
業務フロー図
作業手順書
品質管理計画書
検査記録
今回の改訂に伴い、すべての業務手順書を作り直す必要はありません。
既存の業務管理の仕組みが新しい要求事項に対応しているか確認し、必要な部分を見直すことが重要です。
8.4 外部から提供されるプロセス、製品及びサービスの管理
今回の改訂で変わったこと
ISO9001では、外部から提供されるプロセス、製品及びサービスが、組織の要求事項に適合するよう管理することが求められています。
例えば、製造業における外注加工、建設業における協力会社への施工委託、サービス業における業務委託などが該当します。
2015年版でも、外部提供者の評価・選定・監視・再評価や、必要な要求事項の伝達などが求められていました。
2026年版でも基本的な考え方は維持されており、外部提供者に対する管理や要求事項の伝達について、表現の整理が行われています。
企業が行うべき対応
現在の外部委託先や仕入先の管理方法を確認し、必要な評価や管理が行われているか見直しましょう。
例えば、外注先の選定基準が明確になっているか、納品された製品や提供されたサービスが要求事項を満たしているかなどを確認します。
また、外部提供者に対して必要な品質要求事項が適切に伝えられているか確認することも重要です。
ただし、すべての外部提供者に対して同じ管理方法を適用する必要はありません。
外部から提供される製品・サービスが最終的な品質に与える影響などを考慮し、必要な管理方法や程度を決めることが重要です。
製造業の対応例
製造業では、外注加工先に対して加工仕様や品質基準、検査方法などを伝えることが考えられます。
例えば、外注加工品について必要な検査基準を明確にし、納品時に適合状況を確認します。
また、不良品の発生状況や納期順守率などを参考に、外注先の評価を行うことも考えられます。
建設業の対応例
建設業では、協力会社に対して施工図面や仕様書、品質管理上の注意事項などを伝えることが考えられます。
例えば、施工前に必要な品質基準を共有し、施工後には必要な検査や確認を実施します。
サービス業の対応例
サービス業では、外部委託先に対して業務内容やサービス品質に関する要求事項を伝えることが考えられます。
例えば、顧客対応業務を外部委託する場合、対応方法や報告基準などを明確にし、実施状況を確認します。
見直しが考えられる書類
外部提供者評価表
仕入先・外注先一覧表
購買管理規程
発注書・仕様書
外部委託先管理表
既存の購買管理や外注先管理の仕組みを活用し、必要な要求事項が適切に伝達・管理されているか確認しましょう。
9.3 マネジメントレビュー
今回の改訂で変わったこと
マネジメントレビューとは、トップマネジメントが品質マネジメントシステムの運用状況を確認し、必要な改善や変更について判断する活動です。
ISO9001:2015では、品質目標の達成状況、顧客満足、内部監査の結果、プロセスのパフォーマンス、外部提供者のパフォーマンスなどを確認し、品質マネジメントシステムの適切性、妥当性及び有効性を評価することが求められていました。
2026年版でも、マネジメントレビューの基本的な考え方は維持されています。
今回の改訂では、マネジメントレビューで確認する情報や、経営者が判断・決定する事項について、要求事項の構成や表現が整理されています。
企業が行うべき対応
現在使用しているマネジメントレビュー議事録や報告資料を確認し、必要な事項が適切に確認されているか見直しましょう。
例えば、品質目標の達成状況や顧客からの苦情、内部監査の結果などについて、経営者が必要な情報を把握できているか確認します。
また、単に報告事項を記録するだけでなく、経営者がどのような判断を行い、どのような改善や変更を決定したかが分かるようにすることが重要です。
製造業の対応例
製造業では、不良率の増加や顧客からの品質クレームについて、マネジメントレビューで報告することが考えられます。
例えば、特定の工程で不良品が増加している場合、経営者が設備の更新や作業方法の見直しなどを判断します。
建設業の対応例
建設業では、施工不良の発生状況や顧客からの指摘事項などを報告することが考えられます。
例えば、複数の現場で同様の施工ミスが発生している場合、経営者が教育方法や施工管理体制の見直しを決定します。
サービス業の対応例
サービス業では、顧客満足度やクレームの発生状況、サービス提供上の問題などを報告することが考えられます。
例えば、顧客対応の遅延が増加している場合、経営者が人員配置や業務手順の見直しを判断します。
見直しが考えられる書類
マネジメントレビュー議事録
マネジメントレビュー報告書
品質目標管理表
内部監査報告書
改善計画書
マネジメントレビューの結果については、引き続き文書化した情報として保持する必要があります。
既存の議事録で必要な確認事項や経営者の判断・決定事項が明確になっていれば、大幅な変更は必要ないと考えられます。
10.1 継続的改善
今回の改訂で変わったこと
ISO9001では、品質マネジメントシステムの適切性、妥当性及び有効性を継続的に改善することが求められています。
