ISO14001内部監査でよく使われる質問例とは?項番別にわかりやすく解説!
- 【監修者】金光壮太(ISOトラストのコンサルタント)
- 6月2日
- 読了時間: 6分

▼ 目次
1. はじめに:ISO14001内部監査の目的と重要性
ISO14001の内部監査とは、環境マネジメントシステム(EMS)が適切に機能しているかどうかを確認するために、組織内で実施する評価活動です。第三者審査とは異なり、内部の視点から継続的改善を促す役割があります。
私がコンサルを担当する企業の多くでも、「内部監査が形骸化していたが、質問例を明確にしたことで運用が活性化した」という声がありました。内部監査は、環境への取り組みを見直す絶好の機会です。
2. 内部監査の基本的な進め方
監査計画の立案
年間計画を作成し、対象部門や監査日、監査員を決めます。リスクが高い部門は重点監査対象とします。
チェックリストの作成
各項番に沿った質問項目を整理。過去の不適合や苦情履歴も反映しておくと有効です。
監査の実施と記録
担当部門にヒアリングや記録確認を行い、事実ベースで記録。曖昧な運用や証拠がない場合は指摘対象となります。
フォローアップと是正措置
監査での不適合は、是正処置報告書として記録し、原因分析と再発防止策まで追跡します。
3. 質問例:項番4「組織の状況」
4.1項 組織及びその状況の理解
貴社の事業活動の中で、環境に影響を与える要因は何ですか?
地域社会や行政との関係で特筆すべき環境課題はありますか?
4.2項 利害関係者のニーズ及び期待の理解
顧客や取引先から環境に関する要望はありますか?
地元住民や自治体からの苦情や意見をどう収集していますか?
4.3項 適用範囲の決定
EMSの適用範囲はどう定義していますか?
除外している部門があれば、その理由と妥当性は?
4. 質問例:項番5「リーダーシップ」
5.1項 リーダーシップ及びコミットメント
経営層は環境方針にどのように関与していますか?
環境目標の進捗について、経営層はどう評価していますか?
5.2項 環境方針
環境方針はどのように社内に周知されていますか?
環境方針は法的要求事項や汚染の予防に言及していますか?
5.3項 組織の役割、責任及び権限
EMS運用に関わる責任者は誰ですか?
その責任者が果たしている役割を具体的に教えてください。
5. 質問例:項番6「計画」
6.1項 リスク及び機会への取組み
環境リスクやチャンスをどのように特定・評価していますか?
それに対する対応策はどのように文書化されていますか?
6.1.2項 環境側面
使用している原材料や排出物で、環境影響の大きいものは?
環境側面の見直しはどのタイミングで行っていますか?
6.1.3項 順守義務
貴社が適用を受けている法令や条例にはどのようなものがありますか?
法令遵守を確認する仕組みはありますか?(例:法令チェックリスト)
6.2項 環境目標及び計画策定
環境目標はSMART(具体的・測定可能・達成可能・関連性・期限)になっていますか?
目標達成のための行動計画は部門別に設定されていますか?
6. 質問例:項番7「支援」
7.1項 資源
EMSを運用するうえで必要な資源(人・設備・費用)は確保されていますか?
7.2項 力量
環境管理に必要なスキル・資格は何ですか?担当者の力量はどう確認していますか?
7.3項 認識
環境方針や環境目標について、従業員は理解していますか?
7.4項 コミュニケーション
社内外への環境情報の伝達手段は何ですか?
7.5 文書化した情報
必要な手順書・記録類は整備・更新・保管されていますか?アクセス性に問題はありませんか?
7. 質問例:項番8「運用」
8.1項 運用の計画及び管理
環境リスクを低減するために、運用手順や管理基準はありますか?
外注業者に対して環境要求事項はどのように伝えていますか?
8.2項 緊急事態への準備及び対応
火災・漏洩・地震などの環境緊急事態に備えた対応計画はありますか?
訓練はどのくらいの頻度で実施していますか?
8. 質問例:項番9「パフォーマンス評価」
9.1項 監視、測定、分析及び評価
CO2排出量・廃棄物・エネルギー使用など、環境パフォーマンスをどのように測定していますか?
9.2項 内部監査
前回の内部監査での不適合や改善点は解決されていますか?
監査員の力量・独立性はどう確保されていますか?
9.3項 マネジメントレビュー
経営層による見直しは定期的に行われていますか?その議題には何が含まれますか?
9. 質問例:項番10「改善」
10.1項 一般
EMSの改善に向けた仕組みや活動(例:PDCA)は機能していますか?
10.2項 不適合及び是正処置
不適合が発生した場合の処置手順はどうなっていますか?
原因分析や再発防止策は確実に行われていますか?
10.3項 継続的改善
環境目標・EMSそのものの継続的改善活動はどう評価されていますか?
10. 実務に役立つチェックリストの作成ポイント
質問は「はい/いいえ」で終わらないよう、根拠を確認できる内容にする
各項番と対応させて整理することで抜け漏れを防止
事実ベースの確認を徹底する(記録・証拠との照合)
過去の不適合・苦情・苦情対応を反映して個社ごとの実態に合った内容に
11. よくある質問とその対応方法
Q1. 内部監査の頻度はどれくらいが適切?
A. 年1回が原則ですが、重要プロセスは半年ごとなどの重点監査も有効です。
Q2. 内部監査員に資格は必要?
A. ISO上は資格要件なし。ただし力量(教育・経験・訓練)が必要です。
Q3. 指摘をしたくても現場との関係性が気になる…
A. 「改善のための前向きな指摘」として対話ベースで伝えるのがポイントです。
12. まとめ:効果的な内部監査の実施に向けて
ISO14001の内部監査では、形式的な「実施」に終わらず、「環境改善につながる気づき」を得ることが重要です。
項番ごとの質問例を活用することで、監査の精度が向上する
記録・是正・フィードバックの仕組みを整えることで、実効性が増す
継続的改善の文化を育てることが、ISO運用の本質
実際に現場で“問いかける力”を持った監査員を育てることが、環境経営の質を大きく左右します。この記事の質問例を、自社のEMSに合ったチェックリストづくりにぜひ活用してください。
この記事の監修者情報
金光壮太 (ISOコンサルタント)
大手商社にて営業を経験した後、ISOコンサルティングに従事。ISO9001、14001、27001を中心に、各業界の課題や特性に応じたシステム構築や運用支援を行い、企業の業務効率化や信頼性向上に貢献。製造業や建設業など、多岐にわたる業界での豊富な経験を活かし、お客様のニーズに応じた柔軟なソリューションの提案を得意としている
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