ISO9001測定機器の管理を徹底解説!やり方・具体例・参考例で失敗しない方法!
- 【監修者】金光壮太(ISOトラストのコンサルタント)
- 21 時間前
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▼ 目次
1. はじめに
● 測定機器の管理が重要な理由:ISO9001との関連性
ISO9001 項番 7.1.5(監視測定のリソース)は、品質を確かめるための測定機器を正しく扱うルールを定めています。これを怠ると、不適合品の量産や顧客クレームにつながりかねず、審査でも不適合の指摘を受ける恐れが高まります。
本記事では、「ISO9001 測定機器の管理」を軸に、やり方・方法の基本ステップや具体例、参考例を盛り込み、「失敗しない方法」までをわかりやすく紹介します。
2. そもそもISO9001でいう「測定機器の管理」とは?
● 項番 7.1.5(監視測定のリソース)をわかりやすく解説
ISO9001 項番 7.1.5では、測定機器の選定・校正・保守を通じて、測定が適切に行われる状態を確保しなければならないと規定しています。
不良の発生やクレーム対応の多くは、測定ミスや管理不足から始まります。正確な測定値を得るには、適切に管理された機器が不可欠です。
● 品質マネジメントで測定機器を適切に管理する意味
測定機器の精度が甘いと、本来不良である製品を良品と判定して出荷してしまい、大きな損害を被るリスクがあります。
私自身が支援した精密部品メーカーでは、ノギスの狂いを長期間放置した結果、クレームが一気に増えてしまったケースがありました。校正を定期的に行い、適切に保管するだけでそのリスクをかなり削減できます。
3. なぜ失敗しない測定機器管理が求められるのか
● 外部審査や顧客監査での評価ポイント
ISO9001の外部審査員は、**「測定機器の管理が実際に運用されているか」**をチェックします。校正履歴や台帳、ラベル表示の有無が確認され、曖昧だと不適合を指摘される可能性が高いです。
顧客監査でも「この測定値は確かなのか?」と聞かれた時に、校正証明書や管理台帳をすぐに提示できれば信頼度が上がります。
● クレームや再検査などのコスト増回避
測定器のズレを放置すると、不良が大量に発生してクレーム対応や再検査に大きなコストを費やすことになります。
過去に私が担当した企業では、測定ミスが原因で月100万円相当の不良在庫が出た例がありますが、校正頻度を厳格化した結果、不良率が大幅に下がりクレームも減少しました。
4. 測定機器の管理プロセス:基本ステップ
機器の特定・台帳作成
測定器のリスト化(名称、型番、シリアル番号、校正周期、担当者など)。大企業では、バーコードやQRコードで管理するケースも珍しくありません。
使用目的と精度要件の設定
どの工程でどの精度が必要か。「±0.01mm」なのか「±1%」なのか、製品要求に応じて明確化。
校正計画と周期設定
1年に1回、半年に1回など、使用頻度や重要度で周期を変える。外部校正機関か社内簡易校正かも検討。
機器の保守・点検
使用前・使用後の簡易点検。温度や湿度の管理。移動時の衝撃対策など。
記録と更新(トレーサビリティ)
校正証明書や保守記録を台帳にリンク。期限切れの機器を誤使用しないよう、ラベル管理も徹底。
5. 具体例・参考例:業種別の運用シーン
● 製造業の例
測定器: マイクロメーター、ノギス、トルクレンチ、電気計測器など。
管理方法: 工場内に“校正室”を設置し、外部業者に委託+社内簡易校正を併用。台帳とバーコードを連携させて、期限アラートを発信する仕組みを導入。
● 建設業の例
測定器: レーザーレベル、測量機、圧力計、コンクリート強度計。
注意点: 現場ごとに保管状況が違うため、機器が雨やほこりにさらされるリスク。ラベルの剥がれや破損が多く、こまめなチェックが必須。
● サービス業の例
測定器: カフェやレストランの温度計、重量計。コールセンターの騒音計など。
事例: フードチェーンで食材用の重量計が狂っていたため、レシピが安定せず苦情増。しかし定期校正を始めると顧客満足度が改善。
6. 項番ごとの関連:測定機器管理で押さえるべきポイント
● 項番 7.1.5.1(一般)と7.1.5.2(測定のトレーサビリティ)
7.1.5.1(一般): 機器が適切に選定され、校正・維持されていること
7.1.5.2(トレーサビリティ): 校正の国家標準 or 国際標準とのつながり(ISO/IEC 17025認定機関を利用すると安心)
● 項番 8.5(運用)との紐づけ
実際の生産・施工・サービス提供工程で、いつ測定し、どのデータを記録し、どこで合否判定するかが重要。
フローチャートに“測定工程”を組み込み、測定器ラベルチェックや検査シートに記録する仕組みが不可欠。
● 項番 9.1(監視、測定、分析及び評価)
測定データを分析してKPI(不良率、合格率など)を算出する際、測定の信頼性が低いとデータの信頼度も下がる。
内部監査で測定器の管理を含むかどうかは、企業ごとに異なるが、実践的には監査項目に入れたほうが安心。
7. 他社事例:測定機器管理の成功・失敗ストーリー