ISO9001:2015では、改善の機会を明確にして必要な取組を行うことと、継続的改善に関する要求事項が、それぞれ10.1及び10.3に定められていました。
2026年版では、これらの改善に関する要求事項が10.1に整理・統合されています。
基本的な考え方に大きな変更はなく、引き続き、品質目標の達成状況や内部監査の結果、顧客からの苦情、マネジメントレビューなどを通じて改善の機会を把握し、必要な取組を実施することが重要です。
また、改善活動を実施するだけでなく、その結果を確認し、品質マネジメントシステムの有効性向上につなげることが求められます。
企業が行うべき対応
まずは、現在実施している改善活動について、品質目標の達成状況や内部監査の結果、顧客からの苦情などが適切に反映されているか確認しましょう。
例えば、不良品の発生を減らすために作業手順を変更した場合には、変更後に不良率が低下したか確認することが考えられます。
また、内部監査で指摘された問題について是正処置を実施した場合には、同様の問題が再発していないか確認することも重要です。
改善活動は、一度対策を実施して終わりではありません。
改善前後の状況を比較し、対策の有効性を確認したうえで、必要に応じてさらなる改善につなげることが重要です。
なお、今回の改訂によって、改善活動のための新たな管理表を必ず作成しなければならないわけではありません。
既存の品質目標管理表や是正処置報告書、会議議事録などを活用して、改善活動を管理することも可能です。
製造業の対応例
製造業では、製造工程における不良品の発生を減らすため、作業方法や検査方法を見直すことが考えられます。
例えば、特定の工程で寸法不良が繰り返し発生している場合、設備の調整方法や作業手順を見直し、必要な改善を実施します。
その後、改善前後の不良率や検査結果を比較し、対策によって不良品の発生が減少したか確認します。
改善の効果が十分でない場合には、原因を再検討し、追加の対策を実施することが考えられます。
建設業の対応例
建設業では、施工不良や手直し工事の発生を減らすため、施工方法や確認手順を改善することが考えられます。
例えば、複数の工事現場で同様の施工ミスが発生している場合、施工前の確認方法や作業手順を見直します。
また、過去の不具合事例を社内で共有し、同様の問題が他の現場で発生しないようにすることも有効です。
改善後には、施工不良や手直し工事の発生状況を確認し、対策の効果を評価します。
サービス業の対応例
サービス業では、顧客からの苦情や問い合わせ対応の遅延などを改善することが考えられます。
例えば、顧客からの問い合わせに対する回答が遅れるケースが多い場合、担当者間の情報共有方法や対応手順を見直します。
また、よくある問い合わせへの回答方法を整理し、担当者が迅速かつ適切に対応できるようにすることも考えられます。
その後、問い合わせへの平均回答時間や顧客からの苦情件数などを確認し、改善の効果を評価します。
見直しが考えられる書類
品質マニュアル
品質目標管理表
是正処置報告書
改善計画書
内部監査報告書
マネジメントレビュー議事録
10.1単独で新たな書類の作成が要求されるわけではありません。
既存の品質目標管理表や是正処置報告書などを活用し、改善内容や実施結果、効果を確認できるようにしておくとよいでしょう。
また、品質マニュアルを規格の項番に沿って作成している場合には、従来の10.1及び10.3に関する内容を、新しい10.1の構成に合わせて整理することも考えられます。
今回の改訂においても、重要なのは書類の数を増やすことではなく、実際の業務で改善活動を継続し、製品・サービスの品質向上や顧客満足の向上につなげることです。
5. ISO9001:2026への移行で見直すべき書類
ISO9001:2026への移行にあたっては、品質マニュアルや各種管理表、業務手順書などの見直しが必要になる場合があります。
ただし、今回の規格改訂によって、すべての書類を新しく作り直さなければならないわけではありません。
ISO9001:2026では、従来の品質マネジメントシステムの基本的な考え方が維持されているため、既存の書類や運用方法をそのまま活用できる部分も多くあります。
そのため、まずは現在使用している書類と2026年版の要求事項を比較し、不足している部分や修正が必要な部分を確認することが重要です。
ここでは、ISO9001:2026への移行に際して、特に見直しが考えられる書類と、その具体的な確認ポイントについて解説します。
ISO9001:2026への移行で見直すべき書類一覧
まずは、ISO9001:2026への移行で見直しが考えられる主な書類を確認しましょう。
書類名 | 主な確認・見直しポイント |
品質マニュアル | 2026年版の要求事項、項番、管理方法との整合性 |
品質方針 | 品質文化・倫理的行動、経営方針との整合性 |
内部・外部の課題一覧表 | 事業環境の変化や品質に関する課題の反映 |
