ISO9001改訂2026をわかりやすく解説!変更点と新要件を踏まえたポイントと実践ヒント!
- 【監修者】金光壮太(ISOトラストのコンサルタント)
- 5月27日
- 読了時間: 9分

▼ 目次
1. はじめに
● 2026年改訂をわかりやすく解説:本記事のゴール
ISO9001は、品質マネジメントシステム(QMS)の国際規格で、10年を目安に改訂が行われることが多いです。前回の大きな改訂は2015年版でした。そこから10年後となる2025~2026年頃に次の改訂版が発行される可能性が高いと考えられています。
本記事では、2026年改訂の背景や想定される変更点、そして改訂に向けて今からできる準備などを網羅的に解説します。
さらに、改訂を上手く活用して、企業競争力を高めたり、品質管理を強化したりするための実践的なヒントもご紹介します。
まだ正式なアナウンスは出ていませんが、「備えあれば憂いなし」。早めに情報をキャッチしておくことが、改訂版対応のカギとなるでしょう。
2. ISO9001の改訂サイクルとこれまでの歴史
● 1987年初版~2015年版への流れ
ISO9001の初版は1987年に発行され、その後1994年、2000年、2008年、2015年と段階的に改訂されています。
2015年版では、リスクベース思考の導入やハイレベルストラクチャー(HLS)の採用など大きな変革がありました。
改訂が行われるたびに企業の実務にも影響があり、旧版から新版本への移行期間が設定されます。
● 改訂が行われる意味
国際規格のISO9001は、世界のビジネス環境や技術が変化する中、常に最新版の知見を取り入れるために改訂を重ねています。
例えばIT技術の進化やグローバル化によるサプライチェーンの変化、サステナビリティやSDGsの広まりなど、新しい概念を規格に反映しようという意図があります。
3. ISO9001改訂2026の背景と目的
● ISO/TC 176(国際標準化機構)の方針
ISO9001を管理しているのは、ISO/TC 176(国際標準化機構の専門委員会)です。
この委員会が世界中の専門家や各国の意見を取りまとめて、**CD(委員会原案)→DIS(国際規格案)→FDIS(最終国際規格案)**と段階を踏んで最終版を発行します。
2025年~2026年頃にかけてFDISが出され、2026年中に正式改訂版が発行される可能性が高いと予測されています。
● 2015年版との大きな違い(見通し)
まだ正式アナウンスはありませんが、以下の分野が注目されています。
DX(デジタルトランスフォーメーション)やAI活用: 企業の業務がデジタル化する中、品質管理もデータ活用が求められる
サステナビリティ・SDGsとの連携: 環境要素や社会的責任をQMSにどう組み込むか
ハイレベルストラクチャー(HLS)のさらなるブラッシュアップ: ISO全体の枠組みをより統合しやすく調整する可能性
● 社会的・経営的要請の変化
コロナ禍を経て、リモートワークやオンライン取引が一般化し、サプライチェーンのリスクも浮き彫りになりました。2026年版では、こうした背景を踏まえたリスクマネジメント強化の要件が盛り込まれるかもしれません。
4. 2026年改訂で想定される主要な変更点
● 項番 4〜10全般における追記・修正ポイント
項番 4(組織の状況): DXやAI導入による外部・内部課題への対応がより明確化する可能性
項番 5(リーダーシップ): 経営層のサステナビリティコミットメントの強化など
項番 6(計画): リスクと機会に情報セキュリティやAIリスクが加わる可能性
項番 7(支援): デジタルスキルやデータ管理に関する要件追加
項番 8(運用): クラウド化やオンラインプロセスの指針がさらに具体化
項番 9(評価): リアルタイムデータによる測定・分析強化
項番 10(改善): 環境・社会的責任を含む改善要素の拡張
● サステナビリティやDXへの言及(仮)
予想: ISO14001やISO45001など他のマネジメントシステムとも連携しやすい文言が追加される可能性
DX例: 工場のIoT化、サービス業の顧客データ分析などをQMSに統合して品質管理する考え方
● 情報セキュリティとの融合(仮)
ISO27001(情報セキュリティ)とのシナジーが今後重要とされており、項番 6や項番 8でデータ保護の基本的要素が追記されるかも。
5. 改訂2026年版へ備えるために今からできること
● 現行QMSの見直し
改訂2026で大幅変更があるかどうか正式には不明ですが、現行のQMSを整えておくことで、いざ改訂要件が公表されたときにスムーズに対応できます。
例えば、リスクと機会の管理(項番6.1)、内部監査(項番 9.2)の強化など、既存規格でやり残している部分を今から改善しておきましょう。
● デジタルツールの活用
企業がAIやIoTを取り入れて品質管理を高度化する動きは確実に増えています。2026年版でこの流れが加速する場合、
生産ラインやサービス提供プロセスをデータ化し、分析する仕組みを作る
内部監査でデジタルレポートを活用するといった先取り対応が有効です。
● 社員教育と意識改革
新しい概念(例えばDX要件やサステナビリティ)の導入には、組織の意識改革が欠かせません。
これからの数年で社内勉強会や研修を行い、項番ごとの要旨を再確認するのもおすすめ。
経営層が本腰を入れて取り組むことで、スムーズな移行が期待できます。
6. わかりやすい解説:改訂のキーワード別ポイント
リスクアプローチ強化
2015年版で導入されたリスク思考が、さらに詳細化・必須項目が増えるかも
具体例: サプライヤーリスク、情報漏えいリスクの管理
