ISO9001の顧客所有物とは?お客様から預かった物の管理方法をやさしく解説

更新日:11 時間前
お客様から預かった材料や図面、見本。「いつもの棚に置いてあるから大丈夫」と思っていても、誰の物か、誰が使っているかがわからなくなると困ります。
ISO9001の顧客所有物の管理は、こうした預かり物を、間違えず、大切に扱うための仕組みです。受け取ってから返すまでの流れを、弊社のお客様事例と身近な例を交えて説明します。

▼目次
1. 顧客所有物とは?お客様から預かった物や情報のこと
顧客所有物とは、仕事のためにお客様から預かり、自社が管理したり使ったりする物や情報のことです。購入して自社の物になった材料とは区別して考えます。
たとえば、加工用に支給された材料、借りた金型、お手本として預かったサンプル、修理を頼まれた機械などです。図面や設計データ、仕事で預かる個人情報のように、形のない情報も含まれます。
ISO9001では、お客様だけでなく、協力会社など外部の相手が持つ物にも目を向けます。自社の管理下にある間や使用中に、何の物かを区別し、使える状態か確認して守る、というのが基本です。
「物を大切にする」を、誰でもできる形にする
難しい仕組みから始める必要はありません。「誰から何を預かったか」「どこにあるか」「異常があれば誰へ知らせるか」が、担当者以外にもわかることを目指しましょう。以下のラベルや一覧表は、そのための実践例です。
2. 受け取るときに、名前・数・状態を確かめる
まず、送り状や依頼内容と実物を見比べます。品名、品番、数量、傷や不足の有無を確認し、保管方法や使用条件について相手から指定がないか確かめましょう。
図面なら、図面番号と版(どの時点の図面か)を確認します。電子データなら、ファイルが開くか、必要な内容がそろっているかも確認します。
たとえば、見本を3個預かった場合
受取日、依頼元、見本の名前、3個という数、見た目の状態、置き場所を控えます。もともと傷があれば、使う前に相手へ確認します。必要に応じて写真も添えると、説明しやすくなります。
3. 保管と使用は「混ぜない・傷めない・勝手に使わない」
お客様ごとに箱や棚の場所を分け、ラベルで持ち主と品名がわかるようにします。湿気やほこりに弱い物は、性質に合う場所や容器で守りましょう。
使うときは、決めた用途と条件を確認します。別のお客様の仕事に流用したり、加工してよいか不明な物を自己判断で加工したりしないことが大切です。
図面やデータは、見てよい人と最新版を明確に
仕事に必要な人が使える共有場所を決め、無関係な人が見られないようにします。紙の図面も電子データも、古い版と新しい版が混ざると間違いのもとになります。変更を受け取ったら、作業で使う版をそろえましょう。
移動したら、置き場所も更新する
倉庫から作業場へ持ち出したときに、一覧表の置き場所も直します。「どこに置いたかは担当者だけが知っている」を減らす、小さな工夫です。
4. なくした・壊した・使えないとわかったら連絡と記録
紛失、破損、不足、使用できない状態に気づいたら、まず社内の責任者へ知らせます。間違って使い続けないように、必要に応じて使用を止め、対象を分けておきましょう。
そのうえで、お客様や持ち主に状況を報告し、何が起きたかを記録します。ISO9001では、紛失や損傷などで使えないとわかった場合の報告と記録が求められています。
原因がまだ不明でも、「何が、いつ、どのような状態で見つかったか」は伝えられます。誰が連絡するかをあらかじめ決めておくと、報告が遅れにくくなります。
たとえば、預かった見本にひびを見つけたら
その見本の使用を止め、見つけた日時と状態を控え、責任者からお客様へ連絡します。自分で直す、捨てる、代わりを用意して済ませると判断せず、その後の扱いを確認しましょう。
5. 返却・使い切りまで、1つの記録で追えるようにする
返却前は、預かった数、返す数、状態、付属品を確認します。材料を使い切る契約なら、使用した数や残りの扱いを確認します。返却の要否は、仕事の約束に合わせましょう。
余った材料や古いサンプル、仕事が終わったデータも、勝手に処分しません。返却するのか、保管を続けるのか、決められた方法で廃棄・削除するのかを確認します。
少人数の職場で使う、預かり物の記録例
記録する項目の例:受取日/持ち主/品名・番号/数量/受取時の状態/置き場所/担当者/異常と連絡内容/返却日・使用後の扱い。
1件の記入例(説明用の架空例)
受取日:11月1日、持ち主:取引先、品名:加工見本S-01、数量:3個、状態:確認した範囲で傷なし、置き場所:預かり品棚1、担当者:受入担当。返却時に、返却日・数量・状態・相手の確認結果を追記します。
6. 弊社のお客様事例から考える、続けられる管理
ISOトラストの公開事例では、製造業のお客様が担当者1名でISO9001の取得・運用を進め、通常業務との両立に課題を抱えていました。支援後は、無理なく維持運用できる体制につなげています。
こうした少人数の職場では、書類を増やすだけでは負担が大きくなります。顧客所有物についても、まずは普段の受入票や共有一覧を活かし、持ち主、置き場所、異常時の連絡先を確認できる形にすることをおすすめします。これは本記事での管理方法の提案です。
弊社の支援経験:原因を一人で抱え込まない
弊社の不適合対応の記事では、支援先で「なぜなぜ分析カード」を使い、社員全員で原因を考える仕組みを作った例を紹介しています。顧客所有物の置き間違いや破損でも、報告後に「なぜ起きたか」を一緒に確認し、置き場所や表示の改善へつなげる考え方を応用できます。
確認するのは、実物と記録のつながり
一覧表をきれいに作ることだけで終わらせず、預かり物を1つ選び、「持ち主がわかるか」「記録の場所にあるか」「問題があれば連絡できるか」を確かめましょう。日々の仕事で使えるかどうかが大切です。
7. まとめ|受取から返却まで、迷わない流れを決めよう
顧客所有物の管理は、「受け取るときに確認する」「持ち主と置き場所をわかるようにする」「大切に使う」「異常は連絡して記録する」「最後の扱いを確認する」という流れです。
最初の一歩は、いま預かっている物を1つ確認すること。誰から預かったか、どこにあるか、誰が連絡するかがわかれば、管理を見直すきっかけになります。
ISO9001は2026年版が発行されています。適用する版の正式な要求事項や移行対応は、利用する規格と認証機関の案内も確認してください。本記事のラベル・記録項目は、職場に合わせて使う実践例です。
ISOトラストでは、普段の業務に合わせたISO9001の取得・運用をサポートしています。預かり物の管理や記録を、無理なく続けられる形にしたい場合はご相談ください。
参考資料
著者情報
金光壮太 (ISOコンサルタント)
大手商社にて営業を経験した後、ISOコンサルティングに従事。ISO9001、14001、27001を中心に、各業界の課題や特性に応じたシステム構築や運用支援を行い、企業の業務効率化や信頼性向上に貢献。製造業や建設業など、多岐にわたる業界での豊富な経験を活かし、お客様のニーズに応じた柔軟なソリューションの提案を得意としている。




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