ISO9001の力量評価表とは?作り方・参考例・具体例でわかる運用のコツ!
- 【監修者】金光壮太(ISOトラストのコンサルタント)
- 1 日前
- 読了時間: 8分

▼ 目次
1. はじめに
● ISO9001の力量評価表って何?本記事のゴール
ISO9001において、「**人材の力量(Competence)**を適切に管理すること」が品質管理の重要な要素です。その際、誰がどんなスキルや経験を持っているのか、どんな教育が必要かを整理するためのツールが「力量評価表」です。
本記事では、この力量評価表の作り方・参考例・具体例を紹介しながら、日常運用での注意点やコツをプロの視点で解説します。
これからISO9001を導入したい方や、既に導入しているけれど「人材管理が曖昧…」と悩んでいる方の役に立つ内容を目指しています。
2. そもそもISO9001でいう「力量評価」とは?
● 項番 7.2(力量)の基本をわかりやすく解説
ISO9001 項番 7.2では、組織が業務に必要な知識・技能・経験を明確にし、それを満たす人材を確保(または育成)することを求めています。
具体的には、「どんな仕事に、どれだけのスキルが必要か」を定義し、不足があれば研修などで補う仕組みを作るイメージです。
私の経験上、力量評価を適当に済ませてしまうと、適材適所ができず不良やクレームの原因になるケースが多くみられます。
● 誤解されやすいポイント
力量評価表と社内教育計画: 力量評価表で各人のスキルを可視化し、そこから不足部分を社内教育で補うという流れが理想です。評価表を作るだけ、教育だけでは片手落ちになります。
経験だけが全てではない: 在職期間が長いからOK、ではなく、実際に必要な知識・技術を基準に客観評価する必要があります。
3. なぜ力量評価表の作成が必要なのか?
● 外部審査での評価ポイント
ISO9001の審査員は、**「誰がどんなスキル基準で教育を受けているか」**を必ず確認します。
力量評価表が整備されていれば、「この仕事にはこのスキルが必要 → 担当者Aはレベル○、不足があれば研修」という流れを示せるため、審査でも高評価になりやすいです。
● 社内での明確な人材配置と教育計画
力量評価表があると、誰がどんな工程を担当できるかがはっきりし、人員配置を最適化しやすくなります。
例えば組立工程に高い精度が必要なら、レベルの高い人を配置し、サポートが必要な人には事前研修をセットで行うなど、計画的な人材育成が可能です。
● 経営者から見た効果
経営者にとっては、人材にどれだけ投資すべきかが数値データと絡めて把握できます。
例えば「新製品の設計には高度なCADスキルが必要」という評価結果を見れば、外部研修費用を確保しやすくなるなど、組織全体の戦略につなげることもできるでしょう。
4. 力量評価表の基本的な作り方
必要なスキル・知識の洗い出し
「工程Aには旋盤スキルが必要」「営業にはコミュニケーション力が必要」など部署・工程ごとに要件リスト化
私が支援したある部品メーカーでは、加工技術・測定技術・トラブルシューティングなど計30項目をリスト化し、優先度を付けていました。
評価基準の設定(レベル分け)
例:レベル1(初心者)~レベル5(指導レベル)など3~5段階が多い
数値化しすぎると運用が大変なので、ざっくりでも明確な区分を作る
社員ごとの現状評価
自己評価+上司評価、または複数の評価者がいると公平性UP
社員が「自分はどこが得意で、どこが弱いのか」を意識できる
ギャップと教育計画の立案
足りないスキルが分かったら、研修やOJTを計画
次年度目標として「レベル3→4に上げる」みたいにキャリアパスを示す
定期的な見直しと更新
年に1回以上評価を更新し、異動や退職、新入社員にも対応
成長した人を評価してモチベーションを上げる企業も多い
5. 参考例・具体例:実務で役立つ評価表パターン
● 製造業の例
工程別スキルマトリクス
縦軸:旋盤操作、溶接、組立、検査、仕分け…
横軸:社員名(Aさん、Bさん、Cさん…)
セルにはレベル1~5を記入し、一目で誰がどの工程をカバーできるか把握
● 建設業の例
資格・工種を中心とした表
測量技術、施工管理技術、コンクリート施工資格、足場組立資格などをリストアップ
リーダー層がどの資格を持っているか、若手が何を目指すかを明示
● サービス業の例
接客スキル+ITリテラシーの評価表
クレーム対応力、レジ操作、電話応対、Webシステム操作など
私がサポートしたコールセンターでは、この表を用いて新人教育を効率化し、離職率が減った例があります。
6. 項番 7.2(力量)との関連:押さえるべきポイント