利害関係者一覧表 | 顧客や取引先などの要求事項の確認 |
リスク及び機会一覧表 | リスクと機会の整理、対応方法の明確化 |
変更管理手順書 | 変更前後の確認、周知、変更結果の評価 |
教育訓練計画書・記録 | 品質文化・倫理的行動に関する認識の確認 |
組織の知識に関する資料 | 必要な知識の維持、共有、活用 |
外部提供者評価表 | 仕入先・外注先の評価や管理方法 |
内部監査計画書・報告書 | 2026年版の要求事項に基づく監査 |
マネジメントレビュー議事録 | 改訂内容への対応状況、経営者の判断 |
是正処置報告書・改善計画書 | 改善活動の実施状況と有効性の確認 |
なお、上記は見直しが考えられる書類の例であり、すべての企業に作成が義務付けられているものではありません。
企業の規模や事業内容、現在の管理方法によって、必要な書類は異なります。
品質マニュアル
品質マニュアルは、ISO9001に基づく品質マネジメントシステムの仕組みや管理方法をまとめた文書です。
ISO9001では、品質マニュアルという名称の文書を必ず作成することが要求されているわけではありません。
しかし、実際には品質マネジメントシステム全体の仕組みを整理するため、多くの企業で品質マニュアルが使用されています。
ISO9001:2026への移行にあたっては、現在の品質マニュアルが新しい要求事項に対応しているか確認することが重要です。
特に、規格の項番に沿って品質マニュアルを作成している場合には、要求事項の構成や項番の変更に注意しましょう。
具体的な見直し例
例えば、2015年版の6.1「リスク及び機会への取組」について、2026年版ではリスクと機会に関する要求事項が別々の項番に整理されています。
そのため、品質マニュアルに規格の項番を記載している場合には、必要に応じて項番や記載内容を見直します。
また、5.1.1「リーダーシップ及びコミットメント」では、品質文化及び倫理的行動の促進が明確になっているため、現在の経営者の役割や取組が適切に反映されているか確認することも考えられます。
ただし、既存の品質マニュアルで新しい要求事項を満たしている場合には、大幅な改訂を行う必要はありません。
品質方針
品質方針は、企業が品質に関して目指す方向性や基本的な考え方を示すものです。
ISO9001:2026では、品質文化及び倫理的行動の促進が重要な変更点の一つとなっています。
そのため、現在の品質方針が、組織の目的や経営方針、品質に対する考え方と整合しているか確認することが重要です。
具体的な見直し例
例えば、品質方針に「顧客満足の向上」や「継続的改善」を掲げている場合、それらの方針が実際の業務に反映されているか確認します。
また、品質上の問題を隠さず報告することや、適切な品質管理を徹底することなど、品質文化や倫理的行動に関する取組が社内で実施されているか確認することも考えられます。
ただし、今回の改訂によって、品質方針に「品質文化」や「倫理的行動」という文言を必ず追加しなければならないわけではありません。
既存の品質方針や社内の取組で必要な事項に対応できていれば、そのまま活用することも可能です。
内部・外部の課題一覧表
ISO9001では、品質マネジメントシステムの目的や意図した結果に影響する内部・外部の課題を明確にすることが求められています。
今回の改訂に際しても、現在把握している課題が適切であるか確認することが重要です。
例えば、人材不足、原材料の調達環境の変化、顧客ニーズの多様化、デジタル技術の普及などが考えられます。
また、気候変動が自社の品質マネジメントシステムに関係する課題であるかについても、必要に応じて確認します。
なお、気候変動への考慮は2024年の追補によって既に追加されているため、2026年版で初めて求められた事項ではありません。
具体的な見直し例
製造業では、原材料の供給不足や設備の老朽化などが品質や納期に影響する可能性があります。
建設業では、技能者不足や資材価格の変動などが施工品質に影響する可能性があります。
サービス業では、従業員不足や顧客ニーズの変化などがサービス品質に影響する可能性があります。
これらの課題について、現在の一覧表に適切に反映されているか確認しましょう。
利害関係者一覧表
ISO9001では、品質マネジメントシステムに関係する利害関係者と、その要求事項を把握することが求められています。
利害関係者には、顧客、従業員、取引先、行政機関などが含まれます。
ISO9001:2026への移行に際しては、現在の利害関係者一覧表を確認し、品質に関係する要求事項が適切に把握されているか見直しましょう。
具体的な見直し例
例えば、顧客から求められる品質基準や納期、サービス内容などについて、現在の管理方法が適切であるか確認します。
また、取引先から新たな品質要求事項が提示されている場合には、必要に応じて一覧表へ反映します。
既存の利害関係者一覧表で必要な事項が把握できている場合には、新たな書類を作成する必要はありません。
リスク及び機会一覧表