● 成功事例A:精密部品メーカーが不良率を半減
背景: クレームのほとんどが寸法不良。調べた結果、計測ノギスの精度が不安定で±0.2mmの誤差が発生していた。
対策: 校正周期を年2回に短縮+社内簡易測定のダブルチェック。測定器ごとに管理担当を設定。
結果: 半年後にはクレーム率が50%減。外部審査でも“測定機器管理の優良事例”と評価。
● 成功事例B:建設会社が工期短縮に成功
背景: 測量機器の管理不備で、基礎工事がズレ→再施工→工期大幅遅延
対応: 測定器にQRコードを付け、借用時と返却時にスキャンで状態を確認。ラベルには「校正期限」と「担当者名」も明記。
効果: 再施工が激減し、工期をしっかり守れるように。協力会社からの評価アップ。
● 失敗事例C:形だけの管理でクレーム頻発
問題: 台帳はExcelで作ったが、更新がされず期限切れの機器を使用。
結果: 外部監査で“不適合”を連発。顧客への納品後に寸法不良が判明し、多数の返品発生。
教訓: “形だけ管理”はすぐ形骸化するので、担当責任と内部監査が必要。
8. 測定機器管理で使われる専門用語の優しい解説
校正(Calibration)
機器の誤差を基準器と比較して正すor誤差範囲を把握する作業。
トレーサビリティ(Traceability)
校正用の基準器が国家標準や国際標準に繋がっていること。
確度・精度・繰返し性
確度: 真の値にどれだけ近いか
精度: 測定結果のバラつきの少なさ
繰返し性: 同じ条件での再測定で同じ結果が出せるか
不確かさ(Uncertainty)
測定値に含まれる推定誤差。校正証明書に書いてある“±いくら”などがこれに当たる。
9. 実務で役立つやり方・運用のコツ
台帳をクラウド化し、リマインドシステムを導入
例:Googleスプレッドシート+メール通知システムで、校正期限が近い機器を自動通知。
私のクライアント企業では、これで「期限切れ使用ゼロ」を達成しました。
内部監査チェックリストに“測定機器管理”項目を追加
監査時にラベルや台帳の整合性を確認。使っていない機器が棚に放置されてないかも確認。
外部校正機関の選定基準
ISO/IEC 17025認定を受けた機関を選ぶと、トレーサビリティ証明がしっかりしており、外部審査でも評価されやすい。
社内校正ルームを整備
校正費用や外注時間を削減。最低限の基準器を備えて簡易校正を行い、高精度が必要な機器だけ外部に依頼するというハイブリッド方式も多い。
10. 失敗しない方法:よくあるミスと対策
● ミス1:校正周期を適当に設定し、精度が不安定
対策: まずは短い周期(例えば半年)を試し、データを元に延ばせるか判断。頻繁に使う機器なら早めの校正が安心。
● ミス2:使用後の機器が汚れや環境変化で狂う
対策: 作業後の清掃、保管温度・湿度を一定に保つ。輸送中の衝撃対策(ケースや固定具など)も重要。
● ミス3:担当者不明で放置され、期限切れ
対策: 部署名や担当者を台帳に紐付け。内部監査や上長チェックで「誰が管理責任か」を常に明確化。
11. 実際の審査・監査でよく指摘されるポイント
記録不備
校正証明書を紛失、ラベルが貼られていない。
ラベル管理
“校正済み”と“有効期限”ラベルが適切に表示されていない
トレーサビリティの不備
どこでどんな手順で校正したか不明。国家標準や国際標準との接続が証明できない
12. Q&A:測定機器管理に関する疑問
Q1: 校正頻度はどれくらいがベスト?
「使用頻度・重要度・環境条件」で変わる。最初は半年〜1年ごとに実施し、結果に応じて調整するのが一般的。
Q2: 自社で校正できない機器はどうする?
外部校正機関に依頼。ISO/IEC 17025認定機関なら審査や顧客監査でも説得力が高い。
Q3: 大きな設備(例: オーブン、プレス機)の温度計や圧力計も管理対象?
はい。そこに測定機能があるなら校正対象となる。部分的に取り外して外部に出す場合も多い。
13. まとめ:ISO9001 測定機器の管理を徹底解説!やり方・具体例・参考例で失敗しない方法
項番 7.1.5で求められる測定機器の正確性維持は、品質保証の根本。
不良やクレームの大半は「測定誤差」を放置するところから始まる。
台帳管理、周期的な校正、担当者の明確化、トレーサビリティの確保などを徹底すれば、審査でも高評価を得られ、顧客満足度の向上にもつながる。
今すぐできるアクション:
台帳を整理し、期限ラベルと証明書を紐付ける
校正頻度や外部機関の選定基準を再検討
内部監査項目に「測定機器管理」を追加し、定期的に改善
ぜひ本記事を参考にして、測定機器の管理レベルをもう一段アップさせてみてください。そうすれば品質トラブルを減らし、ISO9001審査や顧客監査でも自信を持って対応できるはずです。
この記事の監修者情報
金光壮太 (ISOコンサルタント)
大手商社にて営業を経験した後、ISOコンサルティングに従事。ISO9001、14001、27001を中心に、各業界の課題や特性に応じたシステム構築や運用支援を行い、企業の業務効率化や信頼性向上に貢献。製造業や建設業など、多岐にわたる業界での豊富な経験を活かし、お客様のニーズに応じた柔軟なソリューションの提案を得意としている