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ISO9001の検査記録を電子化するには?紙・Excelから移行するときの注意点

執筆者の写真: 【監修者】金光壮太(ISOトラストのコンサルタント)
【監修者】金光壮太(ISOトラストのコンサルタント)
5 日前
読了時間: 8分

更新日:10 時間前

検査結果を紙に書き、事務所へ戻ってExcelに転記する。取引先から問い合わせが来たら、日付を頼りにファイルを探す。こうした手間を減らしたくても、「紙をなくして審査で困らないか」「Excelだけで管理してよいか」が気になり、移行に踏み切れないことがあります。


ISO9001の検査記録は電子で管理できます。ただし、保存先を変えるだけでは、記入漏れや上書き、承認待ちの問題は残ります。まず決めたいのは、誰が入力し、どこで確認し、訂正したときに何を残すかです。紙からの切り替えと、既存のExcel管理の見直しを分けて考えていきます。


明るい品質管理の事務所でタブレットの検査記録を確認する担当者たちのイメージ


▼目次



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1. 検査記録は電子で管理できる。先に確認したい条件


文書化した情報は紙に限られません。ISO公式の用語規格ISO9000でも、形式や媒体を限定せずに説明されています。Excelやシステムで結果を残すこと自体が、ISO9001に反するわけではありません。電子化にあたっては、自社が適用する規格の版、顧客との取り決め、業務に関係する法令、社内規程も確認してください。


特に、取引先へ提出する検査成績書と、社内で検査の経過を残す記録は、同じ扱いとは限りません。提出先が様式や署名、原本の扱いを指定しているなら、その条件と社内の電子管理を両立させます。「社内では電子化したので、提出物も自由に変えられる」と判断しないことが大切です。


また、紙を画像やPDFにして保存する方法と、検査時に数値を直接入力する方法では、減らせる作業が違います。過去の記録を取り出しやすくしたいのか、日々の転記や集計を減らしたいのか。困っている作業を一つ選ぶと、必要な仕組みが見えてきます。




2. 入力項目は、後から検査をたどれるかで決める


紙の欄をそのまま画面へ移す前に、記録を使う場面から項目を見直します。後日、不具合の問い合わせを受けたとき、その製品やロットについて、何を、どの基準で確認し、どんな結果になったかが分かるでしょうか。検査の実施者と、結果を確認・承認する人の役割も整理します。


様式に入れる候補は、検査日、品名・品番、必要に応じたロットや製造番号、検査項目と基準、結果、判定、実施者、確認者などです。測定器や検査条件の情報も、後の調査に必要ならひも付けます。これは設計時の確認例であり、すべての企業に同じ欄数や様式が要求されるという意味ではありません。


様式の改訂と、記入済みの記録の訂正を分ける

検査基準や入力欄を変える作業と、過去の測定値の入力ミスを直す作業は別です。様式を更新した後も、過去の検査に使った基準や当時の結果が分かるようにします。新しい基準で古い記録の合否表示まで変わってしまう計算式や参照方法は、切り替え前に見直しましょう。


合格・不合格だけで足りるかを確認する

寸法などの実測値が必要な検査では、「合格」だけを選ぶ画面にすると、後から変化や傾向を調べにくくなります。一方、実測しない確認にまで数値欄を増やすと入力の負担になります。どの結果を残すかは、検査の目的と顧客の要求に合わせて決めてください。





3. Excelか専用システムかは、確認と訂正の運用から選ぶ


少人数で扱う記録から始めるなら、既に使っているExcelを整える方法も検討できます。入力する場所と計算式の欄を分け、単位や選択肢をそろえ、正式な保存場所を一つ決めます。メール添付のコピーや担当者のパソコンに別々の最新版がある状態では、どれを正式な記録として確認するかが曖昧になります。


入力者・確認者・閲覧する人に必要な権限を分け、確定後の記録をどう保護するかも決めておきます。Excelのシート保護は、セルの誤操作を抑える機能であり、ファイルへのアクセス制御と同じものではありません。Microsoftも、シート保護をセキュリティ機能として扱わないよう説明しています。


電子化すれば、訂正の経緯が自動で残るとは限らない

変更履歴を利用できるか、いつまで保持されるかは、ソフトや保存先、設定によって変わります。履歴がある場合も、訂正理由や再確認の記録まで分かるかは別です。訂正前後の内容、訂正した人と日時、理由、必要な再確認を残す方法を決め、実際の画面でたどれるか試します。