ISO9001:2026では、リスクと機会に関する要求事項が整理され、それぞれについて必要な取組を検討する構成となっています。
そのため、現在使用しているリスク及び機会一覧表について、リスクと機会が適切に整理されているか確認することが重要です。
具体的な見直し例
例えば、製造業では、設備故障による生産停止や納期遅延をリスクとして検討することが考えられます。
一方、設備の自動化による品質の安定化や生産性の向上を機会として検討することも考えられます。
建設業では、技能者不足による施工品質の低下をリスクとして検討し、施工管理システムの導入による業務効率化を機会として検討することなどが考えられます。
ただし、リスクと機会を別々の管理表に分けることが必須というわけではありません。
既存の一覧表で必要な事項を適切に管理できていれば、そのまま活用することも可能です。
変更管理手順書
ISO9001では、品質マネジメントシステムに関する変更を計画的に実施することが求められています。
2026年版では、変更内容の伝達や変更の有効性の確認、変更結果のレビューなどについて、要求事項がより明確に整理されています。
そのため、現在の変更管理の仕組みについて、変更前後の確認や関係者への周知が適切に行われているか見直しましょう。
具体的な見直し例
例えば、製造設備を変更する場合、変更前に製品品質への影響を確認し、必要な試運転や検査を実施することが考えられます。
また、変更内容を関係する従業員へ周知し、変更後には不良率や検査結果などを確認します。
サービス業では、顧客対応システムを変更する際に、対応漏れや情報の引継ぎミスが発生しないよう、事前確認や教育を実施することが考えられます。
なお、変更管理に関する専用の手順書を新たに作成することが必須というわけではありません。
既存の変更申請書や作業手順書などを活用し、必要な管理が行われているか確認することが重要です。
教育訓練計画書・教育訓練記録
ISO9001:2026では、品質文化及び倫理的行動に関する認識が重要な変更点の一つとなっています。
そのため、現在実施している教育訓練や社内周知の内容を確認し、必要な事項が適切に伝えられているか見直しましょう。
具体的な見直し例
例えば、製造業では、不良品を発見した際の報告方法や、検査結果を正確に記録することなどについて教育することが考えられます。
建設業では、施工品質に関する問題を発見した場合に、現場責任者へ速やかに報告することなどを周知します。
サービス業では、顧客への説明内容に誤りがあった場合の対応方法や、適切な情報共有の重要性について教育することが考えられます。
ただし、品質文化や倫理的行動に関する専用の教育を新たに実施することが一律に求められるわけではありません。
既存の教育や会議、朝礼などを活用して必要な事項を周知することも可能です。
組織の知識に関する資料
ISO9001では、業務プロセスの運用や製品・サービスの適合を達成するために必要な知識を明確にし、維持することが求められています。
ISO9001:2026への移行に際しては、現在の知識管理の方法が適切であるか確認しましょう。
具体的な見直し例
例えば、製造業では、熟練作業者が持つ設備調整の方法や加工技術などを、必要に応じて作業手順書や教育資料にまとめることが考えられます。
建設業では、過去の施工不良や改善事例を共有し、同様の問題が再発しないようにすることが考えられます。
サービス業では、顧客からの問い合わせやクレームへの対応事例を共有し、担当者によって対応品質に大きな差が生じないようにすることが考えられます。
なお、すべての知識を文書化する必要はありません。
現在の教育や情報共有の方法を活用し、必要な知識が適切に維持・利用できる状態になっているか確認することが重要です。
外部提供者評価表
ISO9001では、外部から提供されるプロセス、製品及びサービスが、組織の要求事項に適合するよう管理することが求められています。
そのため、現在の仕入先や外注先の評価方法、管理方法が適切であるか確認しましょう。
具体的な見直し例
製造業では、外注加工先の品質や納期、検査結果などを確認し、必要に応じて評価を行います。
建設業では、協力会社の施工品質や工程管理の状況などを確認します。
サービス業では、外部委託先の対応品質や業務実施状況などを確認することが考えられます。
既存の外部提供者評価表や仕入先管理表を活用し、必要な評価や管理が行われているか確認しましょう。
内部監査計画書・内部監査報告書
ISO9001:2026への移行に際しては、新しい規格要求事項に基づいて、品質マネジメントシステムが適切に運用されているか確認することが重要です。
そのため、内部監査で使用するチェックリストや監査計画書などについても、必要に応じて見直すことが考えられます。
具体的な見直し例
例えば、5.1.1「リーダーシップ及びコミットメント」に関する監査では、品質文化及び倫理的行動の促進について、経営者がどのような取組を行っているか確認することが考えられます。
また、6.1「リスク及び機会への取組」については、リスクと機会が適切に把握され、必要な対応が行われているか確認します。