ISO9001 項番 7.2には、「組織は必要な力量を明らかにし、それを満たすように教育・訓練・経験・適切な資格を与える」と明記されています。
力量評価表は、誰が何を、どの程度のレベルでできるかを示す最適なツール。
教育後の成果確認(項番 7.2.3)が抜け落ちがちなので、評価表を更新して「教育前→後」でレベルが上がったか確認すると良いです。
7. 成功事例:力量評価表が品質向上に大きく貢献した企業
事例A:製造業が不良率30%減
新人がどの工程まで担当OKか曖昧だった→評価表で明示化→ミスマッチ解消で不良が減少
社員の意欲アップ→熟練者が新人を教えやすくなった
事例B:中小企業が社員教育を体系化
力量評価表を年2回見直しし、レベルアップ要件を共有→社内研修が目標志向になり、社員のキャリア形成につながる
エンゲージメントが高まり、結果として品質管理も向上
事例C:サービス業が顧客満足度を向上
コールセンターでクレーム対応スキルを段階評価→「弱点を補う研修」→短期間で顧客評価が改善し、クレーム件数が3割減少
8. 失敗しない運用のためのコツ
形骸化を防ぐためのステップ
人事評価と連動させる、内部監査で運用状況をチェックするなどで「棚にしまいっぱなし」を回避
評価の偏りを避ける方法
上司1人だけで判断せず、複数視点の評価を組み合わせる。自己評価の意欲も大事
経営層のコミットメント
経営トップが「人材育成」を重視していないと、力量評価表はただの形式になりがち。しっかり予算と時間を割く姿勢が重要
9. よくある疑問Q&A
Q1:評価表のレベルはどれくらい細かく設定すればいい?
3~5段階が多い。あまり細分化しすぎると管理が大変。現場と相談して決める
Q2:小規模企業で社員数が少ない場合は?
全員が複数スキルを持つ多能工スタイルが多い→個人別スキルマップで運用しやすい
Q3:外部審査でどこまで要求される?
「誰がどんな作業をするにあたり、何をもって力量と判断しているか」「足りない場合の対応策」を説明できればOK。フォーマットは自由
10. 専門用語の優しい解説:初心者向け
力量(Competence)
仕事をこなすために必要な知識・技能・態度の総称
マトリクス形式
縦軸にスキル項目、横軸に社員名を配置して、各セルにレベルを記入する表
OJT(On-the-Job Training)
実際の業務をしながら先輩が教える研修。実務経験でスキルを高める
ギャップ分析
現状のレベルと必要レベルを比べて、不足部分を明らかにする方法
11. 具体例:ISO9001力量評価表のサンプル構成
基本スキル列
安全ルール、5S活動、コミュニケーションなど
専門スキル列
工程別技術(切削、溶接、検査)、ITスキルなど
評価レベル列
レベル1:補助レベル、レベル2:一人前、レベル3:指導可能 など
備考列
教育受講日、資格取得状況、メモなどを記入して常にアップデート
12. 内部監査・マネジメントレビューへの活用
内部監査で“力量評価表”が更新されているか確認
社員がどの工程まで可能なのに評価表が古い…などの不一致をチェック
マネジメントレビューで課題を上層部が認識
評価表から「社内で不足しているスキル」を経営陣が把握→研修予算確保しやすい
項番 10(改善)
人的ミスや不適合が発生した際、「力量不足」が原因なら是正策として研修を設定→評価表を更新
13. まとめ:ISO9001の力量評価表とは?作り方・参考例・具体例でわかる運用のコツ
ISO9001で求められる「力量(Competence)」は、組織の品質保証を支える大切な要素です。そのために、力量評価表を作って誰がどのスキルを持ち、どこに不足があるかを明確にすることが効果的。
作り方の基本ステップ: スキル洗い出し→レベル分け→社員の評価→教育計画→定期更新
参考例: 製造業なら工程スキル、建設業なら資格・工種、サービス業なら接客・ITスキルなどをマトリクス化
運用のコツ: 形骸化させず、内部監査やマネジメントレビューに組み込み、定期的にアップデート
適切な力量評価表を使えば、スキルに応じた配置や研修が行いやすくなり、品質トラブルを防ぐだけでなく、社員の成長にもつながります。ぜひこのガイドを参考に、自社の業務に合った評価表を作り、ISO9001の項番 7.2(力量)を効果的に活用してみてください。
この記事の監修者情報
金光壮太 (ISOコンサルタント)
大手商社にて営業を経験した後、ISOコンサルティングに従事。ISO9001、14001、27001を中心に、各業界の課題や特性に応じたシステム構築や運用支援を行い、企業の業務効率化や信頼性向上に貢献。製造業や建設業など、多岐にわたる業界での豊富な経験を活かし、お客様のニーズに応じた柔軟なソリューションの提案を得意としている
Comments