複数工程や承認待ちが増えるなら、システムで確かめる点も増える

複数人が同じ記録を引き継ぐ、写真と数値を結び付ける、未確認の案件を一覧にする、といった運用では、専用システムや入力アプリも候補になります。自社の帳票を使った試用で、入力から訂正・検索まで通して確認しましょう。料金や画面の見やすさに加え、データの出力形式、解約時の取り出し方、保存期間、権限管理も比較します。




4. 移行は、一つの検査記録を最後まで試してから広げる


最初から全工程や過去の紙を置き換える必要はありません。毎日使い、転記や検索に困っている帳票などから対象を選びます。現在の入力、確認、保管、問い合わせ対応の流れを簡単に書き、どの作業を減らしたいのかを共有してください。


試す際は、入力して保存できたところで終えず、確認者への引き渡し、記入漏れの差し戻し、確定後の訂正、品番やロットからの検索まで進めます。検査基準の境界値や単位、計算式による判定も確認します。実際に使う人が、普段の端末と作業環境で操作することが大切です。


紙と電子を併用する期間には、正式な記録を決めておく

試行中に紙も残すなら、どちらを正式な記録とし、食い違いが出たら誰が確認するかを決めます。切り替え対象と開始日、紙への記入を終える条件も共有しましょう。併用を続けた結果、二重入力だけが増えてしまうことを防ぎます。


過去の紙は、必要性を見て移す

保管中の記録をすべて打ち直すと、新たな転記ミスも生じます。検索する機会や保存条件を確認し、頻繁に使うものを優先して電子化する方法があります。スキャンする場合は、裏面や添付資料の漏れ、文字の判読性、探すための名称も確認します。紙の原本を廃棄できるかは、法令・顧客要求・社内ルールを確かめてから判断してください。




5. ISOトラストが支援した、製造業の紙の記録の電子化


ISOトラストでは、製造業のお客様で、紙を中心に保管していた記録をデータ化し、システムやフォルダで管理する運用への移行を支援してきました。紙で記録を取った後にデータ化するケースもあり、紙の削減に加えて、机の上や作業所・事務所の整理整頓も進めてきました。


小規模なお客様の中には、クラウドを使った経験が少なく、操作に不慣れな方もいらっしゃいます。そうした場合は、クラウドの使い方だけでなく、フォルダでの整理方法や、ISOに沿った文書管理の進め方も支援しています。データを移す作業と、移した後に社内で使えるようにする支援を合わせて行っています。


変更後は、電子記録をフォルダでまとめて管理することで、社内で記録を確認しやすくなりました。書類の所在が分かりやすくなり、紛失や「どこにあるか分からず探す」といった問題の解消、事務所の整理整頓につながった支援経験があります。


この経験を踏まえ、検査記録の電子化でも、データの置き場所と使い方を一緒に整えることをお勧めしています。社内で必要な人が迷わず記録を取り出せるようにし、閲覧できる人と入力・訂正できる人の権限は分けて検討します。使う方が不慣れなら、一つの帳票を使って操作を確かめながら進めましょう。



6. 審査前は、検索・訂正・復元を実際に試す


電子で管理する記録を審査で示す場合は、閲覧方法を事前に確認します。担当者のパソコンでしか開けない、確認者が不在だと保存先が分からない、という状態では説明が止まります。実際の検査記録を一件選び、依頼された日付や品番から取り出して、基準・結果・確認の状況まで説明してみてください。


あわせて、訂正が必要になった場合の手順と、誤って削除した場合の復元方法を確かめます。バックアップがあると聞いていても、誰がどの範囲を戻せるか分からなければ、必要なときに使えません。ネットワークや端末が使えない時間に検査をどう続け、その間の記録をどう取り込むかも決めておきます。


導入後に見るのは、紙の枚数だけではありません。転記が減ったか、必要な記録を探せるか、未確認のまま残っていないかを振り返ります。まず現在の帳票一つと、入力から保管までの流れを持ち寄れば、改善の相談を始められます。検査そのものを確実に行い、その結果を無理なく残せる運用を目指しましょう。





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著者情報

金光壮太 (ISOコンサルタント)

大手商社にて営業を経験した後、ISOコンサルティングに従事。ISO9001、14001、27001を中心に、各業界の課題や特性に応じたシステム構築や運用支援を行い、企業の業務効率化や信頼性向上に貢献。製造業や建設業など、多岐にわたる業界での豊富な経験を活かし、お客様のニーズに応じた柔軟なソリューションの提案を得意としている。

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