内部監査チェックリストを規格の項番に沿って作成している場合には、2026年版の要求事項に合わせて確認項目を見直すことが重要です。
マネジメントレビュー議事録
ISO9001では、トップマネジメントが品質マネジメントシステムの運用状況を確認し、必要な改善や変更について判断することが求められています。
ISO9001:2026への移行に際しても、マネジメントレビューで必要な事項が適切に確認されているか見直しましょう。
具体的な見直し例
例えば、今回の規格改訂への対応状況について、品質マニュアルや関連書類の改訂状況、新しい要求事項への対応状況などをマネジメントレビューで報告することが考えられます。
また、品質文化及び倫理的行動に関する取組や、リスクと機会への対応状況などについても、必要に応じて確認することが重要です。
例えば、製造業では、不良品の発生状況や品質目標の達成状況に加え、規格改訂に伴って変更した業務手順が適切に運用されているか確認することが考えられます。
建設業では、施工品質に関する問題や協力会社の管理状況などを確認し、必要に応じて教育方法や施工管理体制の見直しを検討します。
サービス業では、顧客満足度やクレームの発生状況などを確認し、品質マネジメントシステムの改善につなげることが考えられます。
また、マネジメントレビューでは、単に報告事項を記録するだけでなく、経営者がどのような判断を行い、どのような改善や変更を決定したかが分かるようにすることが重要です。
例えば、規格改訂への対応に伴って従業員教育が必要と判断された場合には、教育の実施時期や担当者などを決定し、その内容を議事録に記録することが考えられます。
ただし、今回の改訂によって、マネジメントレビュー議事録を全面的に作り直す必要があるわけではありません。
既存の議事録で必要な確認事項や経営者の判断・決定事項が適切に記録されていれば、そのまま活用することも可能です。
是正処置報告書・改善計画書
ISO9001では、不適合が発生した場合に必要な処置を行い、原因を確認したうえで、再発防止に向けた是正処置を実施することが求められています。
また、品質目標の達成状況や内部監査、マネジメントレビューなどを通じて改善の機会を把握し、品質マネジメントシステムの継続的改善につなげることも重要です。
ISO9001:2026への移行に際しては、現在使用している是正処置報告書や改善計画書について、必要な事項が適切に管理されているか確認しましょう。
具体的な見直し例
例えば、製造業では、同じ種類の不良品が繰り返し発生している場合、その原因を確認し、作業方法や検査方法を見直すことが考えられます。
建設業では、施工不良や手直し工事が発生した場合、原因を分析し、施工手順や確認方法の改善につなげることが考えられます。
サービス業では、顧客から同様の苦情が繰り返し発生している場合、対応方法や業務手順を見直し、再発防止を図ることが考えられます。
また、改善活動を実施した後には、その対策が有効であったか確認することも重要です。
例えば、作業手順を変更した場合には、変更後の不良率やクレーム件数などを確認し、改善の効果を評価します。
なお、ISO9001:2026への移行に伴って、是正処置報告書や改善計画書を新たに作成し直す必要があるとは限りません。
既存の書類や管理方法を活用し、必要な是正処置や改善活動が適切に実施されているか確認することが重要です。
ISO9001:2026への移行で書類を見直す際の注意点
ISO9001:2026への移行では、品質マニュアルや各種管理表などの見直しが必要になる場合がありますが、重要なのは書類の数を増やすことではありません。
現在の品質マネジメントシステムが新しい要求事項に適合しているかを確認し、必要な部分だけを修正することが重要です。
例えば、品質文化及び倫理的行動に関する要求事項についても、既存の社内教育や会議、行動規範などで対応できている場合には、新たな書類を作成する必要はありません。
また、リスクと機会に関する要求事項についても、既存のリスク及び機会一覧表で必要な事項を管理できていれば、そのまま活用することが可能です。
一方で、品質マニュアルや内部監査チェックリストなどを規格の項番に沿って作成している場合には、2026年版の項番や要求事項との整合性を確認する必要があります。
書類を見直す際には、次のような点を確認するとよいでしょう。
2026年版で追加・変更された要求事項に対応できているか
既存の書類や運用方法をそのまま活用できるか
品質マニュアルや関連規程の項番・記載内容に修正が必要か
変更した内容が実際の業務に適切に反映されているか
従業員への周知や教育が必要か
内部監査やマネジメントレビューで変更内容を確認できるか
また、書類の改訂だけで対応を終わらせないことも重要です。
例えば、品質マニュアルに新しい要求事項を追加した場合でも、その内容が実際の業務で運用されていなければ、十分な対応とはいえません。
