ISO14001の取り組み事例を業種別に紹介|参考例・具体例から学ぶ環境対策の実践法!
- 【監修者】金光壮太(ISOトラストのコンサルタント)
- 3 日前
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▼ 目次
1. はじめに:ISO14001と取り組み事例の意義
ISO14001は、環境マネジメントシステム(EMS)に関する国際規格であり、企業が環境に配慮した事業運営を行うための仕組みを整えるものです。実際に認証を取得するうえでは、単に制度を整えるだけでなく、現場でどのような「環境への取り組み」をしているかが問われます。
取り組み事例を見ることで、他社がどのように課題を解決しているか、自社ではどこから始めれば良いかが明確になります。特に中小企業では、コストを抑えながら効果的な改善を行う事例が参考になります。
2. 製造業の取り組み事例|環境負荷の大きい業種での工夫
エネルギー効率の改善
ある自動車部品メーカーでは、空調と照明のタイマー制御を導入することで電力使用量を年8%削減。古い空調設備をインバーター式に更新したことで、夏場のピーク電力を抑制しました。
廃棄物の削減とリサイクル推進
金属加工工場では、廃油や切粉を分別して回収する仕組みを整備。回収業者と連携して再資源化率を80%超に改善した実績があります。
有害物質の管理と削減
塗装工程をもつ工場では、有機溶剤の使用量を年ごとに記録し、代替塗料への切替を段階的に進めました。PRTR制度に対応した化学物質管理台帳も整備しています。
3. 建設業の取り組み事例|現場単位でできる環境配慮
騒音・振動・粉じんの管理対策
土木建設会社では、近隣住民とのトラブル防止のため、工程ごとに防音シートや散水対策を講じ、苦情件数を大幅に減少。
グリーン購入と資材リサイクルの推進
施工現場で発生する廃材(木材・金属・コンクリート)の分別徹底を進め、リサイクル率90%以上を維持。使用資材も再生材を優先的に購入。
地域との連携による環境保全活動
建設現場の周囲で年1回の清掃ボランティアを実施。CSR活動と合わせて、地域との良好な関係づくりにもつながっています。
4. サービス業の取り組み事例|オフィス系・BtoBでの実践例
省エネルギー(照明・空調の最適化)
IT企業では、PCの自動スリープ設定やフロアごとの照明センサーを導入。年間の電力使用量を15%削減。
ペーパーレス化とデジタルワークフローの導入
あるコンサル会社では、稟議や経費精算をクラウド化し、紙の使用量を年間で約60%削減。業務効率化にも貢献。
環境意識を高める社内教育・掲示物の工夫
「1日1エコ運動」として、社内にリマインドポスターを掲示。行動変容を促す具体的なメッセージを毎月更新しています。
5. 小売業の取り組み事例|顧客に伝わるエコ対応
エコ商品の取り扱いとエコラベリングの活用
大手スーパーでは、FSC認証の商品や、プラスチック削減を実現したパッケージを採用。ポップで消費者への説明も強化。
店舗運営での電力・冷暖房管理
冷蔵・冷凍設備の運用時間を見直し、設定温度の最適化を実施。BEMS(ビルエネルギー管理システム)も導入し省エネを推進。
顧客参加型のエコキャンペーン(例:マイバッグ運動)
エコポイント制度を導入し、マイバッグ持参を促進。年間でプラスチック袋使用数を30%削減。
6. 農業・食品業の取り組み事例|生産から流通までの環境配慮
持続可能な農法の導入
ある農業法人では、有機JAS認証を取得し、農薬・化学肥料の使用を50%削減。土壌の健全化を図りながら作物の品質も向上。
食品廃棄物の削減と再利用
食品加工メーカーでは、製造過程で発生する食品残渣を飼料化・肥料化するルートを確保。廃棄コスト削減と地域農家への貢献を実現。
サプライチェーン全体の管理
大手外食チェーンでは、納品業者にもISO14001を導入推奨。取引先を含めた環境パフォーマンス管理に取り組んでいます。
7. 教育機関・自治体の取り組み事例|公共性の高い活動の推進
環境教育プログラムの実施
小中学校では、年数回の校外学習で環境施設を訪問。授業でもゴミ分別や再エネ学習を取り入れ、児童の環境意識向上に寄与。
公共施設の省エネ施策
市役所では、庁舎のLED化・断熱改修・ソーラーパネル導入を実施。市民向けに実績を公開し、行動のモデルケースとして活用。
地域住民との協働活動
清掃活動や地域の緑化活動を住民と共同で実施。行政・教育・市民が連携した地域ぐるみの取り組みが進んでいます。
8. 成功するISO14001の取り組みに共通するポイント
経営層の関与
環境活動を単なる担当者任せにせず、経営層自らが目標発信や定期報告会に参加している企業は、全社での浸透度が高い傾向にあります。
現場主導の改善
トップダウンだけでなく、現場の小さな改善提案(例:部品ごとの包装削減など)を吸い上げる仕組みが、継続的改善に繋がります。
見える化と共有
エネルギー使用量・廃棄量のグラフ表示、目標進捗の社内掲示など、情報の“見える化”によって全員の意識が変わります。
9. よくある課題とその解決策|運用フェーズでのつまずき防止
社員の「やらされ感」
教育を通じて「なぜやるのか」を理解させることで、行動の意味が明確になります。例えば環境事故の事例紹介などが効果的です。
担当者の孤立
小規模企業では1人で抱え込むケースも。社外コンサルや社内横断チームを設けることで負担を軽減できます。
費用対効果の不透明さ
定量的な成果(電気使用量削減率など)を定期的にまとめ、社内報告やHP公開に活用することで理解が進みます。
10. まとめ:自社でできる取り組みを一歩ずつ始めよう
ISO14001の取得や運用においては、規模の大小にかかわらず「自社に合った環境改善」が鍵となります。まずは小さな活動からでも構いません。
取り組み事例を参考に、自社の業種・規模・課題に合った方法を選ぶ
環境目標は現場が動けるレベルで設定する
成果は社内外へ発信してモチベーションを維持
一歩ずつ着実に進めることで、ISO14001は“負担”ではなく“信頼と価値を生む経営ツール”となります。
この記事の監修者情報
金光壮太 (ISOコンサルタント)
大手商社にて営業を経験した後、ISOコンサルティングに従事。ISO9001、14001、27001を中心に、各業界の課題や特性に応じたシステム構築や運用支援を行い、企業の業務効率化や信頼性向上に貢献。製造業や建設業など、多岐にわたる業界での豊富な経験を活かし、お客様のニーズに応じた柔軟なソリューションの提案を得意としている