機会の管理
「改善だけでなく、新しい収益機会を創出する視点」が強調される可能性
例: 新製品開発や新市場参入をQMS内で管理
データマネジメント・情報セキュリティ(仮)
DXやIoT機器が増えると、品質管理データの保護や正確性維持が課題に
例: クラウドシステムでの検査データ保管とセキュリティ対策
7. 具体例・参考例:どう改訂に対応したか(過去改訂の成功事例)
● 事例A:製造業が2015年版にスムーズ移行
背景: リスクベース思考が新たに要求され、一部の企業が対応に苦労
対策: 工程FMEAやリスクマトリクスを導入し、既存文書にリスク欄を追加
成果: クレーム率減少・生産効率向上→次の改訂時も同様のアプローチで移行がラク
● 事例B:建設業がHLS(ハイレベルストラクチャー)で効率化
背景: ISO9001とISO14001を別々に運用しており、重複があった
対応: 2015年版のHLSを活用し、両規格を一体化(統合マニュアル)
効果: 書類管理の工数が20%減少し、監査対応も短期間で完了
● 事例C:サービス業がDX化を先取り
背景: コールセンター業務で顧客データをアナログ管理していた
対応: 2015年版への移行と同時に、クラウドシステムを導入し、対応品質の数値化
成果: 改訂対応とDXが同時進行したため、審査時に「先進的事例」として評価
8. 作成のコツ:改訂版の文書やシステムを整えるステップ
現行のギャップ分析
新しいISO9001改訂案(CD・DIS)などが発表されたら、項番ごとの追加要件をチェック
現行のQMS文書やプロセスと照らし合わせて、どこが不足しているか一覧化する
プロジェクトチームの編成
経営層、品質管理部、IT部門、リスク管理担当などを集め、改訂対応プロジェクトを立ち上げる
例えば週1回ミーティングで進捗確認し、半年〜1年かけて計画的に移行
改善計画・文書改訂の実施
リスク管理や機会対応の強化、サステナ要件への準備など、必要な追加項目を洗い出し
手順書やマニュアル、内部監査チェックリストを改訂していく
内部監査・試験運用
一定期間試運用し、不具合や抵抗感がある部分を調整
内部監査員が客観的にチェックし、指摘事項を潰す
外部審査へのアプローチ
改訂版が正式リリースされたら、認証機関に早めに相談し、審査日程を調整
余裕を持って申し込みしないと、他社との兼ね合いで審査枠が埋まるリスクあり
9. よくある疑問Q&A
Q1. 2026年版の正式なリリースはいつごろ?
正式には未発表。CD→DIS→FDISのプロセスを踏み、2025~2026年頃の発行が見込まれる
Q2. 2015年版を今取得しても大丈夫?
もちろん有効。2026年版への移行期間も設けられるはずなので、早くQMSを固めるほど移行がラク
Q3. 大幅改訂なのか小幅改訂なのか判断がつかない…
今のところは推測が多い。ただしDXやサステナ強化がトレンドである以上、それなりの改訂は予想される
10. 失敗しない運用ガイド:移行に向けた注意点
● 改訂の正式情報を早めに入手
ISO/TC 176の活動状況や国際会議のレポート、業界団体のニュースをチェック。
私の経験では、業界セミナーでディスカッション内容が先行発表されることが多いです。
● 現場任せにしない
改訂内容が社内に周知されず、担当者レベルで押し付けになりがち。
経営層や幹部のコミットが必要で、予算・時間をしっかり確保することが重要。
● 形だけ改訂して運用が伴わない
文書上は新要件を反映しているが、現場がまったく理解していない…
内部監査で把握し、教育やトレーニングで実際に運用させる仕組みを作る。
11. これまでの経験談と他社事例から学ぶ
● 経験談:2015年版移行で慌てた企業
背景: 旧版(2008年版)対応で満足していた会社が、CD/DISの情報を追わなかった
問題: 移行期限まで時間がなくなり、文書改訂やリスク管理の強化に追われる
教訓: 改訂はCD~DISの段階から情報を拾い、早めに動き出すべき
● 成功談:3年前から計画しスムーズ移行
例: IT系のサービス企業が早期にリスクベース思考やHLSを先取り
施策: 改訂案の段階でコンサルタントとギャップ分析し、内部監査を強化
結果: 余裕をもって外部審査を迎え、指摘事項ゼロで移行完了
12. まとめ:ISO9001改訂2026をわかりやすく理解し、今から備えよう
2026年改訂の背景: 社会や技術の変化(DX・サステナなど)に対応するため、ISO/TC 176が新要件を検討中
変更点予想: Clause 4〜10全般に追加や強化が入り、情報セキュリティやリスク管理がさらに重要化
早めの準備が勝利のカギ: CD/DIS段階で情報収集し、現行QMSを整備しておけばスムーズに移行できる
実践ヒント: DXを先取りした企業は内部監査や顧客満足度向上で成果を出しやすい。経営層のコミットが不可欠
改訂2026をチャンスと捉え、企業の品質管理をさらに強化し、国際競争力を高める絶好の機会にしましょう。公式の改訂要件が発表される前から情報を追い、組織を柔軟にアップデートすることが失敗しない最良のアプローチです。
この記事の監修者情報
金光壮太 (ISOコンサルタント)
大手商社にて営業を経験した後、ISOコンサルティングに従事。ISO9001、14001、27001を中心に、各業界の課題や特性に応じたシステム構築や運用支援を行い、企業の業務効率化や信頼性向上に貢献。製造業や建設業など、多岐にわたる業界での豊富な経験を活かし、お客様のニーズに応じた柔軟なソリューションの提案を得意としている
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