必要に応じて従業員への周知や教育を行い、変更した内容が適切に実施されているか確認しましょう。
ISO9001:2026への移行では既存の書類を最大限に活用しよう
ISO9001:2026では、品質文化及び倫理的行動の促進、リスクと機会の整理、変更管理に関する要求事項の明確化などが行われています。
一方で、品質マネジメントシステムの基本的な考え方は維持されているため、これまで使用してきた品質マニュアルや管理表、業務手順書などを活用できる部分も多くあります。
そのため、今回の規格改訂をきっかけに、すべての書類を作り直したり、必要以上に管理表を増やしたりすることはおすすめできません。
まずは現在の書類とISO9001:2026の要求事項を比較し、必要な変更点を明確にしましょう。
そのうえで、既存の仕組みを活かしながら不足している部分を補うことで、企業の負担を抑えた移行対応を進めることができます。
また、規格改訂への対応は、これまでの品質マネジメントシステムを見直す良い機会でもあります。
例えば、長年使用しているものの実際の業務に合っていない管理表や、重複している記録、必要以上に複雑になっている手順などがあれば、今回の改訂に合わせて整理することも考えられます。
ISO9001:2026への移行では、規格要求事項への適合だけでなく、実際の業務で無理なく運用できる品質マネジメントシステムを維持・改善していくことが重要です。
6. ISO9001:2026への移行手順と注意点
ISO9001:2026への移行では、新しい規格要求事項を理解するだけでなく、現在の品質マネジメントシステムとの違いを確認し、必要な対応を計画的に進めることが重要です。
今回の改訂では、品質文化及び倫理的行動の促進、リスクと機会に関する要求事項の整理、変更管理の明確化などが行われています。
一方で、ISO9001の基本的な考え方は維持されているため、既存の品質マネジメントシステムを活かしながら移行を進めることが可能です。
ここでは、ISO9001:2015からISO9001:2026への移行について、企業が実施すべき対応を6つのステップに分けて解説します。
6-1. STEP1:ISO9001:2026の改訂内容を確認する
まずは、ISO9001:2026で追加・変更された要求事項を確認しましょう。
特に、2015年版からどのような変更が行われたのかを把握し、自社の品質マネジメントシステムに影響する事項を整理することが重要です。
例えば、今回の改訂では、品質文化及び倫理的行動に関する要求事項が明確化されています。
また、リスクと機会に関する要求事項の構成が見直され、変更管理に関する要求事項についても整理されています。
ただし、これらの変更点について、必ずしもすべて新しい書類や管理方法を導入する必要があるわけではありません。
既存の仕組みで対応できている部分もあるため、まずは新旧規格の要求事項を比較することが重要です。
具体的な対応例
品質管理責任者やISO担当者が中心となり、2015年版と2026年版の要求事項を比較します。
その際、変更内容を一覧表にまとめておくと、必要な対応を整理しやすくなります。
例えば、以下のような項目を設けることが考えられます。
規格の項番
2026年版での変更内容
現在の対応状況
追加・修正が必要な事項
対応担当者
対応期限
このように整理することで、移行対応の進捗を管理しやすくなります。
6-2. STEP2:現在の品質マネジメントシステムとの差異を確認する
次に、現在運用している品質マネジメントシステムと、ISO9001:2026の要求事項との差異を確認します。
この作業は、一般的に「ギャップ分析」と呼ばれます。
ギャップ分析では、現在の品質マニュアルや関連書類、実際の業務の進め方などを確認し、新しい要求事項に対応できているかを評価します。
重要なのは、書類の記載内容だけで判断しないことです。
例えば、品質マニュアルにリスク及び機会への取組が記載されていても、実際の業務で必要な対応が行われていなければ、十分な対応とはいえません。
そのため、書類の内容と実際の運用状況の両方を確認することが重要です。
具体的な対応例
例えば、5.1.1「リーダーシップ及びコミットメント」について、品質文化及び倫理的行動を促進するための取組が行われているか確認します。
また、6.1「リスク及び機会への取組」について、リスクと機会が適切に把握され、必要な対応が実施されているか確認します。
そのうえで、既に対応できている事項と、追加の対応が必要な事項を整理します。
ギャップ分析の結果は、一覧表などにまとめておくと、その後の移行計画の作成に活用できます。
6-3. STEP3:品質マニュアルや関連書類を見直す
ギャップ分析によって見直しが必要な事項を把握したら、品質マニュアルや関連書類の修正を進めます。
ただし、今回の改訂によって、すべての書類を新しく作り直す必要はありません。
既存の書類や管理方法が2026年版の要求事項を満たしている場合には、そのまま活用することも可能です。
例えば、品質マニュアルを規格の項番に沿って作成している場合には、項番の変更や新しい要求事項との整合性を確認します。
