【実例付き】ISO14001における気候変動とは?取り組み事例・参考例・具体例をわかりやすく解説!
- 【監修者】金光壮太(ISOトラストのコンサルタント)
- 5 時間前
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▼ 目次
1. はじめに:ISO14001と気候変動への対応の重要性
ISO14001は、環境マネジメントシステム(EMS)に関する国際規格であり、企業が環境保全を経営に組み込むための仕組みを提供します。近年、気候変動が企業リスクのひとつとして注目されており、ISO14001にも気候変動リスクへの取り組みが強く求められるようになってきました。
特に2022年のISO14001規格補足ガイドでは、気候変動の影響を「組織の状況」や「リスク及び機会の検討」に明確に組み込むよう推奨されており、実質的に対応が必要なテーマとなっています。
1-1. ISO14001の概要と気候変動との関係
ISO14001は「環境側面の管理」「法規制の順守」「継続的改善」を基本としています。気候変動への対応は、温室効果ガスの削減や再エネの活用など、環境側面そのものに該当します。
1-2. 気候変動が企業活動に与える影響
気候変動による台風・洪水などの自然災害は、工場や物流の停止を招き、企業経営に大きな影響を与えます。さらに、脱炭素社会に向けた社会的要請や、サプライヤー評価にも影響を及ぼすため、早期対応が重要です。
2. ISO14001における気候変動の位置づけ
2-1. 規格要求事項と気候変動リスクの関連性
気候変動は、ISO14001の条文「4.1 組織の状況」「6.1 リスク及び機会」に直接関係します。事業に影響を与える外部要因として明記し、必要に応じた目標設定や対応策の策定が必要です。
2-2. EMS(環境マネジメントシステム)と気候変動対応の統合
環境マネジメントの中に、CO2排出量の監視や、サプライチェーンの環境影響分析を組み込むことで、気候変動対策とEMSを統合的に運用できます。実務では「環境側面登録表」に温室効果ガス排出などを追加する企業が増えています。
3. 気候変動対策の基本:緩和と適応
3-1. 緩和策(温室効果ガス排出削減など)の具体例
・工場におけるLED化・高効率モーター導入・燃料の転換(重油→LNG) ・オフィスにおける電力使用量の見える化と削減目標 ・再エネ由来電力への切り替え(例:RE100対応)
3-2. 適応策(災害リスクへの備えなど)の具体例
・高潮や水害を想定した建屋のかさ上げ、重要機器の高所設置 ・BCP(事業継続計画)に災害対応を組み込む ・原材料調達リスクを回避するための代替先確保
4. 業種別の取り組み事例と参考例
4-1. 製造業:エネルギー効率化と再エネ導入
ある自動車部品メーカーでは、月次でCO2排出量を集計し、部門ごとに削減目標を設定。工場屋根に太陽光パネルを設置し、全体電力の20%を自家発電でまかなっています。
4-2. 建設業:気候リスクを考慮した設計・施工の工夫
土木建設会社では、設計段階で河川氾濫リスクを考慮した護岸設計や、浸水対策として排水ポンプの標準装備化を実施。公共事業の入札評価でもプラスに働いています。
4-3. サービス業:オフィスの省エネとペーパーレス化
コンサル企業では、クラウド活用により紙使用量を前年比70%削減。従業員ごとにエネルギー使用量の意識を促すデータを社内公開し、行動変容を促しています。
4-4. 小売業:サプライチェーン全体での環境配慮
食品チェーンでは、配送拠点の冷凍設備に自然冷媒を導入。また仕入先に対しても、CO2排出削減や環境法令順守の状況報告を求めています。
5. 気候変動リスクの特定と評価方法
5-1. リスクアセスメントの手法とポイント
気候変動リスクの評価では、「発生可能性×影響度」の2軸でスコア化し、重点的に対応すべきリスクを特定します。環境側面評価表と連携させるのが効果的です。
5-2. シナリオ分析による将来リスクの予測
国際的には「1.5℃シナリオ」「4℃シナリオ」など、将来の気温上昇を想定した分析が主流です。日本企業ではTCFD(気候関連財務情報開示)に準拠したリスク開示が増えています。
6. 環境目標とパフォーマンスの設定
6-1. 気候変動対応を組み込んだ目標の立て方
「2030年までにCO2排出量を50%削減」「再エネ比率30%にする」など、数値で測定可能かつ期限を設けたSMART目標が望ましいです。
6-2. 指標の設定と継続的モニタリングの実践例
KPIとして「1製品あたりのCO2排出量」「再エネ使用比率」などを設定し、月次または四半期ごとにトラッキング。目標進捗はマネジメントレビューでも定期確認します。
7. 内部監査とマネジメントレビューの活用
7-1. 気候変動対策を評価する監査の進め方
内部監査では「気候変動に関連する環境側面の管理」「目標達成の進捗」などを重点確認項目として設定。現場での実行状況と記録の一致も確認します。
7-2. レビューによる是正措置と改善の好事例
再エネ導入が予定通り進まなかった場合、設備投資の時期見直しや、補助金活用の検討など、具体的な是正対応がレビューから導かれます。
8. 成功事例から学ぶ導入のポイント
8-1. 成功企業に共通する環境経営の視点
・トップの関与(目標発信・定例報告会の実施) ・部門横断での取り組み(生産・購買・経理など連携) ・社内報やポスターによる社内共有・意識付け
8-2. よくある課題とその解決アプローチ
・「環境=コスト」と捉えられる → 投資効果を数値で示す ・業務が属人化 → 簡素なルール化と引継ぎ体制の整備
9. 気候変動対応を推進する社内体制の構築
9-1. 組織内の役割・責任の明確化
EMS推進責任者の下に、部門ごとの環境管理担当を配置。週次・月次での情報共有ミーティングをルール化。
9-2. 社員教育・意識向上のための施策
eラーニング・研修動画・朝礼での5分間環境トピックなどを活用し、継続的な学びを仕組み化。行動目標に連動した表彰制度も有効です。
10. まとめ:ISO14001を活用した気候変動対策の進め方
気候変動は今や経営上の重大リスクであり、同時に持続可能な競争力の源泉でもあります。ISO14001を通じて、体系的かつ実効性ある取り組みを進めることで、以下のような効果が得られます。
社会的信頼の獲得とブランド価値の向上
エネルギーコストの削減と業務効率の改善
サプライチェーン全体の持続可能性の強化
まずはできる範囲から着手し、段階的に深めていくことで、貴社独自の強みある環境経営が実現できます。
この記事の監修者情報
金光壮太 (ISOコンサルタント)
大手商社にて営業を経験した後、ISOコンサルティングに従事。ISO9001、14001、27001を中心に、各業界の課題や特性に応じたシステム構築や運用支援を行い、企業の業務効率化や信頼性向上に貢献。製造業や建設業など、多岐にわたる業界での豊富な経験を活かし、お客様のニーズに応じた柔軟なソリューションの提案を得意としている