また、リスク及び機会一覧表や教育訓練記録などについても、必要に応じて内容を見直します。
具体的な対応例
品質マニュアルでは、品質文化及び倫理的行動に関する取組が適切に反映されているか確認します。
リスク及び機会一覧表では、リスクと機会が適切に整理されているか確認します。
また、変更管理手順書では、変更内容の周知や変更後の確認方法などが適切に定められているか見直します。
書類を修正する際には、必要以上に複雑な管理方法を追加するのではなく、実際の業務に合った仕組みを維持することが重要です。
6-4. STEP4:変更内容を社内に周知し、必要な運用を実施する
品質マニュアルや関連書類の見直しが完了したら、変更した内容を関係する従業員へ周知し、必要な運用を開始します。
ISO9001への適合では、書類を整備するだけでなく、その内容が実際の業務で適切に実施されていることが重要です。
例えば、品質文化及び倫理的行動に関する取組を見直した場合には、従業員に対して必要な内容を説明し、日常業務の中で適切に行動できるようにすることが考えられます。
また、リスク及び機会への取組や変更管理の方法を見直した場合には、関係する担当者が新しい方法を理解し、適切に実施できるようにする必要があります。
具体的な対応例
製造業では、品質上の問題を発見した際の報告方法や、検査結果を正確に記録することなどについて、従業員へ周知することが考えられます。
建設業では、施工品質に関する問題が発生した場合の報告方法や、施工方法を変更する際の確認事項などを周知します。
サービス業では、顧客対応に関するルールや、サービス提供方法を変更する際の手順などについて、関係する従業員へ説明します。
なお、変更内容の周知は、必ずしも専用の研修を実施する必要はありません。
既存の会議や朝礼、社内通知などを活用して、必要な事項を伝えることも可能です。
6-5. STEP5:内部監査・マネジメントレビューで対応状況を確認する
新しい要求事項に基づく運用を開始したら、内部監査やマネジメントレビューなどを通じて、品質マネジメントシステムが適切に運用されているか確認します。
内部監査では、ISO9001:2026の要求事項や自社のルールに対して、実際の業務が適合しているか確認します。
例えば、品質文化及び倫理的行動に関する取組が適切に実施されているか、リスク及び機会への対応が行われているかなどを確認することが考えられます。
また、マネジメントレビューでは、規格改訂への対応状況や品質マネジメントシステムの運用状況を経営者へ報告し、必要な改善や変更について判断します。
具体的な対応例
内部監査では、2026年版の要求事項に合わせてチェックリストを見直し、必要な事項を確認します。
例えば、5.1.1については、経営者が品質文化及び倫理的行動の促進にどのように関与しているか確認します。
また、6.1については、リスクと機会が適切に把握され、必要な対応が実施されているか確認します。
マネジメントレビューでは、内部監査の結果や移行対応の進捗状況などを報告し、必要な改善や追加対応について判断します。
なお、移行審査に向けて必要となる内部監査やマネジメントレビューの実施方法、確認対象期間などについては、契約している審査機関へ確認しておくことをおすすめします。
6-6. STEP6:ISO9001:2026への移行審査を受ける
必要な移行準備が完了したら、審査機関によるISO9001:2026への移行審査を受けます。
移行審査では、現在の品質マネジメントシステムが2026年版の要求事項に適合しているか確認されます。
例えば、今回の改訂で追加・変更された要求事項への対応状況や、関連書類の見直し、実際の運用状況などが確認対象となります。
また、内部監査やマネジメントレビューなどを通じて、品質マネジメントシステムの有効性が確認されているかも重要です。
移行審査は、通常の維持審査や更新審査と合わせて実施できる場合があります。
ただし、具体的な審査方法や必要な審査時間、費用などについては、審査機関によって異なるため、事前に確認しておきましょう。
移行審査で不適合が指摘された場合
移行審査で不適合が指摘された場合には、審査機関の指示に従って必要な是正処置を実施します。
例えば、新しい要求事項に対する対応が不足している場合には、原因を確認し、必要な書類や運用方法を見直します。
そのうえで、是正処置の内容や結果について、審査機関による確認を受けることになります。
なお、是正処置の提出期限や確認方法については、審査機関のルールに従う必要があります。
移行期限の直前に審査を受ける場合、不適合への対応に十分な時間を確保できない可能性もあるため、余裕を持って移行審査を受けることが重要です。
6-7. ISO9001:2026への移行でよくある失敗と注意点
ISO9001:2026への移行では、新しい規格要求事項に対応することが重要ですが、必要以上に書類や管理方法を増やしてしまうケースも考えられます。
また、書類の改訂だけで対応を終わらせ、実際の運用が十分に見直されていない場合もあります。
ここでは、移行対応で注意したいポイントを紹介します。
① すべての書類を作り直してしまう
今回の改訂では、従来の要求事項が維持されている部分も多くあります。
そのため、品質マニュアルや管理表をすべて作り直すのではなく、必要な部分だけを見直すことが重要です。
② 書類の改訂だけで対応を終わらせる
品質マニュアルに新しい要求事項を追加しただけでは、十分な対応とはいえません。
変更した内容が実際の業務に反映され、必要な運用が行われていることが重要です。
③ 新しい要求事項への対応状況を確認していない
品質文化及び倫理的行動、リスクと機会などについて、現在の品質マネジメントシステムで適切に対応できているか確認する必要があります。
既存の仕組みで対応できている場合には、その内容を整理しておくとよいでしょう。
④ 内部監査やマネジメントレビューで確認していない
規格改訂への対応状況について、内部監査やマネジメントレビューなどを通じて確認することが重要です。
これにより、移行審査を受ける前に不足している部分を把握し、必要な改善につなげることができます。
⑤ 移行期限の直前に対応を始める
移行期限の直前に対応を始めると、書類の改訂や社内周知、内部監査、マネジメントレビューなどの準備が集中する可能性があります。
また、審査機関の予約状況によっては、希望する時期に移行審査を受けられない場合も考えられます。
そのため、余裕を持って移行計画を立てることをおすすめします。
6-8. ISO9001:2026への移行を効率的に進めるポイント
ISO9001:2026への移行では、規格要求事項の変更点を正しく理解し、現在の品質マネジメントシステムに必要な対応を加えることが重要です。
ただし、今回の改訂によって、すべての書類や運用方法を新しく作り直す必要があるわけではありません。
まずは2015年版と2026年版の違いを確認し、現在の仕組みで対応できている部分と、見直しが必要な部分を整理しましょう。
そのうえで、必要な書類の修正や社内周知、運用の確認を進め、内部監査やマネジメントレビューなどを通じて対応状況を確認することが重要です。
また、移行審査の実施時期や必要な準備については、契約している審査機関へ事前に確認しておくとよいでしょう。
ISO9001:2026への移行は、単に新しい規格への適合を目指すだけでなく、これまでの品質マネジメントシステムを見直し、より効果的で運用しやすい仕組みへ改善する機会でもあります。
既存の仕組みを最大限に活用しながら、企業の負担を抑えた計画的な移行対応を進めていきましょう。
7. まとめ
今回は、ISO9001:2026の改訂内容について、2015年版との違いや主な変更点、移行期限、企業が実施すべき対応方法、見直しが考えられる書類などを詳しく解説しました。
ISO9001:2026は、2026年9月16日に正式発行され、従来のISO9001:2015から約11年ぶりの改訂となりました。
今回の改訂では、品質文化及び倫理的行動の促進、リスクと機会に関する要求事項の整理、変更管理の明確化などが主な変更点として挙げられます。
一方で、顧客重視やプロセスアプローチ、継続的改善といった品質マネジメントシステムの基本的な考え方は維持されており、これまでの仕組みを活用できる部分も多くあります。
そのため、ISO9001:2026への移行にあたっては、すべての書類や運用方法を新しく作り直すのではなく、2015年版との違いを正しく把握し、必要な部分を見直すことが重要です。
また、既にISO9001:2015の認証を取得している企業は、2029年9月30日までにISO9001:2026への移行を完了する必要があります。
移行期限までには一定の期間がありますが、品質マニュアルや関連書類の見直し、従業員への周知、内部監査、マネジメントレビューなど、必要な準備を計画的に進めることをおすすめします。
今回の規格改訂は、単に新しい要求事項へ対応するだけでなく、これまでの品質マネジメントシステムを見直し、より効果的で運用しやすい仕組みへ改善する機会でもあります。
既存の仕組みを最大限に活用しながら、企業の負担を抑えた移行対応を進めることが、ISO9001:2026への円滑な移行につながります。
本記事が、ISO9001:2026の改訂内容への理解を深め、今後の移行準備や品質マネジメントシステムの継続的な改善に向けた参考となれば幸いです。
この記事の監修者情報
金光壮太 (ISOコンサルタント)
大手商社にて営業を経験した後、ISOコンサルティングに従事。ISO9001、14001、27001を中心に、各業界の課題や特性に応じたシステム構築や運用支援を行い、企業の業務効率化や信頼性向上に貢献。製造業や建設業など、多岐にわたる業界での豊富な経験を活かし、お客様のニーズに応じた柔軟なソリューションの提案を得意としている





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